第13話「“シスターズアルカディア”VS魔王軍④」
ダイリ地区に現れた、ギャラスの群れをムツキ君達が対処してくれている中、わたしとナナカ姉ちゃんはイレギュラーギャラス、通称“イラス”と呼ばれる魔獣と対峙していた。
ギャラスは、翼竜のような見た目をした3〜4メートル程の飛行型の魔獣なのに対して、イラスは10メートル近くはある巨体で、ギャラスを二足歩行にして、腕と翼を生やした怪獣という見た目の魔獣だった。
ギャラスの変異体にして、ギャラスの親玉的存在らしいので、こいつさえ倒してしまえば、ギャラスの群れも統率を失って、対処がしやすくなるハズだ。
地上では、国防軍主導で民間人の避難が行われている。
アスカさんの指示で、国防軍に対してわたし達の邪魔はしないよう指示が出ているため、国防軍がイラスを狙った流れ弾がわたし達に運悪く当たるというようなことは無い。
「さて、“疑似戦乙女”の力でどこまで戦えるか…、いざっ!」
“疑似戦乙女”としての模擬戦闘などは行ってきたが、実戦は初めてなので少し緊張するが、ナナカ姉ちゃんも一緒なので心配はしていない。
それに、ナナカ姉ちゃんには、対魔獣用として、新たな機能を付け加えていた。
「『核索敵機能』、起動」
魔獣には、心臓や脳の他に、核というものが存在しており、高位の魔獣とかになると、核を潰さない限り死ぬことはないという。
そして、その核を見つけるために、モモコ姉ちゃんとユエ姉ちゃんの魔術の知識と、アニ君とマイカ姉ちゃんの科学技術でもって、魔獣の核を見つけれる機能が作られた。
その名もズバリ『核索敵機能』。
試験的にモトカ姉ちゃんの右目の”照準器”に付けて検証した結果、『魔獣化』したハルカ姉ちゃんやサクヤ姉ちゃんの核は問題なく見つけられたので、ナナカ姉ちゃんも付けてもらっていた。
わたしにも付けてもらいたかったのだが、時間的な余裕が無かったため、今回は見送られた。
しかし、核を発見するまでには多少の時間がかかる。
おまけに、イラス程の巨体となるとなおさらだし、場合によっては核が一つだけとは限らないらしいし。
だから、核が見つかるまでの間、ナナカ姉ちゃんを守りながらの戦いになる。
『ギャアァアアアアッ!!』
イラスが咆哮すると、空気がビリビリと震えた。
だが、この程度で怯むわたし達じゃない。
わたしは“疑似戦乙女”としての武器、赤い銃型武装“戦乙女銃”を両手に、そして左目にはモノクル型の“照準器”を出現させると、イラスへ向けて攻撃を開始した。
「『戦乙女の炎弾』ッ!!」
その名の通り、炎の弾丸が“戦乙女銃”から放たれ、イラスを攻撃するが、硬い皮膚に弾かれ、ほとんどダメージが入らなかった。
『キシャアァアアアアッ!!』
対してイラスは、背中から無数の触手を繰り出し、わたし達に襲いかかる。
それらを、わたしとナナカ姉ちゃんは巧みに避けながら、背後へと回り込み、今度は二人同時に攻撃する。
「『戦乙女の炎砲』ッ!!」
「“指ミサイル”っ!」
連射性は落ちるが、今度はより強力な『戦乙女の炎砲』と、ナナカ姉ちゃんの両手の指先から発射された十個の小型ミサイルが、イラスの背中の触手の生え際に直撃し、激しい爆発と共に触手を全て切り落とした。
『ギシャアァアアアアッ!!』
触手を切り落とされたイラスは、怒ったのか、こちらに振り向くと、口から超音波を発生させた。
「あぐぅうっ!?あっ、頭が痛いぃいいいいっ!?!?」
わたしはイラスの超音波攻撃に耳を塞いだが、それでも完全に防ぎきれるものではない。
超音波攻撃はギャラスの十八番で、ギャラスは、その超音波で相手の動きを封じた後に、鋭い嘴で相手を串刺しにするという攻撃を得意としている。
当然、そのギャラスの親玉でもあるイラスにだって超音波攻撃は使えるわけで、では動きを封じた後はというと…、
「メイコちゃんっ!危ないっ!!」
「ナナカ姉ちゃんっ!?」
イラスの再生した触手がわたしに襲いかかってきたところを、ナナカ姉ちゃんが庇ってくれた。
が、その代わりにナナカ姉ちゃんが触手に捕われてしまった。
「ぐぅう…っ!?」
「ナナカ姉ちゃんを離せぇっ!!
