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シスターズアルカディアSideB-Brand new Sisters-  作者: 藤本零二
第1章~Brand New Story~
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第4話「束の間の日常①」

*


 その後は、ボク達の今後について話し合うことになった。


 まず、ボク達、新しく出来た(Brand new)姉妹(Sisters)は、兄さま達の旅に同行すべきか、この世界に残るべきか、という問題。


 勿論、心情的には兄さま達とずっと一緒にいたいとは思う。

 だけど、この世界にはまだボク達姉妹がやるべきことが残っている。



「まず、この世界にはまだシロックと共に行方不明になったフォルスちゃんがいる。

 彼女の行方が気になるし、それにゼロだってこのままあっさり、というのは考えにくいし…」



 そう切り出したのはマイカ姉さまだ。

 そう、ボク達がこの世界ですべきこと、それは消えたフォルスちゃんの行方と、ゼロの存在。



「それは俺も気になっていた。

 ゼロのことだ、何処か別の場所に基地を隠し持っていて、そこに自身のバックアップデータを残していてもおかしくはない。

 自身の記憶と知識を、魂の無い肉体に埋め込んだAIチップの中にダウンロードさせれば、事実上自身を蘇生させることは可能だ」



 兄さまがそう続ける。

 それを受けて、マイカ姉さまからさらなる情報が告げられる。



「ええ、ヨウ君の言う通りよ。

 それに、ちょっとだけしか確認出来なかったんだけど、彼のクローン実験計画書に、レイブン(サイボーグNo.11)以降の製造計画が記されていたのを見たことがあるの」


「…“クローンクルセイド計画”はまだ終わっていない、か」


「となれば、ボク達のすべきことは、」


「兄や達に付いていくのではなく、この世界に残り、“クローンクルセイド計画”を終わらせること…」


「アニ君達と別れるのは寂しいけど、今度は一生の別れってわけじゃないもんね!」



 モモコちゃんやメイコちゃんの言う通り、兄さま達の旅が終われば、また会えるのだ。

 それまでは、お互いのなすべきことをなす、そういうことで話はまとまり、ボク達新しく出来た(Brand new)姉妹(Sisters)はこの世界に残ることになった。



「…と、なるとイツキの屋敷の地下の大改造が必要になるな」


「兄さま、どういうこと?」



 兄さまが言うには、イツキちゃんの屋敷の地下室を改造し(地下室は物置と化していたり、ほとんど使われていない部屋が多いらしい)、そこにクルセイド研究所を丸々新たに作ろうとしているらしい。

 というのも、クルセイド研究所の設備がないことには兄さまの義手やマコト姉さま達のボディメンテナンスが出来ないからだ。

 ボク達がクルセイド研究所に残る以上、その設備をカズヒちゃんの『物質転移』を使って地下に移設する、ということが出来ないので、同じ規模のものを丸々一つ作らなければいけないわけだ。



 そのことに申し訳なさを感じたが、ゼロやレイブン以降のクローンサイボーグの件は兄さまも気になる問題だったため、そこは仕方がないと兄さまは笑って許してくれた。



「それよりも、マコトとモトカとミライとモモコには働いてもらうから覚悟しておけよ?」


「え?」



 どういうことかと思えば、建設にボクらの“加速装置”を利用したいらしい。


 基本構図などは兄さまとマイカ姉さまが考え、それを基に、ボクとマコト姉さまとモトカ姉さま、そしてモモコちゃんが“加速装置”を使って作業をすることで、通常の倍以上の早さで地下研究所を完成させる予定、らしい。


 なるほど、確かに作業効率を考えればこれ以上に効率の良いやり方はないだろう。


 建材等はアスカさんのコネなどを利用して、かなり融通を利かせてもらったらしく、イツキちゃんの屋敷の地下の改造は翌日5月2日から行われ、わずか2日程で完成してしまった。

 勿論、その間ずっと作業をしていたわけじゃない。

 その合間合間で他の姉妹の子達と色んなことをして過ごしたのだ。




*


 5月1日。



 色々な話し合いが終わって、午後になった。

 ボク達は昼食を終えて、イツキちゃんの屋敷の談話室にいた。

 そこには、昨日の事後処理の報告なども含めて、アスカさんもいた。


 アスカさんにボク達がこの世界に残ることと、イツキちゃんの屋敷の地下に研究施設を作ることを伝えると、研究施設を作るための建材の手配をすると言ってくれ、さらに、



「マイカ伯祖母(おおおば)様達がこの世界に残ると言うのなら、この世界に住むための戸籍なんかが必要になるだろう?

