第1話「いざ“新人類教”本部へ」
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5月26日の日曜日、いよいよボク達の姉妹であるフォルスちゃん、サティスちゃん、フォティスちゃん、そしてゼクスティーナちゃん達を迎えに行く日となったのだが、当日の朝になってアスカさんから急遽計画実行を延期するよう連絡が入った。
というのも、今朝になってフォルスちゃん達“新人類教”の本拠地がその地下にある製薬会社の方が、急遽休出となったらしく、朝から夜まで一般社員のほとんどが、地上部分である製薬会社内に常駐しているというのだ。
『なんでも、設備に重大な問題が見つかった、とかで急遽社員達を集めての緊急社内メンテが行われているらしい。
さすがにこれだけの一般社員がいる中での製薬会社襲撃は難しいだろう』
テレビ電話で話すアスカさんに対し、レイヤちゃんが深刻な顔をしながらこう言った。
「このタイミングでの休出…、まさか奴らにオレ達の計画が勘づかれたのか…?」
『分からない。
ただ、今日出勤した分、火曜日を振替休日とし、必要最低限の社員以外はその日出勤しなくていいそうだ』
「どうにも、誘い込まれているような気配がするね…」
ボクは率直な思いを口にした。
ボクのこの意見にレイヤちゃんも同じ考えを持ったようだ。
「ああ、オレもミライと同じ意見だな。
何処かからかオレ達の計画が漏れ、連中にとって今夜は都合が悪かったから急遽人を集めて計画を中止させ、わざわざ別の日に計画を実行させようとしている、そんな感じがする」
「それはつまり、連中が罠を張っている、ということ?」
「マイカ姉さんの言う通りだと思う」
「で、でも何処からオイラ達の計画がバレたの!?
ここのセキュリティは、ユエ姉ちゃ達のおかげで完璧なんじゃないの!?」
ヒナちゃんが当然の疑問を抱く。
「そのハズなんだがな…
以前クルセイド研究所に侵入したサティスとモモコが戦った際に、そのサティスの“偵察用ナノマシン”がモモコに付けられていないことはオレやユエがすでに確認してある。
だからオレ達の計画が外部にバレることはないと思うんだが…」
『かつて、まだジョウゴが現役だった時代に“新人類教”の本部を強襲しようとする秘密計画を実行しようとしたことがあり、
外部にバレるハズのないその計画が連中にバレていて、逆に返り討ちにあった、という事例があったらしい。
話によれば、ジョウゴにはいくつもの超能力があるらしく、その内の能力の一つに、こちらの秘密計画を知る何かしらの能力があったのではないか、ということだ』
「確かに、計画を立てたのはセキュリティを今みたく必要以上に完璧に整備する前のことではあったが、
それでも並大抵のことでは計画が外部に漏れることはないセキュリティレベルだったハズ…」
『ああ、その通りだ。
クルセイド研究所をベースに作られたそこ、クルセイド第2研究所(仮)のセキュリティレベルはクルセイド研究所と同程度のものだった。
外部からの力ずくによる強襲ならまだしも、内部の会話を盗聴されるような、そんな甘いセキュリティにはなっていなかった』
「つまり…、それだけジョウゴの超能力が…、とんでもない…、ってこと…」
『モモコちゃんの言う通りだ。
奴の能力は底が知れん…
今回の件はそこを考慮してなかった私のミスとも言える、本当に申し訳ない』
テレビ電話越しにアスカさんが頭を下げた。
「ま、バレちゃったもんは仕方がないでしょ」
「ええ、メイコの言う通りです。
計画がバレ、罠を仕掛けられていたとしても、我らのすることに代わりはないのでは?」
確かに、メイコちゃんとユエちゃんの言う通りだ。
「うん、そうだね。
ボクらのすべきこと、それは、」
「フォルス達と仲直りし…、家族皆で…、幸せに暮らす…」
「ああ、その通りだ。
というわけで、今夜の計画実行は中止だが、明後日、28日火曜日の深夜に改めて計画実行だ!