『戦乙女の…、」
『ギシャアァアアアアッ!!』
「あぐぅ…っ!?ま、また超音波…っ!?」
くっ…、さすがにこの超音波攻撃は厄介過ぎる…っ!
これじゃ、まともに動けないし、攻撃も出来ない…っ!
と、そうこうしている内に、新たに再生した触手が、今度はわたしを捕らえようと迫ってくる。
「そうはさせませんっ!『変化』、ギャラス!」
ナナカ姉ちゃんがそう叫ぶと、その顔だけがギャラスへと『変化』し、そして、その嘴から超音波を発生させた。
『キシャアァアアアアッ!!』
すると、先程までわたしを苦しめていたイラスの超音波が嘘のように聞こえなくなった。
おかげで身体の自由が戻ったわたしは、迫りくる触手を間一髪で避けることに成功した。
そして、同時に触手に捕われていたナナカ姉ちゃんも、“指ミサイル”で触手を吹き飛ばして脱出していた。
「そうか!ナナカ姉ちゃんの超音波でイラスの超音波を相殺させたんだ!」
『はい、イラスの超音波の波長を解析し、それと逆位相の超音波を発生させて打ち消しました』
と、ナナカ姉ちゃんの声が脳波通信でわたしの脳内に直接聞こえてきた。
『私は引き続きこのまま、超音波でイラスの超音波を相殺しつつ、奴の核を探しますので、メイコちゃんはなんとかそれまで時間を稼いで下さい』
「了解!」
わたしは両手で“戦乙女銃”を構え、今度は威嚇目的で、イラスの周囲を飛び回りながら、『戦乙女の炎弾』を連射した。
『キシャアアアアッ!!』
イラスは、再生させた触手や尻尾などを使ってわたしを追いかけ回すが、それらに捕まることなく、わたしは回避し続ける。
わたしの放ち続ける『戦乙女の炎弾』は、イラスに大ダメージを与えられるわけではないが、それでも数打てば、それなりの蓄積ダメージにはなる。
そうして、こちらにヘイトを向けさせ続けることで、ナナカ姉ちゃんの『核索敵』も進み、ついにその核を発見した。
『メイコちゃん!核見つけました!だけど…』
そこで、わたしの左目に装着されたモノクル型の“照準器”に、索敵データが送られてきた。
そこには、イラスの全体像が映っていて、赤く記された点がイラスの体内を激しく動き回っていた。
恐らくこの赤い点が核だと思うんだけど…
「ええっ!?これ、どういうこと!?」
『恐らく、イラスの核は常にその場所を移動し続けているのでしょう』
「マジか〜…、そんなパターンあるんだ…」
『キシャアアアアッ!!』
移動し続ける核をどう撃ち抜こうか考えていると、まるでこちらをあざ笑うかのように、イラスがその嘴をこちらへ向けて、青白い熱線を吐き出してきた。
「うわっ!?」
咄嗟に光線は避けられたが、避けたところへ触手が現れ、わたしはとうとう捕まってしまった。
「くぅ…っ!?わたし、触手プレイはそんなに好きじゃないのよ…っ!!」
ギリギリと締め付けてくる触手。
「メイコちゃんっ!!“指ミサイル”っ!!」
ナナカ姉ちゃんの“指ミサイル”がわたしを捕えた触手を攻撃するも、何度目かに再生したこの触手は、どうやらかなり強固になっているらしく、ナナカ姉ちゃんの“指ミサイル”でも千切れなかった。
「そんな…っ!?」
『キシャアアアアッ!!』
「ナナカ姉ちゃん、危ないっ!!」
驚愕するナナカ姉ちゃんに、再びイラスの熱線が吐かれる。
対してナナカ姉ちゃんは、さらに上空へと飛んで熱線を避け、その後に迫ってくる触手が届かない距離まで飛んで回避した。
『メイコちゃん、大丈夫ですか!?今すぐ助けてあげますから!』
脳波通信でナナカ姉ちゃんからの声が聞こえてきたので、わたしも脳波通信でナナカ姉ちゃんに答えた。
『ううん、大丈夫!このくらいなら自分でなんとか出来るし、ついでにアイツの核も破壊してやるんだから!』
そして、わたしは“戦乙女”の切札を切った。
「『クロックアクセル』っ!」
体内の血液中を流れる“タキオン粒子”、それを活性化させることで思考と行動加速を得られる能力『クロックアクセル』、要は“加速装置”の“戦乙女”版なわけだけど、“疑似戦乙女”であるこの姿でも、当然その機能は備わっている。
加速することにより、運動エネルギーを得られるため、その力でもってわたしを捕えているイラスの触手を引き千切る。
そして、イラスから距離を取って、“戦乙女銃”を両手に構え、“照準器”に記された赤い点に照準を合わせる。
加速中だと、動き回っているイラスの核も止まって見えるから、狙うのは楽勝だ!
