第6話「“ハットリ組”への襲撃」
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5月11日の土曜日、オレ達はコクラ市某所にある“ハットリ組”の組長宅へと来ていた。
「は~、おっきな家だね~…」
「警備システムもかなり厳重のようです」
組長宅は周囲を壁で囲われた、まさに昔ながらの日本家屋といった造りながら、その周囲には防犯カメラがいくつも仕掛けられており、セキュリティ対策も万全に取られているようだ。
「…ですが、この程度のセキュリティであれば、我の能力でどうとでもなるレベルです」
ユエのサイボーグとしての能力は、以前にも紹介した“危険感知”、“視覚強化”、“聴覚強化”の他にもう一つ、“ミクロネットワーク支配”というのがある。
これは、一定領域内に限って、そのネットワーク網を支配するというものだ。
今の状況で説明するなら、“ハットリ組”のセキュリティシステムを外部から切り離し、ユエ自らの脳とリンクさせることで、セキュリティシステムをハッキングし、“ハットリ組”のセキュリティを無効化するどころか自らのものとして逆に利用出来るようにするという能力だ。
かなり限定的な能力ではあるが、セキュリティ対策などがネットワーク的にガッチリされた敵基地などを殲滅する際には大いに役立つ力だ。
逆に言えば、ネットワークなどに頼らないシステムには無意味な能力ということになる。
この世界ではそうした仕組みが発展し過ぎているため、ユエの制圧出来ない施設はほぼ無いと言えるだろう。
まさに科学の発展を逆手にとった能力というわけだ。
ただ弱点として、この力を使っている間は他の能力が使えなくなる、という点だな。
ユエは入口の門(まさに城門といった佇まいの古めかしい造りだ)の所に設置されている防犯カメラに目を向けると、そこから無線で内部ネットワークに入り込み、システムをハッキングする。
「“ハットリ組”施設内ネットワークにアクセス成功、
オープンネットワークを切断、施設内ネットワークをクローズドに。
施設内ネットワークの掌握完了。
姉上様、“ハットリ組”施設内のネットワークの制圧が完了致しました」
「さすがに早いな」
「いえ、このレベルであれば当然かと。
では、そろそろ向かいますか?」
「ああ、頼む」
「では、扉オープン」
ユエがそう指示すると、入口の門が開いた。
すると、中で警備していたと思しき黒服にサングラスのスキンヘッド達数人が驚きの声をあげながら近付いてきた。
「なっ!?門が勝手に開きよったっ!?」
「そんな馬鹿な!?今日は誰かが来るなんち話は聞いちょらんぞ!?」
見たところ、腕や足などの身体の一部を武器として改造したサイボーグのようだな。
連中か門の前に立つオレ達の存在に気付くと、ある者は指に仕込まれた銃口を、ある者は膝に収納された小型ミサイルを、ある者は腕から伸ばした鋼鉄製の刃をこちらへ向けて交戦の姿勢を見せる。
「なんやきさんら!?」
「ワシら“ハットリ組”に何用じゃ!?」
「くらすぞ!?」
言ってることはチンピラ並だな。
さて、この程度の連中ならオレの霊能力『身体強化』でも十分そうだが…
「レイ姉ちゃ!ここはオイラに任せて!」
ヒナがそう言うので、ここはヒナに任せることにした。
「分かった、頼む」
「オッケー!!」
ヒナは右手に雷で出来た棍棒を出現させて構えた。
“鬼人”が扱う固有の呪術、『雷の棍棒』だ。
「なっ、なんやその技は!?」
「まさかこいつら超能力者!?」
この世界には呪術という概念が無いから、ヒナの使った力が超能力に見えるのは仕方ないだろう。
「えぇいっ、怯むなっ!お前ら殺っ…、」
だが、連中が攻撃をするより早く、ヒナが雷の棍棒を両手に持ち替えて真横に構えると、雷の棍棒が真横に伸びた。
そして、長さが3メートル近くにまで伸びた雷の棍棒で、連中をまとめてなぎ倒した。
「そいやぁあああああっ!!」
「なっ、がぁあああっ!?」
「ぐぁああああっ!?!?」
「ぎゃああああっ!?!?」
雷の棍棒で真横からなぎ倒された連中は、その場に倒れて気絶した。
「はい、一丁上がり!」
「いえ、ヒナ、まだ奥の方から数人やって来ます!」
ユエの言う通り、庭園で護衛任務任務に着いていたであろう黒服サングラスのスキンヘッド集団が数人まとめてやって来た。
「レイ姉ちゃ達は先に行って!
