表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シスターズアルカディアSideB-Brand new Sisters-  作者: 藤本零二
第2部第1章~Brand New Days~
52/58

第8話「“疑似戦乙女”」

*


 6月19日水曜日、実力試験当日となった。

 試験は国語、数学(数学Ⅱと数学B)、理科(生物と物理)、社会(国内史とキュウシュウ地理)の四科目で、国語だけが100点満点で残りが200点満点の、合計700点満点となる。


 ボク達姉妹の中では、メイコちゃんとマコト姉さまが勉強を苦手としていて、主にこの二人にボク達が勉強を教えながら自分の勉強もする、という感じになっていた。

 マイカ姉さまは、それらに加えてアスカさんやメイコちゃんから何やら頼まれ事をされたみたいで、そっちの方も平行して作業をしていた。

 元々マイカ姉さまは高校に通う必要が無いくらいの知識を持っていたので、今さら勉強をする必要はない(現に前回の中間試験では全教科満点だった)というのはある。

 だが、それにしても色々と抱え込み過ぎじゃないのかと心配になったが、



「これでも、前世の頃に比べたら全然楽な方よ?

 あの頃はヨウ君(ヨウ博士)の研究の手伝いに、身の回りの世話に、マコト(マコ)ゃんとモトカ(モカ)ちゃんのお世話もしてたから」


「「あの当時は本当にお世話になりました…」~…」


「ううん、いいのよ、好きでやってたことだし。

 だけど今は、家のことはナナカちゃんや、メイさん達メイドさん達がよくしてくれてるから、むしろこれでも暇な方なのよ」



 と本気で言ってるらしいマイカ姉さま。

 マイカ姉さまは、尽くす姉さん女房タイプでありながら、仕事もバリバリこなすという、引きこもり男性からすると理想的すぎる女性だな…



 それはともかくとして、マコト姉さまだけが若干不安要素となっていた実力試験だが、結果だけを見れば、無事に乗り越えることが出来た。


 試験の結果は翌日すぐに分かり、順位も発表された。

 学年人数が25人しかいない上に、採点も全てAIが行うから、試験当日の夜には結果が分かるのだと言う。



 その結果を、試験の成績順に発表していこうと思う(なお名前の前の数字は学年順位です)。



①マイカ 国100/数200/理200/社200/計700点



ミライ「さすがマイカ姉さま、またも満点で文句無しの学年1位ですね!」


マイカ「ふふ、ありがと」


メイコ「()()()もやってくれながら、これって、本当にスゴい…!」


マイカ「そんなこと無いわ、普通よ、普通。

    あ、それでメイコちゃん、()()()に関して、今夜お話があるんだけど、時間大丈夫?」


メイコ「あ、うん、大丈夫だよ!」


マコト「二人は一体何を企んでるの?」


マイカ・メイコ「「今はまだ秘密♪」」



②ミライ 国91/数200/理200/社186/計677点



モモコ「学年2位、おめでと…、ミライ…!」


ミライ「うん、ありがと、モモコちゃん!」



③モトカ 国80/数200/理200/社196/計676点



マコト「そして、学年3位はモトカだね!」


モトカ「くぅ~、あと1点届かなかったか~…!」


モモコ「ミライと、苦手科目が…、逆になってるの、面白い…」


ミライ「いやー、どうしても元の(“ワールド)世界(フラワレス”)と、この(“ワールド)世界(シルヴァネア”)の歴史や地理がごっちゃになっちゃってね…」


モトカ「どうにも~、作者の感情は何か~?とか聞かれても~、ピンと来なくてね~…」


マコト「分かる!!」


モモコ「マコトは、それ以前の問題…」



⑦ナナカ 国63/数200/理200/社200/計663点



メイコ「ナナカ姉ちゃんは学年7位だね!」


マイカ「ナナカちゃんだけに?」


ナナカ「狙ったわけではないんだけど…」


ムツキ「というか、三教科満点なのに…、」


ハヅキ「国語の点数が…」


ナナカ「皆さん(姉妹)の気持ちなんかは分かるようになってきたんだけど…、まだまだ人の気持ちには難しい点が多々ありますね…」


メイコ「最近は忘れがちだったけど、ナナカ姉ちゃんは一応アンドロイド型サイボーグなんだよね、そういえば…」



⑩モモコ 国83/数200/理196/社172/計651点



