第12話「“シスターズアルカディア”VS魔王軍③」
*
魔王軍の幹部の一人、【魔獣使い】であるジャイビットと対峙するボク達、マコトとモトカ。
『行けっ!我が下僕達よっ!!』
ジャイビットが空中に無数の魔法陣を出現させると、そこから大量の黒い鳥の魔獣“ヤミガラス”を召喚した。
“ヤミガラス”は基本的には偵察向きの魔獣であるため、戦闘力はそこまで高くは無いが、その分知能が高く、相手の戦力を分析して的確な攻撃を仕掛けてくるらしい。
『『『『『ガァアアーッ!!』』』』』
「モトカっ!!」
「りょうかーい!」
ボクは、ヤミガラス達の相手をモトカに任せ、術者であるジャイビットへと向かって行った。
*
姉ちゃんにヤミガラス達の相手を任せられたボクは、右手の指先をヤミガラス達へと向けた。
「“指マシンガン”、ファイヤーっ!」
照準を合わせるまでも無く、指先から放たれるマシンガンの弾が次々とヤミガラス達を撃ち落としていく。
姉ちゃんに向かおうとしていたヤミガラス達も、まずはボクを殺らないとマズいと判断したのか、全てのヤミガラス達がこちらへ向かってくる。
『『『ガァアアーッ!!』』』
「いいよ、いいよ〜、全員狙い撃ちにしてあげるから〜!」
ボクは途切れること無く“指マシンガン”を撃ち続け、ヤミガラス達の数を、一気に半分以下に減らした。
さて、さすがにここまで来ると、適当に撃っても当たらなくなってくる。
数が減ったのもあるけど、闇に紛れて一匹一匹が視認し辛くなってくるからだ。
なので、ボクは右目の“照準器”を暗視モードに切り替え、闇に紛れるヤミガラス達を正確に狙い撃つ。
そうしてさらに数を減らしていくと、段々奴らも学習してきたのか、次第にボクの弾を避け始めるモノが出て来た。
さらには、味方を囮にして、弾を防ぎ、自らはそのスキに死角に紛れてボクへ直接攻撃をしてくるモノまで現れた。
「っていうか、あとどんだけいるのさ〜!?」
ボクは突撃を仕掛けてきたヤミガラスをバックステップで避けながら悪態をついた。
数は減らしてるものの、新たな魔法陣が空中に現れては、新たな個体が追加されていく。
しかも、そいつらはすでに学習済みなのか、こちらの攻撃を的確に避けながら突撃してくるのだ。
「ただでさえ面倒なのに〜、ジャイビットの魔法陣のせいで〜、無尽蔵に湧き出てくるなんて〜…
本当〜、ゴ◯ブリみたいな奴らだね〜…」
『『『『『ガァアアアアーッ!!』』』』』
「おっと〜、ゴキ◯リって言われて怒っちゃったかな〜?」
最早、ヤミガラス達にボクの“指マシンガン”は当たらず、おまけに連中は連携攻撃を仕掛けてくるようになっていた。
「それなら〜、湧いて出るより早く処分するのみ〜!」
ボクは腕に巻いた時計型の“加速装置”起動スイッチを押した。
すると、全身の血液を流れる“タキオン粒子”が活性化されて、ボクの思考と行動が加速される。
そうすると、ヤミガラス達が空中に静止しているように見える。
ボクはそいつら一匹一匹に確実に弾丸を当てていく。
撃ち出される弾丸にも、活性化した“タキオン粒子”が含まれるため、ボクと同様に加速した弾がヤミガラス達に次々と命中し、たちまち爆発四散していく。
「楽勝、楽勝〜♪」
やはりこの“加速装置”という切札は、あまりにもチート過ぎる。
相手が一つの行動をする間に、こちらが数百も行動出来たら、そりゃ相手は何も出来ないまま終わるよね。
なんて思っていたら、
『ガギャァアアアーッ!!』
と、これまでとは違うヤミガラスの鳴き声が聞こえたかと思うと、同時にボクの全身の“タキオン粒子”が異常活性し始めた。
“タキオン粒子”の活性化には大まかに三段階あって、初期段階の加速と、二段階目の超加速、これを超えた三段階目となるとオーバーヒートとなり、血液が沸騰し、とても危険なのだ。
なので、ボク達サイボーグ姉妹にはそれぞれにリミッターが付けられていて、姉ちゃんやミライちゃんは比較的生身が多いため初期段階まで、ボクやモモコちゃんなどは肉体のほとんどが“バイオヴァリアブルメタル”なので二段階目まで“タキオン粒子”を活性化させられる。