連中の相手はオイラがするから!」
「ヒナ、頼むぞ!万が一ヤバくなりそうだったら“加速装置”の使用も許可する。
それでもダメそうならすぐに逃げろ!
無茶だけは絶対にするなよ!」
「りょーかい!」
“加速装置”は切札であり、出来れば一般人相手には使いたくない、というかアスカさんからも使用を禁止されている。
その存在が万が一にも公にバレて悪用されでもしたら、世界が一瞬で崩壊しかねないからな。
とはいえ、本当に緊急時には“加速装置”の使用は許可されている。
それは命の危機だったり、相手も“加速装置”を使ってきた場合などだ。
しかし、今回に限っては大丈夫だとは思うが、連中の中に厄介な能力を扱う超能力者がいないとも限らないしな…
それはともかく、この場をヒナに任せたオレ達は屋敷の玄関口へと向かう。
「ユエ、門を含めて、この屋敷の全ての外への出入口を封鎖して連中が逃げられないようしてくれ」
「了解です」
これで、連中はこの屋敷から外に逃げることは出来なくなった。
この屋敷が見た目的には伝統的な古い日本の屋敷だとしても、セキュリティに関しては最新式のものが使われているのだから、当然出入口も電子的なネットワークで管理されている。
仮に、アナログな仕様の出入口があった場合はそこから逃げられてしまう可能性はあるが、そんな安全性の低い出入口をわざわざ作っておくリスクを考えれば、まずそんなものはこの屋敷にはないだろう。
「地下から地上への隠し通路を含めて、全ての出入口のロックが完了しました。
これで連中は屋敷の中から外へは一切出られません」
「よし、さすがだユエ!
これで連中は袋の鼠だな」
完全に逃げ道を封鎖した状態で、オレ達は屋敷の中へと入っていった。
*
「レイ姉ちゃ達は先に行って!
連中の相手はオイラがするから!」
「ヒナ、頼むぞ!万が一ヤバくなりそうだったら“加速装置”の使用も許可する。
それでもダメそうならすぐに逃げろ!
無茶だけは絶対にするなよ!」
「りょーかい!」
レイ姉ちゃ達を先に行かせたオイラは、次々に集まってくるスキンヘッド集団達を迎え撃つ!
「そいやぁああああっ!!」
まず一番近場にやって来た連中は、オイラの雷の棍棒でまとめて凪ぎ払った。
「ちぃっ、厄介な技を使いよって!」
「おい!チャカ持っちょる奴は離れとーとこから狙いや!
ワシらは屋敷に入ろうとしちょるヤツらを殺るけん!」
むっ、ちょっとエラそうなスキンヘッドが残りのスキンヘッド集団に指示を出してきた。
オイラの棍棒の射程から離れた所にいる数人が持っていた拳銃や、自身の改造された指先の銃口をこちらに向けてくる。
その一方で、ナイフや腕が日本刀みたいに改造されている数人は、オイラではなく屋敷へと向かったレイ姉ちゃ達の方へと向かっている。
「ここはオイラの新技の出番、かな!」
オイラは手に持っていた雷の棍棒を消して、新たな術の詠唱を始めた。
「雷の呪いよ、我が身と一体になりて、我が力となれ!『雷化』っ!!」
その瞬間、オイラの身体は雷で覆われ、雷そのものへとなった。
うん、練習通り上手くいった!
これは、レイ姉ちゃにDLされたゼロの記憶にあった、兄ちゃやハルカ姉ちゃが使っていた“雷化”を参考にレイ姉ちゃと一緒に考えたオリジナル呪術だ。
精霊術や魔術で出来るんなら呪術でも出来るんじゃないか、という感じで、レイ姉ちゃの中の記憶データを元に作られた映像を何度も見返しながら練習をした甲斐があった!