メイコ「というか、ここまで皆当たり前のように数学で満点取ってるよね…」


ミライ「姉妹の中に数学の天才がいるからね…」


モモコ「数学だけは、カズヒに負けたくない…」


ナナカ「わ、私はアンドロイドなので、計算が得意ですから…」



⑪ハヅキ 国78/数189/理192/社184/計643点



ムツキ「ハヅキ姉さん、学年11位おめでとう!」


ハヅキ「ありがと、ムツキ、…と言っても25人中の11位だから、そこまで大したことは無いけどね、ムツキハーレムのメンバーではミナにも負けちゃったし…」


ミライ「ちなみにミナさんは学年4位でしたね。

    ボク達が編入するまでは、ずっと学年1位だったみたいですけど、前回の中間試験で学年3位になって、」


マコト「今回が4位か、そりゃさぞ悔しがってるだろうね~…」


ハヅキ「それが、『今は理想の弟が出来たので、試験なんて二の次なのだよ』だそうで…」


ミライ「一人っ子なのに、ブラコンこじらせてたみたいだから…」


ムツキ「あははは…」


マコト「で、当のムツキは、」



⑫ムツキ 国83/数181/理188/社188/計640点

 


ムツキ「なんとか、半分以内ってところですかね…」


ハヅキ「いやいや、十分だよムツキは!」


メイコ「そうそう、全教科八割超えで真ん中の成績って、普通に考えたらおかしいから。

    どんだけ上位の成績良いの!って話だから」


ムツキ「でも、家族きょうだいの中では下から三番目ですし…」


メイコ「それは、ムツキ君より成績悪いわたしへの皮肉かな~?」


ムツキ「そ、そんな、メイコちゃんのこと悪く言ってるわけじゃっ!?」


モトカ「そいや~、今更だけど~、ムツキ君のが~、メイコちゃんよりも~、年上なんだよね~?」


モモコ「なのに…、兄っぽく、無い…」


メイコ「んー、なんか、ムツキ君は兄さんって感じがしないんだよねー?どっちかって言うと弟みたいな?」


ムツキ「うぅ…、僕も、早く兄さんみたいな、立派な男性ひとになって、メイコちゃんに兄扱いされるようになるぞ!」


ハヅキ「大丈夫だよ、ムツキは今のままで十分カッコいいから♪」


ムツキ「ね、姉さん…!」


ミライ「えー、では、残る二人の順位の発表となるわけですが…、」


モトカ「残ったのは~、」


マコト「ボクと、」


メイコ「わたしね」


ミライ「では、二人の成績は同時に見ていきましょうか」



⑱メイコ 国74/数165/理158/社140/計537点



⑳マコト 国62/数143/理124/社180/計509点



マコト「やった!学年最下位は回避できた!!」


モトカ「それに赤点もね~」


マイカ「メイコちゃんも無事、全教科赤点回避ね」


メイコ「ま、なんとかね…

    長期休暇はやりたいこととあるし、出来るだけ成績不振による補習とかは受けたくなかったから頑張ったわ」


マコト「というか、メイコでも普通に全教科七割超えなのに下から数えた方が早いって、なんなの?」


ミライ「元々、今の二年生は成績の良い人達が集まってたみたいだけど、私達が編入したことで、さらに平均点が上がっちゃったみたいね」


モモコ「何だかんだで、マコトも…、六割超えだし、全然良い方…、だと思う」


モトカ「だよね~、最悪姉ちゃんは~、全教科赤点かも~って、覚悟してたくらいだし~」


マコト「いや、本当に…

    皆が色々教えてくれたおかげだよ、ありがと!」



 ……とまぁ、こんな感じで、色々心配事はあったものの、終わってみれば波乱もなく、無難に実力試験は終わったのでした。




*


 実力試験の結果発表があった日の夜、わたしことメイコはマイカ姉に呼ばれて“クルセイド研究所”のマイカ姉ちゃんの私室兼専用研究室に呼ばれた。


 部屋に入ると、そこにはマイカ姉ちゃんの他に、アニ君とツキヒちゃんもいた。



「あれ、アニ君達もいたんだ!」


「ああ、“疑似汎用型乙女石一型フェイクマルチプルアイプロトワン”の作成には俺も関わったからな、何か不具合があった時にすぐ対処出来るよう、」


「え?今何て言った?ふぇい…?」


「“疑似汎用型乙女石一型フェイクマルチプルアイプロトワン”、まぁ、難しい単語を並べてるだけで、要は通常の“乙女石ヴァルキリーアイ”、正式名称“汎用型乙女石マルチプルヴァルキリーアイ”を擬似的に再現した物の試作型1号というわけだ」