しかし、それ以上になると自動でリミッターが働き、“加速装置”が強制終了させられることになっているのだが、今まさに“タキオン粒子”の異常活性を受けて、“加速装置”が強制終了したのだった。
「な、何で急に〜…!?」
『我らがお主らの“加速装置”に対し、何も対策をしていなかったとでも思うのか?』
と、突然何処からか、重々しい老人のような声が聞こえてきた。
その声のした方へ右目を向けると、暗闇の中から、ぬるっとソイツは出て来た。
ヤミガラスが通常のカラスより一回り大きいくらいのサイズなのに対し、ソイツは人間より遥かに大きい、3メートルはあろうかという巨大なヤミガラスだった。
そして、いつの間にか、その巨大なヤミガラス以外のヤミガラス達はいなくなっていた。
「なるほど〜…、アンタがヤミガラス達の親玉ってことかな〜?」
『いかにも。我は“オオヤミガラス”、我らが主、ジャイビット様の命に従い、お主らを滅する為に参った』
「言葉を話す魔獣か〜…、さすがに〜、そんな情報はモモコちゃん達から聞いてなかったな〜」
『人間の言葉を理解する魔獣は多いが、話すとなれば、ごくごく一部の、限られた魔獣に限るだろうな』
「ふ〜ん、じゃあ〜、君はそのごくごく一部の〜、レアな魔獣ってわけだ〜」
『…それで、これ以上の無駄話に付き合ってやっても良いが、“加速装置”を封じた我らの手に対する対抗策は何か見つかったか?』
ふむ、どうやらこちらが、相手の“加速装置”対策に対する対策を考えていることを悟られてるみたいだ。
理屈的には、先程のオオヤミガラスの特殊な鳴き声、アレによって“タキオン粒子”が無理矢理活性化させられて、ボクの“加速装置”のリミッターが働いたということなんだろうけど、その原理が分からないから、今すぐの対処は無理そうだ。
以前、ボク達が戦った六魔皇の一人、【改造魔人】クロノッソスが、実は宇宙生命体“侵略宇宙機械生命体”で、彼の身体にはオリジナルの“タキオン粒子”が備わっていたことから、“タキオン粒子”に関する情報が魔人の一部で共有されていたのかもしれないが、まぁ、今はその辺りの事情はどうでもいいか。
要は、“加速装置”が封じられた、ってことだ。
こちらにリミッターがある以上、相手にボクの“タキオン粒子”を暴走させて自爆させる、って戦法が取られないだけマシってところかな?
「ま、それならそれでなんとかなるでしょ〜」
『作戦は決まったか?』
「別に〜、何も変わらないよ〜」
ボクは今度は左腕に仕込まれた“狙撃銃”を出し、右目の“照準器”と銃口を連動させながら言った。
「君達は〜、ここでボク達が倒す、それだけ〜」
*
ヤミガラス達をモトカに任せたボクは、腕に仕込まれた腕時計型の“加速装置”のスイッチを押し、ジャイビットへと襲いかかった。
「はぁああああっ!!」
加速の勢いもつけた渾身のパンチをジャイビットに放ったのだが、彼の目の前に張られたバリアーのようなものに弾かれ、ボクのパンチは奴に届かなかった。
「硬いな…、だけど、兄さんの盾程じゃない!」
ボクはバリアーに連続でパンチを繰り出し、バリアーを破ることに成功した。
「よしっ!今度こそ!!」
加速状態で繰り出したパンチは、今度こそジャイビットに当たるハズだったのだが、ボクのパンチは奴の体をすり抜けてしまった。
「なっ、ざ、残像!?」
本体は何処に行ったのか、確認する間もなく、残像の中から、先の尖った巨大な石片が地面の中から飛び出し、強化服を突き破って、ボクの脇腹に突き刺さった。
「あぐぅ…っ!?」
その痛みに脇腹を抑えながら膝をつくと、今度は上空から無数の魔法の矢、『シャドゥアロー』が飛んできた。
ボクは脇腹を抑えつつ、地面を転がりながら回避行動をとったが、いくつかの矢は避けきれず、ボクの体に突き刺さった。
「くぅっ!?」
ボクはなんとか片膝をつきながら立ち上がると、周囲を見回した。
幸い、体の傷はそこまで深くなく、“自己修復機能”によって止血されていく。
ジャイビットの姿は、暗闇に紛れて見えない。
というか、何故加速中のボクに攻撃が当たったのか?
