第2話「Sister's War After Side①」
*
翌日、ボク達は再びクルセイド研究所へとやって来ていた。
ちなみに服は、イツキちゃん達の服を借りて着ている。
研究所の地下室(ここは元々マコト姉さま達がコールドスリープしていた場所だそうだ)へ連れて来られたボク達は、その部屋の中にある四つのカプセルの内、三つのカプセルの中に三人の男女が入れられているのが目に入った。
「ま、まさか…」
「昨日、シロック氏から助け出した、ツヴァイス兄さんとフィフス姉ちゃんとアハトンだよ」
三人とも、クローンサイボーグとしてゼロによって作られたが、肉体に魂が宿らなかったため、脳にAIチップを埋め込まれてアンドロイド型サイボーグ兵器として、シロック・アソウという国防省長官に渡された“家族”四人の内の三人だ。
三人とも今はAIを破壊されていて、静かに眠りについている。
三人は、昨日ボク達が眠っている間に、兄さまとハルカちゃん、メイコちゃんとナナカ姉さまによって助け出されたらしい。
その時に何があったのか、兄さま達が話してくれた。
*
ヨウイチがゼロを倒した後、ゼロの基地があった関門海峡に浮かぶ無人島、竜眼島が爆発した。
正確にはその地下にあったゼロの基地が自爆装置によって爆発、消滅した。
竜眼島は、個人の所有する島となっており、現在はキュウシュウ国の国防省長官、シロック・アソウ氏の物となっていた。
竜眼島の爆発を知った、国防兵団第3小隊の隊長であり、アインスの前世であるマイ・イェーガの妹の子孫にあたるアスカ・イェーガは、事前に知っていた情報などから、この爆発の裏にヨウイチ達が関わっているとにらみ、連絡をとった。
「やぁ、ヨウイチ君、今大丈夫かい?」
『ええ、大丈夫ですよ、アスカさん。
このタイミングで連絡してきたということは、竜眼島の件ですか?』
「いや~、話が早くて助かるよ。
ということは、やはりクローンサイボーグが絡んでいるわけだね?」
『ええ、その通りです、実は…、』
ヨウイチはアスカに、竜眼島でのことと、ゼロに資金援助をしていたシロック長官のこと、そして残りのクローンサイボーグ達がシロック長官の元にいるので、彼らを助けたいということを話した。
「手を貸して貰えるのはありがたいが、
君はそのゼロという少年と一戦交えたばかりなのだろう?」
『自分は問題ありません。
肉体的怪我も体力も全て完璧に回復してますので』
「分かった、では先に私の小隊をシロック氏の屋敷へ向かわせて屋敷を包囲しておこう。
さすがに爆発してから1時間程しか経っていないし、シロック氏も状況確認をしないと動くに動けないだろうから、まだ屋敷にはいるだろう」
アスカの予想通り、シロック長官はまだ自身の屋敷にいた。
自身の所有する竜眼島が爆発したことは知ったが、そこで何が起こったのかまでは分かっていなかった。
シロック長官は自室で、ゼロと連絡を取ろうとしていたが、全く連絡が取れないことから、ゼロに何かあったのだろうということは予想が出来た。
「くそっ…、ゼロのヤツ一体何があったっていうんだ!?
基地が爆発するなんて…
まさか、イェーガのヤツにバレたのか…?