 その辺りの用意もしておこうか?」


「え、いいの?

 あ、あと、その伯祖母(おおおば)様って呼び方はちょっとやめて欲しいのだけど…」


「ふむ?しかし、私にとってマイカさん、マイ・イェーガは私の祖母の姉にあたる方だしな」



 そう、マイカ姉さまの前世、マイ・イェーガは、アスカ・イェーガの祖母の姉にあたる伯祖母(おおおば)さんになるのだ。



「うーん、それはそうなんだけど…」


「分かった、ではマイカさんとお呼びしよう。

 マイカさん達の戸籍と、それから学校への編入手続きなんかもしておこう。

 私と同じ“キュウシュウ国立第1軍学校高等部”だ。

 年齢は違うが、制度上の問題で皆同じ1年生からの編入となるが構わないか?」


「え、ええ、そこまでしてもらえるのは非常にありがたいけれど…」


「その代わりと言ってはなんだが、一つ頼みがあるんだ」


「何かしら?私達に出来ることであればなんでもするわ」


「私の指揮する小隊、国防兵団第3小隊に入隊してもらいたいんだ。

 もちろん、給料なんかもしっかり払われるし、基本は戦争放棄、平和主義の我が国においての国防兵団の仕事は、訓練がメインだ。

 …とは言え、ここ最近は“レジスタス”連中によるテロ事件なんかが頻発してるから、実戦も決してないわけじゃない。

 勿論、断ってくれても構わないし、断ったからといって先程の話を無かったことにしようなんてつもりもない。

 こればかりは命が関わる問題だからね、無理強いは出来ない」


「でもミライちゃん達はまだしも、私は生身の、ただの人間よ?」


「マイカさんには隊員のボディメンテナンスや、研究開発なんかをメインに行って欲しいと思ってる。

 ああ、言い忘れていたが、隊員メンバーは私を含めて、皆サイボーグ兵士だ、改造部位の大なり小なりの違いはあるが」


「そういうことなら、私自身は構わないわ。

 ミライちゃん達はどうする?」



 マイカ姉さまに聞かれ、ボクはどうするか考えた。

 前世でもフラウ王国の王国騎士団副団長を務めていたこともあるボクだし、今さら兵役に拒絶反応はないのだが…



「一つ、質問…」


「ん?なんだい、モモコちゃん?」


「ボク達をスカウトするのは、ボク達の“加速装置”が目的…?」



 そう、それがボクの心配していることの一つだ。

 “加速装置”はあまりにもオーバースペック過ぎる技術だ。

 その存在が公になると、世界の情勢を大きく変えかねない。

 技術の漏洩も防がねばならないし。



「いや、“加速装置”は関係ない、むしろ君達にはその力を余程の事態でない限り使わないでいてもらいたいくらいだ。

 しかし、一方で“加速装置”以外の能力、精霊術や魔術といったかな、それらの能力は正直欲しいと思っている」


「ボクらの魔術師や精霊術師としての力が必要、と…?」


「それともう一つ、昨日のシロック氏の屋敷への侵攻の際に、少なからぬ被害が出ていてね、隊員の補充が急務なんだ」


「なるほど…」


「どうかな?君達の力なら問題はないと考えているが」


「ボクは構わない…

 ミライ達はどう…?」


「そうだね、“加速装置”の問題さえクリア出来るのなら、ボクも国防兵団に入ることはやぶさかじゃないよ」


「ああ、“加速装置”の使用に関しては一切禁止するし、その情報も隠蔽する。

 ここクルセイド研究所のデータ管理はクローズドだし、一切外部と繋げないようしてあるから、君達が使いさえしなければ外部に漏れることはないだろう」


「そうね、なら大丈夫、かな?」


「とはいえ、仮にゼロの意思を継ぐ者が現れた場合、

 相手に“加速装置”を使われるような状況に陥った場合だけはどうしようもない。

 その時は、私の責任をもって君達に命令を下すから、そのつもりでいてくれ」


「ええ」


「分かった…」



 というわけで、ボクとマイカ姉さまとモモコちゃんは第3小隊への入隊が決まった。

 残るはメイコちゃんとナナカ姉さまだけど…



「勿論、わたしも入るよ!