“雷化”した今のオイラなら、常人より速い思考と行動が可能になる(“タキオン粒子”による“加速装置”の速さには敵わないけど)。
実際に今のオイラから見れば、周りのスキンヘッド集団が止まっているように見えるし、こちらへ向かって放たれた銃弾も少し早い程度で、見ながら十分に避けられる。
さらに“雷化”のメリットとして、簡単な術であれば詠唱無しで使い放題だ!
「というわけで、まずはレイ姉ちゃ達を狙っている連中から!」
オイラは向かってくる銃弾を避けながら、レイ姉ちゃ達に攻撃をしようとしている数人に向けて雷の矢を放つ。
それらが命中したのを確認すると、今度はオイラに向けて銃を撃ってきた連中に雷の矢を放った。
「ぎゃああああっ!?!?」
「ぐぁああああっ!?!?」
「あ…、がっ……、なっ…、何が起き…、た、んだ……!?」
スキンヘッド集団は何が起きたのかを理解する間も無く全員その場に倒れた。
ま、サイボーグ改造をされたヤクザとはいえ、所詮は一般人に毛が生えた程度、オイラの敵じゃないね!
「とはいえ、さすがにちょっと呆気なさ過ぎて物足りない感じだな~…」
「ほう、ならば次は俺の相手をしてもらおうか?」
突然、オイラは背後から殺気を感じ、振り返りざまに雷の矢を放った。
しかし、雷の矢は空を切っただけで、その場には誰もいなかった。
「いい反応だな、だがその程度のスピードでは俺には勝てないぞ」
いつの間に背後に回られたのか、オイラは背中を刀で斬られていた。
「なっ、“雷化”しているオイラより速いなんて…!?」
「…むっ、俺の刀で斬っても傷つかない、だと……!?」
オイラは正面にジャンプして距離を取ってから背後を振り返った。
そこには刀を振り下ろした軍服姿の男が立っていた。
「残念だったね、オイラ達の着ている戦闘スーツは特殊性でね、
ちょっとやそっとの力じゃ傷つけられないよ」
「なるほど、特殊繊維によって編まれた戦闘スーツか。
そいつは厄介だな……」
それはこっちのセリフでもあるんだけどね…!
“雷化”してるオイラより速く動けるなんて、まさかこの人“加速装置”を使ってる…?
いや、見たところ男の着ている軍服はごく普通のもので、オイラ達が着ているような特殊なものではないから、加速時の摩擦熱に耐えられるようなものじゃない…
じゃあ、どうやってオイラより速く動いて……っ、
「おっと、考える隙は与えんぞ?」
「な…っ!?」
気付いた時には、オイラは背中を刺されていた。
「なっ、なんで…!?」
「確かに編まれた繊維は強靭だが、繊維で編まれた物である以上、そこには僅かな編み目がある。
そこを見つけて正確に突く事が出来れば、刃は通る」
くっ…!?
確かに理屈は分かるけど、それを実行出来るかどうかとなるとまず不可能でしょ!?
なんなのコイツ…!?
「さて、ではそろそろ終わりにしよう。
中にも俺の仲間がいるとはいえ、ボスを守ることが俺の仕事だからな」
こうなったら…、もう使うしかないか…!
「“加速装置”っ!!」
オイラは右腕のバングルのスイッチを押して“加速装置”を起動した。
そして素早く男へと振り返り、雷を纏わせたパンチを繰り出した。
だけど、パンチが当たる直前に男の姿がその場から消えた。
「無駄だ、どれだけ速く動いても、俺には傷一つつけられん」
またもオイラの背後に現れた男は、すでにオイラの戦闘スーツの編み目、それも心臓のある部分を狙って刀を突き出していた。
「これで終わりだ」
男の刀が戦闘スーツの編み目を貫き、オイラの背中に刺さる。
「それはこっちのセリフだよ」
男の刀がオイラの心臓に届くより前に、男は空から落ちてきた雷に打たれた。
「がぁあああああっ!?」
男は全身に火傷を負い、その場に倒れた。
「あなたの能力は正確には分からなかったけど、大方『時間停止』あたりの超能力だったんじゃないかな?
