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シスターズアルカディアSideB-Brand new Sisters-  作者: 藤本零二
第2章~Extra Number of Sisters~
24/58

第7話「再戦へ向けて」

*


「…そうして捕らえた超能力者らの証言から、

 近々コクラ駅で大規模な“新人類教”による自爆テロが計画されていることを知ったオレ達は、

 一週間後の18日にコクラ駅周辺で張っていたら、実際に事件が起こり、」


「ボクとモモコちゃんと初めて出会った、というわけだね」


「そういうこと。

 後はもうそんなに話すことはないかな」



 レイヤちゃんの話がようやく現在のボク達の状況に追い付いた。

 それにしても、まさか“ハットリ組”の壊滅がレイヤちゃん達の仕業だったとは…


 話が終わった頃には、朝食はとっくに済んでおり、今はメイド服を着たナナカ姉さまの淹れてくれたコーヒーを飲みながら一息ついていた。



「本当は、フォルス達の一件が片付くまでは皆を巻き込むつもりは無かったんだ。

 姉妹同士で争うのはオレ達だけでいいと思ってた」


「そんなの、いいわけないじゃない。

 姉妹の問題は姉妹全員で解決しないと、ね?」



 マイカ姉さまの言う通りだ。

 今はこの世界にいないが、兄さまなら、絶対に何があろうと関わろうとするだろう。

 ボクも同じ思いだし、他の姉妹もそうだろう。



「…そうだよな、すまない。

 というわけで、改めてになるが、イザヨイことゼクスティーナと、」


「我らの姉妹、カリナことフォティスを助けるために、手を貸していただけますか?」


「勿論よ!」


「ん…、望むところ…」


「それに、出来ればフォルスちゃんとサティスちゃんも、説得してボク達の姉妹として、仲良く出来るように」


「…ん、ああ、そうだな、その通りだ。

 フォルス(デス)サティス(シス)とは、オレ(ツキヤ)ヨウイチ(サウ)にとっては前世からの因縁の相手ではあるが、

 その時だって、たまたま所属してた組織が敵同士で、それで争っていただけに過ぎない。

 きちんと話し合えば、今のオレ達には殺し合う理由はないから、彼女らとも仲良く出来るかもしれないな…」



 と、そのタイミングでアスカさんがやって来た。



「やぁ、おはよう諸君」


「「「「「おはようございます」」」」」


「皆が揃っているならちょうどいい、いくつか君達に報告がある。

 良い報せと、とても良い報せ、どちらから聞きたい?」


「え、普通そう言うのって良いか悪いかじゃないの…?」


「なんだ、メイコちゃんは悪い報せがあった方が良かったのか?」


「いえ、そういうわけじゃないんですけど」


「じゃあじゃあ!良い報せから聞きたいでーす!」


「うむ、相変わらずヒナちゃんは元気がいいな。

 よろしい、では良い報せからだが、先の超能力者による婦女子誘拐監禁事件にて、超能力者の魂の一部を入れられて操られていたムツミ君だが、

 今朝までの経過観察の結果、特に後遺症もなく、体調に問題は無さそうとのことだ。

 とはいえ、念には念を入れて今日一日は病院にいて安静に過ごしてもらうつもりだが」


「そっか、良かった!」


「では、とても良い報せとは?」


「うむ、(くだん)の事件の犯人である超能力者の男から得た情報により、フォルス達のいる場所が分かった」


「本当ですか!?」


「ああ、どうやら彼らは今ナンヨウ県の六本松市、かつて国立大学のあった場所に建てられた製薬会社の地下に潜んでいるらしい」



 予想外な地名が出て来て驚くボク達。

 ナンヨウ県六本松市、と言うと兄さま達の世界(ワールドアクア)で言うと、福岡県福岡市中央区にある六本松のことだろう。



「製薬会社の地下…?なんでそんな所に?」


「ああ、その製薬会社を調べてみたんだがな、どうやらその会社も“ハットリ組”と同じく、ジョウゴ氏の血縁関係にある者達によって作られた会社らしい」



 またしても“新人類教”の教祖であるジョウゴに関係のある組織か…



「どうやら、ジョウゴ氏は生前に集めた資産や土地などを上手いことバラけさせ、自分との関係がばれないよう子孫達に上手く管理させていたようだ。

