エピローグ
*
翌、5月29日の水曜日。
クルセイド第2研究所で目覚めた俺達は、アスカさんとムツキ達を除く全員で“ワールドフラワレス”のイツキの屋敷へと転移した。
屋敷に入ると、メイド服を着たメイさんとレイさん、割烹着姿のセイさんが出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ、皆様」
「なんだか皆と会うのもスゴく久し振りな気がするよー、私のこと覚えてるよね?」
「しばらく私達出番がなかったからねー、裏ではちゃんと仕事してたんだよ?皆の食事の準備したりとか」
「セイさんのその発言、すごくメタいですわよ?」
「それにしても…、一気に家族が増えましたわね」
「いやー、料理のし甲斐があるってもんよ!
えーっと、それで全部で何人になったの?レイさん数えて!」
「あ、えーっと…、1、2、…」
「全員で27人ですわ」
俺、カズヒ、イツキ、ハルカ、サクヤ姉ちゃん、マコト、モトカ、キョウカ、リン、カナン姉ちゃん、セイラ、ツキヒ姉ちゃんの12人に加えて、マイカ姉ちゃん、ミライ、メイコ、モモコ、ナナカ姉ちゃんの5人、さらにそこへレイヤ、ユエ、ヒナ、イーディス、イシス、カリナ、イザヨイ、サキ、ゼロワン、イリスの10人を加えて合計27人の大所帯となった俺達家族。
「27人!!ひゃー、食材足りるかなー!?」
「そ、それより、さすがにこの人数分を私とセイちゃんの二人で作るのは…、」
「ではわたくしも手伝、」
「「あ、お姉ちゃん(メイちゃん)は屋敷の掃除をしてて下さい」」
「……分かりました」
「それなら、私もお料理手伝うわよ?」
「お姉ちゃんが手伝うなら、わたしも!」
「サクヤ姉さんとカナンちゃんが手伝うなら、私も年上組として手伝わなくてはね♪」
「では、私も、」
「「「どうぞ、どうぞ」」」
「ええっ!?」
サクヤ姉ちゃんとカナン姉ちゃんとマイカ姉ちゃんが絶妙なコンビネーションで、お馴染みとなった往年のギャグを放つが、当のナナカ姉ちゃんは何がなんだかよく分かっていないようだった。
そんなこんなで、セイさんとレイさん、そしてサクヤ姉ちゃん達が朝御飯の準備をしている間、残りの俺達は居間にて待機することになったのだが、さすがに20人強ともなるといかに広いイツキの屋敷と言えど手狭に感じる。
というか入りきれてない。
「この部屋もさらに大きくしなければなりませんわね…」
そんなことを言うイツキ。
これ以上部屋を大きくってどうするんだ?
庭の方に広げるのか?
「とりあえず、今日のところはいくつかのグループに別れて食事をしましょう」
イツキの提案で、大テーブルの方に俺やイツキ達12人と、テレビ前の小テーブルの方にマイカ姉ちゃん達5人、そして庭に余っていた大テーブルを持ち出して、そこにレイヤ達10人とマイさん達メイドチーム3人が座ることとなった。
これなら多少距離はあるが、皆で話しながら食事が出来る。
テーブルの準備が整い、食事が出来上がるのを待っている間、俺は一つ試してみたいことを思い出した。
「そうだカズヒ!」
「ん?何、お兄ちゃん?」
「お前のパワーアップした超能力でミライ達のボンテージ服を外せないか試してもらえるか?」
「オッケー!」
以前、ミライ達を助けた直後に、カズヒの『物質転移』でミライ達に着せられたボンテージ服を外せないか試してみたのだが、どういうわけか失敗したのだ。
ミライ達が着ている下着や服などは『物質転移』させられたのに、ボンテージ服だけが『物質転移』出来なかったのは、カズヒ曰く「んー?外し方が分からないから?よく分からないけど」とのことだった。