元々目は良かったんだろうね、その目でオイラの攻撃の瞬間を見抜くと能力を使い、オイラの背後に回り込んで能力を解除してから攻撃する。
攻撃の際に能力を解除しなきゃいけないのは、『時間停止』中は周囲のものに干渉出来ないから、とかかな?」
そこまで推理出来れば、オイラのやることは一つ、男がオイラの背後に回り込むことが分かっているんだから、後はそこに雷を落とすだけ。
人は勝利を確信した時が一番油断する、おまけに頭上からの攻撃は想定外だろう。
そして、オイラの目論見通り背後に回り込んだ男は頭上からの雷攻撃に気が付かず、まともに食らったというわけだ。
男が完全に気を失っているのを確認すると、オイラは“加速装置”と“雷化”を解いて、その場に座り込んだ。
「はぁ、さすがにちょっと焦ったな…
っと、痛てて…、安心したと同時に刺された痛みが…!
傷が治るまでここで少し休もう…」
オイラはその場で横になって傷口が自己修復されるのを待つことにした。
*
外の方で激しい雷のような音が聞こえたが、ヒナは大丈夫だろうか?
戻りたい気持ちを抑えつつ、オレ達は屋敷の奥へと歩を進める。
屋敷の中には侵入者を防ぐためのトラップやらが仕掛けられていたようだが、すでにこの屋敷はユエの支配下となっているため、オレ達に対してトラップは一切作動せず、逆に次々襲い来る刺客達をそのトラップをもって返り討ちにしたりしていた。
トラップにかからなかった刺客達は、オレがハンドガン(ショットガンや麻酔銃やレーザーと言った複数の機能を仕込んだ万能銃だ)を使って強制的に眠らせたりした。
そして、屋敷の最奥、明らかにこの屋敷の主の部屋だと思われる屋敷一の広さの和室、広さ的には軽く20畳はあるだろうか、その部屋の襖を開けて中へ入ろうとした時、オレ達目掛けて無数のナイフが何も無いところから飛んできた。
オレとユエは咄嗟にその場にしゃがんで飛んできたナイフを避けた。
「今のナイフ、何処から飛んできた!?」
「トラップでは無いようです。仮にトラップであれば、この我が気付かないハズがないので…!」
オレは畳に伏せながら、部屋の様子を探るが、部屋の中はごく普通の和室という感じで、人の姿さえ全く無かった。
床の間の奥の掛け軸がわずかにズレていて、その奥に空間があるようなので、この屋敷の持ち主はそこから逃げたのだろう。
ま、何処から逃げようと、その隠し通路の先にある外への出入口は封鎖されてるから逃げようが無いんだがな。
などと考えていると、再びオレ達目掛けて部屋の何も無い空間から複数のナイフが飛んできた。
「トラップでないなら、この場に敵がいて、そいつがナイフを投げてるってことだ」
オレは立ち上がると、左腕を飛んできたナイフにさらし、戦闘スーツの袖を上げて、わざとその飛んできたナイフを左腕に受けた。
数本のナイフが左腕に刺さり、それ以外のナイフは戦闘スーツに傷一つ付けることなく、スーツで弾かれて畳に落ちた。
「姉上様何を!?」
当然、わざと腕にナイフを受けたオレの行動にユエは驚いた表情を見せていたが、この程度の傷では死ぬことはない。
仮に毒なんかが仕込まれていても、オレの霊能力『身体強化』で身体の免疫機構やらを強引に活性化させて毒そのものに対する抗体を作り出して毒を無効化出来る。
「最早それ『身体強化』ってレベルか?」と前世の時にヨウから言われたことがあったが、オレの『身体強化』はそういうものだから仕方がない。
「大丈夫だユエ、この程度問題ない。
それより、敵の位置が分かった」
「え?」
オレは足に霊力を集中させて、畳を蹴るようにしてナイフが飛んできた方向へと跳躍した。
霊能力の基本術『縮地』だ。
「なっ…!?」
「『透明化』の超能力でも使ったのか知らないが、見えない程度でオレ達を足止め出来ると思うな」
『縮地』で約4メートル程の距離を一瞬で移動したオレは、そこにいるだろう見えない人間に対し、『身体強化』した拳で一発殴ってやった。
「…ガッ!?」
すると、軍服姿の男が姿を現し、その場に倒れて気絶した。
「ラスボス前の敵にしては呆気なかったな」
「あ、姉上様!早く腕の手当てを!!」
ユエが血相変えてオレの元へとやって来る。
「ああ、別にこの程度大したことないって」
オレはそう言いながら腕に刺さったナイフを抜いて畳に捨てていく。
「しかし姉上様は生身の身体です!
