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2-3 驚異! 馬人間の襲撃!

根回しは何事にも重要!

貴族パワーを最大限活用して、行政トップに試験走行の許可を求めたリリー。

「金持ち喧嘩せず」で、なぁなぁのOKを貰えるものとばかり思っていたのだが……


結果、春管領エウスカルテル・エウスカディから帰ってきたのは、意外な言葉だった。

「…………エウスカルテル様?」

 まさか春管領に、そんな答えを返されるとは思っていなかった。

 不意を突かれたリリーは言葉に詰まる。

 当たり障りないアリバイ交渉で話は済む、との目論見は見事に崩れてしまった。


「嬢様もご承知でしょう、そもそも我がアタガメイには飛脚制度が整ってございます。臣民(あまね)く、妥当な対価を支払えば妥当な日数を費やし妥当に荷を届ける、そのような真っ当なサービスを、嬢様も利用なされたことがございますでしょうに」

「…………」

「それで何がいけないのですか? 伝統も信用もある制度に何の問題が?」

「…………」

「リアンベルテ嬢様、商取引の根本は需要と供給にございます。客が求めていないものは、市場に留まり続けること叶いませぬ」

「…………」

「いや、失敬失敬。年端も行かぬ嬢様に知識をひけらかすなど、実に大人げない! このエウスカルテル・エウスカディ、正式に謝罪させて戴きたい、嬢様。のちほどリリエンタール邸まで、街で評判の茶菓子でも届けさせましょうや」


 ☆


「ムカつく!!!!」

 必死に我慢した堪忍袋の緒も、馬車に乗り込むなり、プッツン切れた。

「何が『リリエンタールの縁者ならば、格別の配慮を行う』よ! 口だけ宰相!」

 自分でも、よく我慢したと思う。


 ――エウスカルテル・エウスカディ、あの俗物め!


 名門アタガメイ大学を主席で卒業した英名貴族か何か知らないけど、あんな失礼な奴には、もう二度と頼るものか!

 思い出しても虫酸が走る! ばーかばーか! 謎の疫病で伏せろ! 過労で昇天しろ!


「こうなったら悪役令嬢らしく、突破させて戴きますわ!」


 ☆ ☆


 一方その頃――


 ガシャン!

「何だ?」

 工房の方から、尋常ならざる音が聴こえた。

 バシャン! バシャン! ドッシャァァァーン!

 慌てて服を着た俺とルーシー、下へ降りてみると……

「は?」

 工房の扉が外から無理やり破壊され――乗り込んできた半人半馬の男たち、二、三十名!

「ちょ! ちょっと何ですか、あんたたち!」

 深緑に黄色のラインの入ったユニフォームで固めた集団、

「ここがとらつく(・・・)とかいうガラクタの小屋かい?」

 極めて横柄に吐き捨てた。

「ガラクタとは何だ! 聞き捨てならないな!」

 騒ぎを聞きつけ、母屋の方からフランチェスカとタンユーもやってきた。二日酔いのボサボサ髪のままで。

「ガラクタはガラクタだろうが! べらんめい!」

「なんだと!」

 売られた喧嘩は買ってやるとでも言わんばかりのフランチェスカ、激しく沸騰する。

「ちょ、ちょっと待って! 喧嘩はダメだ、まずは話を……」

 どうしてそんな血なまぐさい展開を許容できようか。

 俺は必死で衝突の回避を試みるが……


「だいたい、こんな鉄の塊、動くワケねぇだろ! バッカじゃねーの!」

「重すぎる! 亀の歩みが精々だ!」

「荷が到着する前に腐っちまう! チャンチャラおかしいぜ!」

「お湯を沸かして馬車が動くなら、皆が鍋を積むだろうよ! なぁ?」

「違いねぇ、ハッハッハ!」


「動くよ!」

「港町アカッサまで一刻だぞ! ケンタウロスだって追いつけるもんか!」

「蒸気機関も知らん馬頭どもが、無知を恥じろ無知を!」


「いや、そこじゃないよフランチェスカ」

 彼女の耳元で俺は伝えた。

「問題は、こいつらが、このトラック初号機が蒸気機関だと(・・・・・・)知っている(・・・・・)ことだ」

「どこでそんな情報を……まだ一度も公道を試走してもいないのに」

「分からない。分からないけど……彼らの行動には【何か裏がある】と考えた方がいい」

 でなければ、こんなタイミングで襲撃したりするものか。

 今まさに、完成したトラックが公道へ躍り出ようかという、この時に。


「貴様ら! 何者だ!」

「お前ら、大法螺吹きどもに名乗る名などないが……この制服を見れば一目瞭然!」

 半人半馬軍団は、それを誇示するように胸を張り、

「アタガメイ王室御用達、管領様公認飛脚業――ケンタウロス商会とは」

「「「「俺たちのことよ!」」」


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