表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄とドラゴンー第二部ー  作者: ヒトミ
第二部第一章
2/2

劇場通り

ティローサは芸術都市といわれるだけあり、大劇場を中心として東西南に、美術通りと劇場通り、文学通りの三つの大通りが存在し、それぞれの分野ごとに特色ある発展を()げていた。


厳密に区分けされてはいないため、それぞれの通りに当てはまらない分野の興行は、似通った分野の大通りで(おこな)われている。


ティローサ大劇場の西側、劇場通りに面した広場から、大通りに出たラルジャンとミストラルは、路上演劇で盛り上がる人混みを、()にすることなく歩いていく。


「ここはどこ? 私はだれ……? あの人は……」


ふと、切実な声が耳に入り、ラルジャンは足をとめ、素早く周囲を確認した。


大通りの中央に立ち尽くす女性が一人と、その隣に男装をした女性がいる。


路上演劇か? 随分演技が上手いな。


「またなの? 貴女はソーニャでしょ」


「……ソーニャ? いいえ、違うわ。私の名前は……えっと、あれ? ごめんなさいルーシー。寝ぼけてたみたい」


「まったく! 花形役者なんだからしっかりしてよね。そろそろ公演の準備に行かないと」


ラルジャンの予想とは裏腹に、彼女たちはそんな会話を交わした後、足早に大劇場へ向かって歩き出した。


なんだ。単にぼんやりしてただけなのか。それにしては、真に迫った様子だったが。


『美味しそうな匂いがする』


精霊石を寝床にしているアルフェが、ポンと肩に出現したかと思うと、ソーニャと呼ばれていた女性目指して、飛んで行ってしまった。


「こら待て!」


慌ててその後を追う。


「なになに? 可愛い! 見たことない生き物だけど」


スラリと背が高い、ルーシーと呼ばれていた女性が、隣りに立つソーニャの腕に飛び込んだアルフェを見て、歓声を上げる。


「猫に見えるけど、羽が生えてるから違うのかしら?」


おっとりした性格なのか、ソーニャは突然腕に飛び込んだアルフェに、動揺してはいないらしい。


冷静にアルフェを観察していた。


こいつはソーニャの何に惹き付けられたんだ?


「迷惑かけてすまねえ。そいつは俺らの仲間だ」


頭を掻きながら、二人に近づき声をかけた。


「興奮しておるの。どうしたのじゃ?」


ソーニャからアルフェを受け取りながら、ミストラルがアルフェの様子を確認する。


「その動物、可愛いですね! 品種改良された猫とか?」


「……似たようなもんだ」


精霊だって教えても、面倒なことになるだけだよな。


「へぇー! 可愛い子を見せてくれたお礼に、いい物あげます。お二人とも、よければ観に来てくださいね」


「劇団 凰花(おうか)の公演観劇券です。私たち、演技には自信があるので、後悔はさせませんよ」


ルーシーとソーニャは、ラルジャンたちに観劇券を渡した後、慌ただしく去って行った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