例えば普通の首輪やベルトなんかだと留め具があるので、それを外せば取り外せる。
だから『物質転移』させられるらしいが、“相棒輪”や“隷属輪”は留め具などがあるわけではないので外し方が分からず『物質転移』出来ない、らしい。
同様にミライ達のボンテージ服は首輪と一体型で、その首輪を外すには錠前のロックを解除しなければならないが、そのロックそのものが事実上解除出来ない仕様となっている。
当然、切断するなども不可能で、物理的に脱がすことが出来ないようになっていた。
だからカズヒの『物質転移』でも脱がせることが出来なかったらしい(本当の理由は分からないが)。
だが、もしかしたら今のカズヒになら外せるのでは?という一縷の望みにかけて聞いてみたのたが、
「じゃあ、ミライちゃんこっち来て!」
「あ、うん。えっと、服は脱いだ方がいい?」
「いや、脱いでくれるならそっちのが嬉しいけど、多分そのままでいけると思うよ」
そう言いながらカズヒがミライの前に立ち、両手を前に出して目をつむり、意識を集中させ始めた。
そして、
「うん、見えた!!これだっ!!」
パチン!と右手の指を鳴らすと、次の瞬間、カズヒの左手には“3”という数字の書かれた錠前の着いた首輪とボンテージ服が握られていた。
「ええっ!?」
「おおっ!本当に出来たっ!!」
「やるじゃないか!カズヒ!!」
「いや~、それ程でも~♪
あ、これミライちゃんの脱ぎたてだからほのかな温もりとミライちゃんのかほりが…♪」
「ちょっ、匂いをかがないで!?」
その様子を見ていたモモコ達が集まってきて、自分達のも外してくれるよう頼んできた。
「オッケー、オッケー!皆、その場から動かないで!
一気にやっちゃうから!!
んー、むむむむむ………、せいやぁあああああっ!!!!」
カズヒが叫ぶと、なんとその場にいないマイカ姉ちゃんとナナカ姉ちゃん以外の全員のボンテージ服を『物質転移』させてしまった。
「おお…、本当に、外れた…」
「良かった…、これでもう電流流されなくて済むのね…」
「カズヒ姉ちゃん、ありがと!!」
皆が口々にカズヒに感謝の言葉を述べる。
だが、一番喜んでいるのはカズヒの方で、
「むっひょおおおおおっ!!
姉妹の脱ぎたてボンテージ大量じゃあああああっ!!
これ、あたしが全部もらっていいよね!?戦利品ってことでいいよね!?」
「いい加減にしなさい、バカズヒ!!」
変態親父化したカズヒと、そのカズヒに鋭くツッコむハルカという、いつもの風景がそこには広がっていた。
しかし、気付けばカズヒがどんどんチート化していってるな…
その内、カズヒに『物質転移』出来ない物が無くなるのではないか?
例えば、この世には存在しない架空の物質なんかも、持ってこられるようになるかもしれないな…
だが、カズヒのチート性はもっと別の方向に進化していくわけだが、それはまた後々の話……
*
それからマイカ姉ちゃんとナナカ姉ちゃんのボンテージ服も外し(結局ボンテージ服はカズヒが責任をもってコレクションとして保管することになったらしい)、朝食の時間となった。
本日の朝食は和食で、ご飯に味噌汁、鮭の切り身に半熟のベーコンエッグと野菜サラダというごくオーソドックスなもの。
皆で配膳を手伝い、準備が整うと、イツキの「いただきます」の合図で朝食が始まった。
なんだか、こうしてのんびりとした気分で朝食を食べるのも久し振りな気がするな。
しばらくは他愛の無い話で、それぞれのグループごとに話が盛り上がっていたが、食事も終わりに差し掛かったところで、おもむろにカズヒが口を開いた。
「そうだ!イーディスちゃん達の名前を考えよう!」
「アタイ達の名前?」
「そうそう!イーディスってのは前世の名前でしょ?
