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シスターズアルカディアSideB-Brand new Sisters-  作者: 藤本零二
第2部第1章~Brand New Days~
49/58

第6話「放課後コスプレタイム」

*


 “軍学校女子ネットワーククラブのことを知った昼休みが終わり、午後の授業も無事終えて放課後となった。

 実力試験の二日前だが、実力試験は定期試験とは違うので、放課後は普通に部活がある。

 普段であれば、ボクとモモコちゃんはそのまま文芸部の部室に向かうのだが、マコト姉さまとモトカ姉さまの部活探しに付き合って、今日は部活を休むことにした(部活を休む旨は部長のサエグサ先輩にメールで伝えておいた)。



「やっぱりマコト姉さまは運動部に?」


「んー、実は悩んでるんだよね」


「意外…、マコトなら、迷わず運動部だと…」


「勿論、体を動かすのは好きなんだけど、体を動かすだけなら部活以外でも出来るでしょ?

 だから、あえて別のこと、何か普段はやらないことを部活にしてみてもいいんじゃないかな、って」


「…本当に意外、マコト姉さまがそこまで考えていたなんて」


「ボクだって一応は色々考えているんだよ」


「ちなみに、モトカは…?何か、考えてる…?」


「ん~、ボクは姉ちゃんと~、同じ部活なら~、どこでもいいよ~」


「モトカは何かやりたいことないの?」


「強いて言うなら~、姉ちゃんと同じ事をしたいかな~」


「モトカ姉さまは、マコト姉さまのことが大好きなんですね」


「まぁね~♪

 何せ生まれる前、お腹の中にいた時からの仲だからね~♪」


「羨ましい仲…」



 そんな話をしながら、最初に向かったのは、文化部の部室棟の二階、ちょうどボク達の文芸部の真上にある部屋だった。

 扉には“魔法少女研究会”という手書きのネームタグが貼られていて、これを見るだけではオカルト系なのか、オタク系なのか、いまいち判断のつかない部だった。



「こんな部あったんだ…」


「入学案内のパンフレットでこの部を見つけてね、気になってたんだ!」



 入学案内のパンフレット、確かにアスカさんから貰ったけど、部の紹介ページまでは読んでなかったな。



「ちなみに、ここはどんなことをする部なんですか?」


「ふっふっふ…♪

 それは、体験入部してみてからのお楽しみ、ってことで、たのもー!!」


「えっ、ちょ!?マコト姉さま!?」



 勢いよく部室の扉を開けて中へと入っていくマコト姉さまを追いかけて、ボク達も中へと入っていった。



「おや?君達は、噂に聞く編入してきた美人姉妹達でござるかな?

 ひょっとして、入部希望でござるか?」


「あ、えっと、美人、かどうかは分かりませんけど、まぁ、そんな感じです!」


「とりあえず~、体験入部的な感じで~、ここに来ました~」



 部室には二人ほど生徒がいて、声をかけてきたのは、頭に三角帽子、制服の上から黒いマントを羽織ったいかにも魔女という格好をした先輩だった。

 そしてもう一人のごく普通の格好の生徒は、ボクのよく知る人物だった。



「あれ?ミライちゃんにモモコちゃんやない?どうしたん、二人とも?」


「え、ナオ先輩っ!?」


「先輩こそ…、文芸部は、どうしたんですか…?」



 そう、その人は文芸部のナオ・カミヤマ先輩だった。



「ああ、私はここの部員なんよ!

 文芸部との掛け持ち!」



 この学校、というかここも含めた軍学校の生徒は部を掛け持ちしている生徒が多い。

 というのも、生徒数が圧倒的に少ないからだ。

 なので、運動部なんかは掛け持ちの上に、スポーツ専用の人型アンドロイドの使用が、公式大会でも認められている。



「あ、そうだったんですね」


「ちなみに…、ここは何をする部、なんですか…?」


「ふっふっふっー!ようこそ聞いてくれたでござるよ!!」



 そう答えたのはナオ先輩ではなく、先程の魔女のような格好をした先輩だった。



「我が“魔法少女研究会”は!この世の未知なる神秘“魔法”、とそれを操る“魔法少女”について科学的なアプローチから研究し、その深遠を解き明かし、この魔法を忘れた科学の世に知らしめるべく、日夜探求を続けている部活なのでござるよー!」


「つまり、魔法少女の出てくるアニメやゲームやマンガなんかを見ながら、出てくる魔法少女のコスプレをして、“軍学校合同文化祭”とか“アメコミマーケット”とかに出たりしとるんよ」


「その通りでござる、ナオ同士!

