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シスターズアルカディアSideB-Brand new Sisters-  作者: 藤本零二
第2部第1章~Brand New Days~
54/58

第10話「“シスターズアルカディア”VS魔王軍①」

*


 6月22日土曜日、夕食のために“ワールドフラワレス”のイツキちゃんの屋敷に集まったボク達。

 そこには、兄さまの母さまと、従妹いとこの陽子ちゃん、そしてもう一人知らない女の人がいた。

 銀色の長い髪に、両耳にはディフォルメされた幽霊のマスコット付のピアスをはめ、左胸の辺りにドクロのマークの入った真っ白いワンピース姿の美少女、名前を藤原零菜(れいな)、と名乗った。


 レイナさん(本人がそう呼んでほしいと言ったため)は、兄さまの母さま達の遠い親戚の知り合いらしく、しばらくボク達の家で世話になることになったらしい、のだが、



「…巧妙に隠してるけど、彼女からほんのわずかに魔力を感じます」


「うん…、素人には、気付かないレベル…、だけど」



 とユエちゃんとモモコちゃんが言うので、レイナさんは魔人なのだろう。

 チラッとマイカ姉さまとナナカ姉さまの方へ視線を向けると、



『後で皆には詳しく説明します』



 と、ナナカ姉さまから脳波通信が飛んできたので、きっと、先程まで“ワールドアクア”で兄さま達が話し合っていたことに関することなのだろう。


 ということだったので、とりあえずその場はそれ以上深くつっこまず、皆といつも通りの夕食を過ごした。

 ただ、兄さまの母さまがいたことで、いつもより若干緊張感のある夕食であったことには違いないが…




*


 そして、その日の夜。

 本来なら、今夜はボクとモモコちゃん、マコト姉さま、モトカ姉さま、アキラちゃん、アカリちゃんの六人が兄さまと一晩を過ごす夜となっていたのだが、陽子ちゃんの件もあって、延期となった。

 …少し残念だが、大切な“姉妹”の問題とあっては致し方がない。



 その陽子ちゃんの件で話があるということで、陽子ちゃんを除いたメンバーで集まっていた。

 集まると言っても、一部屋に全員という意味ではなく、異世界リモート会議というような感じで、魔術と科学の融合によって作られた異世界通信を可能としたパソコンを用いて行われた。


 今、“ワールドシルヴァネア”にはボクとマコト姉さま、モトカ姉さま、モモコちゃん、マイカ姉さま、メイコちゃん、ナナカ姉さま、ユエちゃん、ユナちゃん、ヒナちゃん、そしてムツキ君とハヅキちゃん達“ムツキハーレム”のメンバーがいる。


 残りは“ワールドアクア”と“ワールドアイラン”に別れて集まっている。

 これは、それぞれの世界に魔王軍幹部のメンバーがアジトを作って待機しているためで、彼らの目的はボク達を分断させることらしい。



『彼らは、各世界で何らかの行動を起こし、君達姉妹数名を巻き込んで足止めしている間に、本命の“ワールドアクア”で陽子ちゃんを魔王へと覚醒させる計画なんだ』



 そう説明するのは、レイナさんこと元六魔皇のヘラーナさん。

 どうやら、彼女は魔王軍幹部の動向を探るためにずっと暗躍していたらしい。



『だから、奴らに先手を取られる前に、こちらから打って出る作戦を計画しました!』



 そうして、ヘラーナさんが作戦の説明を始めた。

 作戦の詳細はここでは省くが、陽子ちゃんをこちらのタイミングであえて魔王へと覚醒させることで、魔王軍の不意をつき、さらに、こちらから魔王軍アジトへ攻め込むことで、相手の準備をさせぬ内に一網打尽にしてしまう、という計画のようだ。


