第7話「深まる疑惑と謎の計画」
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マコト姉さまとモトカ姉さまの部活が決まった(ついでに、ボクとモモコちゃんの兼部も決まった)その日、“ワールドフラワレス”のイツキちゃんの屋敷に戻ってくると、“ワールドアイラン”の高校編入組に、なんと“妹”が増えていた。
その辺りの詳しい経緯などはここでは省くが、ケモ耳妹が増えてマコト姉さまが喜んでいたということだけは付け加えておこうと思う。
それから、夕食を済ませた後は、各々別れて試験勉強やゲームなどそれぞれのやりたいことをやって過ごした。
ボクとモモコちゃんとマコト姉さまとモトカ姉さま、そしてアキラちゃんとアカリちゃんの六人は、“ワールドシルヴァネア”のクルセイド研究所のボクの部屋に集まっていた。
本当は19日に行われる実力試験の勉強をしたかったのだが、例の“魔法少女研究会”の活動のことで、アキラちゃんとアカリちゃんにも説明しておく必要があると思ったから、二人にも集まってもらった次第だ。
「それで、マコト君達はボク達に何の用?アカリちゃんがもう眠そうだから手短にお願いね?」
「ん~…、ボクはまだ、眠たくない、です、ふぁあ~……」
「ああ、ごめんね、すぐに終わるから、その前にアキラの尻尾モフモフさせてもらってもいいかな!?」
ビシッ!!
「あ痛っ!?ミライ!?今ボクの頭にチョップしたのミライ!?」
「さっきからやたらと鼻息が荒いと思っていたら、そんなこと考えてたの!?」
「ボクは全然構わないよ?」
「ほら、アキラも良いって言ってるんだから、」
ポカッ!!
「あ痛っ!?今度はモトカ!?今グーで殴った!?」
「モフモフは~、用件を話してからにしようね~、じゃないと~…、」
モトカ姉さまが指差した先では、アカリちゃんがうつらうつらと船を漕いでいた。
「あー、うん、そうだね。
えっとね、実はかくかくしかじかで…、」
「なるほど、つまりまるまるうしうしということだね!」
…本当に伝わったのか?
「大丈夫だって!
ボク達六人で『魔法少女探偵キューティーW』のコスプレをするんでしょ?
マコト君が、クリスの変身する“魔法少女探偵マジカルセイバー”で、
モトカちゃんが、アリスの変身する“魔法少女探偵マジカルアーチャー”、
ミライちゃんが、ミリスが変身する“魔法少女アサシンマジカルリッパー”、
モモコちゃんが、リリスの変身する“魔法少女怪盗マジカルガンナー”なんだよね?」
「そう…、つまり、今ボク達が…、着ている衣装が、そう…」
モモコちゃんの言う通り、マコト姉さまが説明している間に、ボク達はコスプレ衣装に着替えさせられていた。
そして、着替えさせられたのはアキラちゃん達も、だった。
「んで、ボクが着ているのが、続編の『魔法少女探偵キューティーWW』から出てくる新たなヒロイン、
エリスの変身する“魔法少女怪盗マジカルランサー”で、」
「ボクが、セリスの変身する“魔法少女怪盗マジカルフェンサー”、ですね…♪」
アキラちゃんは、紫のリボンの付いた紺色のセーラービキニに、下はパンツが見えそうなほどの紺色のミニスカ、そのミニスカには尻尾を出すための穴(上をボタンで留めるようになっていて、下から尻尾の付け根を通して、上でボタンを留める感じだ)が開いていて、そこから犬のモフモフした尻尾が出ている。
そして、絶対領域からの黒いニーソックス、右手に槍(“ランサーロッド”というらしい)を持ってそれを地面に刺すように構え、右目にはモノクル(モモコちゃんのと同じ“マジカルグラス”だ)をつけ、左手は腰に置いて、仁王立ちをしてポーズを決めている。
もう一方のアカリちゃんは、紫のリボンの付いた紺色のセーラービキニに、紺色のミニスカ、そして白のニーソという、ニーソ以外は同じ色合いの衣装だ。
そして、左目にモノクル(モモコちゃん達と同じ“マジカルグラス”)をつけ、右手にレイピア(“レイピアロッド”というらしい)を持ってそれを正面に突き出し、右足を前に、左手と左足は後ろに下げた体勢でポーズを決めている。
ちなみに、今のアカリちゃんは尻尾を魔獣“ジラス”の恐竜のような尻尾から、“妖犬”の犬の尻尾に変えている(『妖獣化』で尻尾だけを変えた状態だ)。
キャラクター的に、エリスとセリスは犬耳と犬の尻尾が生えた宇宙人とのキメラクローンという設定な上に、エリスは皮膚の一部を機械パーツで補っているというビジュアルなので、二人のコスプレはほぼ完璧に決まっていた。
これらの衣装はカナミ部長が貸してくれた、というか無理矢理貸されたもので、「アキラ同士とアカリ同士のコスプレした姿と六人姉妹の合わせを見たいでござるっ!!いや、ぜひ見せて下さい、お願いします、お金は払いますから」と土下座で頼まれたので、断れなかったのだ(ちなみに、お金を受け取るつもりはない、何故ならボクのコスプレはともかく、アキラちゃん達のコスプレ姿はボクも見たかったからだ)。
そして、いつの間にかカメラを用意していたマコト姉さまとモトカ姉さまが、二人の写真を撮りまくっている。
「いい!いいよ二人とも!!」
「最高に似合ってるよ~♪」
「う~ん、ボク的にはもっとカッコいい感じのがいいんだけど、これはこれでありかも?」
「ボクは、気に入りました♪」
うんうん、やっぱり二人ともカワイイのがよく似合う!
