第1話「訪れた平穏」
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シルヴァサン歴146年4月30日、ボク達は兄さま達によって助け出された。
ゼロというボク達と同じクローンサイボーグの少年がいた。
彼は兄さまと同じく突然変異的にとてつもなく高い知能を持って生まれたが、その性格は異常そのもので、ボク達を愛玩道具としてしか見ておらず、唯一の完全なるクローン個体であるアインス姉さまのことは鑑賞物として、異常な執着を持っていた。
そんなゼロ達から、ボク達を救ってくれたのが兄さま達だった。
詳しい経緯に関しては、途中気絶していたボクも兄さま達から聞いただけなので、詳しく知りたい人は本編の(以下略)
そんなこんなで、ボクが目覚めた時は、すでに夜になっていて、兄さまが前世の頃に所長を務めていたというクルセイド研究所という場所にいた。
「ここ、は…?」
「あら、お早う、ドラインちゃん、ううん、ミラちゃん」
「あ、あなたは…、ま、まさかサク姉さま…!?」
目が覚めたボクの顔を覗きこんできたその女性は、前世のボクの上司で姉のような存在だった女性、サク・ローザスその人だった!
「ふふ、私のこと、覚えていてくれたのね?」
「ま、まさか、サク姉さままで転生していたなんて…!
またこうして姉さまと会うことが出来るなんて…!」
サク姉さまとは、前世で悲しい別れをしていた。
魔獣と呼ばれる人類を襲う敵との戦闘中、姉さまはボクと兄さまを助けるために身代わりとなって、その魔獣にボク達の目の前で食べられてしまったのだ。
あの時のことは、ボクにとっても兄さまにとっても、トラウマとなっていた。
「うん、私も、こんな形でミラちゃんと再会出来るなんて本当に嬉しいわ♪」
そしてボクを抱き締めてくれたサク姉さま。
ああ、この感じ…、とても懐かしい。
サク姉さまの甘いいい匂いと、柔らかくて弾力のある大きなおっぱい…!
「サク姉さま…、大好きです…!」
しまった、心の声が…!
「ふふ、私も、私もミラちゃんのこと大好き♪」
そう言ってキスをしてくれたサク姉さま。
ああ、幸せ…
前世の頃も、姉さまのことは好きだったけど、転生して“姉妹”となった今、その愛情が増してる気がする。
ブラコンでシスコン、どうやら兄さまの“姉妹”には遺伝子レベルで刻まれているらしい。
*
それから、目覚めたアインス姉さま達を含めたボク達は、他の姉妹の自己紹介なども含めて兄さま達の現状を説明された、屋敷の大浴場で。
今、ボク達がいるのは姉妹の中の一人、兄さまの最初の妹だというイツキ・ウィンザーちゃんの屋敷の中にある大浴場だ。
イツキちゃんの屋敷はとてつもなく大きく、この大浴場も2、30人は余裕で入れるだけのとんでもない規模の大浴場だった。
そこで、兄さまが様々な前世を持っていて、合計で10人の“姉妹”と愛し合ったこと、そして転生した今、その10人の転生した“姉妹”達(現世の妹を含めて11人)を集めて、魔王ヤミという存在を倒すために世界を旅する【次元渡航者】となったこと、などの説明を受けた。
ちなみに今現在、集まった“姉妹”は6人で、兄さまの現世の妹の藤原一陽ちゃんと、イツキちゃん、ボクが前世で憧れていた【雷神】(まさか兄さまのもう一つの前世だったなんて!)の妹だった【グランドクイーン】ミハル・レーゲンスの生まれ変わりであるハルカ・スカイシーちゃん、それからサクヤ姉さま、そしてボクらの“オリジナル”であるマコト姉さまと、モトカ姉さまである。
「で、でも、その説明をするのに、なんで僕達は、その、お風呂に入っているんですか…?」
そう質問したのは、顔を真っ赤にして恥ずかしがっているゼッツ君だ。
ゼッツ君が恥ずかしがるのも無理はない。
何せ、ここは大浴場、つまりは皆裸、思春期真っ盛りなゼッツ君には刺激が強すぎるのだろう。
ちなみに、ボクとテンダーちゃん、ナインスちゃん、ゼブン姉さまはボンテージ服を着たままだ。
このボンテージ服は、ゼロに着せられたもので、首輪の錠前によりロックされており、自力では脱げない仕様になっていた。
兄さまが錠前のロックの解除方法を解析してくれたのだが、16桁のパスコードを一分以内に解析して入力しないと、パスコードが書き変わってしまうという実質解除が不可能な仕様となっているそうで、現状ではずっとこのまま、ということらしい。
幸い、ボンテージ服は伸縮性に優れた素材で作られているから、生活するには問題なく、体が成長してもそれに合わせて伸縮するから、現状で困ることはない。
むしろ、兄さまや姉さま、妹達に見られるのは少し快感があるし、テンダーちゃん達のボンテージ姿も目の保養としては最高…、って何を言わせるのよ!?