 一応わたしも前世では“戦乙女(ヴァルキリー)”として戦場に出てたんだからね!」


「私も問題ありません。

 …それに、アスカさんとしては私の能力こそ、欲しいのでは?」


「ま、隠す必要もないか。

 そうだね、ナナカ君、君のその“変化(へんげ)”の能力は喉から手が出るほどに欲しい。

 私の諜報活動にその力をぜひ役立てて欲しいのだけど」


「ええ、勿論。きっと役に立ってみせます」


「諜報活動と言うなら、ボクの能力も役立つと思うよ?」


「ミライの…?」


「あ、そっか、そう言えばミライちゃんのサイボーグとしての固有能力って…」


「そう!視聴覚強化!

 100キロメートル先に落ちた針を見つけられ、その音も聞こえるし、その気になれば1メートルくらいのコンクリート壁であれば透視も可能!」


「なっ、ミライにはそんな能力があったのか!?」


「し、知らなかった…」



 兄さまもモモコちゃんも驚いた顔をしてボクを見る。

 まぁ、戦闘では使うことなんてほとんど無かったから言う機会がなかったからね。



「マジか、ミライちゃん…!

 君こそ我が小隊のホープだよっ!!」



 ガシッとアスカさんに両手で握手された。



「さて、では細かい作業は私が全てしておくので、

 戸籍やらなんやらの書類は出来上がり次第また持ってくるよ。

 高等部への入学はゴールデンウィーク明けになるよう調整しておくから、それまでは家族(きょうだい)水入らずで休日を有意義に過ごしてくれ」


「何から何まで申し訳ないわね、何か手伝えることはないの?」


「いやいや、好きでやってることだから気にしないでくれ。

 それに、私は戦闘向きじゃないからこういう裏方作業が向いているというのもある、適材適所というわけだ。

 さて、他には何か必要なものとかあるかな?」


「はい!」



 そこで手をあげたのは何故かイツキちゃんだった。



「はい、イツキちゃん、何かな?」


「この世界のサブカルチャー、もといアニメ文化を知りたいのですが!!」


「何て質問してるのイツキちゃん!?」


「そうは言いますが、これはミライさん、あなた達のためでもあるのですよ?」


「ボク達のため?」


「ええ、皆さんはこの時代、この世界のことをまだよく知らないでしょう?

 充実した生活を送るには趣味が必要です。

 ですから、この世界で充実した生活を送るためにも、この時代、この世界のアニメ文化を知ることは必須だと思いませんか!?」


「いや、この時代、この世界での趣味を作るって話ならアニメじゃなくても、」


「それに、わたくしもこの世界のアニメに興味がありますし!!」


「絶対、そっちが目的だよね!?」



 イツキちゃんは筋金入りのアニメオタクだ。

 元は何千年もの間、何度も記憶を継承したまま転生していく中で、次第に心がすり減っていき(おまけに愛する兄にも会えず)、自暴自棄になりかけていた頃にたまたま見たアニメにどハマりしてしまって、アニメオタクになったという微妙に重い背景があったりするわけだが、今の本人からはそんな様子が一切感じられないんだよね…



「アニメ文化、か…

 ならば、彼女が適任だろうな。

 イツキちゃん、明日で良ければ君達を招待したい場所があるんだが、そこでアニメに詳しい人物を紹介しよう」


「ぜひお願いいたしますわ!!」



 という感じで、明日の午後、コクラ中央市のコクラ駅ビルにてアスカさんと待ち合わせをすることになった。

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