それ程までにジャイビットの放つ術の速度が速いのか?
いや、さすがに速すぎる。
『どうした?自慢の“加速装置”とやらは私には通じんぞ?』
再び『シャドゥアロー』が至る方向から無数に飛んでくる。
理屈は分からないが、ボクの“加速装置”が無効化されてる…?
ボクは飛んでくる『シャドゥアロー』をなんとか躱しながら、敵の位置を探りつつ、何故ボクの加速に相手がついてきているのか考える。
仮に、ジャイビットも“加速装置”と同等の力を使えたとしても、術の方までは加速しないハズだ。
途中までは、“加速装置”による初速度とかの影響である程度の加速を得られるが、その後は空気抵抗や重力やらの影響を受けて失速し、通常の術より少し早いくらいの速度に戻るため、本来であれば、余裕で躱せるハズなのだ。
なのに、ボクに向かってくる『シャドゥアロー』は、全く減速せず、しかも何処から飛んでくるか分からないため、いくつかは避けきれず、強化服がボロボロになっていた。
ボク達の戦闘服は、改良に改良が重ねられて、並大抵の攻撃では傷がつけられないハズなんだけど、それだけ敵が強い、ということなんだろう。
術の威力もそうだけど、的確に弱所(強化服で言えば繊維と繊維の縫い目だとか、わずかな隙間とか)を狙い撃てる目とか、そういった意味での強者ということだ。
「一体、何がどうなってるんだ…!?」
『私を単なる【魔獣使い】だと侮ったかな?
一応、これでも魔王軍の幹部を名乗っているのでね、それなりには戦えるのだよ!』
侮っていたつもりは無かったけれど、でも確かに“加速装置”に頼り切っていたのは否めない。
つい先日、同じ加速の使い手である六魔皇のクロノッソスを相手にしたばかりだというのに…!
『さぁ、どうする?
“加速装置”とやらの優位性を失った今、ただのサイボーグのお前に、何が出来る?』
どうやって、ジャイビットがボクの“加速装置”に対応しているのか分からない。
分からないなら、考えても仕方が無い。
「ボク達の戦い方をするまでだ!!」
再び『シャドゥアロー』が無数に飛んでくる。
だが、ボクはそれらを避けることはせず、その場に立って、全ての攻撃を受け止めた。
『何を…っ!?』
そして、分かったことがいくつかあった。
一つは、無数に飛んでくる矢の内のおよそ半分以上は幻影だったということ。
そしてもう一つは、飛んでくる矢の方向。
一件、ランダムな方向から飛んできているようだったが、そのほとんどが幻影で、実際にボクに傷を付けたのは同一方向から飛んでくる矢のみだった。
「つまり!この先にいる!!」
ボクは足の裏の“ジェット噴射”を起動して、矢の飛んできた方角へと文字通り飛び込んだ。
“加速装置”程の速度は出せなくとも、“ジェット噴射”でも相当な速度は出せる。
果たして飛び込んだ先には、ジャイビットがいた。
『ひぃいっ!?』
「今度こそ逃さないよっ!!」
ボクはジャイビット目掛けてパンチをくらわせた。
パンチは、ジャイビットの正面に張られたバリアーを砕き、ジャイビットの頬をとらえた。
『ぐぎゃぁあっ!?』
よし!今度は残像じゃない!