 通常の“戦乙女ヴァルキリー”が使用している“乙女石ヴァルキリーアイ”には、“汎用型乙女石マルチプルヴァルキリーアイ”という正式名称が付けられている。

 これに対して、特定の個人にしか使えない特殊な“乙女石ヴァルキリーアイ”、ツキヒちゃんの“水皇石アクアブルー”や、わたしの“炎帝石ファイアレッド”のような“乙女石ヴァルキリーアイ”のことを、“特殊型乙女石インディヴィルアイ”という正式名称があったりするのだが、いちいち面倒くさいので、普段は“乙女石ヴァルキリーアイ”とまとめて呼んでいる。



「それはともかく、そのフェイクなんちゃらってのはもう完成した、ってことなの?」



 わたしがマイカ姉ちゃんに尋ねると、こう返ってきた。



「ヨウ君の手伝いもあって一応はね。

 だけど、あくまで試作型だから、完成形にはほど遠いけどね」


「いやいや、それでも十分だよ!というか、まさかこんなに早く出来るとも思ってなかったし…!」



 正直、サンプルが“予科乙女石プレヴァルキリーアイ”しかなくて、それを制御するための“汎用主人石オルタマスターズアイ”が無いから、そこから制御出来る“乙女石ヴァルキリーアイ”が完成するとは思ってなかったし、完成しても一ヶ月以上は最低でもかかると思ってた。



「本来の“主人石マスターズアイ”ってのは、分かりやすく言えば“乙女石ヴァルキリーアイ”を起動するための純正リモコンみたいなもんだ。

 で、“汎用主人石オルタマスターズアイ”ってのは、純正じゃない、機能を制限した汎用リモコンみたいなイメージだな、厳密には少し違うけど。

 だから、“予科乙女石プレヴァルキリーアイ”を起動するための“汎用主人石オルタマスターズアイ”を作ること事態はそんなに難しくないんだよ」



 アニ君がそんなことを言うが、いや、“そんなに難しくない”ことは無いと思う!

 隣にいたツキヒちゃんを見ると「いや、絶対そんなわけなかろーもん…」って顔してたから、やっぱり絶対難しいんじゃん!!

 科学者、それも超天才科学者クラスの知能を持ったアニ君とマイカ姉ちゃんだからこそ、“そんなに難しくない”って言えるんだと思う…



「とはいえ、単に“予科乙女石プレヴァルキリーアイ”を使えるようにするだけじゃ、メイコも納得いかないだろうし、

 “炎帝石ファイアレッド”程の出力は無理でも、最低限“汎用型乙女石マルチプルヴァルキリーアイ”程度の出力は出せるよう、二つの“予科乙女石プレヴァルキリーアイ”を合わせて作ったのが、この“疑似汎用型乙女石一型フェイクマルチプルアイプロトワン”ってわけだ」


「ちなみに、残り二つは予備として残してるわ。

 “疑似汎用型乙女石一型フェイクマルチプルアイプロトワン”に不具合があった場合とか、よりバージョンアップさせた次世代型を作るためにもね」



 二つの“予科乙女石プレヴァルキリーアイ”を合体させるとか、もうわけが分からないよ!

 この二人、本当に超天才科学者なんだな…

 というか、そもそものこと忘れてたけど“戦乙女ヴァルキリー”の技術は“ワールドカシミウラ”の技術(厳密には“侵略宇宙機械生命体ヴァイスターエクストライフ”の技術)で、この二人は“ワールドシルヴァネア”における科学者(アニ様の“ワールドカシミウラ”における前世は、“戦乙女ヴァルキリー”の“主人マスター”であって、“乙女石ヴァルキリーアイ”の仕組みなどに関する詳細な知識とかは無かったハズ)で、全然技術体系の違う仕組みをよくこんな短時間で解析して、改造まで出来たな…


 そのことを二人に問うと、



「「まぁ、この世界を構築する科学は全世界パラレルワールド共通だからね」」


「いや、確かにその通りやろーけど、そーいう問題でもなかろーもん…」


「いや、ツキヒちゃんの言う通りだよ…

 でもまぁ、無茶を言ったのはこっちだし、細かいことは置いておいて、忙しい中ありがとね!」


「ううん、もう一個の方の問題の合間にやってたから、いい気分転換にもなったしね!」


「もう一個の方の問題って、アスカさんから何か頼まれてたこと?」



 マイカ姉ちゃんが、アスカさんから何かの仕事を受けて色々動いていたことは、姉妹の全員が知っていたが、具体的に何をしているかまでは知らされていなかった。

 その件に関して知っているとすれば、同じように一緒に動いていたアニ君と、レイヤ姉ちゃんくらい?