 あ、申し遅れました、私はこの“魔法少女研究会”の部長をしていますカナメ・ナノーヴァです、あ、『魔法少女マギカ☆なのは』の主人公“鹿目かなめなのは”に似てるってよく言われますが、本名です、たまたま似てしまったんです、むしろそれで運命を感じて魔法少女にハマったというか、ちなみになのはちゃんは鹿目かなめがファミリーネームでなのはがファーストネームだけど、私はカナメがファーストネームで、ナノーヴァがファミリーネームです、あ、あと、何で“研究会”なのに部長?って言われるかもしれませんが、部活の届け出の際に半ば冗談で“魔法少女を広く深く研究し、世界にその魅力を伝えるための部”って書いて届け出したらまさかの一発受理されちゃって、それが正式名称になっちゃったんだけど、さすがにそれだと長すぎるから普段は“魔法少女研究会”って名乗ってるってだけで、本当は“魔法少女を広く深く研究し、世界にその魅力を伝えるための部”だから、私は部長で合っていますので、ご安心を。とはいえ、別に会長と呼ばれても怒ることはありませんし、会長でも部長でもカナメさんでもカナメ先輩でもカナメ氏でも、呼び方は好きにしてもらってかまいませんので、どうぞよろしくお願い致します」



 という声優さん泣かせの長尺長台詞をわずか5秒で言い切ったカナメ部長。

 ちなみに、ナオ先輩の言った“軍学校合同文化祭”というのは、軍学校が一同に会して行われる文化祭で、秋頃に開かれるのだが、確か今年はウチ(第1軍学校)で行われるんだったかな?

 それから“アメコミマーケット”とは、『アメリカの漫画(アメコミ)』ではなく、『アニメ・コミックス』の略で、“ワールドアクア”で言う“コミックマーケット”のようなもののことで、毎年“ナンヨウドーム”(“ワールドアクア”の福岡ドーム)で行われるオタクの祭典のことだ(略してアメコミケというらしい)。


 しかし、まさかのコスプレ部だったとは…



「ところで、君達もコスプレに興味があるでござるかな?」


「はいっ!!」



 マコト姉さまが目をキラキラさせながら返事をした。

 そういえば“コクラアニメ文化シティ”の“ARコスプレスタジオ”でもすっごくはしゃいでたな…

 あそこではARによるコスプレだったけど、この部ではどうやら実際に衣装を手作りしたりしてコスプレをしているらしい。



「いいでござるねー!

 ちなみに君達の名前は?」


「あ、ボクはマコト・フジワラです!」


「ボクが~、モトコ・フジワラで~す」


「ボクは、モモコ・フジワラ…」


「あ、えっと、ボクはミライ・フジワラです、初めまして!」


「ふむふむ、全員ボクっ娘のながらそれぞれに性格の違う四つ子姉妹っ!!

 これは、あの魔法少女モノのコスプレをするにピッタリなのでは!?ナオ同士っ!!」


「あいあいさー!」



 カナメ部長に呼ばれるや否や、阿吽あうんの呼吸で部室内に置かれたクローゼットの中から四人分の衣装の入った袋を持ってきたナオ先輩が、ボク達四人にそれぞれ手渡してきた。



「では、体験入部ということで、まずは君達にその衣装に着替えてもらおうではないかっ!」

 

「え、ボクもですか!?」



 気付けばボクまでコスプレする流れになっているが、そもそもボクはマコト姉さま達に付いてきただけで、



「着て…、くれないのか…?」



 さっきまでテンションクライマックスだったカナメ部長のテンションが急激に下がり、チワワみたいな目でこちらを見つめてくる…!



「それは…、四姉妹だからこそ…、える…、伝説にして究極の…、魔法少女コスプレなのに……」


「ミライ、ここは部長のためにもコスプレしよう!」


「そうそう~、部長がかわいそうだよ~?」


「ミライのコスプレ…、見たい…っ!!」



 マコト姉さまは自身のコスプレがしたくて、モトコ姉さまはからかい半分、モモコはボクのコスプレが見たいという、それぞれ目的が異なりながらも、意見が一致するという息が合ってるのか合ってないのか分からないコンビプレーでボクを攻めてくる…!