いや、だとしても、竜眼島のことは何故、どこからバレた…?」
状況が分からないシロック長官は、軽くパニック状態になっていた。
シロック長官の一族、アソウ家は、イェーガ一族に政争で幾度も敗れており、シロック長官としてはイェーガ一族に個人的な恨みを抱いていた。
そんな折に、竜眼島でかつて行われていた実験“クローンクルセイド計画”のことを知り、秘かにその研究を復活させた結果、ゼロという“完成品”が生まれ、そのゼロによって、“アンドロイド型サイボーグ兵器”という永遠に死ぬことの無い不死の兵士達をも手に入れることが出来た。
これらの兵士と、“レジスタス”というテロリスト集団を利用することによって、自らの力をキュウシュウ国の民に知らしめ、イェーガ一族から覇権を奪い取る計画を立てていた。
しかし、テロ事件はまさかのアスカ・イェーガの私兵(だとシロック長官は考えている)である四人の姉妹達によって解決され、彼女達を抹殺するよう依頼したゼロとは連絡が取れなくなるどころか、ゼロの基地であり研究所でもあった竜眼島が爆発してしまった。
次々入ってくるシロック長官の個人部下からの連絡も的を得ず、どう行動すべきか判断を迷っていたシロック長官だったが、しばらくしてアスカ率いる第3小隊がシロック長官の屋敷に向かっているという情報を得るや、一旦屋敷を捨てて身を隠すという選択肢を選ぶことにした。
そのために、最低限必要なモノとして、クローンサイボーグ最強の戦士であるフォルスだけを連れていくことにした。
残りの兵士達は、少々勿体ないが、時間を稼ぐための捨て駒とする。
それに、これから向かう場所に行けば…
シロック長官は、自身の部屋にフォルスを呼び出した。
『お呼びですか、マスター』
数秒で部屋にやって来たフォルスの見た目は、大事な所が隠されていない真紅のボンテージ服を身につけた16歳前後の、ロングヘアーでつり目、口元には八重歯がのぞく少女だった。
だが、その実態は全身を武器に改造された、ゼロからは通称“死神”と呼ばれていたアンドロイド型サイボーグ兵器だった。
「フォルス、キサマに私の護衛を命じる。
ここから脱出し、我が隠れ家に着くまでの間、私を死守せよ」
『仰せのままに』
と、そのタイミングで、シロック長官の屋敷の外に国防兵団第3小隊の隊員達が集まり、屋敷を包囲し始めた。
シロック長官の屋敷はニューモジ港地区の海沿いにある小高い岸壁の上に建っており、正面さえ塞いでしまえば背後は岸壁のため、そう簡単に逃げられるハズがなかった。
『シロック・アソウ長官、貴殿に国家転覆の容疑がかけられている。
大人しく屋敷から出てくるのなら武力行使は行わない。
しかし、このまま屋敷に籠るというのなら、容赦はしない』
「…ちっ、もう第3小隊がここに来たか。
仕方がない、ツヴァイス、フィフス、アハトン、第3小隊の連中を潰せ」
『了解』
シロック長官が無線機で三人のアンドロイド型サイボーグの脳に仕込まれた受信機に向けて直接指示を出すと、三人からの返事が無線機を通じて帰って来た。
「よし、奴らが時間を稼いでいる間に……」
シロック長官は、屋敷の地下に作った秘密の抜け道へとフォルスと共に向かうのだった。
一方その頃、ヨウイチとハルカとナインスとゼブンは、アスカと合流し、シロック長官の屋敷へと向かっていた。
「むっ…、ムツミ君、どうした?…なんだって!?」
「アスカさん、どうかしましたか?」
「ああ、ヨウイチ君、どうやら君達の“家族”が屋敷から出て来て、私の部隊と戦っているらしいぞ」
「なんだって!?」
アスカは身体の一部を改造した部分的サイボーグ兵士で、太ももに武器を仕込んでいたり、空を飛ぶためのジェット噴射を足の裏に仕込んでいたり、部隊のメンバーと連絡を取り合うための通信機を脳内に埋め込んでいたりしている。
今も、足のジェット噴射で空を飛びながら、脳内に埋め込んだ通信機で部隊メンバーとやり取りをしている。
「…ふむ、そうか、こちらも急いで向かっているから、それまでなんとか持ちこたえてくれ。
ヨウイチ君、どうやら君達の“家族”はなかなかに強いらしい。
特に、“5”と書かれた錠前を首に付けた少女は、その見た目からは想像も出来ない程の怪力少女で、さらにはその裸同然のセクシー過ぎる衣装で男だけでなく女の兵士達をも次々と悩殺しているらしいぞ」
「“5”って言うと、フィフス姉ちゃんだね!」
「裸同然のって、まさかフィフス姉ちゃん達もボンテージ服を着せられてるのか!?」
「うん、姉ちゃん達は皆ボンテージ姿だよ。
フォルス姉ちゃんもフィフス姉ちゃんも、“加速装置”が装備されてないし、魂も存在していないから、むしろ無防備な分だけ、敵の油断を誘えるからって理由らしいよ?
