第2話「ヒナVSフォティス」
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「カリナ姉ちゃ!目を覚ましてっ!!」
「目なら覚めている!今のぼくはフォティス!フォルス様の忠実な僕だ!」
オイラことヒナは、必死にカリナ姉ちゃに呼び掛けたけど、カリナ姉ちゃの答えは変わらなかった。
「それより、君も本気を出さないと、ここでぼくに倒されちゃうよ!?」
カリナ姉ちゃは右手に“鬼人”の扱う呪術によって作れた武器“雷の棍棒”を構えると、それをオイラに向かって振り下ろしてきた。
それに対して、オイラも同じく右手に“雷の棍棒”を出現させて、それでカリナ姉ちゃの棍棒を受け止めた。
「ようやく本気になったか?」
「…うん!カリナ姉ちゃを元に戻すためにも、オイラは戦うよ!!」
カリナ姉ちゃを元に戻すため、オイラはレイヤ姉ちゃから教えられた方法を頭の中で反芻しながら、次の行動へと移った。
オイラ達は一旦離れてお互いに距離を取ると、カリナ姉ちゃが呪術の詠唱を始めた。
「雷の呪いよ、我が力となりて敵を討て!『ライジングボール』!」
カリナ姉ちゃが雷の呪術である『ライジングボール』を放ったので、オイラも少し遅れて同じ術を放つ。
ただし、
「雷の呪いよ、来たれ!『ライジングボール』!」
「えっ!?詠唱の省略っ!?」
術を放ったのはカリナ姉ちゃが先だったけど、詠唱を省略したオイラの術が間に合い、両者の術は二人のちょうど中間地点でぶつかり合い、相殺された。
「詠唱の省略だと…!?
そんなの聞いたことが無いぞ!?」
「ふふーん♪これはオイラ達姉妹に与えられた転生特典らしいよ!」
「転生…、特典?」
「そう!オイラ達姉妹は兄ちゃや他の姉妹達とキスをするとパワーアップ出来るんだって!
それで、パワーアップしたオイラは詠唱の省略が可能になったんだ!」
「へー、それは良いことを聞いたよ。
ちなみに、その転生特典ってのは、ぼくらにも適用されるのかな?」
「ほぇ?さぁ、どうなのかな?
でも、カリナ姉ちゃもオイラ達の姉妹なんだし、他の姉妹の誰かとキスをすればパワーアップ出来るんじゃないのかな?」
「なるほど……、ふむ、そうか、そういうことか」
オイラの言葉を聞いてしばらく目を閉じて何か考え込むような素振りをしていたカリナ姉ちゃは、その後何かに納得したように頷くと、
「雷の呪いよ、来たれ!『ライジングアロー』!!」
「うぇええっ!?」
なんとカリナ姉ちゃまで詠唱省略した術を放ってきた!
「おおっ!出来たじゃん!!教えてくれてありがとね、フィフティーナ!」
「オイラの今の名前はヒナだよ!
というかなんでカリナ姉ちゃまで詠唱省略出来るのっ!?
これは姉妹同士でキスした者同士がパワーアップ出来る…、んだけど……、まさか、カリナ姉ちゃ達…?」
「うぐっ…!?そ、そんなことは今はどうでもいいだろ!?
それより勝負の続きだ、勝負の!」
「ふーむ……、まぁ、いいや!
詳しいことは後で聞くとして、今はカリナ姉ちゃの洗脳を解く!」
予想外な展開で、カリナ姉ちゃと少し話す時間が取れたことで、余計な戦いをせずに済みそうだ。
オイラは、カリナ姉ちゃの洗脳を解くための確認作業を終え、いよいよその行動に移した。
「ぼくの洗脳を解くだって?そんなのどうやって、」
「カリナ姉ちゃ、ごめんねっ!!」
オイラはレイヤ姉ちゃから受け取っていた、カリナ姉ちゃの首輪の電流発生装置にのみ電流が流れるよう作られた専用のリモコンのスイッチを押した。
「きっ…、きゃあああああああああっ!?!?!?」
カリナ姉ちゃの身体に電流が流れる。
ゼロの作った首輪からは致死量の電流は流れないよう設計されているため、カリナ姉ちゃが死ぬことは無いと分かっていても、さすがに心苦しい。
でもカリナ姉ちゃを助けるためにはこれしか…!