予めバリアーがあることを見越して出力を上げていたのが功を奏したようだ。
「まだまだ行くぞ!!てやぁあああっ!!」
『ちっ、この脳筋女めがぁああっ!!』
本性が出たのか、少し荒い口調になったジャイビット。
ジャイビットが再び何かをしたのか、再度殴りかかったボクの拳が空を切った。
「また残像っ!?」
さすがにおかしい。
『転移』魔術にしても、音速に近い速さで移動するボクより速く、術を起動出来るわけがない。
そして、またも周囲から襲い来る無数の『シャドゥアロー』。
恐らくジャイビットは、何かしらの術を使って、速く移動しているように見せかけている、もしくはボクの動きを遅くしているのだろう。
まぁ、そんなのはどっちだって構わない。
ボクは、今度は飛んでくる矢を全て避けながら、ジャイビットのいる方向へと“ジェット噴射”で飛んでいく。
『な…っ!?我が術に気付いたのか!?』
すると、驚きの表情を浮かべながらも、自身の周囲にバリアーを展開するジャイビットがいた。
「何のことかは分からないけど、お前を倒すだけなら、別に“加速装置”なんか必要は無いんだ」
ジャイビットが何の術を使っているのか知らないけど、ボクがジャイビットの矢を全て避けた上で、ジャイビットの居場所を突き止めた方法は簡単だ。
超能力『未来視』を使ったのだ。
これは、あまり使い過ぎると、しばらく使えなくなるという欠点が分かったばかりなので、滅多なことでは使わず、ここぞという場面でのみしか使わないようにしていた。
そして、その場面が来たからこそ、ボクは『未来視』を使い、飛んでくる矢の位置と数、そしてジャイビットのいる位置を、予め知っておいたのだ。
そして仕上げとばかりにボクは、思いっきり地面を蹴って飛び上がり、右足を前に出して、飛び蹴りの姿勢になった。
『ちぃっ…!?やはりただの脳筋かっ!!
であれば、キサマの攻撃は私には当たらんっ!!
キサマには、私のいる場所が間違って認識されるっ!!』
焦っているのか、余計なことまで口走るジャイビット。
今の発言で、何となくカラクリに気が付いた。
恐らくだけど、ヤツは魔王ヤミが使ってた『認識改変』の魔術に近いものを扱えるんだろう。
それが分かったところで、ボクの腕に巻かれた時計型の“加速装置”起動スイッチに目をやると、そのスイッチが入ってなかった。
つまり、ボクは起動スイッチを押したつもりで押していなかった、起動スイッチを押したと認識改変させられていた、というわけだ。
まぁ、それが分かったところで今更だ。
ジャイビットは、ボク達には勝てない。
「忘れているようだけど、この場にいるのはボクだけじゃないんだ」
『何…?』
次の瞬間、ジャイビットの背後のバリアーを貫通して、一発の弾丸がジャイビットの頭を貫いた。
『あ……、な…っ!?』
ジャイビットが倒れたのを確認したボクは、ジャイビットを貫いた弾丸が飛んできた方向へ足を向けた。
その先には、暗闇に浮かび上がる、羽に無数の穴の開いた、でっかいヤミガラスがいた。
ボクは、今度こそ“加速装置”を起動させ、その背中に付けられた赤い印へ向けて、必殺のキックを放つのだった。
*
『ガァアアアッ!!』
オオヤミガラスの鳴き声が衝撃波となり、ボクに襲い掛かる。
ボクは、足の裏の“ジェット噴射”を起動して、衝撃波を避けながら、右目の“照準器”でオオヤミガラスに狙いを付け、左腕の狙撃銃のトリガーを引く。
『ガァアアアッ!!』
ヤミガラスは、放たれた弾丸に対し、衝撃波で軌道をそらそうとするが、無駄だ。
ボクの放った弾丸は、軌道をそれつつも、見事にオオヤミガラスの翼に命中していく。
『ぬぅう…ッ!?バカな!?何故当たるッ!?』
「ボクの狙いがいいからじゃないかな〜?」
ボクは“ジェット噴射”で小刻みに移動しながら、再び弾丸を放っていく。
それらをオオヤミガラスが、時に衝撃波、時に翼を羽ばたかせることで、軌道を少しでもそらそうとするが、それらの全ては体の何処かしらに必ず当たる。
「“加速装置”を封じたくらいで〜、ボク達に勝てるとでも思ってたのかな~?」
何故なら、ボクには超能力『未来視』があるからだ。