さすがに兄ちゃん達は普通の戦闘服を着てるけどね」
ゼロは、シロック長官に渡したアンドロイド型サイボーグの四人にはあえて“タキオン粒子”を注射しておらず、“加速装置”の機能をオミットしていた。
それは、ゼロもかつてのヨウイチは、と同様、“タキオン粒子”の存在を隠しておきたかったからだが、その理由はヨウイチの世界の軍事バランスの崩壊を防ぐという平和的理由とは違い、自分達だけが技術を使えればよいという身勝手なものだが。
「おのれぇっ!!
姉ちゃん達の裸をこれ以上他の奴らに見られてたまるかぁああああっ!!
ハルカ、ナインス、ゼブン姉ちゃん、“加速装置”だぁああああっ!!
というわけでアスカさん、俺達は先に行くから!」
「ああ、構わないよ、存分に暴れて来てくれたまえ。
シロック長官の屋敷はこのまま真っ直ぐ飛んだ先だ。
崖の上の大きな屋敷だからすぐに分かるだろう」
ヨウイチ達は“加速装置”を起動させて(ヨウイチは、雷の精霊術である『スピリット』を使い、“雷化”した上で“加速装置”を、ハルカは雷の魔力を纏って“擬似雷化”して)、あっという間にシロック長官の屋敷の真上へと辿り着いた。
“加速装置”を一旦解除したヨウイチ達の前に、屋敷から、背中に飛行機の両翼のような羽を装備した少年が上昇してきた。
彼の戦闘服の隙間からちらりと見える首輪には“2”と書かれた錠前が付いているのが見えた。
「ツヴァイス兄ちゃん…!」
年齢は18歳くらいのその少年を“ツヴァイス兄ちゃん”と呼んだナインス。
「ツヴァイス兄ちゃんは、空中戦闘に特化したタイプのサイボーグだよ」
「空中戦闘なら、アタシに任せて貰おうかしら」
そう言ってツヴァイスの前に立ったのは、背中からギラドの翼を生やし、両手両足に金の鱗とギラドの爪を纏った遥かにだった。
「アニぃ達は他の“家族”達を」
「ああ、分かった!」
ヨウイチとナインスとゼブンは、小隊達が戦っている屋敷の正面へと降り立った。
小隊達は、たった二人の少年と少女に壊滅状態に追いやられていた。
少年の方がアハトンで、少女の方がフィフスだろう。
とりあえずヨウイチ達は、中心で小隊の指揮を取っている女性の元へと向かった。
その女性が、ヨウイチ達に気付いたようで、敬礼をして話しかけてきた。
「あなた達がヨウイチさんとその姉妹の方々ですね!
話はアスカ隊長より伺っています、私は副隊長のムツミ・ルッキーナです!」
「初めまして、ムツミさん、ヨウイチです。
すいません、担当直入にお伺いしますが、シロック氏ともう一人サイボーグの女の子がいたと思うのですが?」
「もう一人のサイボーグ?