話を戻しましょう、ゼッツ君の何故大浴場でこういう話をしているのかという質問に対し、イツキちゃんが堂々と胸を張って答えた。
「家族の仲を深めるには裸の付き合いが一番だからですわ!!」
「まぁ、新しい姉妹が増える度の恒例行事ってやつよ、その内慣れるわ」
そう言ったのは、ハルカちゃんだ。
「私とハルカちゃんの時もしてくれたものね♪」
「ボク達の時もしたよね」
「でもなんだかダイジェストっぽくなってた気がするけどね~」
「ダイジェスト?」
「ううん、こっちの話~」
裸で歓迎パーティーが恒例行事なんだ…
いや、大浴場だから問題はないのか?
いやいや、でもそれだと兄さまの体がもたないんじゃないか!?
どうも、姉妹の皆は11人揃うまでは兄さまとのエッチはしないでおこうという話になっているそうだ。
正直、今のボクでさえ、兄さまと一緒にお風呂に入っているというこの状況に加え、周りにはプロポーション抜群の美人姉妹が9人(ボクを含めると10人か)もいて、物凄く興奮してしまっている。
こんな状況で、男の兄さまやゼッツ君が我慢しろというのは、地獄なのではないか?
実際、ゼッツ君はさっきからずっと股間に手を当ててモジモジしている。
一方の兄さまは………、つ、通常サイズ、だと…!?(いや、男の人のソレのサイズとか詳しくはないけど、少なくとも勃起はしていないらしいことは分かる)
「ドライン、さっきから俺の息子を見てるようだが、そんなに気になるのか?」
「ふぇっ!?」
「あらあらドラインちゃんってば大胆ね♪」
「あ、アインス姉さま、ちがっ、違うんです!!」
「大丈夫…、ドラインの気持ちは分かってるから…」
「ドライン姉ちゃんのエッチ~♪」
「テンダーちゃんもナインスちゃんも、違うんだって!!」
「そんなに恥ずかしがらずとも、ヨウイチさんのことが好きならば仕方がないことかと。
好きな男性の遺伝子を求めるのは、女性の本能ですから」
「ゼブン姉さままで!だから、そういう意味で見ていたわけでは…っ!」
その後もカズヒちゃん達にからかわれて散々な目にあった…
うぅ、ボクそんなエッチな子じゃないのに…
いやまぁ、兄さまとエッチしたいかしたくないかで言えば、したいけども…
その後は、皆で体の洗いっこをすることになり、ボク達は初めてということで、兄さまを洗える権利を頂いた。
てっきりタオルに石鹸をつけて兄さまの背中を流す程度だと思っていたら、なんと自分達に泡をつけて兄さまに擦り付けるという、物凄く大胆な洗いっこだった。
「さ、さすがに恥ずかしいわね…、んんっ…!はぁ、はぁ…」
「ボクは平気…、んっ…!」
「わ、わたしも平気、だもん!んぁっ…!?これ、気持ちいっ…!?」
「なるほど、これが家族のスキンシップなのですね、勉強になります。
んっ…、い、今、何か私の体に静電気のような、不思議な刺激っ、が…、あぁ…っ!?」
アインス姉さまとナインスちゃんは耳まで真っ赤にしながら、兄さまの背中と右腕に、体を擦り付けていく。
テンダーちゃんとゼブン姉さまはいつものクールな表情でもくもくと両足と左腕を洗っている。
四人とも、気持ち良さそう…
ん、ちょっと待って、まさか残っているのって…、
「じゃ、じゃあ後は前の方を、」
「ドライン、お願い…」
「っ!?!?」
「よ、よろしく頼むな、ドライン」
「~~っ!!」
それからのことはあまりよく覚えていない。
兄さまの胸にボクのおっぱいを押し付けた辺りから記憶がない…
どうやらボクは気持ち良さのあまり、それだけで気を失う程に達してしまったようだが、当の兄さまの方は平然としていたらしい。
ボクにそんなに魅力がないのかと少しショックを受けたが、そういうわけではなく、無の境地に至らなければ、皆を襲ってしまうからひたすら耐えているだけだという。
「伊達に2000年、童貞を貫いてはいねぇよ」
兄さま、それは兄さまがシスコンだからそういう機会に恵まれなかっただけでしょう…?
