幕間「パーフェクトテンダー」
私の名前はアスカ・イェーガ、キュウシュウ国立第1軍学校高等部女子部の三年生だ。
それと、表向きには国防兵団第3小隊の隊長を、裏向きには国防兵団第0小隊の隊長を務めている。
細かい仕事内容に関しては国防の観点などから詳しくは語れないが、大雑把に言えば、私は実質的にキュウシュウ国そのものであり、ヨウ博士から伯祖母様が託されたこのキュウシュウ国を守るためにならどんなことでもする、という立場の人間だ。
そんな私は今何をしているのかと言うと、関門海峡の海底に作られたゼロの海底研究所にいた。
ほぼ無傷(至るところに戦闘の行われた形跡はあるが)のまま残された海底研究所に、ゼロに関する何かしらのデータが残っていないかと秘密裏に調査に入ったのだが、予想通りというか、目ぼしいデータはほとんど残っていなかった。
恐らくレイブンの起動開始後、しばらく施設の他の機能が使用されなかった場合、秘密保持のためにデータが自動消去されるというような、そんなシステムが設定されていたのだろう。
しかし、それでも何かあればと一縷の望みをかけて、プログラム関係に強い第0小隊のメンバー数人を連れてやってきたのだが…、
「アスカ隊長!」
と、その時、データのサルベージ作業を行っていた男性隊員が私を呼んだ。
「むっ、ソウタ隊員、何か見つけたか?」
「はい、辛うじて一つのファイルだけサルベージ出来ましたが、そのせいかどうか分かりませんが、この研究所に仕掛けられていた自爆装置が緊急作動した模様です」
「なっ、なんだって!?」
「じっ、自爆装置だと!?」
「おまっ、なんてものをっ!?」
その男性隊員のセリフを聞いて、他のメンバー達も驚きの声をあげた。
「皆、落ち着きたまえ!
それで、ソウタ隊員、あと何秒猶予はある?」
「あと、10秒です…っ!」
「それだけあれば十分だっ!
すぐに脱出するぞ、皆準備をしろ!
それからソウタ隊員はサルベージしたデータを、」
「問題ありません!すでにこちらのマイクロSDに!」
「よし!では、全員、ヨシハル隊員の元に集まれ!」
私が指示を出すと、隊員達は自身の持ち込んできたPC類などを抱え、別の男性隊員の元へと集まった。
全員が揃ったのを確認すると、私はさらに指示を出した。
「よし、ヨシハル隊員、脱出だ!」
「はい!『テレポート』っ!!」
ヨシハル隊員がそう叫ぶと、一瞬後には、私達の姿は第0小隊の秘密施設にあった。
ヨシハル隊員は、元“新人類教”のメンバーで、超能力『テレポート』の使い手だ。
彼の『テレポート』能力はかなり優秀で、自身を中心とした半径2メートル圏内の人間を、距離に関係なく念じた場所に転移出来る。
ただ、欠点としては、移動距離や移動人数によって、一日に使用できる回数に制限があり、今回の人数と距離では、一日最大二回、つまりは往復分しか出来ないということだ。
しかし、それでも秘密裏に活動する分には十分過ぎる力だ。
「うむ、ヨシハル隊員、ご苦労!
今日はもう休んでいいぞ」
「は!ありがとうございます!」
ヨシハル隊員を労った後、他の隊員達も同様に労い、最後にデータを回収したソウタ隊員に話しかけた。
「ソウタ隊員、回収したデータはどういった内容のものだ?」
「今パソコンに出します」
そう言うと、彼は自作のパソコンに、回収したデータの入ったマイクロSDカードを挿し込み、画面を立ち上げた。
すると、画面には謎の文章列と人型ロボットか何かの設計図が現れた。
「ん?これは何て書いてあるんだ?文字化けか?」
「恐らくは高度な暗号文章かと思われます。
しかも、ページや段落ごとなど、ランダムで使われている暗号が変わっているようで、全ての文章を解読するにはかなりの時間がかかりそうで…」
「ふむ…」
なるほど、データをサルベージ出来ても基地の緊急自爆装置が起動するようになっていたり、運良くデータを持ち帰れても高度な暗号の複数使用によって、容易には内容を理解させないようしている、というわけか。
とはいえ、そこに関しては、私には切札たる彼らがいるから何の心配もしていないが。
「いや、データを持ち帰れただけで十分だ!
それ以降の暗号解読には、別の専門家に任せよう」
「は!
あ、最後に、一箇所だけ私でも解読出来た文章がありましたので、それだけご報告を」
「ほう、どんな文章だ?」
「この計画書のタイトルだとおもわれるのですが、“パーフェクトテンダー化計画”、と」
「“パーフェクトテンダー化計画”、だと…っ!?」
これは、ますます彼らの担当となりそうなデータが見つかったものだな……