「ええ。

 まぁ、そっちの方もあと少しで何とかなりそうだから、全て上手くいったら皆にもきちんと話すわ」


「ま、とりあえず今はこっちの“疑似汎用型乙女石一型フェイクマルチプルアイプロトワン”のテストからだ。

 出来れば広い場所を使いたいから、一度クルセイド第2研究所に転移して、そこの裏山を使おう。

 アスカさんには事前に許可ももらってるから、余程やらかさない限りは大丈夫のハズだ」


「ま、万が一メイコちゃんが暴走した時のために、ウチもおるけん、安心しとき!」



 というわけで、わたし達はクルセイド研究所内に設置されている“転移魔方陣”を使ってクルセイド第2研究所へと向かい、そのまま外へ出て、研究所裏の山の方へと向かった。



「さて、じゃあこれがメイコの“疑似汎用型乙女石一型フェイクマルチプルアイプロトワン”だ」



 アニ君に渡された、親指の爪くらいの大きさの赤く輝く石、これこそわたしに“戦乙女ヴァルキリー”としての力を与えてくれる“疑似汎用型乙女石一型フェイクマルチプルアイプロトワン”だ。

 石はイヤリングになっているので、わたしは受け取ったそれを、左耳に付けた。



「で、マイカ姉ちゃんにはこれを」



 アニ君がそう言ってマイカ姉ちゃんに渡したのは、指輪上に加工された赤い石だった。



「それがこの“乙女石ヴァルキリーアイ”の“主人石マスターズアイ”なの?」


「ええ、“疑似汎用主人石フェイクオルタマスターズアイ”と呼んでるわ。

 それじゃあ、早速だけど、メイコちゃん、私と契約してくれる?」


「もっちろん!」



 わたしが“戦乙女ヴァルキリー”の力を欲したもう一つの理由は、マイカ姉ちゃんにわたしの“主人マスター”となってもらうことだった。

 現時点で、わたし達姉妹の中で、マイカ姉ちゃんだけが戦うための力を持っておらず、万が一何かあった時、まともに自衛も出来ない状態だ。


 でも、わたしと“戦乙女ヴァルキリー”契約することで、何かあれば“主人マスター”権限ですぐに、わたしをマイカ姉ちゃんの側に召喚出来るし、『武具化アーミライズ』することで、わたしはマイカ姉ちゃんの力となれる。


 そうした理由については、あえて言わなかったのだが、頭のいいマイカ姉ちゃんのことだから、気付いていたのかもしれない。

 だから、わたしが頼む前に、自らわたしの“主人マスター”となってくれると言ってくれたんだと思う(ちなみに、“主人マスター”は二人以上の“戦乙女ヴァルキリー”と契約することも一応は可能らしいので、わたしがアニ君のもう一人の“戦乙女ヴァルキリー”になることも出来るのだ)。