そして電流がおさまったところで、床に正面から倒れ込みそうになったカリナ姉ちゃの身体を支えて、ゆっくりと仰向けにし、オイラの膝枕にカリナ姉ちゃの頭を乗せた。
「カリナ姉ちゃ、大丈夫?」
「ん…、あっ…、あれ…?サリナ、ちゃん…?」
「良かった…!洗脳解けたんだね!!」
オイラはカリナ姉ちゃの頭を自分の胸に抱き寄せて喜んだ。
「ぐぇ…っ、ちょ、サリナちゃっ、いい匂い…、じゃなくて、苦しい…」
「あ、ご、ごめんねカリナ姉ちゃ!」
「いや、おっぱい気持ち良かったから別にいいけど…
それよりどうやってぼくの洗脳、イシスちゃんの“ナノマシン”を無効果したの?」
「カリナ姉ちゃ、自分がサティスの“ナノマシン”に操られてたって知ってたの?」
「ん…、まぁ、洗脳されてた時の記憶だけは残ってるんだ。
…その、洗脳されて記憶も一時的に消されてたとはいえ、色々ゴメンね、サリナちゃん、ううん、今はヒナちゃんだったね」
「うぅん!全然気にしてないよ!
あ、それよりどうやって洗脳を解いたか、だけど、簡単だよ、カリナ姉ちゃの身体に電流を流して、脳に寄生してた“ナノマシン”をショートさせただけ」
「そ、そんな簡単な方法で…?」
「うん、いくら高性能な機械でも、許容量を超えた電流を流せばさすがにショートして壊れるから、ってレイヤ姉ちゃが言ってた」
とはいえ、カリナ姉ちゃが本当にサティスの“ナノマシン”だけで操られているのかどうかの確認をする必要はあった。
だから、オイラはカリナ姉ちゃと話している間に、オイラのサイボーグとしての能力『スキャニング』を使用してカリナ姉ちゃの全身を透視して調べ、“ナノマシン”以外に“奴隷”契約などがされていないことを確認しておいた。
「なるほどね」
「ね、それよりも!
洗脳も解けて記憶も戻ったのなら、カリナ姉ちゃもオイラ達と一緒にフォルスを、」
「ああ、そのことなんだけど、その前にぼくの話を聞いて欲しいんだ」
「え?」
それからオイラがカリナ姉ちゃから聞いた話は衝撃的な事実だった。
フォルス達の前世のこと、そして今のフォルス達の状況、そして新しいクローン姉妹、キメラクローンの存在等々…、そのことを聞いたオイラは、一つの結論を出した。
「フォルスちゃん達は実はいい子で、本当に悪いのはジョウゴとツヴァイスの身体を乗っ取ったカオルって奴なんだね!!」
「うん、まぁ、簡単にまとめるとね。
とはいえ、イーディスちゃん、フォルスちゃんにも悪い点はある、記憶が混乱していたとはいえ、ヒナちゃん達を傷付けたんだからね、そのことはきちんと謝罪してもらうつもりだから」
「うん!謝ってくれれば勿論許すよ!
謝ってくれなくても許す!
だって今のオイラ達は、血の繋がった姉妹なんだからね!」
クローンとして生まれた特殊な姉妹関係だけどね!
「うん、ありがと、ヒナちゃん。
それじゃ、ぼく達も奥へ向かおうか。
イシスちゃん達は問題無いと思うけど、アハトンやカオルは本気で君達を捕らえて利用しようとしてるからね。
だから、なんとかぼくらで彼らの裏をかかないと…、そして、」
「新しい妹、ゼロワンちゃんも助ける!だよね?」
「ああ、その通りだ!」
こうしてオイラとカリナ姉ちゃは奥へと進んだレイヤ姉ちゃ達の後を追うのでした。
「あ、それよりも!
カリナ姉ちゃも詠唱省略出来たってことは、フォルスちゃん達とキスしたってこと!?」
「うぇえぇえっ!?
いっ、今はそんなことどうでもよかろ!?」
「カリナ姉ちゃ、めっちゃ動揺してるし顔赤いし!!
これもう絶対キスしてるよね!?」
「そそそそっ、そういうサリナちゃんだって!!
そもそも姉妹の転生特典の話なんてぼく達知らなかったし!!」
「オイラ達はマイカ姉ちゃ達から聞いたんだよね。
ま、オイラとしては、ユエ姉ちゃもレイヤ姉ちゃも、他の姉妹みーんな好きだから、キスくらいはしても当たり前だと思うけどね!」
「ま、まぁ、それもそうね、好き同士ならキスくらいは、普通、よね、キスくらいなら…」
「カリナ姉ちゃ…、まさかキス以上のことまで……?」
「…ッ!!あ、あぁ、ほ、ほら!!もうあそこ!あそこで誰かが戦っとーとよ!!急がんと!!」
「後できっちりお話聞かせてもらうからねー!」