我らのように自己修復機能も、魔人や亜人のような回復力も無いんですよ!?」
「平気だって。『身体強化』である程度回復力を上げてるし、毒とかも仕込まれてなかったみたいだから、蚊に刺されたようなもんだよ」
「…しかし、敵の位置を割り出すためとはいえ、無茶し過ぎです」
そう、オレがあえて腕にナイフを受けたのは、腕に刺さったナイフの角度や深さ、それに飛んできた速さなんかから敵のいる位置と距離を大まかに計算するためだ。
前世の頃でもよく使ってた方法で、当時は大雑把な方角だけを知る手段として使っていたが、ゼロの知識をDLされた今なら、複雑な計算を暗算出来るようになったおかげで、かなり正確な敵の居場所を探れるようになった。
「さ、そんなことより先へ進むぞ。
床の間の奥の掛け軸の裏に隠し通路がある、さっさと追いかけて組長を捕らえよう」
護衛に超能力者がいたとなると、“ハットリ組”と“新人類同盟”に何らかの繋がりがあるのはほぼ確実だろう。
さっさと組長を捕らえて、“新人類同盟”に関する何らかの情報が得られれば文句無し、そうでなくても市民への脅威となっているこの組織をつぶせるんだから問題無し。
オレとユエは掛け軸の裏の隠し通路へと入って行った。
程なく、前方から人の声が聞こえてきた。
「どうなっちょるんじゃ!?まだ鍵は開かんのかちゃ!?」
「はっ、少々お待ちを…!」
「くっ、何故開かないんだ!?パスワードなどは合ってるハズなのに…!!」
今この屋敷のセキュリティシステムは全てユエの支配下にあるんだ、そう簡単に出られてたまるか。
オレ達が近付いていくと、連中もこちらに気が付いたようだ。
「なっ、き、貴様ら…!?」
「即死系のトラップや超能力者連中が何の役にも立たんやなんて…!!」
「くっ、くそぉ、貴様ら!何処の組の者じゃ!?
なして儂らの組にカチコミなんち、」
「五月蝿い」
オレは『縮地』で一気に距離を詰めると、組長とその配下達の意識を一瞬で刈り取った。
「…やけに呆気なかったですね、姉上様」
「ま、普通の侵入者ならさっきの『透明化』が使える超能力者相手に何も出来ずに撃退されるんだろう。
そうでなくとも、道中のトラップには即死級のものもあったから、そもそも組長の部屋まで辿り着けないんだろう」
それに後から聞けば、ヒナが外で戦った超能力者は『時間停止』が使えたようだ。
そんな連中が警備をしていれば、普通であればここまで呆気なくいくわけがない。
単にユエやヒナの能力が優秀過ぎただけなのだ。
「さて、とりあえず組長やその側近、それに超能力者からは情報を得るために、確実に生きて連れて帰るとして、その他の連中は屋敷ごと消えてもらうか」
「そうですね。
ここにいる連中は、多かれ少なかれ、罪もない市民の命を奪ったこともあるような連中です、生かしておく価値はないかと」
ユエの言う通り、ここにいる連中は過去に何度も罪もない市民を巻き込んだ事件を起こしている。
なのに組織を潰せないでいたのは、肝心の組長らは事件に関与した証拠が不十分だったり、表向きには合法な活動をしていたりと、上手いこと法の編み目を潜っているから、らしい。
だからこそ、この機に“ハットリ組”を潰せるのならアスカさんとしても渡りに船、一石二鳥ということだった。
ということで、オレは組長含めた数人を『テレポート』でクルセイド第2研究所(仮)に連れて帰り、最後に残った連中は屋敷ごと火をつけてまとめて処分した。
その後、アスカさんが色々と裏に手を回して『内部抗争の結果、幹部同士で殺しあって双方共倒れ』ということにして、この件の捜査を強引に終わらせたらしい。
というわけで、この件にオレ達が関わったということは誰にも知られることなく、闇に葬られることとなった。