 陽子ちゃんを魔王に覚醒させても大丈夫なのか、とか、そもそもどうやって魔王に覚醒させるのか、とかは本編の方で確認して欲しい。



 とりあえず、ボク達のすべきことは、“ワールドシルヴァネア”に潜伏している魔王軍達の殲滅だ。

 ヘラーナさんによると、この“ワールドシルヴァネア”に潜伏しているのは、ジャイビットとその直属の部活達で、彼らは魔獣の扱いにけている者達だという。


 ここ数日に渡り、“ワールドシルヴァネア”のキュウシュウ国に様々な魔獣を召喚しているのは、どうやら彼らの仕業のようだ。



 そこで、ジャイビットのアジトへは、マコト姉さまとモトカ姉さま、そしてユエちゃん、ユナちゃん、ヒナちゃんの五人が向かい、ボクとモモコちゃん、そしてマイカ姉さまとメイコちゃん、ナナカ姉さま、そしてムツキ君達は、街中に魔獣を遠隔召喚された場合に対処するために待機することになったのだった。



 そして、ちょうど日付が変わった頃、ヘラーナさんからの合図となるブザー音がクルセイド研究所内に鳴り響いた。

 このブザー音が鳴ったということは、陽子ちゃんが魔王として覚醒した、ということだ。



「では、作戦の開始です!マコトちゃん、モトカちゃん、ユエちゃん、ユナちゃん、ヒナちゃん!」


「「「「「了解っ!!」」」」」



 マイカ姉さまの指示で、ユエちゃんが“転移魔法陣”を起動させ、その陣の上に乗ったマコト姉さま達はジャイビット達のいるアジトへと転移していくのだった。




*


 ユエの“転移魔法陣”で、魔王軍幹部ジャイビットのいるアジトへとやって来たボクことマコトと、モトカ、ユエ、ユナ、ヒナの五人。


 そこはホクヨウ県とナンヨウ県の、県境を走る山の中にある古い家だった。

 その家の周囲だけが平地となっていて、かつては畑などが広がっていたのだろうと思われる場所は、今や見る影もない荒れ野原となっていた。



「わずかな魔力反応有り、どうやらヘラーナさんの情報は正しかったようです」



 そう言ったのはユエだ。

 魔人であるユエは、魔力を感じ取ることが出来る。



「ということは、あの家の中に魔人、ジャイビットがいるんだね?」


「はい、マコト姉上様」


「ユエちゃんが魔力を感じ取れた、ってことは~、当然~、」



 モトカが言い終わるより早く、その古い家の中から、二人の人物が出てきた。



「…相手も~、ユエちゃんの魔力を感じ取れる、ってことだよね~」



『お前達っ、“シスターズアルカディア”のっ!?何故ここに!?』



 その内の一人、肩にカラスのような姿をした魔獣を乗せた男が、驚いた顔をしながらそう言った。



「あなたが魔王軍幹部のジャイビットですね?

 失礼ながら、我らに仇なすあなた方を排除するために参りました」


『そんなことは分かっている!

 それよりも、何故貴様らが我々がここに潜んでいることを知っているのだ!?』


「そんなの、ヘラッ、」


「ユナ、あまりペラペラこちらの情報を口にするべきではありませんよ」


「むぐーっ!?」



 ヘラーナのことをうっかり口にしそうになったユナの口を物理的にふさいだユエ。

 しかし、それだけでジャイビットは理解したのだろう。

 苦虫を噛み潰したような顔をしながら、こう続けた。



『なるほど、ヘラーナの情報ですか…

 よもや、この場所まで突き止められているとは、想定以上に厄介な相手ですね…

 こうなれば、仕方ありません』



 すると、ジャイビットの両腕が禍々しく光った、いや、良く見れば両腕に描かれた複雑な模様が光を発していた。

 その正体にユエとユナが同時に気付いたようだ。



「あれはっ!?」


「『魔獣召喚』の魔法陣!?」


「させないよっ!!」



 二人の反応に、咄嗟に動いたのはヒナだった。

 ヒナは、自身の腕に巻かれた時計型の“加速装置”を起動させ、ジャイビットを攻撃しようとするが、その前に立ちはだかったもう一人の男によって阻まれた。



『そうはさせんっ!!』


「ウソっ!?オイラの動きに反応した…!?」


『良くやった、グサイっ!!