誰か異論はあるか?」
レイヤちゃんの問に、皆が首を横に振る。
ここにいる全員、ムツキ君のハーレムメンバーも含めて同じ思いというわけだ。
「じゃあ、改めて5月28日火曜日に、六本松市の製薬会社地下施設、“新人類教”秘密研究所に強襲をかける!
各自、それまでに体調を万全に整えておくように!」
「「「「「了解っ!!」」」」」
思いも新たに、ボク達は新たな姉妹達を迎えに行く準備を進めるのだった。
*
それからあっという間に二日経ち、28日の火曜日深夜、ボク達はナンヨウ県六本松市の旧国立大学跡地に建つ製薬会社にやって来た。
すでに一時間ほど前からユエちゃんが“ミクロネットワーク支配”によって製薬会社施設内の全てのネットワーク機能を支配し、その上でムツキ君のハーレムメンバーの一人であるミナ・ヴィルムちゃんが“ハイパーリンク”によって監視カメラにハッキングし、ダミー映像を流すよう細工が施されており、ボク達はいつでも悠々と製薬会社内に侵入することが出来るようになっていた。
ただ、このままでは、まだ施設内に残っている数人の社員達(今残ってる大半は“新人類教”の隠れ教徒だとは思うが、一般人との区別がつかない)を巻き込んでしまうため、彼らを無傷で無力化しなければならない。
そのために、ムツキ君のハーレムメンバーである一人、ミホ・モトサカちゃんと、ルリナ・ホルンちゃんの力を使う。
まず、ミホちゃんの超能力『水分子操作』で、製薬会社内に霧を発生させる。
その霧に乗じてルリナちゃんの忍術『幻術催眠』という術を使う。
なんでも、霧などで視界がぼんやりした状態だと、より幻術がかかりやすくなるそうだ。
この『幻術催眠』という術は、かけられた人達に一種の幻覚を見せている状態にすることで、現場では何事も無かったと社員達に思わせることが出来る。
これだけでも侵入するには十分なのだが、念のため、ナナカ姉さまには『変化』を、ムツキ君ハーレムメンバーのムツミ・ルッキーナさんとエリカ・ハントちゃんには、ルリナちゃんの忍術『変化の術』(最大でニ人までかけられるらしい)をかけてもらい、三人で電話対応窓口の職員になりすまし、深夜のクレーム対応などに対応してもらうことにしている(ここの会社はテレビ電話のため、念のための変装というわけだ)。
ここまでの準備段階で、ムツキ君のハーレムメンバー全員と、ユエちゃん、ナナカ姉さまの七人が動いている。
残りのボクことミライと、モモコちゃん、ムツキ君、メイコちゃん、そしてレイヤちゃんとヒナちゃんの六人が実戦メンバーとして、“新人類教”の拠点のある地下へと向かうことになる。
マイカ姉さまとアスカさんはクルセイド第2研究所(仮)で待機してもらっている。
そんなこんなで、堂々と製薬会社内に侵入したボク達は、ユエちゃんの案内により、一般社員の立入が禁止されている、幹部以上の人間のみが入れる区画へとやって来た。
その区画の奥に、地下への隠し入口があった。
一見すると巨大な金庫を思わせるような回転式の扉があり、ユエちゃんがいとも簡単に開ける(扉を開けるには6文字のアルファベットを入力する必要があったのだが、セキュリティシステムを掌握したユエちゃんにとっては何の問題もなかった)と、その先は地下へと続くエレベーターとなっていた。
「じゃあ、ユエはこの扉の前で待機していてくれ」
「了解です、レイヤ姉上様」
「よし、ではミライ、モモコ、ムツキ、メイコ、ヒナ!行くぞ!」
「「「「「了解っ!」」」」」
ボク達はエレベーター内に入り、地下へと潜っていった。
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エレベーターが止まり、回転扉が自動で開くと同時に、何者かが襲いかかってきた!
「やぁああああああっ!!」
「させないよっ!!」
咄嗟にヒナちゃんが前へと出て、その何者かの攻撃を受け止めた。
「へー、やるじゃないか…、
確かアンタは、フィフティーナ、だったか?」
「その名前はもう捨てたよ、オイラの今の名前はヒナ!
