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うそつき。

作者: 片桐 りのん
掲載日:2026/03/18

 恋愛を応援するのが好きだった。


 漫画に出てくる恋のキューピッドになりたかったんだ。

 だから、人の恋愛話も好きだったし、人の告白を見守るのも進んでやった。

 私の見た目は普通だったから、告白したりされたりする事は一切無かった。

 もしかしたら恋に憧れていたのかも。


 クラスはほとんど皆が仲良しっていう珍しい状況で、だからこそ私は、男子女子関係なく恋愛相談を受けたり、告白しやすい状況を作ったりしていた。

 正直、浮かれていた。

 私はそれで満足しとけば良かったのに。


 ある日、私はとある女子から相談を受けた。

 その子は単純に気になる男子に彼女がいるのか知りたかっただけだった。

 相手は同じクラスの男子。

 その男子は私と同じ部活だったの。

 私はその日のうちに、彼女がいるか聞いた。

 結果は『いなかった』。

 翌日、その事を話した。

 彼女は小さく「良かった」と。

 今でも彼女の微笑んだ顔が脳裏に焼き付いているわ。


 彼女、けっこう奥手で大人しい性格だった。

 私はこう思ったわ。

「このままだったら、この子の恋が終わる」って。

 お節介よね、分かってる。

 で、私こう言ったの。

「私が告白できるように手伝ってあげる!」

 最初は戸惑っていたし、断ろうとしていた。

 けど…私、続けてこう言った。

「このまま告白しなかったら、一生後悔するよ」

 しない後悔より、する後悔。

 甘い言葉よね。

 彼女は気弱だったから、押し切られるように「お願いしよっかな」って。

 しなきゃ良かった。


 私は2週間後にある文化祭を利用しようと考えた。

 恋愛漫画でもよくあるじゃん、文化祭で仲良くなってカップル成立っていうやつ。

 あんな風にしようと思って行動する事にしたの。


 文化祭実行委員、彼と彼女を推薦した。

 2人きりになるように買い出しを頼んだ。

 手を尽くした。

 でも実際、2人は以前より仲が深まってたし。

 彼女も髪型変えたり香水つけたりしたり、色んな事をしてた。

 私のアドバイスだけど。


 文化祭当日、それも色々細工したわ。

 うちのクラスはお化け屋敷したんだけど、意図的に実行委員を呼び出したりした。

 彼女も自信がついたのか、彼を一緒に回ろうって誘ったわ。

 私は確信した、これはイケるって。

 彼女にDMで送った1つの言葉。

「告白、絶対成功するわ!」

 絶対は絶対無いのに。


 セッティングした場所は、放課後の空き教室。

 テンプレ、ベタ、安牌。

 でも、今ならいけるって。

 私?隣のクラスで待ってた。

 ちゃんと、彼が来た。

 そして、運命の瞬間。

 100%成功した――


「ごめん」

 え?

「俺、〇〇の事が好きなんだ」

 私の名前が呼ばれた。

 嬉しい?悲しい?

 そんなんじゃない。


――あ、やってしまった


 すぐに言い訳を考えた。

 ヒドい女よね、わたし。

 こんな事初めてだし、そんな事知らない。

 そして、彼はこう言ったの。

「〇〇と仲良かったよな?〇〇ってどこいるの?」

 彼も彼よ。

 振った女子にそんな事聞くなんて。

 彼女、急いで教室から飛び出して行ったわ。


 私が彼女を追いかけてついたのは、校舎裏だった。

 なんて声かけていいか分からなかった。

「ごめん」

 全て聞いていたし、計画した事も含めて。

 彼女はずっと体操座りで俯いていた。

「ひっぐ…ゔっ、あぁ…」

 嗚咽を含んだ泣き。

 彼女はしばらく泣いていた。


 収まった後、彼女は静かに立ち上がった。

 私の方は一切見ない。

 ふらふらとよろけながら一歩、また一歩。

 彼女の背に伸ばす手が止まる。

 彼女にかける言葉…

 見つからない、言えない、私には資格がない。

 彼女は立ち止まる。

 首だけ振り返る。

 表情は…言えない。

 白い肌、赤く腫れた目、頬を伝うひとすじの涙。

 薄いピンクの唇がゆっくり動く。


――う そ つ き 。


 彼女は再び前を向いて走り出す。

 今度は、追いかけない。

 立ち尽くす、私。


 彼が来る。

「ごめん、ちょっといいか?」

 呼ばれた。

 行かなきゃ。


 わたし、悪い女だね。


 地面に落ちたナデシコの花は、私に踏み潰された。

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