勿論、その名前がいいっていうなら無理にとは言わないけど、せっかくなら新しい名前つけてみない?」
「ニャー!それは面白そうだニャ、ウチは賛成だニャ!」
「ぼくもぼくも!ユエお姉ちゃんとヒナちゃんだけ新しい名前でぼくだけ前世の名前ってのはなんとなく違和感あるなー、って思ってたし!」
「ボクも新しい名前興味あるな!特にゼロワンちゃんには新しい名前絶対つけてあげたいし、イザヨイちゃんも興味あるでしょ!?」
「私?私は、皆がつけるなら…」
「私はイーディス姉さん達が変えるなら…」
「…そうだな、じゃあせっかくだし、新しい名前つけてもらおうかな?」
「よっしゃー!!任せとき!!あたしが最っ高の名前考えちゃるけん!!」
「カズヒちゃんは、なしてそんなテンション高いと?」
「カズヒさんは姉妹の名前、特にその漢字表記を考える才能に秀でてますから」
「なんつーピンポイント過ぎる才能なん!?」
てな感じで、やや唐突ではあったがイーディス達の現世での名前を決めることになった。
「まずはイザヨイちゃんから!」
「え、いきなり私なの!?」
「うん!実はピッタリなの昨日の夜に思い付いたんだよ!」
「へ、へー…?ちなみにどんな名前なの?」
「イザヨイって、漢字で“十六夜”って書くでしょ?
で、十六夜の月の名称に、“既望”ってのがあるの。
その“既”の字を代えて、“希望”と書いて読みは“のぞみ”ってのはどう?」
「“希望”…、うん、悪くない、かな?」
「相変わらずカズヒはそういうとこで変に頭回るわよね…」
「ありがと、ハルカちゃん!」
「べ、別に褒めてはないわよ…」
こうして、イザヨイは今日から“藤原希望”となった。
「じゃあ、次はサキちゃんとゼロワンちゃん!」
「お、次はボクか!」
「ボクも、ですか?」
「うん!二人は同じDNAを持つ双子の関係で、更に言えばマコト君達とも同じDNAってことだから、名前に“心”の漢字は入れたいと思ったの!
それでいてサキちゃんとゼロワンちゃんの関係を現すいい名前って考えた時に思い付いたのは、“陽心”に“月心”って名前!どうかな!?」
「なるほど、確かに“陽”という漢字には“あきら”、“月”という漢字には“あかり”という読み方があるそうですわね」
「おまけに“あかり”と“あきら”でアナグラムになってるのも面白いね!
うん、ボクは気に入ったよ!ゼロワンちゃんは?」
「ボクも、それで、いい、よ?」
こうして、サキが“藤原陽心”、ゼロワンが“藤原月心”となった。
「さて、どんどん行くよー!
次はカリナちゃんだけど、カリナちゃんは月恵ちゃんの妹で、日奈ちゃんのお姉ちゃんでいいんだよね?」
「うん、そうだよ」
「だったら、二人の名前から“月奈”ってのはどうかな?
さすがに安直すぎる?」
「“月奈”…!うん、それでいいよ!ありがと、カズヒちゃん!」
という感じで、カリナは今日から“藤原月奈”だ。
「残るはイーディスちゃん達だね!」
「あ、ああ、お手柔らかに頼むな」
「お姉ちゃんに任せなさい!
えっとねー、イーディスちゃんは、過去に暗いことがあってとても辛かったって聞いてるから、明るい名前にしたいなって思って、
だから太陽の光って書いて、“陽光”って名前はどうかな!?」
「ひ、“陽光”…!?アタイが!?そ、そんな可愛すぎる名前、アタイに似合うわけ、」
「いいじゃニャい、いいじゃニャい!ウチは“陽光”って名前、ピッタリだって思うニャ~♪」
「わ、私もイーディス姉さんにピッタリだと思います!!」
「イシスにイリスまで!?」
「よし!じゃ、けってーい!
お次はイシスちゃん!
イシスちゃんはイーディスちゃんとは対になるように、輝く月で“輝月”ってのはどう!?」
「ニャ!?何故その字で“しょう”って読むニャ!?」
「とある界隈では“輝”を“しょう”って読むんだよ」
「通常、そのような読み方はありませんけどね」
「でもボクは厨二っぽくてカッコいいって思うよ!!」
「お、アキラちゃんなら分かってくれると思ったよ~!」
「ニャ~、まぁ、字面はともかく、“ショウ”って名前は可愛くていいと思うニャ♪」
「じゃ、じゃあ最後は私ね!
