表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/48

2-12 万事休す!? 戦場で落ちる橋

最後尾のケンタウロスを抜き去り、いよいよ勝ちが見えてきた異世界トラック。

しかし、そんな喜びも束の間、リリーと竜哉の目の前に、想像もつかない事態が降りかかる!

 古代から現代まで、地政学的な行政境界は分水嶺、もしくは川が多くを占める。

 帝都アタガメイと副都エーガス、その行政境界も例に漏れず、平野を突っ切る大河イマゴムが、誰が見ても分かる境として存在していた。

 川幅、数十メートル。

 悠然と流れる大河には、いくもの橋が掛かっていたが……俺たちが選んだのはアマヤラム橋。

 帝都と副都を繋ぐ最短距離に据えられた橋は、大河イマゴムでも屈指の、頑丈な橋だった。

 行き交う人々はひっきりなし、この国でも有数の、交通・物流の大動脈である。


 ――――その橋が……燃えている!


 アマヤラム橋、橋脚は石積み、橋桁は鉄骨で組まれた立派な橋だが、床版は木造だった。

 燃えにくく頑丈な木材でも、可燃物には違いない。油をぶっかければ、最終的には燃え尽きる。


「ここまでやるか! ケンタウロス商会!」

 この平野に住まう人々にとって、無くてはならない重要な生活インフラなのに!

 その大事な公共財さえ、躊躇なく焼け落とすなんて!


「負け犬の遠吠えが心地いいな! 異世界とらつく(・・・・)!」

 迷惑のこの上ない焦土作戦を指示した顧問弁護士、モダスオペランディ――川向うから吠える!

「これではもう、そのクズ鉄(・・・)は渡れまい!」


 そこへ、泣きっ面に蜂。

 先程、トラックに追い抜かれたはずのグルペット(=最後尾追走)ケンタウロスたち、

「迂回だ、お前ら! 上流の吊り橋へ向かえ!」

「分かりやしたオペランディさん!」

 落ちこぼれ組の彼らも休息で復活を遂げ、上司の指示に従って進路を変えた。


「クッ!」

 確かに、小さな吊り橋でも、ケンタウロス一頭づつなら渡りきれる。

 この異世界トラックの図体では絶対に無理だが。


「ゲームオーバーだ、リリエンタールのご令嬢! ここが貴様らの、絶望の川だ!」

 してやったりのオペランディ、高らかに勝利宣言をして、去っていった。


 ☆


「まさか……ここまでするとは……」

 燃え盛る橋を前に、俺たちは言葉を失った。

 もはやトラックに行き場はない。

 上流か下流へと迂回するにしても……近場の小さな吊り橋ではダメなんだ。このトラックの重量を支えられる頑丈な橋でないと。

 現実問題、そんなにも迂回したら、荷運び勝負には勝ち目がない。努力も徒労に終わる。

 俺たちが副都エーガスに到着する頃には、セリヌンティウスの首はとっくに落ちている。


(これは…………積んだか?)

 潔く負けを認めるしかないのか?

 もはや打つ手もないか?


(でも……)

 よく頑張ったよリリー、お前はよくやったさ。

 (公道での)試運転まかりならぬ、とかいう理不尽な条件でも、可能性は見せたじゃないか。

 あと少しで勝てそうなところまで運んできたじゃないか。このトラックでさ。

 充分だよ。

 負けであっても、立派な負けだ。胸張ってフランチェスカの工房へ帰ろう。

 スガワラさんだって褒めてくれるよ。


「そうね……スガワラなら」

「うん」

「絶対諦めないと思うわ! この程度の障害では!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