51 卑劣なSNS(3)
ここは久住麻子や堀口晶と同じクラスメートの高梨潤の部屋だ。パソコンに向かって何かをしている。SNSを見たり投稿をしているようだ。すると急に画面上にハリネズミ君が現れ、手を広げて画面上をほぼふさいでしまった。
「何だ、こいつ。画面が見えないじゃないか。このやろ、このやろ。邪魔だ、消えろ」
すると急に画面上のハリネズミ君がしゃべった。
「部屋の窓を開けて。部屋の窓を開けて。部屋の窓を開けて」
「何言ってんだ、こいつ」
「部屋の窓を開けて。部屋の窓を開けて。部屋の窓を開けて」
と同時に東側の窓を叩く音がする。窓を叩いている者も同じように
「部屋の窓を開けて。部屋の窓を開けて。部屋の窓を開けて」
と叫んでいる。
高梨は面倒くさそうに立ち上がると窓を開けた。すると目にも止まらぬ速さで何かが部屋の中に飛び込んだ。
「何者だ!」
「ふふふふふ」
そこには1人の女子が立っていた。プリンセスだった。
「あの卑劣なSNS投稿をしたのはあなただったのね」
「卑劣なSNS投稿って何のことだ?」
「パソコンの画面を見なさい。ハリネズミ君、見せて」
ハリネズミ君が画面上で一回転した途端、これまで高梨が投稿した動画や写真が次々に現れた。
「どうしてこんなことをしたの?」
「俺は久住麻子が好きだったけど、あいつは俺のことなんか相手にしてくれないばかりか、よりによってクズ野郎の堀口の愛を受け入れたから許せなかったのさ。
クソっ、絶対わからないはずなのに。警察のサイバー対策チームでも破れない秘匿性の高いHPなのに、どうしてこんなことができるんだ?」
「自惚れるんじゃないわよ。あなた、自分が一番だと思ってるみたいだけど、上には上がいるのよ」
「俺はお前のことは知らない。今日初めて会った俺に対していきなり部屋に入り込んで来てなんて無礼な女なんだ。出て行け。このHPはすぐに削除してしまえば証拠は残らないからな」
「HPは削除させないわ」
「うるせえ、こんなもの、すぐに削除してやる」
そう言った途端高梨はパソコンに向かおうとした。すると開いていたノートパソコンは閉じてしまい、天井近くまで浮き上がってしまった。
「ちっくしょう、どんな手を使ってるんだ。パソコンが宙に浮いてるぞ。でもそんなことをしても無駄だ。それっ」
高梨はパソコンを取り返そうとしてジャンプし、手が届きそうになるとパソコンはまるで生き物のようにそれをかわして部屋の別の方向に移動してしまい、彼が何度ジャンプしてもパソコンを掴むことはできなかった。
「クソっ、何か透明なロープとかで吊って引っ張ってるのか?」
プリンセスの方を見たが、彼女は笑顔のまま腕を組んでいる。彼女の得意な物体移動魔法を用いているのだが、高梨はまさかそんな魔法があるとは夢にも思っていないので、困惑している。
「もうすぐ警察がここに到着するわ。このパソコンは大事な証拠品だからあなたに返すわけにはいかないわ」
ところがプリンセスの言葉とはうらはらにパソコンはゆっくりと降りてきて再び机上に鎮座した。それを見て高梨が触れようとすると
「バルーンロープ!」
虹色のバルーンが現れたかと思うとみるみるうちにロープ状に細くなり、高梨に巻きついてしまい、手も足も使えなくなった状態のまま倒れ込んでしまった。
「エファセ!(プリンセスに関する記憶を消去)」
高梨は体を虹色のロープで縛られたまま気を失って倒れている。
「あとは警察に任せましょう。この魔法のロープは誰か、つまりこの場合は警察官が触れた途端に消えるようになっているから私の痕跡も残らないわ」
プリンセスは一枚の紙を取り出すとパソコンに貼り付け、外に出ると待っていたモンチャンに飛び乗り、夕陽に向かって飛び去った。
その紙には、
「最近の一連のSNS騒動の犯人はこの男です。このパソコン内に証拠の画像があるのでよろしくお願いします」
と書いてあった。