いえ、屋敷からはシロック長官共々出てきていません」
「となると、フォルスはまだ屋敷の中、か…」
「アニ君、フィフス姉ちゃん達はわたし達で対処するから、」
「ヨウイチさんは屋敷の中のフォルスさんの元へ向かって下さい」
「ああ、ナインス、ゼブン姉ちゃん、頼んだ!」
ヨウイチが屋敷の中へ向かおうとすると、目の前に緑色のボンテージ服を着たフィフスが、幅30センチメートル、高さ5メートルはあろうかという巨大な棒(屋敷を支える柱を強引に折ったものと思われる)を両手で振り上げ、ヨウイチに向かって振り下ろしてきた。
「フィフス姉ちゃんの相手はわたしだよ!!」
そこへナインスがフィフスの腹にタックルを仕掛けた。
フィフスは後ろへ吹き飛ばされ、持っていた柱から手を離し、柱はそのまま地面に落下した。
「サンキュー、ナインス!」
ヨウイチはそのまま進んで屋敷の中へと入っていった。
一方、ゼブンはもう一人のサイボーグ、アハトンの方へと向かって行く。
その間にムツミは、怪我人の治療などを行うために、小隊のメンバーを引き上げさせる。
「アハトン、同じアンドロイド型サイボーグとして、私はあなたを止めさせていただきます」
『…識別、サイボーグNo.7、ゼブン。
あなたを敵と認証、これより排除行動に移行する』
そう言うと、アハトンは持っていた“スーパーガン”から、ゼブンの足元目掛けてレーザー光線を発射した。
ゼブンはその光線を軽くジャンプして避けるが、ジャンプした所を、足の裏のジェット噴射を起動させてで突っ込んできたアハトンに捕まり、そのまま崖下へと落ちていき、海中へと消えていった。
「ゼブン姉ちゃん!!」
ナインスは海へと落ちたゼブンを助けに行こうとしたが、目の前に巨大な岩が飛んで来たため、助けに行くことが出来なかった。
『…識別、サイボーグNo.9、ナインス。
あなたを敵と認証、これより排除行動に移行する』
「フィフス姉ちゃん、怪力特化型のサイボーグ…!」
ナインスが振り向いた先には、地面から掘り起こした巨大な岩を頭の上に抱えたフィフスがいた。
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『…識別、不明、一般市民。
あなたは敵ですか?敵ならば排除させていただきます』
空中でハルカと向かい合ったツヴァイスが尋ねた。
「そうね…、残念ながら今は敵、ということになるのかしら?」
『…であるならば、あなたを敵と認証、これより排除行動に移行する』
ツヴァイスは背中の翼と両足、そして両手の裏から合計6つのジェット噴射を起動させ、目にも止まらぬ速さでハルカの目の前に迫った。
ハルカは“疑似雷化”で避けると、左手の指先から電撃を放った。
しかし、ツヴァイスは両足のジェットを進行方向の逆に向けて速度を落とすと、両手のジェットで器用に方向転換し、ハルカの放った電撃を避けると、再び背中と両足のジェットでハルカの方へと向かってきた。
その後も、ハルカはツヴァイスの音速を超えた体当たり攻撃を避けながら、電撃を放つなどの反撃を行うが、その全てが避けられ、お互いに有効打がないまま千日手のような状況に陥っていた。
「空中戦闘特化型なだけあって、空中軌道がエグい上に、
6つのジェット噴射の速さはアタシの“擬似雷化”とほぼ同じ、か。
これで彼に“加速装置”があったらと思うとゾッとするわね…」
とはいえ、このままでは埒があかないのも事実。
以前ナインスを操っていた装置を破壊した際にやったように、意識を集中させてツヴァイスを動かすAIチップだけをピンポイントで破壊しようにも、それを出来るだけの余裕がない。
「…こうなったら、仕方がない、か」
ハルカは覚悟を決めて、体当たりを仕掛けてくるツヴァイスを紙一重で避けると、その背中に回り込み、両方の翼を掴んだ。
ツヴァイスは、ハルカを振りほどこうと上下左右にランダムに飛行するが、ハルカは掴んだ翼を離さない。
「ツヴァイス兄ぃ、許してね…!」
そう言うとハルカは、両手からツヴァイスの全身に、ありったけの魔力を込めた電撃を放ち、ツヴァイスの体内に直接電流を流し込んだ!
『ガッ…、ガガガガガガガガッ!?!?』
ハルカは魔力切れギリギリまで電流を流し続け、ツヴァイスの脳に埋め込まれたAIチップをそのまま焼ききった。
『アッ…、ガッ……!』
「お休みなさい、ツヴァイス兄ぃ…」
ツヴァイスは機能を停止し、そのままハルカと共に地面へと落下していく。
ハルカは、最後の魔力を振り絞ってなんとかギラド化を維持しながら、その背中の翼でゆっくりと速度を落としながら、地面に降り立った。
地面に降りると同時に魔力がきれ、ハルカの背から翼が消え、両手両足の鱗と爪も無くなった。
「ちょっと強引だったけど…、なんとかなったわね」
ハルカはゆっくりと動かなくなったツヴァイスの身体を地面に横たえると、他の姉妹達の戦いを見守るのだった。
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海中へと落ちていったゼブンとアハトン。
ゼブンと少し距離をとったアハトンは戦闘スーツの上を脱ぎ捨て、上半身裸になると同時に、左手首に巻かれたバングルのスイッチを押した。
すると、アハトンの上半身が銀色の鱗のような皮膚に変わった。
(しまった!彼は水中戦闘特化型のサイボーグ!!)
