第3話「モモコVSサティス」
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ボクことモモコは、猫耳と猫尻尾に背中からは魔人の羽が生えた少女、サティスと対峙していた。
「テンダーちゃん、いや、今はモモコちゃんだっけ?
クルセイド研究所以来だね、元気にしてたかニャ?」
「そっちも、元気そうで何より…
それで、彼…、アハトンの中には…、誰の魂が入ってるの…?」
「ニャはは、最初はそっちが気になるんだ」
「彼も、ボクらの家族…、だから…」
今、ボク達の弟のムツキと対峙している少年、クローンサイボーグNo.8、アハトン。
彼は、元々魂無きアンドロイド型サイボーグとして、シロック長官の私兵とされていた。
それから兄や達と色々あって、クルセイド研究所の地下で冷凍保存されていたのだけど、同じく冷凍保存されていたクローンサイボーグNo.2、ツヴァイス共々、今目の前にいるサティスに拐われた。
そして、今ボク達の前に立ちはだかる彼、アハトンからは明確な意思を感じる、つまり、何者かの魂が宿った状態だ。
今はこうして敵対している状況ではあるけど、同じ血の流れるクローン、家族として、彼のことも助けたい。
勿論、今目の前にいる少女、サティスのことも。
「そっか、やっぱりそうなるよね…
その考え方は、とても大切で尊いことだと思うニャ。
だけど、少なくともツヴァイスに対しては、その考え方は捨てた方がいいと思うのニャ。
躾のなってない、愛すべき妹からの助言だニャ♪」
「質問に…、答えてない…
それに、ツヴァイスは、って…、どういう、」
「サービスはここまでニャ、残りのことは戦ってウチに勝ってから聞き出せばいいのニャ!」
そう言うと、サティスが右手をこちらに突き出してきたので、ボクは咄嗟に『雷化』した。
すると、ボクの周囲でバチバチと無数の“ナノマシン”がショートして壊れる音が聞こえた。
やはり、サティスは右手から“ナノマシン”を出して、ボクの身体に取り付かせるつもりだった。
でも、“ナノマシン”は高電流に弱いということだったから、『雷化』した今のボクにはもう“ナノマシン”は近付くことすら出来なくなった。
「ニャニャニャッ!?ニャにその変身!?スーパーサ○ヤ人!?」
だけど、サティスは自分の“ナノマシン”が無効化されたことより、今のボクの状態の方が気になるようだ…
「違う…、これは、ハルカ姉やの使ってた魔術を参考に…、自分なりに改良した、オリジナルの雷の魔術…、『雷化』…」
「オリジナルの魔術、ってわけか~…
ニャ~、ウチも魔術師だから分かるけど、自分の中にある魔力を放出して、自分の身体の周囲に留まらせるって結構難しいんだよ?
ウチも前世で、クソ親父から【精霊姫】とか【雷神】の伝説とか聞いてて、精霊術で出来ることなら魔術でも出来るんじゃニャ以下って、色々研究してみたことはあったけど、結局出来なかったからニャ~…
ね、ね、それのやり方教えて欲しいニャ!」
「だったら…、ボク達に協力して…」
「ま、そうニャるよね~!」
言いながら、サティスは両手を“妖猫”化させ、その爪に水を纏わせながらこちらに向かってきた。
「『風水爪』ニャっ!!」
振り下ろした右手の爪から、五本の水の刃が、こちらへ向かって飛んでくる!
ボクは右手を前に出し、五本の雷の矢を放った。
「『サンダーアロー』!」
雷の矢と水の刃が中空で激突し、相殺される。
「なかなかやるニャー!」
ボクの左前方へと回り込んできたサティスが、左手の爪に纏わせた水の刃でボクを直接切り裂こうとしてくる。
ボクは咄嗟に右太股に収納している、折り畳み式の電磁ソードを取り出し、それを遠心力で伸ばしながら、サティスの爪を受け止めた。
「ニャははー、これも受け止めちゃうかー!」
『…モモコちゃん、聞こえるかニャ?』
「…え?」
その時、目の前のサティスの口から発せられた言葉とは別に、ボクの脳内、正確には通信用に仕込まれた通信端末に、サティスからの通信が受信された。
『お、その反応は繋がったってことかニャ?
