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一人っきり

作者: いけさと
掲載日:2025/05/29

 仕事帰り、夕暮れどき。

 疲れた体を引きずるように、一人ぼっちの坂道をあがってゆくと、そこには悲しい瞳をした太陽がいたんだ。

 太陽はあまりに熱すぎた。

 太陽はあまりに、まぶしかった。


 ぼうぜんと立ちつくす僕に、太陽は何か語りかけていた。だけど僕には太陽の言葉はわからなくって、なぜか涙あふれた。

 太陽は僕を抱きしめて、僕の涙は乾いてしまった。


 お願いだよ太陽。もうしばらくは、僕と一緒にいてほしい。

 だいじょうぶだよ太陽。もうしばらくは一人でも、なんとか我慢できそうさ。

 やがて太陽は僕を見つめると、寂しげな瞳のまま、この坂道をくだっていった。


 しばらくすると、坂の下からは、今度は月がやってきた。

 おおぜいの星たちにかこまれた月は、なんだかとても楽しそうで、月は僕に気が付くこともなく、そのまま空へと向かい、飛んでいってしまった。

 そして、夜になった。


 太陽はあまりに熱すぎて、誰も近づこうとはしなかった。

 太陽はあまりにまぶしくて、誰も彼を見ようとさえしなかった。


       ☆             ☆


 仕事の休憩時間、僕はときどき空を見上げる。そこにはいつも一人ぼっちの太陽がいて、悲しい瞳の僕を見つめる。

 今の僕には、彼に伝える言葉など、何一つ思いうかばない。


 だけど・・・


 お願いだよ太陽。もうしばらくは僕と一緒にいてほしい。

 だいじょうぶだよ、太陽。あと少しなら一人でも、なんとか生きていけそうさ。


1999_8_22


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