そして、前世の名前はサリナ、君の妹だよ、思い出して、カリナ姉ちゃ!!」
「…何のことか分からないよ。
ぼくの名前はサイボーグNo.14、フォティス。
フォルス様の忠実な僕さっ!!」
襲いかかってきたのは、ボク達の姉妹の一人、フォティスちゃんだった。
「皆っ!カリナ姉ちゃはオイラが相手をするから、皆は先に行って!!」
「ああ!気を付けろよ、ヒナ!」
「うん!」
フォティスちゃんの相手をヒナちゃんに任せ、ボク達は先へと進むことにした。
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先へ進むと、今度は二人の少年と少女が、通路の真ん中で待ち構えているのが見えた。
「やぁ、待ってたニャよ、ツキヨちゃん達♪」
「………」
ネコ耳に布面積の少ないビキニアーマーの少女がサティスちゃんで、無口な男の子の方が、先日クルセイド研究所から盗まれたアハトン君か。
どうやら、アハトン君の中には誰かの魂が転生しているようだ。
となると、彼はサイボーグであると同時に超能力が使える可能性がある…?
「レイヤ姉や達…、サティスの相手は…、ボクが…」
「じゃあ、アハトンの相手は僕がするよ」
そう言って二人の前に立つモモコちゃんとムツキ君。
「ムツキ君、気を付けてね、アハトン君は、」
「分かってるよ、ミライ姉さん。
アハトンは超能力者の可能性がある、でしょ?」
「うん、だから油断しないでね?
それからモモコちゃんも」
「大丈夫…、言うことの聞かない姉妹を…、しつけるだけ…、だから…」
「ニャはは、それは困ったニャ。
ウチのご主人様はイーディスちゃんだけだからニャ~。
そう簡単にはしつけられてやらニャいニャよ?」
なんとなくだけど、サティスちゃんとは話せばなんとかなるような気がしてるんだよね。
…だけど、その辺も含めてここはモモコちゃんに任せよう!
「モモコ、ムツキ、頼んだぞ!」
さらに奥へと進むボクとレイヤ姉さまとメイコちゃん。
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それからしばらくして、かなり広いホールに出た。
小さめの体育館といった感じの作りで、奥には二階に当たる部分から内側に2、3メートル四方のスペースが突き出ており、そのスペースからさらに先に繋がる部屋があるようで、その部屋から三人の男女が出て来た。
ちょうど壇上におエラいさんが現れて、ボク達はさながらそのおエラいさんの言葉を下から見上げながら待つ民衆という感じだ。
「やぁ、待っていたよレイブンにドライン、ナインス、
いや、今はレイヤにミライ、メイコ、と名乗っていたか?」
「あぁ、わざわざ迎えに来てやったよ、フォルス。
イザヨイも、待たせて住まなかったな」
「ツキヨ…!」
現れたのはフォルスちゃんとイザヨイちゃん、そしてもう一人の男はクローンサイボーグNo.2、ツヴァイス…だけど、
「お前達とは初めまして、だな。
俺の名はカオル・ヴィンヤード6世、こことは違う世界“ワールドフラワレス”ではお前達の姉妹と、兄と名乗る男に大変世話になった」
「か、カオルって、まさか…!?」
「ああ…、アニ君達から聞いてるよ、ハルカ姉ちゃんやサクヤ姉ちゃんを改造したクソ野郎だってことはね…!」
「おっと、一つ訂正させてもらうが、サクヤはビランテに吸収されたことでビランテ化したのであって、俺が直接改造したわけではないぞ?」
「でも、サクヤ姉さまを利用したのは事実でしょう?」
「ま、発見した物をどう使うかは発見者の自由だからな」
まさか、ツヴァイスの身体に、よりにもよってあんな奴の魂を転生させるだなんて…!
「さて、挨拶もそこそこに、せっかく来てくれたんだから、丁重なおもてなしをしないとな♪」
そう言いながら、フォルスちゃん達がボク達の前に飛び降りてきた。
レイヤちゃんの前にイザヨイちゃん、メイコちゃんの前にカオル、そしてボクの前にフォルスちゃんだ。
「さぁ、殺し合おうじゃないか!」