*
ボクが気を失っていたのはほんの数分程度だったようで、気が付いた時には洗いっこは終わっていた。
そして、兄さま達がボク達に新しい名前を付けてくれた。
「じゃあ、ドラインの新しい名前はミライ、藤原心望だ」
ミライ、それがボクの新しい名前。
大好きな兄さまに付けてもらった名前に、ボクは嬉しすぎて思わず泣いてしまったのは内緒だ。
ちなみに漢字表記はカズヒちゃんが考えてくれた。
なんでも、家族の名前に“陽(日)”か、“月”の名前を入れたいという拘りがあるようだ。
そしてテンダーちゃんには藤原望心という名前が付けられた。
漢字表記は、双子のボクの名前を入れ換えたものだ。
そして、ボクとモモコとマコト姉さまとモトカ姉さまの名前の漢字表記には、“心”という共通の漢字が入っていて(洵心と心香)、ボク達四人は遺伝子的に全く同じというだけでなく、“心”でも繋がっているという意味を込めてくれた。
「本当にカズヒは漢字のテストは苦手な癖に、姉妹の名前の漢字を考えるのは得意だよな~」
「あたしは常にお兄ちゃんやイツキちゃん達との間に出来た子供の名前のことを考えてるからね!」
そういや、ボク達の元いた世界では、呪いのせいで男子の出生率が極端に減ったせいで、血の繋がった兄妹や姉弟同士でも問題なく子供を作れる技術や、女の子同士でも子供を作れる技術が研究されていたけど、今やそれらの技術は確立されて、実際にカズヒちゃんは兄さまと子供を作れる手術をすでに受けたらしい。
少し話が逸れたので、話を戻すよ。
それからアインス姉さまは藤原舞香、ゼッツ君には藤原睦月、ナインスちゃんには藤原明子、ゼブン姉ちゃんには藤原菜々香という名前が付けられた。
「私にも名前を下さるのですか、ヨウイチさん?」
そう言ったのはナナカ姉さまだ。
「勿論、ナナカ姉ちゃんも、俺達の家族だからな!
あと、俺のことをさん付けはやめて欲しい。
俺の方が年下で弟なんだから」
「…しかし、私のこの肉体は、成長促進剤で無理矢理17歳の身体に成長させられたもので、
おまけに精神的には私はまだ生まれたばかりですし」
「俺がナナカ姉ちゃんを姉ちゃんと呼びたいんだから姉ちゃんでいいの!」
「…分かったわ、ヨウイチ君。
これでいいで…、いいかしら?」
「うん、バッチリ!」
その流れで、ボクは、ボク達やモモコちゃん達にも敬語は不要で、きちんと妹として接して欲しいとナナカ姉さまにはお願いしておいた。
それからも怒涛の展開が続いた。
突如大浴場に現れたヨミという謎の少女から、ボク達“姉妹”はキスをすれば能力がパワーアップするという転生特典なるものがある、というのを聞かされたり、兄さま達が次の世界へ行くのがゴールデンウィーク最終日、つまり5月5日に決まった、という話を立て続けに聞かされた。
その後、お風呂から上がって、イツキちゃんの屋敷で働いているというメイドのセイさんが作ってくれた夕飯を食べて、同じくメイドのメイさんが準備してくれた部屋に案内され、布団に入った。
久し振りの温かいご飯に、温かいベッドに感動したボクは、すぐに眠りに落ちた。
色々な情報が一気に入ってきて脳を使い過ぎて疲れたのと、ゼロから解放されたという安心感もあったのだと思うが、ボクはその日夢も見ることなく爆睡してしまった。
そう言えば、色々あって聞きそびれちゃってたけど、シロックという男の元に送られた残りの“家族”達はどうなったのだろう…?