「『戦乙女の炎砲』ッ!!」
二丁の“戦乙女銃”から発射された炎の弾丸の中にも活性化した“タキオン粒子”が含まれているため、超加速状態でイラスの核へと飛んでいき、見事に二発とも命中した。
『ギギャギャギャァアアアアァアアアアッ!?!?』
断末魔の叫びと共に、イラスが消滅していく……、かと思いきや、消える寸前のイラスへと無数のギャラスが突撃していくではないか!?
『め、メイコちゃんっ!!』
と、そこへギャラス達と戦っていたムツキ君から脳波通信が入った。
『どうしたの、ムツキ君!?なんか、大量のギャラスがこっちに集まってきてるんだけど!?』
『わっ、分かりませんっ!!
何故だか突然、僕達の前から消えてメイコちゃん達の方に向かって行ったから…!』
どうやら、今集まってきているギャラス達は新たに現れた個体ではなく、元からいた、ムツキ君達と戦っていた個体の残党らしい。
「一箇所に集まってくれるならありがたいけど、でも、一体何をするつもりで……、っ!?」
「あ、あれは…っ!?」
わたしとナナカ姉ちゃんの目の前で、集まったギャラス達が一体化していき、新たなイラスとして再生していく!
『ギシャァアアアアアアアアッ!!!!』
雄叫びをあげながら、復活したギャラスはその口から、真っ赤に燃えるような熱線を吐き出した。
明らかに先程の青白い熱線よりパワーアップした熱線は、避けてもその熱波だけでダメージを負う程の威力を誇っていた。
「熱っ!?再生しただけでなく、前より強くなってるってわけ!?」
「それだけでなく、どうやら核の数も増えたようです」
ナナカ姉ちゃんから送られてきた索敵データを見ると、確かに身体のあちこちに、核を示す赤い点が点在していた。
「なるほど、ギャラスが合体した数だけの核を持ってるわけか…
だけど、さっきとは違って今度は動き回ってるわけじゃないのね」
「ですが、全ての核を同時に撃ち抜かないといけません。
一つでも残ってしまったり、タイミングがズレてしまえば、核が再生してしまいますから」
「そういうことなら、サイボーグである僕達の得意分野だよね!」
そこへ、ギャラスと交戦していたムツキ君とハヅキ姉ちゃん、そしてムツミさんと、“忍術使い”というルリナさんが合流してきた(ルリナさんはサイボーグでも無いし、飛べるユニットは装置されてないハズなんだけど、どういう理屈か空に浮いていた。忍術ってスゴい…)。
空を飛べない残りのムツキ君ハーレムメンバー達は、地上で逃げ遅れた人達がいないかの再確認を行っているらしい。
「サイボーグである僕達なら、発射タイミングとか速度を調整して合わせて、全ての核を全員で同時に狙い撃ち出来るはずです!」
「というか、それしかいい方法は無さそうだよね。
数にもよるけど、一度に照準出来る数は限られてるし…」
「ナナカさん、私達にも奴の核の位置のデータをお願いします!」
「了解しました!」
ナナカ姉ちゃんが、索敵したデータをムツキ君とハヅキ姉ちゃん、そしてムツミさんに転送する。
その間に、サイボーグではないルリナさんと、地上の確認を行っていた『水分子操作』という超能力を扱えるミホさんが通信機を通じてこう言った。
『じゃー、五人がイラスの核を狙い撃てるようにー、』
『私達で奴の注意をそらしておきますね!』
『はい、お願いします!
それから、マイカ姉さん!』
ナナカ姉ちゃんが、通信でクルセイド研究所にいるマイカ姉ちゃんに連絡をすると、すぐに返事が返ってきた。
『分かってるわ、すでに軌道計算や発射速度、各人の狙う核と、発射位置などの最適解を計算してる!
それまで各人、いつでも武器を打てるようにしておいて!
特に、メイコちゃんには一番負担がかかると思うから、不具合とかないか念入りに確認を!』
『了解!』
さすがはマイカ姉ちゃん、話が早い!
