第11話「“シスターズアルカディア”VS魔王軍②」
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魔王軍幹部のアジトへとやってきた我ことユエと、ユナ、ヒナ、そしてマコト姉上様とモトカ姉上様。
マコト姉上様とモトカ姉上様は、幹部の【魔獣使い】ジャイビットを相手に、一方の我ら三姉妹は彼の部下であるグサイという魔人を相手に戦闘を開始しました。
しかし、いざグサイを前にして我は違和感を覚えました。
何故なら、彼からは一切の魔力を感じなかったからです。
「あなたは、本当に魔人なのですか?」
『ああ、俺は確かに魔人として生まれた、だが、魔力を持たない特殊体質の魔人としてな』
なるほど、そういうことですか。
カナン姉上様が無限の魔力を持って生まれた特殊体質であるのに対し、彼は一切の魔力を持たずに生まれた特殊体質である、と。
「だったら、オイラの“加速装置”に対応したさっきの動きは何だったの!?」
確かに、先程ヒナが“加速装置”でジャイビットの『魔術召喚』を邪魔しようとした時、彼は加速したヒナの動きに対応していました。
あの動きが魔術によるものでない、とするなら…、
「もしや、アナタも我らと同じ…、」
『そう、肉体を機械化した、【サイボーグ魔人】だ』
「しま…っ!?」
その瞬間、我の背後に一瞬で回り込んだグサイに、我は対応しきれず、背中をかなりの勢いで蹴り飛ばされ、正面に建っていた彼らのアジトである古びた屋敷の外壁に思いっきり正面から叩き付けられました。
「ぐ…っ!?」
「ユエお姉ちゃん!?」
「ユエ姉ちゃ!?」
二人が我の元へ駆け寄ってくる気配がありましたが、その前にグサイが立ちはだかり、二人と戦闘を開始したのを背中で感じながら、我は不覚にも意識を失ってしまうのでした……
*
「ユエお姉ちゃん!?」
「ユエ姉ちゃ!?」
『おいおい、俺を無視してくれるなよ!』
ユエお姉ちゃんがグサイに蹴り飛ばされ、奴らのアジトの屋敷の外壁に叩き付けられたのを見て、ぼくとヒナちゃんはユエお姉ちゃんを助けに行こうとしましたが、その前にグサイが立ちはだかり、ぼく達の行く手をふせいできた。
「えぇい!邪魔だよ!『フレイムボゥル』っ!!」
「よくもユエ姉ちゃをっ!!てやりゃあぁあああっ!!」
対して、ぼくは炎の魔術を、ヒナちゃんは雷の呪術で“雷の棍棒”を作り出して、同時にグサイを攻撃した。
『フレイムボゥル』がグサイに直撃し爆発する中、ヒナちゃんが“雷の棍棒”の先端を長く伸ばして、爆発に巻き込まれない距離で上空へと飛び上がり、グサイの頭上めがけて棍棒を振り下ろした。
すると、ガキィイインッ!!という音と共に、攻撃をしたヒナちゃんの方が悲鳴をあげた。
「あ痛っあぁああああいっ!?!?」
ヒナちゃんは“雷の棍棒”から手を離し、両手を振りながら地上へと着地した。
「ヒナちゃん、どうしたの!?」
「どうしたもこうしたも、アイツを殴った瞬間、物凄い衝撃が手にきて、思わず棍棒離しちゃったよ!」
「物凄い衝撃って、一体何が…?」
その答えはすぐに分かった。
煙が晴れて、その中から出てきたグサイの体は一部服が焦げていたが、そこから見えていた肌は輝く銀色で、グサイ本人には傷一つついていなかったのだ。
『中々いい攻撃だったが、その程度の攻撃では俺に傷一つ付けられんぞ?
何せ、この体はただの金属ではなく、最新技術で作られたダイヤモンドよりも硬いとされる世界最高硬度の金属で出来ているのだからな!!』
そう言ってグサイが破れた服を引きちぎって、その全身を覆った硬い金属の肌をぼく達に見せつけてきた。
「な、なにそれ…!?」
「ただのサイボーグってだけじゃないわけね…」
『くくく!そういうことだ!
さて、お前達は決して傷つくことのないこの俺を相手にどう戦う!?』
う~ん、こういう頭を使うような戦い方になると、ユエお姉ちゃんの知恵が必須になるんだけど、そのユエお姉ちゃんは今……
「となると、ぼく達に出来ることは一つしかない!」
「だね!」
ぼくとヒナちゃんはアイコンタクトで意思を確認し合うと、互いに“加速装置”を起動させて、ぼくは背中から魔人の翼を生やして空に飛んでグサイから距離を取り、逆にヒナちゃんはグサイへと突撃していく。
「「攻めて攻めて攻めまくるっ!!」」
「雷の呪いよ、来たれ!『ライジングソード』!