予め、『未来視』でオオヤミガラスの衝撃波や羽ばたきによる風の流れを知り、それらを計算に入れた上でスナイプしているから、必ず体の何処かには当たるようになっているのだ。
とはいえ、『未来視』はあまり使い過ぎると、その反動でしばらく使えなくなってしまうので、多用はしたくない。
今はオオヤミガラスの意識をそらすためにやむを得ず使用している。
『おのれ…!だが、細々と弾を我に当てたところで、核を貫かねば、我は倒せねぞ!?』
そう、魔獣ってのは、心臓や脳の他に、核というものが存在していて、高位の魔獣とかだと、核を潰さないと死なないらしい(ヤミガラス達は、雑魚魔獣だったせいか、テキトーに撃つだけでも死んでたけどね)。
そして、その核というのが魔獣の体の何処にあるかまでは、普通は分からない。
魔獣同士ならある程度その場所を感じとれるらしく、魔獣との合成獣であるハルカちゃんやサクヤ姉ちゃんも、魔獣の核を見つけられるとのこと。
そこで、魔術の天才であるモモコちゃんとユエちゃんが、そんな二人の特性を解析し、兄ちゃんとマイカ姉ちゃんの科学技術でもって、魔獣の核を見つけれる機能を、ボクの右目の”照準器”に試験的に付けてもらっていた。
これで、実際にハルカちゃんやサクヤ姉ちゃんの核は見つけられたけど、本物の魔獣相手に使うのは初めてだ。
「『核索敵機能』、起動」
ボクは右目の『核索敵機能』を起動し、オオヤミガラスの核を探す。
このことを気取られないよう、先程からオオヤミガラスに必ず当たる銃弾を放っているのだ。
致命傷になり得ないとは分かっていても、しつこく体に穴を開けられ、回復も間に合わないとなれば、オオヤミガラスも焦り出す。
そうなると、思考も狭まり、警戒が弱まって、こちらの作戦にも気付かれにくい。
そして、相手の攻撃も大雑把になり、攻撃を避けるのにほとんど労力を割く必要が無くなり、より核を探すことに集中出来るというわけだ。
『ガァアアアアアッ!!』
とうとうオオヤミガラスのイライラも頂点に達したか、狙いも付けずにただ衝撃波を放つだけの攻撃になった。
そして、ちょうどそのタイミングで、こちらも相手の核を見つけた。
そこてボクは、オオヤミガラスの背後に回り込み、右手の指先から“ペイント弾”を発射して、核のある位置に赤い印を付けた。
『貴様ッ!?何をした!?』
オオヤミガラスがこちらに振り向くが、もう遅い。
「これで、チェックメイトだよ〜!」
ボクは“照準器”を、オオヤミガラスの後方、姉ちゃんが戦っている相手であるジャイビットの頭部に合わせると、左腕のライフルの引き金を引いた。
「『電磁加速砲』、発射〜っ!!」
発射された弾丸は、音速を超える速さでオオヤミガラスの翼を撃ち抜いて飛んでいき、ジャイビットの後頭部を撃ち抜いた。
『何ぃ…ッ!?』
実は、オオヤミガラスに確実に当たる弾丸を放ち続けていたのは、気をそらすためだけじゃない。
ボクがオオヤミガラス越しに、ジャイビットを狙い撃てるよう、オオヤミガラスの位置を、弾道で誘導していたのだ。
一瞬、何が起きたか分からない様子のオオヤミガラスだったが、自身の主が殺されたと知って、頭にきたようだ。
『おのれ…ッ、よくも我が主を…ッ!!』
「心配しなくとも、すぐに後を追わせてあげるよ」
ボクは狙撃銃を構えるフリをした。
『小癪な…ッ!どれだけ速く、威力のある弾丸であっても、我は核を破壊せねば倒せ、』
オオヤミガラスが何かの攻撃をしようと構えを取ったけど、その時にはすでに“加速装置”を起動した姉ちゃんのキックが、ボクがオオヤミガラスの背中に付けた赤い印を貫き、そのまま核を破壊した。
「『電磁加速蹴り』っ!!」
姉ちゃんがボクの目の前に着地すると同時に、核を破壊されたオオヤミガラスは爆発四散した。
「姉ちゃ〜ん、ボクの技名をパクるのはよくないよ〜?
というか〜、ボクの『電磁加速蹴り』は、回し蹴りだし〜」
「ボクのは飛び蹴りなんだから、いいでしょ?
それに、代表的な技名被りはヒーローでもよくあるじゃん!」
「まぁ〜ね〜」
そんな話をしながら、ボク達はハイタッチを交わすのでした。