カズヒは私にどんな名前をつけてくれるのかしら?」
「イリスちゃんか~……、えーっと、白金と書いてプラチナちゃん?」
「なんそれ!?」
「もしくは全能と書いてアルセウス、とか……?」
「意味分かんないっ!!」
「い、いやー、今までのはちょっとした冗談ってやつでね…、えーっと、うん、考えてはいるんだよ、考えては……、えっとねー…、」
「あら、珍しくカズヒさんが困ってらっしゃいますわね?」
「ネタ切れってやつかしら?」
「ちょっ、ちょっとカズヒ!?本当に大丈夫なんでしょうね!?」
「う、うん、だいじょぶだいじょぶ!えーっとね…、あっ!!
明るい星と書いて“明星”ってのは!?」
「おお、可愛らしい名前じゃないか!」
「うんうん、イリスちゃんにピッタリだと思うニャ~♪」
「そ、そう?姉さん達がそう言うなら…♪」
「良かったー…!これで何とか全員の名前が決まったね!」
こうして、イーディスは“藤原陽光”、イシスは“藤原輝月”、イリスは“藤原明星”となった。
「お、ようやく全員の新しい名前決まったんだな!」
と、そこへ突然聞き慣れた大人の男性の声が聞こえてきたので、声のした方を振り返ると、なんといつからいたのか居間の入口に俺とカズヒの実の両親が立っていた。
「うわっ!?びっくりした!?」
「にゃにゃ!?お前達は!?」
「六魔皇のアポロニアとアルテス!?」
「何故ここに!?」
俺と同じ反応を示したのがカズヒで、リンとカナン姉ちゃんとイツキは警戒体制を取った。
そう言えば、皆にはまだ教えてなかったっけ?
「おおっと、リンちゃんにカナンちゃんにイツキちゃん!
たんまたんま!!俺達は何もしねぇから!!」
「というか、まだ皆さんに正式にご挨拶してないでしょう?
それなのに、いきなり声をかけては警戒されても当然です」
「まー、確かにな。特にリンちゃんとカナンちゃんとはつい一昨日全力で戦いあったばかりだもんな!」
「その通りだにゃ!!」
「おまけに変なものまで見せられたし!!」
「変なものって、俺のちん、」
「それ以上は言わんでお父さんっ!!」
父さんが余計なことを口にしようとしたところで、カズヒが割って入った。
だが、カズヒのその台詞に、他の姉妹達は揃って驚きの声をあげた。
「「「「「おっ、お父さんっ!?!?」」」」」
「どういうことですの、お兄様、カズヒさん!?」
皆を代表して聞いてきたイツキに、俺は素直に答える。
「あー、カズヒの言った通り、二人は俺とカズヒの実の両親で、
現世での名前は、一郎と陽恵って言うんだ」
「「「「「なっ、なんですってー!?!?」」」」」
再び姉妹達の驚きの声があがる。
「というわけで、自己紹介が遅れたが、元六魔皇が一人、【奴隷使い】アポロニアこと、“藤原一郎”だ、よろしくな!」
「姉妹の皆さん初めまして、私が陽一と一陽の母親である元六魔皇が一人、【奴隷魔人】アルテスこと、“藤原陽恵”よ、よろしくね」
「ほ、本当にお二人がお兄様達のご両親、なんですのね…?」
「ああ、そしてお前達全員の親でもある!!」
「え、どういうこと、お父さん?」
「どういうことも何も、今日今から全員分の戸籍を取って、正式に俺達の娘として、皆を養ってやるって話だ!!」
「「「「「えええええええっ!?」」」」」
「それと、皆さんの学校への編入もサポートします。
と言っても、“ワールドアクア”か“ワールドシルヴァネア”、“ワールドアイラン”の三つの世界の学校の何れか、という制約はありますが、皆さんお好きな学校へ編入し、それぞれの学園生活が送れるよう、私達がサポート致します。
それが、魔王ヤミ様から頂いた最後の加護となります」
「「「「「えええええええっ!?」」」」」
色々と驚きの事実を告げる両親。
とりあえず分かったことは、明日からは俺達“シスターズアルカディア”の学園生活編がスタートする、らしい…?
『シスターズアルカディアSideB』第1部、完




