表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/48

2-10 絶体絶命を駆け抜けろ!

卑劣なり! ケンタウロス商会!


せっかくハーピーから近道を教えてもらったのに、そこを待ち伏せてくるとは!

狭い隘路を通るトラックを狙って石を落としてくるんだから、たまったもんじゃない!


どうするどうなる異世界トラック?

「ぶ……仏恥義理?」

 果たして「それ」がトラッカーの美学に適合するのか? ちょっと間違ってないか?

 ……などと議論している暇はない。

 今まさに、俺たちの眼の前で、トラックの進路が塞がれようとしているのだから!


「備えろリリー!」

 掛け声なんてどうでもいいんだ。俺とリリーの選択は『GO』だ。

 たとえ命尽き果てようとも、前のめりに倒れよ、異世界トラック! 風を切って疾走れ!

 突き進めば願いは叶うさ!

 立ち止まらない! 振り返らない!

 知らない街まで俺たちは止まらないぜ!


「いくぞー!」

 保ってくれボイラー! 聖剣の刀鍛冶の鍛造術を信じるぞ、ルーシー!

 もしここで爆発なんて起きてしまったら、俺やリリーの身だって危ないんだ!

「そいや!」

 もう加減なんて分からないから目分量で放り込む! 握り込んだ『火種』を全て炉の中へ!

 そして、すかさず火室の扉を閉じたのだが…………

「……どうだ?」

 ボイラーは平常のままだ。

 グリップを掴みながら、息を呑む俺とリリー。僅かな燃焼ラグが永遠にも思える。

 すると……


 バン! ババン! ――――ズッガーン!!!!


「フッ!!!!」

 息が出来ない。突然、後方の壁に叩きつけられて、一気のGだ!

 まさにロケットロコモーション!

 地峡をぶっ飛ばす水平発車だ!


「はっ!」

 ホンの数秒――偏った血流が戻れば、意識も戻り、

「リリー! 大丈夫か!?」

 天井の運転席へ確認すると、

「大丈夫……」

 少なからずダメージを負っている声だが、意識があれば、これ幸い。

「舵を頼むぞ!」

 切り通しだって、完全な直線ではない。適切な修正舵を当てないと壁に激突だ。特にこのロケットダッシュの勢いでは、コースアウトは死を意味する。崖に突っ込んで自爆ENDだぞ?

「OK竜哉! リリーにお任せ!」

 自分の命だけでなく、積んでいる荷や俺の命も預かる運転士の責任。

 代われるものなら代わってやりたいが――――これが彼女の選んだ道。

「頑張れ! もう少しだ!」

 スーパーマリオダッシュしたダンキチ号、気がつけば先が見えた!

 切り通しの出口だ!

「行け! リリー!」

 ガガガガガガガガガガガガ!

 外側のフレームを岩壁に削りながら、なんとかコーナーを転回するべく舵を切るリリー!

 徒歩なら無視できるほどの緩いカーブも、なにせこの図体、繊細かつ豪快な操作が求められる。

「仏恥義理よ! 仏恥義理れ! ダンキチ号!」

 バカン!

 遠心力に抗えず、アンダーステア! 外側が岸壁に擦れ、派手にスッ飛ぶフレームの一部!

(ヤバい! それ以上、擦ったらボイラーに被害が及んじまう!)

 目を覆わんばかりのコーナリングだったが――

「ちぇすとー!」

 間に合った!

 設計上、舵角の取れないトラック初号機でも、ギリギリのところで脱出に向けた最適角度を採ることが出来た!

「リリー!」

 あとは駆け抜けるだけだ!

 ところが、


「通してたまるか! 投げろ投げろ! 投げられるものは全部落とせ!」

 ケンタウロスたちの投石も激しさを増す。


(これは、やるしかないか……)

「最後にいくぞ! リリー!」

「よろしくてよ! ファイトォー!」

「火種、いっぱ―つ!」


 ドッカーン!!!!


 煙突や機関の継ぎ目から赤い炎を吹き出しながらも、トラックは狭い地峡を駆け抜けた。

 これでもか、と降ってくる落石の雨を掻き分けて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