後で二人の写真を焼き増ししてもらおう。
「ちなみに、ボクとミライは…、『WW』からは、二人とも…、“魔法探偵”に名前が変わる…
衣装は、そのままだけど…、アイテムが、増える…」
そう言ってモモコちゃんがボクに虫眼鏡型のアイテム“マジカルミラー”を渡してきて、自分は手錠型のアイテム“マジカルチェーン”を持った。
これらはマコト姉さまとモトカ姉さまの持ってる物と微妙にデザインが異なっている。
「ボク、コスプレ…、初めてですけど、すごく、楽しい、です♪」
「でしょでしょ!?アカリがコスプレ好きになってくれて良かったよ!」
「でもさー、ここまでボク達六人とほぼ同じ設定のキャラクターってのも不思議だよねー?」
「ん…、それは、思った…
偶然にしては、出来すぎてる…」
「ま~、あと一人~、アンドロイドの~、“魔法少女ロイドマジカルサイス”の~、ユリスって子がいるみたいだけどね~」
そう、この作品に出てくるキャラクターの設定が、まるでボクらをモデルにしたかのような設定なのだ。
あの後、ナオ先輩から『魔法少女探偵キューティーW』と『WW』のDVDや設定資料集、原作ラノベも貸してもらったのだが(本格的に見るのは試験が終わってからだ)、それらに軽く目を通してみたけど、モモコちゃんのアンドロイドであるユリスを除いて、ほぼ全ての設定がボク達と同じだったのだ。
そして驚くべきことに、アキラちゃんの皮膚を補っている生体金属の場所と、エリスの皮膚を補っている機械パーツの場所までもほとんど一致していたのだ。
「魔人の角と尻尾という設定や、犬耳と犬の尻尾という設定の一致だけでも信じ難いことなのに、
機械パーツの場所の一致とまでなると、さすがに何かあると思わざるを得ないよね…」
「違いと言えば、セリスはアカリちゃんと違ってジラスの核に当たるような設定がないことや、モモコちゃんにはそっくりなアンドロイドが存在しない、ということだよね」
「作品は13年前に発表されたものらしいから、当然、ボク達は存在していない。
正確にはマコト姉さま達は存在していたけど、冷凍保存されていたわけだけど…、」
「それと、ボク達の…、クローン計画も、存在はしていた…」
「ん~、作者は~、何かしらボクらの事情に詳しい人物~?」
「えっと、この原作の作者はオカムという人で、シルヴァ王国のイーヨ島に住んでいるみたいだね」
「作品の舞台もイーヨ島がメインみたいだね」
シルヴァ王国のイーヨ島は、“ワールドアクア”でいう四国のことだ。
キュウシュウ国からイーヨ島へ行くには、モジ港エリアにあるモジ港駅から電車に乗り、入出国ゲートを通って海底トンネル経由でシルヴァ王国へ入り、そこからさらに電車を乗り換えるか船に乗るかしないと行くことは出来ず、直接の行き来は出来ない。
「イーヨ島の人か~…
ん~、だとすると~、ますます謎だね~…」
ボクは原作ラノベの1巻を手にとって、表紙を眺めた。
「作者名オカムか…、アルファベットの綴りは、OKAM…、あれ?Uが抜けてる?なんで?」
1巻の表紙に書かれていた作者名“オカム”の下には“OKAM”と書かれていたのだ。
他の巻の表紙も見てみたが、全て“OKAM”となっていて、誤字や脱字ではないようだ。
それらの表紙を見ていて、モモコちゃんが何かに気付いたようだ。
「OKAM…、並べ替えたら、MAKO…、もしくは、MOKA…」
「それって、ボクらの、」
「前世の~、名前~…!」
そうだ、マコはマコト姉さまの前世の名前で、モカはモトカ姉さまの前世の名前だ!