アーンド、右腕換装!“アームソード”!!」
「雷の呪いよ、来たれ!『ライジングボール』!!
そして、『フレイムボゥル』!!」
ヒナちゃんが改造された右腕を剣に変え、左手に雷の剣を持って二刀流スタイルによる接近戦を挑み、ぼくは空中から雷の呪術と炎の魔術の二刀流で遠距離戦を挑む。
対するグサイはヒナちゃんの両剣を両手で掴みながら、両肩から生やしたカタパルトから、複数のミサイルを発射して、ぼくの放った術に当てて爆発相殺させつつ、残りの追尾式ミサイルでぼくを狙ってくる。
「それなら!『アームレーザー』!!」
ぼくは両腕をL字型にして正面に向け、腕側面に仕込まれた“レーザー発射口”から幅広のレーザーを発射し、迫りくるミサイルを全て空中で撃ち落としていく。
その間、グサイと力比べをするような形となっているヒナちゃん。
「くおおおおお…っ、硬い〜…っ!!」
『だから言っただろ!俺の体は世界最硬だって!!』
グサイはヒナちゃんの右腕の剣と左手に持った雷の剣を掴んだまま、胸部の装甲を開くと、そこからマシンガンの如く、超小型ミサイルを数十、いや数百発は発射した。
「きゃあぁあああああっ!?!?」
『ははははっ!!このままだと、お前さんが穴だらけになっちまうぜ!?』
「ヒナちゃんを離せっ!!
『フレイムアロー』『フレイムアロー』っ!!」
ぼくは魔術による炎の矢を放ってグサイの腕を狙うが、全くビクともしない。
このままだとヒナちゃんが…っ!!
「大、丈夫だよ…っ、ユナ姉ちゃ!
これでも…っ、くらえっ!!『火炎放射』っ!!」
ヒナちゃんが喉奥に仕込まれた“火炎放射器”から、グサイの胸部に仕込まれた超小型ミサイル発射装置に向けて炎を噴射した。
すると、発射装置内に仕込まれた小型ミサイルやミサイル発射機構などに引火し、爆発を起こした。
その瞬間、ヒナちゃんを掴むグサイの腕の力が弱まると、ヒナちゃんは小さくジャンプし、両足を揃えてグサイへと向けると、足裏の“ジェットエンジン”を点火させ、グサイをその勢いで引き剥がし、同時に吹き飛ばしながら脱出した。
ぼくはその機会を見逃さず、ヒナちゃんと入れ替わるようにグサイへと向かっていくと、今のぼくに使える最大威力の呪術と魔術を同時に放った。
「雷の呪いよ、我が願いに応え、彼の者を焼き尽くせ!!『全テヲ焼キ尽クス雷』ッ!!
『フレイムインフェルノ』ッ!!」
天から強烈な雷と、地面から柱のように立ち上がる猛烈な炎との挟み打ちが、グサイを襲う。
『ぐぁああああああっ!?!?』
「はぁ、はぁ…、さすがにこれだけのダメージをくらえばひとたまりもないないでしょ!?」
ぼくは、大量の魔力と、大量の呪力を同時に制御したせいで、一時的なガス欠となり、その場に膝をついた。
そこへ、ヒナちゃんがぼくに肩を貸すために戻ってきた。
「やったね、ユナ姉ちゃ!」
「うん…、だといいけど…」
グサイを覆っていた黒煙が晴れると、そこには、頭部や胸部装甲の一部、片腕などを著しく欠損した、見るも無惨な姿のグサイの姿があった。
「うわ…っ、さすがにやり過ぎたんじゃ…?」
「しょ、しょうがないじゃん!?同時に最大火力の呪術と魔術を放ったんだから、威力の調整なんて、」
『やれやれ…、まさかこの最硬の体がここまで破壊されるとは思ってもみなかったぜ…』
「「ッ!?」」
すると、グサイの体から細長いコードなようなものが無数に生えてきて、それらが次第に体の形を成していくと、あっという間に欠損していた箇所が修復され、元の無傷の姿に戻ってしまった。
「なっ、」
「治った!?」
『そうだ、最硬にして不滅の肉体、それが俺、【サイボーグ魔人】グサイだ。
そして、それだけではないぞ!』
グサイがそう言うと、ぼく達の周囲に、いつからそこにいたのか、無数の人影が現れた。
「まさか、こいつら全員…!?」
『そうだ』
『全てが俺達』
『【サイボーグ魔人】グサイだ!』
『これだけの数の俺を相手に』
『果たしてお前達だけで勝てるかな?』
『くはははははははっ!!』
グサイの勝ち誇った高笑いが周囲に反響する。
しかし、ちょうどそのタイミングで、
「解析完了しました、ユナ、ヒナ、時間稼ぎご苦労様でした」
気絶したフリをしていたユエお姉ちゃんが行動を開始した。