というわけで、わたし達はマイカ姉ちゃんに言われた通り、武器の準備を始めた。
ムツキ君とムツミさんとハヅキ姉ちゃんは両手に銃型の“レーザーガン”を、ナナカ姉ちゃんは両手の“指ガン”を、いつでも撃てるように構える。
これで最大16箇所を同時に狙えるがまだ足りない。
なので、足りない部分はわたしが補うしかない!
「“戦乙女銃”、モードセパレート!!」
すると、二丁の“戦乙女銃”がそれぞれ五つずつのパーツに分かれ、それら一つ一つが小さな砲口となり、わたしの周囲にファンネルのように浮かび上がる。
それとは別に、両手に“レーザーガン”、そして“疑似戦乙女”として標準装備されている、両腰のレーザー砲も含めて合計14の砲口をイラスに向ける。
ムツキ君達が予めギャラスを減らしておいてくれたおかげか、ご都合主義的に合体したイラスの数は30、つまり核の数も30で、これでピッタリ合う!
マイカ姉ちゃんが弾道計算などをしてくれている間、ルリナさんとミホさんがイラスの注意をひいてくれている。
「水よっ!!」
まず、ミホさんが周囲の水分子を操作して、水蒸気を霧のように発生させ、イラスの視界を撹乱しつつ、別で発生させた氷の塊をぶつけていく。
「忍術、『水手裏剣』っ!!」
さらに、ミホさんが集めた水を今度はルリナさんが巨大な手裏剣状にして、イラスへと四方八方から投擲していくルリナさん。
わたしの目にはルリナさんが五人くらいいるように見えるけど、高速移動による残像ではなく、実際に『分身の術』で分身しているようだ。
忍術ってすげー…
『キシャアアアアアッ!!』
苛立つイラスが所構わず青白い熱線を吐こうと口を開こうとするが、ルリナさんには霧で隠れて見えにくいイラスの姿がはっきり見えているのか、的確に開いた口へと『水手裏剣』を放って、熱線を吐かせないよう邪魔している。
普通の魔獣相手ならこの二人だけでも完封出来たであろう、超ハイレベルな連携だ。
しかし、今のイラスは体内にある30の核を同時に破壊しないと倒せない。
そのための計算をマイカ姉ちゃんが行ってくれているのだが、この僅か1分にも満たない時間が永遠にも感じられた。
『皆っ!計算完了したわ!
データを送るから、今から3秒以内に各自位置について、そして構えて!』
マイカ姉ちゃんから送られてきたデータを元に、わたし達は指定された位置へと移動し、それぞれの砲口を指定された角度と位置で固定した。
『じゃあ、皆、わたしの指定したタイミングで砲弾を発射して!!』
マイカ姉ちゃんから、それぞれの武器の発射タイミングを指示したデータが新たに送られてくる。
わたしの場合、16の砲弾があるが、それぞれにコンマ数秒単位での発射時間が設定されていた。
これらの順番やタイミングを少しでもミスると、全ては失敗してしまう、というわけだ。
それと同時に、視界の端にタイマーのような数字が出ていて、今は0.00と表示されている。
『その場所の空気抵抗、風速が予測演算通りなら…、今っ!!』
マイカ姉ちゃんの声に合わせて、タイマーがスタートした。
0.01になった所で、わたしのファンネルの1と3と7が赤く点滅した。
これが発射の合図だ。
続けてタイマーの進行と共に、わたしの持つ砲口が赤く点滅していく。
その指示通りに、わたしは砲弾を放っていく。
他の皆も同じように砲弾を放っていき、タイマーが0.06と刻む頃には、30の弾丸がイラスの核へと向けて発射されていた。
『ギリリリリクシャァアアアアアアアアッ!?!?!?』
そしてタイマーが0.10を刻んだ時、全ての弾丸がイラスの全ての核を同時に貫き、イラスは断末魔の咆哮をあげながら、完全に消滅した。
「やった!!」
『皆、お疲れ様!
こちらでもギャラス及び、イレギュラーギャラスの完全消滅を確認したわ!』
とりあえず、これにてわたし達の任務は完了!
後は魔王軍の人達と戦ってる他の姉妹達と、肝心のヨウコ姉ちゃんを救うために戦ってるアニ君達の結果次第。
だけど、わたしは何の心配もしていなかった。
きっと、これが終わればわたし達の家族に、ヨウコ姉ちゃんも加わっていることを疑っていないのでした。