 マイカ姉ちゃんが“主人石マスターズアイ”(面倒くさいのでもうそう呼びます)を左手の薬指にはめた。



「じゃあ、契約するわね?」


「うん、お願いします!」



 わたしがそう言うと、マイカ姉ちゃんがわたしの左耳に付けた“乙女石ヴァルキリーアイ”(面倒くさいので(以下略))にキスをした。

 お返しに、今度はわたしがマイカ姉ちゃんの左手薬指にはめられた“主人石マスターズアイ”にキスをして契約完了となる。



「これで契約完了なのね?」


「うん、そうだよ」


「じゃあ、続いて起動テストね。

 まずは『武装化ヴァルキライズ』からだけど、もう一度“疑似汎用型乙女石一型フェイクマルチプルアイプロトワン”にキスをすればいいのよね?」


「うん、お願いします!」



 マイカ姉ちゃんが、再びわたしの“乙女石ヴァルキリーアイ”にキスをした。



「“疑似汎用型乙女石一型フェイクマルチプルアイプロトワン”、起動承認!」


「起動承認、確認!」



 わたしが“乙女石ヴァルキリーアイ”が起動したことを感じると、一度目を閉じ、深呼吸をした。


 そして目を開けて、こう叫んだ。



「『武装化ヴァルキライズ』ッ!!」



 すると、わたしの全身に力が駆け巡り、血液が沸騰するような感覚と共に、全身に戦装束ヴァルキリーアーマーが纏われていくのが分かった。


 戦装束ヴァルキリーアーマーの基本的なデザインは、胸元が大きく開いたビキニアーマーのような胸プレートに、腰には大きなリボン(ただし、結び目の下側はテールのように膝下まで伸びている)、背中には菱形の羽、両手には肘の少し上から掌までを覆うアームカバー、両足には股下10センチメートル下から全体を覆うロングブーツというデザインになっていて、あとは個人ごとに色が違っていたり、装飾品が付いていたりする。


 わたしの今纏っている戦装束ヴァルキリーアーマーは、赤を基調に、白い一本線が各プレートに走っている。

 前世のわたしが使っていた“炎帝石ファイアレッド”のものとほぼ同じデザインだが、“炎帝石ファイアレッド”の戦装束ヴァルキリーアーマーは、線の色が黄色くて、より複雑な模様を描いていたりと、全体的に少し派手さがあった。



「おお、なかなか似合ってるじゃないか!」


「本当っ!?ありがと!」



 アニ君に褒められるのはなかなか気分がいい♪



「メイコちゃん、何か違和感とか無いかしら?」


「んー?今のところは問題なさそうかな?」


「そっか、良かった!

 じゃあ、とりあえず“疑似汎用型乙女石一型フェイクマルチプルアイプロトワン”の起動テストはオッケーってことで、

 次は“疑似戦乙女ヴァルキリーフェイク”戦闘動作テストを行おうと思うけど、大丈夫?」


「うん、いいよ!」


「じゃあ、ツキヒちゃん、お願い出来る?」


「オッケー!ヨウ君!」


「ああ!」



 そして、今度はアニ君がツキヒちゃんの左耳に付けられた“乙女石ヴァルキリーアイ”にキスをした。



「“水皇石アクアブルー”、起動承認!」


「起動承認、オッケー!」



 ツキヒちゃんが一度目を閉じ、深呼吸をし、目を開けると同時に叫んだ。



「『武装化ヴァルキライズ』ッ!!」



 すると、ツキヒちゃんの全身が光り輝き、戦装束ヴァルキリーアーマーが装着されていく。

 同時に、かけていたメガネは左目だけを覆うモノクルに変化し、三つ編みがほどけて胸の辺りまで伸びたロングヘアーとなり、タレ目だった瞳がややツリ目に変わる。


 光が収まり、ツキヒちゃんの戦装束ヴァルキリーアーマーが姿を見せた。

 わたしのとは色違いの、全体が深蒼しんそう戦装束ヴァルキリーアーマー、【水皇石アクアブルー戦乙女ヴァルキリー】の爆誕だ。



「っしゃあ!よぉ、フィオナ、いや、今はメイコか、メイコの戦装束ヴァルキリーアーマー姿を見るんは久し振りやね!」


「…相変わらずだね、変身すると性格がガラっと変わるその性質は」



 普段の真面目優等生なツキヒちゃんが、“戦乙女ヴァルキリー”に変身すると急に荒々しい不良っぽい口調になるのは、知っていても慣れないな~…



「あぁん?悪ぃか?

 ウチに限らず、ほとんどの“戦乙女ヴァルキリー”が、こんな感じやん?むしろ、変わらんメイコの方が珍しかろーもん」


「まぁ、そうなんやけど、ツキヒちゃんの場合は極端なんよ!」


「は、話には聞いてたけど、本当にツキヒちゃん、なの…?」



 マイカ姉ちゃんがツキヒちゃんのあまりの変貌ぶりに動揺してる。

 わたしも、若干ツキヒちゃんの勢いに釣られて方言訛りが出ちゃってるし。



「見ての通り、ウチはウチやん!

 それ以外の誰に見えると?」


「いや…、うん、まぁ、いいわ!