 …いつ、自分が復活してもいいようにね」


「と言うことは、やっぱりジョウゴは…」


「ああ、復活しているようだよ。

 一度は自殺した彼の魂を呼び戻し、別の身体に定着させたのはジョウゴ氏らしい」



 やはり、フォルスちゃん達の裏にはジョウゴが絡んでいたわけか。



「“ハットリ組”にしても、(くだん)の製薬会社にしても、彼の残した“負の遺産”の一つだろうね。

 …ただ、この製薬会社に関しては表向きには何の問題もない、優良企業であるのがもどかしいところだね」


「表向きには優良企業ということは、“ハットリ組”みたいに強引に乗り込んで壊滅させる、みたいな方法は使えないわけか」


「レイヤ君の言う通りだ。

 …しかしまぁ、その辺の言い訳はどうとでも()()()

 だから、この件に無関係な一般の製薬会社社員の皆さんさえ傷付けてくれなければ、後の処理は全て私がなんとかしよう」



 改めて、アスカさんってとんでもねぇ人だなと思いました…



「アスカさんだけは…、敵に回したくない…」


「それはこちらも同じだよ、モモコちゃん。

 とはいえ、少なくとも私から君達の敵になることは絶対に無いと約束しよう」



 さて、フォルスちゃん達の居場所が分かったとなると、後はそこへの侵入手段と、彼女達への対処方だけど…



「侵入手段に関してはユエのサイボーグとしての能力で、製薬会社のシステムをハッキングしてしまえばなんとかなるとは思うが…」


「確かに、我の能力でシステムの制圧は可能ですが、

 しかしそうして侵入したところで、一般の社員の方々を傷付けずに済ませるというのは、中々難しいかと…」



 ユエちゃんの能力“ミクロネットワーク支配”で、製薬会社のシステムを制御できても、中で働く一般社員の人達まではどうしようも出来ないもんね。

 すると、アスカさんがこんなことを言った。



「それに関しては、彼女達、ムツキ君のハーレムメンバーの子達の力を使えばなんとかなると思う」


「ムツキ君の?」


「ああ。

 ルリナちゃんの忍術とミホちゃんの水を操るという超能力の合わせ技でなんとかなるだろう」


「しかし、オレ達“姉妹”の問題に彼女達を巻き込むのは…」


「彼女達もすでに関係者さ。

 ムツキ君の彼女候補というだけでなく、ムツミ君は“新人類教”の起こした事件の被害者でもある。

 むしろ、我々が関わるなと言っても、彼女達は聞かないだろう」


「…分かりました、これ以上の被害や犠牲者を出さないためにも最善を尽くした方がいい。

 であれば、使える手は出来るだけ使うべき、ですね」



 製薬会社への侵入手段に関してはなんとかなりそうだ。

 であれば、あとはフォルスちゃんたちへの対応だけど…



「それに関してはちゃんと考えてある」



 そう答えたのはレイヤちゃんだ。



「と言っても、オレの中のゼロの記憶を元に思い付いた策だけどな」


「それって、まさか…!」



 レイヤちゃんの台詞に、マイカ姉さまが何か思い当たったようだ。



「マイカ姉さん的にはあまり思い出したくない記憶かもしれないけど、

 姉妹達を確実に助けるには、お互いに無傷で、というわけにはいかないと思っている。

 であれば、お互いに最低限の被害で済むように、非情になることも必要だ、と」



 そこまで言われて、ボクもレイヤちゃんの策が何か分かった。



「そうか、ボク達の首に装着された首輪、“電流発生装置”。

 それを起動させるための遠隔リモコンみたいなのを作るわけだね?」



 レイヤちゃん以外のクローン兄姉弟妹(きょうだい)に装着された首輪、これはゼロが自分達を従わせるために装着した、絶対に外せない仕様の“電流発生装置”だ。


 かつて、ゼロが兄さまの頭脳を手に入れるために、マイカ姉さまを人質にし、ボクらが兄さま達との戦いで負ければマイカ姉さまに電流を流すと脅して、ボクらを無理矢理戦わせたが、兄さまはその目論見を読んだ上でわざとゼロに“電流発生装置”を使わせ、気絶したマイカ姉さまをカズヒちゃんの『物質転移』で助け出した(カズヒちゃんの『物質転移』では、基本、生物を転移させることが出来ないが、意識を失った状態であれば転移させることが出来るため)。