「…わっ、分かったわよ。

 コスプレ、すればいいんでしょ?」



 そして、そういうのに弱いボクなのである…



「「「やった!」~!」…っ!!」


「うっひょー!!ナオ同士っ!今すぐ超高性能アナログカメラの準備をするでござるよーっ!!」


「デジタルではなくあえてのアナログですね、部長っ!了解でありますっ!!」



 マコト姉さま達が喜ぶのはいいんだけど、カナメ部長とナオ先輩が喜ぶのはちょっと納得いかないが、まぁ、この際は仕方がないと目をつむろう。



「ところで、何処で着替えればいいんですか?」



 ここは部室なので、ある程度の広さがあるとはいえ、通常の教室の半分程度しかなく、当然着替えるためのスペースなんかも無いように思えるのだが…?



「?ここは女子部であるからして、女子しかいないのだから、ここで着替えればよいのでは?」


「は?」


「…え?私、何かおかしなこと言ったでござるか…?」



 ボクの返しが怖かったのか、ちょっとびくびくしながら答えるカナメ部長。

 いかんいかん、先輩に対して失礼な感じになってしまったことを反省しつつ、優しめな口調を意識しながら言った。



「その、確かに女子だけしかいませんが、さすがに見られながら着替えるというのは、恥ずかしいと言いますか…、」


「大丈夫、ミライ…、見られて恥ずかしい体、してないから…!」



 親指を立てて力説するモモコちゃん、ってモモコちゃんはそっち側なんかい!



「そうそう~、というか~、ボクらにはいつも裸見せてるじゃ~ん♪」


「変なこと言わないで下さい、モトコ姉さまっ!!それはお風呂の中だけの話です!!」


「それと~、ベッドの~、」


「それ以上は言うなーっ!!」



 慌ててモトコ姉さまの口を塞ぐボク。

 くっ、ここには敵しかいないのか!?

 いや、マコト姉さまなら!

 マコト姉さまも、恥ずかしがり屋な一面があるから、いくら早くコスプレしたいとは言え、さすがに姉妹以外の女子がいる場所で生着替えする度胸は、



「わーっ!!ミニスカニーソの魔法少女っ!!すっごくカワイイーっ!!」


「おおっ!!さすがはマコト同士っ!その素敵なボディに衣装がよく似合ってますぞー!!」


「一応フリーサイズ、というか伸縮自在の特殊繊維で作ったコスプレ衣装だけど、胸回りとかキツくない?」


「はい、大丈夫です!」



 って、もう着替えてるし!?

 いつの間に!?てか着替えるの早くない!?まさか“加速装置”でも使った!?いや、“加速装置”を使えば、衣装がボロボロに破けちゃうか…


 にしても、上は青いリボンの付いたセーラー服のようなデザインのビキニに、下はパンツが見えそうなほどのミニスカに、絶対領域からの白いニーソックス、マコト姉さまのセクシーなボディにピッタリな素晴らしいコスプレ衣装だけど、これ本当に魔法少女か?



「あ、あのー、カナメ部長?マコト姉さまの衣装、何のコスプレ何ですか?というか魔法少女?」


「あ、マコト同士、これ小道具でござるよ…って、何か言ったでござるか、ミライ同士?」



 部長はマコト姉さまに何かの小道具を渡していて、ボクの質問が聞こえなかったようだ。

 代わりに、ナオ先輩が答えてくれた。



「ああ、これは10年くらい前に大ブームを巻き起こした伝説的魔法少女アニメ、『魔法少女探偵キューティーWダブル』の主人公、クリスの変身する“魔法少女探偵マジカルセイバー”のコスプレなんよ!」


「魔法少女探偵っ!?」

 


 魔法少女で探偵とか要素盛り過ぎでしょ!?

 一方、その頃マコト姉さまは、カナメ部長から小道具を持たされて、ポーズの指示を受けていた。



「…そう、足を肩幅に開いて、右手を前に、左手は腰に、で、左側に少~し体重を乗せて…、そう!完璧でござる!そして決め台詞を!」



 いつの間にか部室の奥に撮影スポットみたいなのが出来ていて、その中央にあるお立ち台に立って、マコト姉さまがポーズを決めながら、決め台詞を叫んだ。



「『この事件は私がスパッと解決!魔法少女探偵マジカルセイバーっ!ここに見参っ!!』」



 右手に持った剣(“セイバーロッド”というらしい)を前に突き出し、左手は虫眼鏡(“マジカルミラー”というらしい)を持ったまま腰に置いて、体を左斜めにわずかに傾けてポーズを決めたマコト姉さまは、控え目に言ってとてもセクシーでカワイくて美しかった…