*
グサイに蹴り飛ばされ、屋敷の外壁に叩き付けられて意識を失っていたのは、ほんの数十秒程度でした。
我は意識を取り戻すと、グサイに傍受されないよう、ユエとヒナにのみ伝わるよう、脳波通信を介してメッセージを送りました。
『グサイの弱点を探るため、彼の体にハッキングします。
その間、我は動けなくなるので、なんとか時間を稼いで下さい』
『『了解!』』
そうして二人にグサイの相手を任せると、我は自身のサイボーグ能力“ミクロネットワーク支配”で、グサイの機械の体にハッキングし、その内部構造を探り始めました。
すると、不可解な点に気付いたのです。
彼の体のほとんど、いえ、ほぼ全てが機械仕掛けで、生身の肉体が存在していないということに。
これだけならば、脳以外を改造された完全改造人間として納得してしまったかもしれませんが、最後の最後でユナが放った術によって、脳も含めた体のほとんどを破壊された際に、外部から謎の無線接続があり、直後に体の完全修復が行われたことから、彼の正体がハッキリとしました。
「グサイ、あなたは魔力を持たない【サイボーグ魔人】なのではなく、全身機械で作られたアンドロイドですね?」
『ちっ、正体がバレたか』
『だが、バレた所でどうする?』
『俺達が不滅であるということには変わりはないぞ?』
「そのカラクリもとっくに分かってますよ。
ヒナ!この地面の下に向けて、思いっきり術を放ちなさい!!」
我は屋敷の外壁から数歩歩いた場所に立ち、地面を指差しながらヒナにそう言いました。
『ちぃっ!?』
『そうはさせるかっ!!』
グサイ達が慌ててヒナを止めようとしますが、もう遅いです。
ヒナは“加速装置”に加えて、自身に雷の呪力を纏わせて“雷化”することで、さらに加速し、こうなるとグサイの“加速装置”では最早追い付きません。
文字通り、目にも止まらぬ速さで我の示す場所へと辿り着いたヒナは、その地面、正確にはその地下に存在する施設からアンドロイドのグサイ達に電波を介して指令を送る、本物のグサイへ向けて、最大威力の呪術を放ちました。
「雷の呪いよ、我が願いに応え、彼の地を打ち砕け!!『捌キノ雷鎚』ッ!!」
右拳に雷の呪力を収束させたヒナが、地面を思いっきり殴りつけると、巨大なクレーターが出来ると共に、地下に作られていた複雑なコードや機械などで埋め尽くされた地下室が現れましたが、その中央の大きめの試験管のような中に保管されていたグサイの脳髄ごと、地下室の全てが一瞬の内に、ヒナの雷で焼き尽くされてしまいました。
「ふぅ〜…、これで終わったの?
ってか、なんで地面に術を使わせたの?なんかこの下におっきな空洞があるっぽいけど?」
出来たクレーターの端に腰掛けながら、ヒナが不安気に尋ねてきました。
何せ地下室が現れて、グサイの本体と共に焼き尽くされるまでが、ほんの一瞬の出来事であったため、術を放った本人すら、実感がわいていない状況でしょう。
しかし、それでも我の意図を察して仕事をきちんとこなしてくれる当たりは、さすがは我ら姉妹の絆、といったところでしょうか。
「ええ、無事終わったようです、グサイ本体は勿論、【サイボーグ魔人】いえ、アンドロイドのグサイ達も機能を停止していますし」
「あ、本当だ!」
「なるほど、地下室に彼らを操る本体があった、ということか!」
「ええ、ユナの言う通りです」
「え!?じゃあ、コイツらは偽物だったってこと!?」
「まぁ、厳密には少し違いますが、そのような認識で合ってますよ」
「にしてもさすがユエお姉ちゃんだね!
こんな短時間であっという間に敵の正体を見抜いちゃうんだから!」
「まぁ、漫画やアニメの知識も役に立つ、ということですね」
「「え?」」
グサイのカラクリにすぐ思い至ったのは、某世界的有名な漫画原作のアニメの、劇場オリジナル作品に出てくる某敵と似たようなシチュエーションだったから、というのはこの場ではあえて言わないでおきましょう。
ともあれ、我らの戦いは終わりましたが、まだ他の姉妹の皆さんの戦いは続いています。
とりあえずは、すぐ隣でジャイビットと戦っているマコト姉上様達の加勢へと参りましょう。
まぁ、その必要はほとんど無いようですけど、ね。