 おかげで、魔法陣は起動し、『遠隔召喚』によって、我が“使い魔”達がホクヨウ県の各地に召喚された!!』


「くっ…!ヒナ、一度戻って下さい!」


「う、うん!」



 グサイと呼ばれた魔人と組み合っていたヒナは、一度グサイから離れてボク達の元へと戻ってきた。



『さて、予定とは違いましたが、我が“使い魔”達がここより遠い地に召喚され、我が意思のもと破壊活動を開始しましたが、戻らなくても良いのですか?』


「それなら心配いらないよ~」


『何?』


「うん、モトカの言う通り、ボク達には心強い姉妹達がまだいるんだからね」


『なるほど、確かにその通りでしたね』


「ですから、我らは我らの役目を果たすだけです」


「ぼく達の役目は、」


「ここでお前達を倒すことだっ!!」


『その意気や良し!ならば、かかってくるがよい!』


『我が【魔獣使い】としての実力、とくと思い知れ!』



 こうして、ボク達とジャイビット、そしてグサイとの戦いが始まった。




*


 クルセイド研究所に警報音が鳴り響いた。



「ホクヨウ県モジ市、サルハミ地区とダイリ地区に魔獣出現!

 モニターに映すわ!」



 マイカ姉さまがパソコンを操作して、部屋のモニターに二画面で映し出された映像には、巨大な薔薇のような魔獣と、複数の翼竜のような見た目の魔獣と、それを従えているかのような巨大な二本足の魔獣の姿があった。

 その姿を見て、モモコちゃんが口を開いた。



「サルハミ地区の奴は、“ビランテ”の亜種…、だと思う。

 ダイリ地区の奴は、“ギャラス”と…、その変異種である“イレギュラーギャラス”、通称“イラス”…」


「分かったわ。

 じゃあ、ミライちゃんとモモコちゃんはサルハミ地区のビランテ亜種の方を頼めるかしら?」


「「了解!」」


「それから、ダイリ地区のギャラスの大群はムツキ君達にお願いします」


「「「「「了解!」」」」」


「そして、イラスの方をナナカちゃんとメイコちゃんにお願いします」


「「了解!」」



 マイカ姉さまの指示に従い、ボク達は現場へと向かう。

 


「じゃあ、行こうか、モモコちゃん!」


「うん…!」


「あ!ミライちゃん達は、第2研究所の方へ転移してから移動した方が早いかも!」


「あ、そうか!サルハミ地区へはここより第2研究所の方が距離的に近いもんね!」



 ボクとモモコちゃんは、マイカ姉さまに言われた通り、クルセイド研究所から一度クルセイド第2研究所へと“転移魔法陣”を使って移動し、そこから外に出て、両足に仕込まれた“ジェット噴射”で空を飛び、サルハミ地区へと向かった。


 後になって、モモコちゃんの『転移』魔術を使った方が早かったのでは?と気付いたが、実はこの時のモモコちゃんは、()()()使()()()()()()ということを、その時のボクはまだ知らなかった。



 サルハミ地区へと到着すると、そこには夜の暗闇の中で、不気味に発光する高さ10メートル程の巨大な薔薇のような花の木が生えていて、そこから伸びた触手が、周辺の田んぼや畑を荒らしていた。

 この辺りには建物が比較的少ないのが幸いして、建物や人的被害はほとんど無さそうだ。



「さて、まさか、再びアイツと戦うことになるなんてね…」



 ボクは前世の苦い記憶を思い出していた。



「そうか、ミライにとって…、アイツは、因縁の相手…」



 魔獣ビランテ。

 それは、前世のボクや兄さま、そしてサクヤ姉さまにとっての因縁の相手だ。



ボク(ミラ)の目の前でサクヤ(サク)姉さまを補食した、憎き魔獣、ビランテ…ッ!!」


「あ、ミライっ、」



 ボクは、奴を射程圏に捉えるや否や、勢いのままに精霊術を放った。



「雷の精よ、来たれ!!『サンダーアロー』っ!!」



 ボクが放った雷の矢は、ビランテの巨大な幹の中心に穴を開けたが、その穴は瞬時に再生した。



「ちぃ…っ、相変わらず再生力の早い!」


「み、ミライ!落ち着い、」


「もう一度!雷の精よ、来たれ!!『サンダーアロー』!!」



 今度は二本同時に雷の矢を放ったが、それらは触手によって打ち落とされた。



「くっ…!?」


「ミライ、落ち着いて…っ!!

