47 嫌がらせ(3)鉄棒とボール投げ
「ほら、やっぱり作り話だったんだ。太田さん、もう恐るものは何もないわ」
「動画は無くても、この人たちにまたいじめられるわ」
「ねえ、もうこんないじめなんてやめなさいよ。みんなで楽しく学校生活送りましょうよ」
「やなこった。私はいじめで世間に対する不満とか、勉強ができない自分への自己嫌悪とかを発散してるんだからね」
「じゃ、先生に言いつけるしかないわね」
「けっ、先公にチクるのかよ。汚ねえな」
「汚いのはどっちよ。人をいじめてしかも全く関係の無い私にまで嫌がらせしてさ。そう言えば私はあなたたちとこれまで全く関わりがなかったのに、どうしてあんなことしたの?」
「それはお前が美女だからさ。これまではこの学年で一番の美女は私だった。それが、お前が転校して来たために二番になってしまった。悔しいったらありゃしない」
「ははは、そんなことで。じゃ、私は何にも悪いことはしてないじゃないの」
「うるさい。おまえの存在が許せないんだ」
「人にそんなこと言っていいの。頭に来た。職員室に行こうっと」
「ま、待て。私は勉強はできないけど先生たちの前ではいい子ちゃんで通ってるんだ。だからそれだけはやめてくれ。
そうだ、じゃこういうのはどうだ。これからお前と私である勝負をして、お前が勝ったらもうお前に嫌がらせはしない。でも私が勝ったらお前のスカートめくらせろ」
「待って。私が勝ったら太田さんも自由にすると約束してよ」
「いいだろう。私は約束は守る女だ。勝負は2種目だ。一つ目はあの高鉄棒につかまって長くいられた方が勝ちだ。二つ目はボールを投げて遠くへ飛んだ方が勝ちだ。どちらも私の得意な種目だけど、いいよね」
「えっ、うーん。分かったわよ」
「けけけ。どちらも絶対に勝つ自信があるからね。小夜子、私があいつのスカートめくったらこっそり写メするんだよ。その恥ずかしい姿を拡散して心理的に追い詰めてやるのさ。あははは、愉快、愉快」
実はマーガレットは性格がやや勝気なので攻撃的魔法を教えられて育ったが、運動はあまり得意ではなかった。普通にやればどちらも勝ち目は無い。するとその時姉のプリンセスがテレパシーで話しかけてきた。
「事情は全て把握してるわ。あなたが私に頼らずに自力で問題を解決しようとしているのは素晴らしいことだけど、卑劣な人間に対抗するには仲間の力が必要よ。
今校舎の陰にいるんだけど、私の魔法で応援するから気楽にやってちょうだい。少しだけ応援するのだからいいでしょ?」
「ありがとう。私、運動は苦手だからお願い」
ボスとマーガレットは並んで高鉄棒につかまった。ボスは運動神経は抜群であり、特に体操競技は幼少時から両親の方針でスクールに通っていて、特に鉄棒などの器械体操は誰にも負けない自信があったし、ソフトボールもやっていて特に遠投を得意としていたのだが、実はこっそりと手を鉄棒にスムーズにフィットさせ、長時間ぶら下がっていても手のひらが痛くならないラバー製の特殊なゴム状のものを手につけていた。
これは肌色なので装着していることは側から見ても分からない。
ボスは余裕で笑いながら鉄棒にぶら下がっていた。数分が過ぎ、マーガレットの方を見ると苦しそうな表情になっていた。
実際マーガレットは手が痛くて既に限界に達していた。痛さに耐えきれず、思わず手を離してしまった。が、不思議なことが起こった。手を離しても体は同じ位置に浮いているではないか。
そう言えば姉のプリンセスの得意な魔法の一つに物体移動の魔法というのがあるが、それを応用して物体、つまりマーガレットの体を動かさずに定位置に置いているのかも知れなかった。
ただ手を離したまま浮いていることに気づかれるといけないので、すぐに鉄棒を軽く握り、本当は笑いたいところだったがそれを必死に我慢して苦しそうな表情にした。
マーガレットが辛そうな表情をしているのに意外にも持ちこたえていて既に20分近くになっていたので、さすがのボスも耐えきれなくなってきていた。




