48 嫌がらせ(4)
「どうしてこの女は苦しそうなのに落ちないのだ。どうしてだ」
30分が過ぎた。遂にボスは力尽きて鉄棒を離し、地面に落下した。
「クソっ、おまえ、見かけによらず根性あるな。鉄棒は私の負けだ。次の遠投は100%勝つから、そうしたら1対1になるから、もう一つ種目が必要だな」
「それは遠投の勝負が終わってから考えればいいんじゃない。やってみないと分からないし」
「何だと。結果は分かりきってるよ。でもまあ、その時のひらめきに任せるとするか。じゃ、どっちから投げる?そうだ、このコインで決めよう」
マーガレットは遠投の順番はかなり重要だと思った。彼女がボールを投げた時にプリンセスが物体移動魔法で飛距離を伸ばしてくれるだろうが、要はボスよりも少しばかり飛距離があればいいわけで、あまりにも飛距離がありすぎると不自然になってしまう。
だからボスが先に投げることが必要条件になってくる。
「じゃ、コインを投げるよ。私は表。あんたは裏。勝った方が先に投げるということで」
その瞬間マーガレットはプリンセスにテレパシーを送った。
「姉さん、これからコイントスがあるから、魔法で表にしてちょうだい。説明してる暇はないわ。お願い」
「そんなのお茶の子さいさいよ。任せて」
ボスがコイントスをすると、コインは空中でくるくると回り、そこに普通の人間には見えない、マーガレットには見える赤い魔法光線が照射されていた。コインは表になった。
「じゃ私の勝ちだから私が先ね」
ボスは超余裕でボールを投げた。飛距離は32メートルだった。女子としては驚異的な飛距離であった。次にマーガレットは自信が無さそうに装いながら、内心は楽な気持ちでボールを投げた。
実力では12メートルくらいなのだが、校舎の陰からプリンセスが照射している魔法光線がボールを持ち上げて35メートルの距離で落下させた。
それを見たボスは目をまん丸にして驚いた。けれども2種目とも負けたことははっきりしているので、そういう時にだけは潔いボスは
「私は複雑な家庭の育ちということもあって、いじめとかいろいろと悪さはしているけど、人との約束だけは必ず守る主義なんだ。
約束だから、これからは太田さんにもあなたにも意地悪はしないと誓うよ。だけど悔しいからこれだけはやらせろ」
と言って油断しきっているマーガレットのスカートに手を伸ばそうとした。
「あっ、約束違反よ」
マーガレットはスカートを押さえようとしたが間に合わない、と思えた時
「きゃー、風が」
急にボスのスカートの下から風が吹き出し、スカートが完全にめくれた状態のまま後ろにひっくり返ってしまった。
「ご、ごめんなさい。もうこんな卑劣なことは絶対しないから」
一件落着してシャトーに帰ったマーガレットは夕食を食べながら
「プリンセスお姉さま、今日はいろいろと助けてくれてありがとう。コイントス、鉄棒、ボール投げと3回魔法を使ったのね」
「4回よ」
「えっ、どうして?」
「最後にスカートをめくられそうになってうろたえてたでしょう。危なかったじゃない。私は最後まで気を抜かずに見守っていたの。だからあそこであなたを守ることができたの」
「あっ、そうだったのね。急に風が吹いて変だな、とは思ったんだけど」
「あなたはまだまだ甘いわね。今度のことを教訓にしてね」
「分かったわ。お姉さま、かえすがえすもありがとう」