「ああ、ミライの言う通りだ。

 ゼロの作った“電流発生装置”にはリミッターもついていて、命を奪う程の強力な電流は流れないようになっているから、これで皆を気絶させられれば、誰の命を奪うこともなく姉妹達を助けられる」



 首輪にリミッターがつけられているのは、ゼロにとってボクらは、道具であり、鑑賞物(ペット)であったりしたため、無駄に廃棄する(殺す)のは望んでいなかったためだろう。

 しかし、そのおかげで逆にボクらの命は保証されていたとも言える。



「オレは恨まれても構わない。

 だけど、姉妹達と無駄に争って傷付け合わず、最低限の傷で彼女達を助けられるなら…」


「大丈夫よ、レイヤちゃん。

 きっと彼女達なら分かってくれるハズよ。

 それに、癖になれば電流だって気持ちいいものよ♪」


「マイカ姉さま、その冗談はちょっと笑えないです…」


「あらそう?ごめんなさい♪」



 マイカ姉さまがおどけたことで場の空気が少し弛緩したところで、アスカさんが口を開いた。



「では、その方向で計画を立てよう。

 レイヤ君、“電流発生装置”を起動させるためのリモコンはあとどれくらいで完成する?」


「そうですね、あと二日もあれば」


「ふむ、であれば二日後の26日、日曜日の夜に作戦を決行するとしよう。

 日曜の夜であれば一般社員も比較的少ないだろうし、作戦もやり易いハズだ」


「「「「「了解っ!」」」」」



 こうして、ボク達の姉妹救出作戦の決行が決まったのだった。




*


 翌、5月25日の土曜日、ムツミさんが無事に退院し、ムツキ君らと共にクルセイド第2研究所へとやって来た。

 そこで、これまでのことをムツキ君達に話し、明日の日曜日、ナンヨウ県六本松市のかつての大学跡地に建つ製薬会社の地下にあるフォルスちゃん達率いる“新人類教”のアジトへと侵入することを告げると、予想通り、ボク達に力を貸してくれると言ってくれた。

 そこで、彼女達に侵入するための作戦を伝え、問題ないことも確認した。


 後は、レイヤちゃん(ゼロの知識がDL(ダウンロード)されている)がマイカ姉さまと一緒に作っている“電流発生装置”のリモコンの完成を待つばかりだが、こればかりはボクらには何も出来ない。

 そこで、ボク達は今日一日、クルセイド第2研究所の地上部分を二階建ての一軒家に改築するための作業を行うことにした。


 基本的に地下に居住設備を含めた全ての環境が揃っているため、地上部分は廃墟のままでも構わないのだが、今後姉妹の数が増える(絶対にゼクスティーナちゃん達を助け出して、フォルスちゃんとも仲良くなるんだ!)ことなどを考えると、さすがに部屋数は足りなくなるということで、地上部分を使えるようにしようとなったのだ。

 それに、この辺りはほぼ人が住んでいないとはいえ、万が一廃墟を出入りするボクらの姿が他人に見られたら怪しまれるということもあり、最低限人が住める状態にはしておいた方がいいだろうということになったのだ。


 上下水道やガス、電気などは地下室を作った際にアスカさんが使えるようにしていたので、問題は無い。


 後は建物そのものだが、壁などは見た目ほど劣化はしておらず、ホコリなどの汚れや、外壁に絡み付いた(つた)などを落としたら、普通にキレイな見た目。

 一部ヒビの入った箇所を塗り直せば問題なく住めるだろう。


 しかし、室内の床板や畳などはさすがに湿気やホコリなどでボロボロになっており、これらだけは全て入れ換える必要があった。

 その辺りの材料に関してはアスカさんがその日の内に手配してくれて、皆で手分けして張り替えの作業を行った。


 最後に、セキュリティ面の強化ということで、そういった知識に強いユエちゃんと、ムツキ君ハーレムの一人、ミナちゃんの二人が建物を中心とした半径数十メートル圏内に、セ○ムもビックリなセキュリティシステムを構築していった。