「まさか!?この作者は、本当にボクらの事情を知ってる人なの!?」
「まさか、本当にそんなことが…っ!?」
にわかに話がきな臭くなってきたぞ!?
「これは…、調査、すべき…?」
「ん~、とはいえ~、王国のイーヨ島のことまでは~、アスカさんも管轄外だよね~?」
「さすがにそうだよね…」
「とりあえず、今日のところは一度解散しない?
もうアカリちゃんが限界みたいだし」
アキラちゃんがそう言う通り、アカリちゃんはすでに夢の世界へと旅立っていた。
アカリちゃんは身体はボク達と同じ16歳だけど、中身はまだまだ子供そのものなのだ。
「…だね。
どのみち、出国するとなるとアスカさんの許可とかパスポートとか色々必要だろうし、
本格的に調査するとなると、長期休暇に入ってからとかの方がいいかもね」
「賛成!じゃあ、今夜は解散ってことで、」
「姉ちゃんは~、これから勉強ね~?」
「うぐ…っ、誤魔化しきれなかったか…!」
「試験までは…、時間がない、だから…、時間、大事…!」
「というわけで、マコト姉さま!早速勉強しましょう!」
「あ、待って!!勉強する前にアキラの尻尾!!モフモフさせてー!!」
「うん!いいよー!優しくしてね♪」
「やったー!!」
「3分、いや、5分だけね!5分モフモフしたら勉強するからね!」
こうして、コスプレ活動は思わぬ方向へと進んでいくのだが、その一方で、ボク達の知らないところで、とある計画が進んでいるのだった……
*
6月18日火曜日の放課後、私ことマイカはアスカちゃんに呼び出されて学校の生徒会室、その奥にある秘密の部屋へとやって来ていた。
この部屋は、一般の生徒にはその存在すら知られていないアスカちゃん専用の特別室らしく、詳細はわたしにも教えてくれなかったが、恐らくは、学校に通うアスカちゃんが国防に関する何かしら緊急の案件に対処するために用意された部屋なのだろう。
「やぁ、事件前なのに呼び出してしまって申し訳ない、マイカさん」
「ううん、大丈夫よ。
それで、モモコちゃんに関係するかもしれない緊急案件って何かしら?」
「実は、これをマイカさんに見てもらいたくて」
そう言ってアスカちゃんが目の前のパソコンを操作し、とあるデータを立ち上げて見せてくれた。
どうやら何かの計画書のようなものらしいが…、
「“パーフェクトテンダー計画”…!?
な、何これ!?こんな資料何処に!?」
“テンダー”とは、この世界における古い数字の数え方で“10”を意味する言葉だが、私達クローン姉妹においては、もう一つ別の意味を持つ。
それは、クローンサイボーグNo.10、通称テンダー、つまりは私の妹であるモモコちゃんのことだ。
「この計画書は、ゼロの海底研究所に残されていたパソコンから唯一サルベージ出来たものなんだが、このデータを回収した直後に海底研究所は自爆してしまってね」
「かなり複雑な暗号が、それも数種類使われているみたいですね」
「ああ、我々解読班も解読を試みたのだが、“パーフェクトテンダー計画”というタイトルしか解読出来なかった。
だから、残りの解読はマイカさん達に任せたいと思ってね。
それに、テンダーというのは、ほぼ間違いなくモモコちゃんのことだろうから、尚更マイカさん達に任せた方がいいと思ってね」
「うん、分かったわ。
にしても、ゼロはこんなことを計画してたの…?」
軽く計画書に目を通した私は、驚きを隠せなかった。
「ちなみに、現時点でどんな計画なのか分かったりします?」
マイカちゃんにそう聞かれて、私は一部解読出来た内容を教えた。
「そうね、簡単に言えば、本来のテンダー、モモコちゃんは二人一組で運用されるサイボーグだったみたいね…」
「二人一組で?
それは、モモコちゃんと一卵性の双子であるミライちゃんと、ということかい?」
「…ううん、違うみたい」
「違う、だって?」
「うん、もう一人のテンダー、つまり、アンドロイドのテンダーとサイボーグのモモコちゃんで二人一組、ということみたい……」
「アンドロイドのテンダーだって…!?」
「うん、詳しいことはもっとこの計画書を読み込んでみないと分からないけど…」
「…分かった、じゃあ、この件はマイカさんに全面的に任せるよ。
そして、私の力が必要な時はいつでも声をかけて欲しい」
「ええ、その時はお願いするわ」
“パーフェクトテンダー計画”、本来はゼロの悪意ある計画の一つだったのだろうけど、でも、上手くすれば、これは、私達にとってプラスに働くかもしれない…!
そう考えた私は、暗号で書かれた“パーフェクトテンダー計画”を解読していくことにしたのだった。