「おー!!いいよ、マコトちゃん!!そのままよ、そのまま!」



 ナオ先輩が自ら用意した超高性能アナログカメラ(アナログながらデジタル並の高解像度写真がとれるという、レトロなのか最新鋭なのか分からない技術が使われているらしい)で、ありとあらゆる角度からマコト姉さまの姿を写真に収めていた。


 …後で絶対焼き増ししてもらおう。



「ボクも着替えたよ~♪」



 と、ボクがマコト姉さまに見とれている間に、モトカ姉さまも着替え終えていた。

 振り返ったボクの目に飛び込んできたのは、マコト姉さまとお揃いの衣装で、胸のリボンの色が赤になっていた。


 マコト姉さまにも似合っていたのだから、当然モトカ姉さまにも似合わないわけがない!



「おおっ…!!モトカ同士もさすがによく似合っているでござるよ!!さすがは双子姉妹!」


「モトカちゃんのコスプレは、『魔法少女探偵キューティーWダブル』のもう一人の主人公、アリスの変身する“魔法少女探偵マジカルアーチャー”で、クリスとアリスは双子の姉妹なんよ!」


「あ、なるほど、そういう感じなんですね」



 ナオ先輩が解説をしてくれている間に、カナメ部長がモトカ姉さまに小道具を渡してポーズの指示をして、先ほどのマコト姉さまと同じようにお立ち台に上がらせた。



「では、ビシッと決めるでござる!」

 


「『この事件は私がシュパッと解決!魔法少女探偵マジカルアーチャーっ!ここに推参っ!!』」



 マコト姉さまとは左右反対のポーズで、前に出した左手には弓(“アーチャーロッド”というらしい)を、腰に当てた右手には何も持っていない(さすがに弓を引くのに虫眼鏡は持てないだろう)代わりに、腰のベルトに手錠(“マジカルチェーン”というらしい)を下げた格好だ。



「うっひょー!!いい!!いいですぞモトカ同士ー!!」


「じゃあ、まずモトカちゃんだけ撮影した後、二人並んで撮影するけん、それまでマコトちゃんは休んどっていいよー」


「分かりました!」



 そうしてモトカ姉さまの撮影が始まった。

 にしても、本当にマコト姉さまもモトカ姉さまもキレイでカワイくてカッコよくて、最高過ぎるっ!!



「ミライも、早く着替えないと…

 それとも…、ボクが、手伝おうか…?」



 と、その時背後からモモコちゃんに声をかけられた。

 振り向くと、そこにはマコト姉さま達と同じセーラービキニにミニスカニーソという格好だが、その色は姉さま達の白に対して黒、リボンの色は緑で、背中には黒いマントという、いかにも闇落ち魔法少女という感じのモモコちゃんがいた!



「おっ、おおおおっ!?!?」


「ひょえええっ!?モモコ同士!!似合う似合うとは思っておりましたが、まさに理想通りのマジカルガンナーではござらんかぁあああっ!?!?」


「モモコちゃんのコスプレは、『魔法少女探偵キューティーWダブル』のライバル、リリスの変身する“魔法少女怪盗マジカルガンナー”で、その正体はなんとクリスとアリスの生き別れの姉妹、つまり三人は三つ子だったという衝撃の事実が終盤に明かされるんよ!」


「そうなのでござるよ!

 ただでさえ生き別れた姉妹と戦い合わなくてはならぬのに、おまけに魔改造されて、人間にはあり得ない悪魔の角と尻尾が生えてしまったという悲しい過去があったりするのでござるが、まさにモモコ同士にピッタリなコスプレなのでござるよ!!」


「いやー、コスプレ用の角と尻尾がなかなかいい感じで作れんくて、どうしようかって思っとったんやけど、モモコちゃんの自前の角と尻尾がちょうどイメージ通りでピッタリなんがまさに運命的過ぎるんよ!!」



 ちなみにモモコちゃんの角と尻尾の件に関してだが、元々角は隠しようがないので最初からバレていたが、尻尾に関しても体育の着替えなどの際にうっかりバレてしまった経緯がある。

 角だけなら奇抜なファッション、あるいはサイボーグとしての機能の一つという感じで誤魔化せなくもなかったが、さすがに尻尾までは誤魔化せず、モモコちゃんの正体が魔人だとバレたのだ。