 具体的なことは聞いてもよく分からなかったけど、簡単に言えばその圏内に悪意を持って近付いてきた者に反応し、その者を監視し続け、研究所に対して何かしらの攻撃を企んだ場合には問答無用で撃退するシステムらしい。

 また、魔術師でもあるユエちゃんの知識を使って、魔術による『転移』にも干渉して、特定の術式以外での『転移』が出来ないような結界も同時展開していて、セキュリティ圏外から直接研究所へ魔術による『転移』をしようとしても出来ないようになっているとのこと。

 ちなみに、特定の術式とは、ユエちゃんが作ったオリジナルの“転移魔法陣”のことで、クルセイド研究所の地下とムツミさんの家、そして第2研究所の地下に一つずつ置かれていて、この陣に乗ることで直接第2研究所との行き来が出来るようになっている。また、これを起動させることが出来るのは、現時点ではユエちゃんとモモコちゃんだけで、単に魔力を注ぎ込むだけでなく、二人にしか分からない特定の魔術も同時起動させなければならないらしいが、魔術を使えないボクには聞いても仕組みがよく分からなかった(ムツミさんの家の魔法陣を起動させるには、予めユエちゃんに連絡して、ユエちゃん側から起動させないといけない仕組み)。


 一見して完璧なようなセキュリティだが、超能力による『テレポート』だけは現時点では防ぎようがなく、『テレポート』を使える敵に第2研究所の座標を特定されてしまえばどうしようもないとのこと。

 『テレポート』に関してもいずれ対応を考えるらしい(レイヤちゃんの能力を研究出来れば、その仕組みが分かるかも、とのこと)が、現時点では敵に第2研究所の場所を知られないことが一番とのこと。

 

 そのためにも、研究所を偽装するための地上部分の改築はある程度有効となるだろう。

 人気のない場所の廃墟に、新たに人が住むというのは少し違和感があるかもしれないが、全く人がいない場所というわけでもなく、機械文明の発達したこの世界だからこそ、自然の残るこの場所に世捨て人的な感じで住み始めたという風にも見えるだろうし、何より廃墟にも関わらず何故か電気や水道が生きている方が怪しまれるというものだろう。



 そんな感じでユエちゃん達がセキュリティシステムを構築している間、余ったボク達は、アスカさんに呼び出されて、建物の向かい側数メートル先を流れる幅2メートル程の小川を渡った先にある広さ5、6メートル四方の土地(元は畑として使用されていたのだろう、ビニールシートなどの残骸が残されていた)にいた。



「えっと、アスカさん、こんな場所に呼び出して何をするんですか?」


「まさか…、畑作り…?」


「ああ、その通りだ。

 この辺りの土地は、ここも含めて全て私が私費で購入したものだから、我が伯祖母(おおおば)様の家族である君達なら好きに使ってもらって構わないのだが、

 世捨て人風を装うなら、やはり畑の一つや二つは作っておいた方がよりそれらしく見えるだろう。

 ここにイツキちゃんの屋敷にあるようなドデカい露天風呂を作ることも考えたのだが、さすがにそれだと悪目立ちするだろうからね」



 確かに、畑を作るのはいいかもしれない。

 自給自足にもなるし、より世捨て人感が出て怪しまれることもないだろう。


 というわけで、その日の残りを使って土地を耕し、これまたアスカさんが用意していた肥料を土に馴染ませ、数種類の野菜の種を各区画ごとに埋めていった。



 こうして、わずか一日で廃墟だった地上部分は立派な一軒家となり、荒れ果てていた土地はキレイな畑へと変貌した。

 こんなに早く作業が完了したのも、作業者のほとんどがサイボーグである所以だろう(ほぼ疲れ知らずな上に力も常人以上だから、作業スピードが半端ない)。



 そうこうしている間に、“電流発生装置”のリモコンが完成し、いよいよ明日の夜、ボク達はフォルスちゃん達と再戦することになる。



 だが、その一方で、フォルスちゃん達も知らない、“新人類教”の教祖であるジョウゴの真なる計画がその裏で動いていたことを、後に知ることになるのだった………

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