 それじゃあ、とりあえず軽く模擬戦みたいなのをやってもらえるかしら?

 二人とも、準備はいい?」


「ウチはいつでもオッケー!」


「わたしも大丈夫だよ!」


「うん、じゃあ、始めて!」


「っしゃあ!本気でいくけん、覚悟しぃっ!!」


「ちょっ、あくまでもわたしの戦闘動作テストやってこと忘れんとってよ!?」



 と、そんな感じでツキヒちゃんとの模擬戦が始まるのでした。




*


 その後、ツキヒちゃんとの模擬戦と、お互いに『武具化アーミライズ』しての模擬戦を一時間程度行い、『武装化ヴァルキライズ』を解除したわたし達。


 模擬戦だって言うのに、ツキヒちゃんがわりと本気でわたしを倒しにかかってくるもんだから、こっちもかなりの本気を出しちゃったよ…



「は~…、つ、疲れた…」


「いやー、さすがメイコちゃんやね!

 まさか、その石(疑似汎用型乙女石一型)で、ウチ(水皇石)の六割本気についてこれるやなんて…!」


「ツキヒちゃんのクセとかよく知ってるわたしじゃなかったら、多分一分ともってないよ…」


「やろうねー!」



 いや、「やろうねー!」じゃねぇよ!こっちはマジで何度か死ぬかと思ったんだぞ!?

 “水皇石アクアブルー”の戦装束ヴァルキリーアーマーよりも、数段劣る戦装束ヴァルキリーアーマーなんだからね、こっちは!?



「…と、とりあえず、最低限の戦闘動作と、『武具化アーミライズ』による肉体変化及び戦闘動作などは、特に問題無さそうね」


「だね!正直、普通の“乙女石ヴァルキリーアイ”で変身したのとほとんど変わらないくらいの性能だったと思うよ!」


「にしても元々は出力の低い“予科乙女石プレヴァルキリーアイ”なんやろ?

 よー、これだけの性能にまで仕上げたねー…」


「ああ、そうだな。

 二つを合わせて一つ分にしたから、その分出力は上がってるわけだが、いくつか欠点もある」


「欠点?何かあったかな…?」


「今回は短時間でしか起動しなかったから特に問題は無かったけど、

 長時間使用は想定してないから、時間経過と共に、戦装束ヴァルキリーアーマーの耐久値が下がっていくのよ」


「それと、短時間でも急激なエネルギー消費を過度に行えば、同様の現象が起こりうるな。

 といっても、今回の模擬戦程度のエネルギー消費であれば、あと二、三時間はもつと思うが…」



 それならほとんど問題無いんじゃないかな?

 これだけの戦闘を行う機会はそうそう無い、と思いたい。

 


「ま、稼働時間の長期化については今後の課題として、少しずつアップデートしていくつもりだから安心してて!」


「うん、ありがと、マイカ姉ちゃん!」


「まぁ、それもメイコが“炎帝石ファイアレッド”を手に入れたらお役ごめんにはなるだろうけどな」


「アニ君の言う通りだけど、でもそんなすぐに見つかるとは思えないしね~…」



 “ワールドカシミウラ”の瀬戸内海に沈んでいる“炎帝石ファイアレッド”は、未だ発見されていないらしい。



「海の底に沈んでるとなると、長期休暇中に見つけ出すのは難しいでしょ?」


「確かになー…

 色々専用の装備というか、探索機が必要になるだろうし、いっそハヅキの力も借りてみるか?」



 ハヅキ姉ちゃんは水中戦特化のサイボーグだから、確かにそれは有効かもしれない。



「メイコちゃんは、具体的にどの辺の海域に落ちたとかは覚えとーと?」


「いやー、さすがにそこまでは…

 近くに小さな島が見えたなー、くらいは覚えてるけど…」


「あの辺は島もそれなりにあるからな~…、それだけじゃあまり参考にはならんかもな…」


「島の特徴とかは?」


「んー…、実際に見てみれば思い出すかもしれないけど……」


「なるほど…

 いずれにしても、一度現地に行ってみて、周辺の調査とか聞き込みとかしてみる必要があるかもね」



 と、そんな感じでひとまず今日は解散となった。



 わたしの新しい力、“疑似戦乙女ヴァルキリーフェイク”。

 この力を使う時が意外にも早くやって来るということを、この時のわたしは予想だにしていなかった………

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