 

 さて、少し余談となるが、この世界にはパラレルワールドの概念がある(超弦理論などから理論上存在していると言われている)が、パラレルワールドに行くための技術はない。


 だが、遥か昔に魔人達がこの世界に来たことがあったようで、いくつかの古い文献や、魔人と人間の間に生まれた子孫達の遺伝子情報などから、魔人という人種がいたことも確認されているが、純粋な魔人の存在や魔術といった技術は継承されなかった、とされている、らしい。


 前者のパラレルワールド云々の話は事実だが、後者の魔人云々の話はこの世界ではオカルト的に扱われており、遺伝子云々などの話は嘘だと言われている(古い文献が残っているのは事実らしいが)。

 …という話を“オカルト研究会”に所属しているクラスメイトから聞いたことがある。



 つまり何が言いたいかと言うと、この世界の人達は、魔人の実在を知らないが、いてもおかしくない程度には認識しているため、モモコちゃんが魔人であるという事実を、この学校の生徒達があっさり受け入れてくれたのだ(さすがにバレた当初はかなり騒がれたが)。

 科学の進み過ぎたこの世界では、オカルトもまた科学の延長でしかなく、あり得ないことはあり得ない、という感じなのだろう。



 閑話休題。



 そんなこんなで、モトコちゃんとモモコちゃんのソロ撮影会と、マコト姉さまも含めた三つ子魔法少女撮影会が開催される中、残ったボクも渡されたコスプレ衣装にしぶしぶ着替えることにした。



「『このお宝は私がババンッと盗み出す!魔法少女怪盗マジカルガンナーっ!ここに参上っ!!』」


「良いっ!!良いですぞーっ!!モモコ同士っ!!」


「いいねいいねいいねー!やっぱ尻尾が生身やと、リアル感増し増しで最高に絵になるわーっ!!」



 ちなみにモモコちゃんは 右手に銃(“ガンロッド”というらしい)を持ってそれを顔の横で斜めに持って構え、右目にはモノクル(“マジカルグラス”というらしい)をつけ、左手は腰に置いて、体を左斜めにわずかに傾けてポーズを決めている。

 うん、もうメチャクチャカワイイよね!!

 三人の写真、焼き増ししてもらうだけじゃなくて、引き伸ばしたものも貰えないか頼んでみよう。



 そんな風に皆が撮影の方に夢中になっているので、視線は気にならないが、やはり姉妹以外のいる場所で生着替えというのは恥ずかしい(更衣室ですら他人の目があるので恥ずかしいのだ)。


 まず制服を脱ぎ、下着姿になってから(そういえばコスプレ用の下着というのがあるそうだが、今回はそういうのは無いっぽい。まぁ、下着を撮影されるわけじゃないから見えないように気を付ければ大丈夫かな…?)、渡されたコスプレ衣装に着替えていく。


 上はモモコちゃんと同じ黒のセーラービキニで、リボンの色は黄色だった。

 ナオ先輩の言っていた通り、伸縮自在の特殊繊維が使われているようで、ボクのサイズにピッタリとハマった。

 そして下はやはり黒のミニスカで、パンツが見えそうなギリギリの短さだ。

 そこに黒のニーソックスを履いて着替えは完了。

 見たところモモコちゃんの、“マジカルガンナー”とほとんど変わらないように見えるけど、どんな設定なんだろう?

 流れからしてきっと生き別れの四人目の姉妹とかそんな感じだと思うんだけど…



「お!ミライちゃんも着替えたんやね!おおー!三人の見て分かっちゃいたけど、やっぱミライちゃんも最高に似合っとるやん!!」


「ど、どうも…、あの、ところで、ボクのこのキャラはどんな設定なんですか?」


「その子はねー、『魔法少女探偵キューティーWダブル』のライバルであるリリスがクリス達に対抗するために産み出した、自身のクローン、ミリスが変身する“魔法少女アサシンマジカルリッパー”だよ!」


「魔法少女アサシン!?」



 魔法少女で暗殺者アサシン!?

 超やべー感じのキャラじゃん!!

 しかも三姉妹のクローンって、なんか微妙にボクらの設定とカスってるし!!