いやー、周波数特定するのに時間かかっちゃって…』
「一体、どういうつもりで…、」
『おっと、脳波通信が繋がってるのは内緒にしておいて欲しいニャ~
あくまでもジョウゴ達には内密でモモコちゃんとお話がしたいのニャ。
だから、表向きには真剣に戦っているフリをして欲しいのニャ』
「じゃあ、こんなのはどうかニャ!?」
サティスは、脳波通信を通じてボクと会話をしながらも、表向きにはボクと戦うフリをして欲しいと言ってきた。
そして本人がそう言う通り、今度は右手に闇の魔術である『シャドゥボォル』を出現させ、それを握り潰すと、爪が黒いオーラで纏われた。
「これは、ウチのオリジナル魔術、『シャドゥクロゥ』ニャ!!」
『射程が2、3メートルくらいあるから、思いっきり床を蹴って、後ろ側に4、5メートル程ジャンプして避けて欲しいのニャ』
「…っ!!」
サティスに言われた通り、思いっきり床を蹴って、背後に4、5メートル程ジャンプして回避すると、先程までボクが立っていた床に、長さ2メートル程の綺麗な五本の傷跡が刻まれた。
「おおっ!今のを避けるとはなかなかやるニャー!」
『ウチの言うことを信じてくれてありがとニャ』
「別に、これくらいどうということはない…」
『それで、どういうつもり…?
こんな脳波通信で、八百長試合みたいなことをして…、何を企んでる…?』
「ニャはは、じゃあ、次はこんなのでどうかニャ!?
『シャドゥクロゥ』、そして『風水爪』っ!!」
『君達と敵対しておいて、今更こんなことを言うのは都合が良すぎるかもしれないんだけど…、
ジョウゴやツヴァイス達を倒すのを手伝ってもらいたいのニャ』
「君の術、真似させてもらうよ…
『サンダークロゥ』…!」
『分かった…、何をすればいい…?』
『そ、そんなにあっさり!?
っていうか、しれっと、ウチが苦労して編み出したオリジナル魔術があっさりパクられた!?』
『姉妹のことを信じられなくなっなら、おしまいだから…
あと…、ボク、前世の頃から…、オリジナルの術を考えるの、得意だったから…』
「だ、だからって、こんニャにあっさり術式構造を見抜いて真似出来るニャんてっ!!」
『ニャニャニャ!?ウチの術をパクったニャ!?ど、どうやったのニャ!?』
『サティス、本音と建前が逆になってる…
まぁ、ほとんど同じ内容だけど…』
そんなこんなで、ボクとサティスは表向きは本気の戦いをしながら、脳波通信ではサティス達の置かれた状況を聞いていた。
『…ツヴァイスの中に宿った、カオルという兄や達の敵に…、人質同然の、キメラクローンのゼロワンちゃん、か…』
『正直、いきなり色々言われても信じられニャいと思うけど、事実なんだニャ…
イーディスちゃん、フォルスちゃんも、転生直後からこれまで記憶が混乱してて、君達に酷いことをしてきたけど…、ってそれはウチも同じか、イーディスちゃんの命令とはいえ、君達姉妹を傷付けた…
でも、イーディスちゃんは今は元の、優しかった頃のイーディスちゃんに戻ってる。
ウチも含めて、君達に謝罪して、罪を償いたいと思ってるのニャ。
だから、』
『皆まで言わなくていい…、ボクは、君を信じるよ、サティス…、いや、イシス…』
『モモコちゃん…、ありがとニャ。
…それじゃ、今からウチがスキを作るから、モモコちゃんは本気の一撃をウチに食らわせて欲しいニャ。
それで、ウチは君に負けたフリをするから』
『ん…、分かった…
手加減はするけど、遠慮はしないから…』
『うん、お願いニャ』
そこで脳波通信を一旦終えると、サティス改め、イシスが通信通り一瞬のスキを見せた。
そこへボクはドリル状に変形させた右腕に、雷を纏わせながらイシスの鳩尾目掛けて繰り出した。
「『サンダードリルブロー』…ッ!!」
「ニャが…ッ!?」
鳩尾から大量の血を吹き出しながら、イシスは背中から倒れた。
「ど、ドリルはやめて欲しかった、ニャ……」
「大丈夫…、急所は、外したから…」
ボクは倒れたイシスの頭を持ち上げ、膝枕をしてあげながら、傷口の止血を始めた。
「さて…、後はムツキとアハトンだけど…、
アハトンの正体は、イシスにも分からない…、ということだから、あの二人の戦いは…、ガチ、ということになる…
どうにか、ムツキが勝ってくれると…、いいけど…」
ボクはイシスの止血をしながら、二人の方へと視線を向けた時、決着が、着こうとしていた。
「うるさいうるさいうるさいっ!!
オレは…っ、お前なんて大ッ嫌いだっ!!」
アハトンが両手をムツキに向けた直後、ムツキの右腕が血渋きをあげながら吹き飛んだ…