 気持ちは分かるけど、」



 その時のボクは、モモコちゃんの制止も聞けない程に逆上していた。

 モニターで見た時は、落ち着けているつもりだったんだけど、実際に目の前にして、あの時の感覚が、怒りが、悲しみが蘇ってしまったせいかもしれない。



『その程度の術で、我が倒せるとでも…?』


「何ですって…!?」



 その時、ビランテの中から声が聞こえてきた、と思うと、ビランテの幹がうねうねと動き始め、やがてその幹に人、いや、魔人の姿が浮かび上がってきた。



「あんたは…?」


『我が名はローザンヌ、六魔皇が一人にして、【キメラ魔人】と呼ばれし者である…』


「なるほど、あんたが産み出したビランテのせいで、サクヤ(サク)姉さまが…っ!!」


『ほう、我が娘である“ビランテサク”のことを知っているのか?

 ……ああ、なるほど、お前はあの時にいた女精霊術師の転生体か』


「待って、ミライ…!

 ローザンヌは、“ビランテローザンヌ”は…、魔王ヤミとの戦いの際に、セイラによって…、消滅した、って…!」


『消滅したのは“オリジナル”の方、我は“ビランテローザンヌ”のコアをコピーした存在、

 そして、ジャイビット様、ひいては新たなる魔王様に仕える、忠実なるしもべとして蘇ったのだ!!』


「…ミライ、とりあえず落ち着いて、相手の、」


「ごちゃごちゃごちゃごちゃと…、ご託はいいから、」



 ビランテローザンヌの言葉も、モモコちゃんの言葉も、今のボクの耳には届かなかった。



「さっさと、このボクに殺されなさいっ!!」



 今のボクには、ただ姉さまの敵討ちと、兄さまに姉さまを殺させた報いを受けさせるために、ビランテローザンヌを殺すことしか頭になかった。




*


 ダイリ地区に出現したギャラスの大群と、その親玉であるイラスっていう魔獣を倒すために、わたしことメイコとナナカ姉ちゃん、そしてムツキ君達ハーレムメンバーが出撃することになった。


 出撃の前に、わたしはマイカ姉ちゃんに告げた。



「マイカ姉ちゃん、早速、」


「ええ、分かってるわ!」



 皆まで言わなくとも伝わったようで、マイカ姉ちゃんがわたしに近付き、耳たぶに付けた“疑似汎用型乙女石一型フェイクマルチプルアイプロトワン”にキスをした。

 そして、マイカ姉ちゃんがこう続ける。



「“疑似汎用型乙女石一型フェイクマルチプルアイプロトワン”、起動承認!」


「起動承認、確認!」



 “疑似汎用型乙女石一型フェイクマルチプルアイプロトワン”が起動したのを確認すると、こう叫んだ。



「『武装化ヴァルキライズ』ッ!!」



 すると、わたしの全身を力が駆け巡り、血液が沸騰するような感覚と共に、全身に戦装束ヴァルキリーアーマーが纏われていく。

 赤を基調とした、白い一本線が各プレートに走ったデザインの、胸元は大きく開いたビキニアーマーのような胸プレート、腰には結び目の下側がテールのように膝下まで伸びた大きなリボン、背中には菱形の羽、両手には肘の少し上から掌までを覆うアームカバー、両足には股下10センチメートル下から全体を覆うロングブーツという、戦装束ヴァルキリーアーマーだ。



「わ!メイコ姉さん、カッコいいね!」


「ふふん、そうでしょ、そうでしょ♪」



 ムツキ君に褒められてなかなかいい気分なわたし。



「さて、では改めてメイコちゃんとナナカちゃんにはイラスの討伐を、

 ムツキ君達にはギャラスの群れの討伐をお願いします。

 ただ、皆は魔獣との戦いはほぼ初めてでしょうから、くれぐれも無理はしないよう。

 なお、両魔獣に関するデータは、ユエちゃん達がまとめてくれたデータベースから調べて、随時私が通信で伝えますので、脳波通信のチャンネルを合わせておいて下さい」


「「「「「了解っ!」」」」」

 

「では、皆さん、出撃!」



 こうしてわたし達はクルセイド研究所を出て、ダイリ地区へと向かうのでした。

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