「あれ?でも、モモコちゃ、じゃなかったマジカルガンナーのクローンなら、角とか尻尾がいるんじゃないですか?」



 ふと思った疑問を尋ねてみると、カナメ部長が鼻息荒く説明してくれた。



「そ、こ、がっ!!物語の重要なポイントなのでござるよっ!!」


「うわっ!?びっくりした!?」


「リリスはクリスとアリスに対抗すべく、自らのクローンを作り出す。しかし、産み出されたクローン、ミリスはリリスのような角と尻尾がない普通の人間、魔法少女として生まれてきた。当初はそれでも疑問に思わなかったリリスだが、クリスやアリスと度々顔を合わせるようになって思い始めるのだ。『時折私に見せるミリスの笑顔が、アリスとクリスの笑顔にそっくりなのは何故だ…?』と。そこからリリスが実は二人と血の繋がった一卵性の姉妹だったことが分かり、怒濤のクライマックスへと繋がっていくという悲しくも熱い展開が繰り広げられていくのだよっ!!」



 そこまでを一息で説明しきったカナメ部長は、一瞬呼吸困難に陥ったのか、「ゴホッゴホッ!!」と咳き込みながら膝を付いた。



「部長!?大丈夫ですかー!?」


「しっ、心配ご無用、ナオ同士…っ、ゴホッゴホッ!ちょ、ちょっと酸欠になっただけでござるから…、はぁ、はぁ……」



 と、そこへ、今度は自分達のスマホでお互いに写真を撮りあっていたマコト姉さま達がやって来た。



「わーっ!!ミライのコスプレもカワイイー!!」


「なんだかんだ嫌がりつつも~、きちんとコスプレしてくれるミライちゃん大好き~♪」


「ミライ、最高にカワイイよ…っ!!」


「ちょ、モモコちゃん!?今何連写した!?スマホからものすごい数の連続シャッター音聞こえたけど!?」



 そのシャッター音で再起動したのか、カナメ部長が起き上がり、再び高いテンションで、何処に隠し持っていたのか小道具を取り出し、ボクに手渡してきた。



「ではミライ同士!まずはミライ同士の撮影をして、次にミライ同士とモモコ同士のツーショット、最後に四人で“最終回名乗りバージョン”の撮影を行うでござるー!」


「は、恥ずかしいけど、さすがにここまで来て逃げられないわよね…」



 ボクは言われるがままにポーズを決めて、教わった決め台詞を叫んだ。



「『魔法少女探偵は私がサクッと仕留めるわ!魔法少女アサシンマジカルリッパーっ!ここに登場っ!!』」



 ボクは右足を深く曲げて、左足を床に付くくらい伸ばした格好になり、右手を床に付いて、左手に持ったジャックナイフ(“ジャックロッド”というらしい)を舌で舐めるようなポーズを取った。



「最高でござるっ!!

 ここまで…っ、ここまで見事に『魔法少女探偵キューティーWダブル』の四姉妹衣装を着こなせる者に出会えるとは、誠に感無量でござるよ…っ!!」


「うんうん、衣装を作った甲斐がありましたね、部長!」


「うむ!

 贅沢を言えば、あと二人、いや三人、君達に一卵性の姉妹がいてくれたらなお完璧だったのでござるが、まぁ、さすがにそんな都合良くはいかんでござるな」


「「「「え?」」」」



 今、カナメ部長は何と言った…?

 ボク達の疑問に答えるかのように、ナオ先輩が説明し始めた。



「実はさ、『魔法少女探偵キューティーWダブル』には続編があってね、『魔法少女探偵キューティーWWツーダブル』って言うんやけど、

 『WWツーダブル』では、マジカルガンナーとマジカルリッパーが仲間になる他、敵組織がリリスの遺伝子から新たに作り上げた二人のクローンと、リリスそっくりに作られたアンドロイドが出てくるんよ」


「二人の、」


「クローン…」



 ナオ先輩の説明を引き継ぐ形で、カナメ先輩が鼻息荒く続けた。



「しかも!そのクローンの二人もまたリリスのように肉体改造されてしまうのでござるが、地球外知的生命体“ワオーヌ星人”という生命体の遺伝子を組み込まれて、イヌ耳少女にされてしまうのでござるよ!」


「イヌ耳少女…」


「さらにさらに!その内の一人は改造失敗により、一部をロボットで補われたサイボーグイヌ耳少女となるのでござる!」


「サイボーグイヌ耳少女…」



 なんか、ピンポイントでボクらの姉妹を狙い打ちし過ぎてない…?