ゼブンが気付いた時には、アハトンの両足がスクリューのように変化しており、そのスクリューで物凄い速さでゼブンに突っ込んできた!
ゼブンは避けきれず、海中の岩に押し込まれた!
「ガボボボボッ!?」
さらにアハトンはゼブンに馬乗りとなり、パンチを連打する!
「ガッ…、ガボッ!ガボボボボッボボッ!!」
(これは…、マズイですね…!圧倒に不利…!)
水中を自在に、高速で動き回れるアハトンに対し、今のままではゼブンは不利。
(でしたら、一か八か、試してみましょうか…!)
ゼブンは脳内でとある生物を思い浮かべた。
(…変化っ!!)
次の瞬間、戦闘スーツだけを残してゼブンの姿が消えた。
アハトンは誰もいなくなった岩を殴り付けていた。
((消えた!?馬鹿な、一体何処に…!?))
アハトンが岩の上に立ち上がり辺りをキョロキョロ見回していると、突然、アハトンの目の前に、戦闘スーツを着た2メートル程の大きさのサメが現れたのだ。
((なっ…!?))
(ごめんなさい、アハトン君…!)
完全に不意を突かれた形となったアハトンは、避ける間もなくそのサメに頭部を噛みつかれ、そのキバの先から流された電流により脳内のAIチップが破壊され、その機能を停止した。
アハトンの頭部から離れたサメは、直後、ゼブンの姿に変わった。
(…ふむ、どうやら上手くいったようですね)
ゼブンは機能を停止したアハトンの体を抱いて海上まで上がった。
「ふぅ…、私達はアンドロイド型サイボーグ故に、酸素が無い状況下でもある程度は活動出来ますが、
やはり水中よりは空気中の方が何倍もいいですね」
そう言いながらアハトンを抱えたまま両足のジェット噴射で空を飛び、シロック長官の屋敷のある岸壁の上まで戻るゼブン。
「人間のクローンとして生まれながら、角と尻尾が生えてきたテンダーさんの話を聞いて考えたのです。
テンダーさんの魂が、“バイオヴァリアブルメタル”に影響を与えて、その肉体を魂の在り様に変化させたのなら、
魂の無い私の肉体は、どうなるのだろうか、と」
ゼブンの身体は、脳や一部の臓器を除いてほとんどが“バイオヴァリアブルメタル”で作られたクローンサイボーグだが、その身体に魂は宿らなかった。
同じく身体のほとんどを“バイオヴァリアブルメタル”で改造されたテンダーは、その身体に前世で魔人だった魂が宿った結果、魔力と魔人の証である角や尻尾が生えてきた。
魂の在り様が“バイオヴァリアブルメタル”に影響を与えるのであれば、魂の存在しない肉体にはどのような影響を及ぼすのか?
その答えが、ゼブンの能力“形態変化”である。
魂を持たない故に、あらゆるものに変化する可能性を持った存在、それがゼブンなのだ。
アハトンからの攻撃を受けていた時、ゼブンはまず岩に変化した。
戦闘スーツまでは変化しないため、アハトンからすると、ゼブンが戦闘スーツだけをその場に残して消えたように見えた。
そうしてアハトンが立ち上がったタイミングで、岩の上から動いたゼブンは、次に“電気サメ”に変化し、アハトンに不意打ちを仕掛けた、というわけだ。
「しかし、“電気サメ”という架空の生き物にまで変化できるこの力、
“バイオヴァリアブルメタル”とは一体何なのでしょうか…?」
岸壁の上に戻ってきたゼブンは、同じく戦闘を終えたハルカのところまでやって来た。
「ゼブン姉ぇ、そっちも終わったのね」
「ええ、ハルカさんの方もご無事のようで」
「となると、後はナインスとフィフス姉ぇ、兄ぃとフォルス、か」
「はい」
二人の視線の先には、戦うフィフスとナインスの姉妹の姿があった。