「それからリリスのアンドロイドは、第三の組織によって作られた魔法少女に対抗するためのアンドロイドなんよね」


「合わせるだけなら、ミライちゃん達のお姉さんや妹ちゃん達でも全然いいんやけど、ここまで完璧に四つ子姉妹が揃っちゃうと、あと残りの三人も身長とか体格とかまでこだわりたくなるよね…」


「ミライ同士達、あと三人、身長や体格の近い姉妹はおらんでござるか、出来れば二人はイヌ耳少女で!」


「「「「イヌ耳少女なら二人いますよ…」」」」


「「マジかっ!?!?」」


「さすがに…、ボクそっくりの、アンドロイドは…、いないけど」


「まぁ、それは仕方ないでござるな…」



 そんなこんなで、ボク達は“魔法少女研究会”に(ボクとモモコちゃんは掛け持ちで)入部することが決まりました。



「くぅー!!一気に部員が四人も増えて感無量でござるっ!!」


「部長!これなら、今年のアメコミケへの参加、そして合同文化祭へのコスプレ喫茶申請も出来そうですね!!」


「え?」


「わーっ!!アメコミケに参加出来るんですかっ!?

 それに文化祭でコスプレ喫茶やるんですか!?」


「うむ、8月のアメコミケでは、君達のもう二人の姉妹を加えた六人姉妹で『魔法少女探偵キューティーWWツーダブル』のコスプレをやってもらって、我がサークル“サイボーグ魔法少女隊”の売り子や呼び込みをやってもらいたい!」


「それって、もしかして文芸部の部室でナオ先輩が書いてる同人小説を売るんですか?」


「勿論それもあるっちゃけど、部長も同人マンガを描いとーし、私達のサークルには学外のメンバーもおって、皆それぞれに作品作って参加するんよ」


「それの売り子とかを~、ボク達がやるんですか~?」


「そう!今回の我がサークルのテーマが、『魔法少女探偵キューティーWダブル』及び『魔法少女探偵キューティーWWツーダブル』でね、君達の着ている衣装もそのために用意していたのだが、いかんせん、我らではコスプレをしても統一性が無くてね…」


「勿論、誰がどんなキャラにコスプレするかは自由やし、実際『魔法少女探偵キューティーWWツーダブル』の合わせコスやっとる人達もまず六つ子や七つ子なんておらんのやから、身長も体格もバラバラなんは当たり前。

 それでも一体感を楽しめるのがコスプレやから、それでいいんやけど、」


「我ら的にはどうしても納得いかなくて…

 マジカルガンナーの角と尻尾が完成していないのも、そのこだわり故であったし…」


「やけん、ミライちゃん達がこの部に入ってくれて本当に嬉しいんよ!

 ぶっちゃけると、ミライちゃんとモモコちゃんと文芸部で初めて会った時に、この部にも勧誘したいくらいやったんやけど、それでもせめてあと二人おればな~って感じで勧誘はためらっとったんよ」


「故に、君達が今日、我らが部の門戸を叩いた時は、内心で絶対にのがさんぞという思いながら、表向きには平常心を保ちつつ冷静に対応していたのでござるよ」



 カナメ部長、あれで平常心保ってたの…?

 


「というわけで、アメコミケの方は問題ないかな?」


「ちなみに…、日程は、どうなってるんですか…?」


「今年は8月の23日の金曜日から25日の日曜日にかけて行われる予定でござるよ」



 この世界でのコミケは月末にやるんだな。



「ボク達は家族きょうだいがたくさんいるので、まだはっきりとは言えませんが、多分問題ないと思いますよ、ね、ミライ?」



 正直、ボク的には人前でこの格好をするというのは恥ずかしくて出来れば遠慮したいところなのだが、マコト姉さまの「絶対参加したい!!」という目を見ちゃうと断れないんだよな~…



「まぁ…、余程の用事が無ければ、大丈夫だと思います」


「よし、決まりだ!!」


「ありがとう、四人とも!」


「いえ、こちらこそ、こんなカワイイコスプレさせてもらえて、大感激ですから!!」


「ボクも~、姉ちゃん達のセクシーな写真コレクションが増えて~、大満足~♪」


「ん…、お互いに、Win-Winな関係…」



 まぁ、ボクも姉さま達とモモコちゃんのセクシーコスプレ見られて大変嬉しいけれども…



 こうして、ボク達の本格的なコスプレ活動がこの夏始まろうとしていた。



 そして、ボク達の知らないところで、()()()()()()()()()()()が生み出されようとしていた………

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