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シスターズアルカディアSideB-Brand new Sisters-  作者: 藤本零二
第1章~Brand New Story~
14/58

第11話「誘拐されたムツミ」

*


 “新人類教”による同時多発テロが起きた次の週の木曜日、5月23日のその日、僕、ムツキとムツミさん、エリカさん、ルリナさん、ミナさん、ミホさんの六人は放課後少し学校に残って勉強をしていた。


 カラオケ店での事件以降、僕達はムツミさんの家で一緒に暮らすことになったので、勉強するだけなら家に帰ってからでも出来るのだが、「家だと気が散る」というエリカさんやミホさんのために、学校で宿題などを終わらせてから帰ることにするのが僕達の日課になっていた。



「なぁなぁムツキ、ここんとこどうやるんだっけ?」


「えっと、そこは因数分解して…、」



 ちなみに、何故か一番年下のハズの僕が主に皆に教える担当になっていた。

 というのも、基礎教養レベルの知識であれば、クローンサイボーグとして生まれた時に、脳に直接ダウンロードされたからだった。

 だから、本来なら僕や姉さん達も学校に通う必要はないのだが、戦闘兵器として改造された僕達に青春をという心遣いからアスカさんが便宜をはかってくれたわけだ。



「…なるほどなー!

 さすがムツキだぜ、メチャクチャ分かりやすい!」


「うんうん!もうムツキ君が先生やった方がいいんじゃない!?」


「それは言い過ぎだよミホさん、カワサキ先生だって凄く分かりやすいと思うよ?」



 ちなみに、出会った当初は堅苦しい話し方をしていた僕だったけど、「これから“家族”になるんだから堅苦しい話し方は禁止」と言われたので、僕なりに柔らかい話し方を心掛けるようにしている。



「んー、確かに他の先生に比べたら面白くていい先生だとは思うけどー、

 私はやっぱりムツキ君の教え方が一番好き!」



 そう言って僕に抱き着いてくるミホさん。



「あっ、てめっ、ミホ!抜け駆けはずりぃぞ!!」


「そうだよー、そーいうのは帰ってからだって約束でしょー?」


「うむ、約束破りは一日弟君との添い寝禁止というルールだったな?」


「えー!?違うよ、これはスキンシップとかじゃなくて単なるお礼だよー!」


「そう言いながらもしっかりとムツキ君をおっぱいでホールドしてるじゃない!」



 …と、まぁ、いつもこんな感じで結局勉強らしい勉強はあまり出来ていないのが現実だが……



 そんな風にいつもの放課後を過ごしていた僕達。

 あと数分で完全下校時間になるという頃、ムツミさんが「ちょっとお手洗いに行ってくるわね?」と言って席を立った。


 それから、完全下校時間となってもムツミさんがトイレから帰ってくることはなかった………




*


「おい、いたか、ムツミ姐さん!?」


「ううん、一階のトイレには誰もいなかったよ!?」


「二階のトイレにもいなかった…!」


「三階もだぜ…!

 くそっ、一体何処に行ったんだ!?」



 完全下校時間になってもトイレから帰って来なかったムツミさんを探して、エリカさんとミホさんとルリナさんが校舎内を全て探し回っていた。


 一方、下駄箱に向かっていたミナさんが僕達の所に戻ってきて言った。



「大変だよ、下駄箱にはムツミ君の靴はなくて、代わりに彼女が履いていた上履きが残っていたよ…」


「そんなバカな!?

 じゃあ何か!?姐さんは自分のカバンやアタイ達を置いて先に帰ったって言うのか!?」


「そうは言ってない。

 ただわたしは、ムツミ君の靴が無くなっていて、上履きだけが残されていたという事実を伝えたまでだ」


「…ちっ。

 どう思う、ムツキ?」



 普通に考えて、ムツミさんは僕達や、自分の鞄を置いて自分だけさっさと帰るような人じゃない。

 だけど、下駄箱にムツミさんの上履きが残されていて、靴が無くなっていたとなると、ムツミさんは何かしらの事情があって、僕達に黙って学校を出たことになる。



「とりあえず、校門に向かおう」


「校門に?」


「はい、校門の前の電柱には街路カメラが設置されていたハズですから、」


「そうか!それをわたしの能力でハッキングするというわけだね?」


「はい!」



 ミナさんのサイボーグとしての能力“ハイパーリンク”で、まずは街路カメラの映像をハッキングしてムツミさんの行方を追う。


 それで事件性があれば警察に連絡するなり次の手を打つ。

 現時点ではムツミさんが何かしらの事情で、一人で校外に出ただけかもしれないので、それだけでは警察を動かし辛い。

 回りくどいかもしれないが、まずはハッキリとムツミさんが事件に巻き込まれたという証拠を押さえてから警察に通報すべきだろう。



 僕達は下駄箱を出て、まずは学校の正門の方へ向かった。

 正門は下駄箱から出て左側に向かって、校舎正面の方にある。


 すると、正門の所にミライ姉さんとモモコ姉さんとメイコ姉さんがいた。



「あ、ムツキ君!」


「今…、帰り…?」


「あれ?ムツミさんは一緒じゃないの?」


「姉さん達っ!

 ちょうど良かった!姉さん達はいつから正門にいたんですか!?」


「え?いつから、って、」


「ボク達は…、完全下校時間になるかなり前から…、ここにいた、かな?」


「うん、文芸部の部長さんが用事があるというので部が早めに終わったの。

 それでメイコちゃん達と一緒に帰るために教室で待つつもりだったんだけど、

 教室ではムツキ君達が楽しそうに居残り勉強してたから、邪魔したら悪いかなと思って…」


「それで…、正門の所で、直接待ち合わせしようってことで…、

 かれこれ、30分くらいはずっとここにいる…」


「そっ、それ!教室にいる僕達を見た時、ムツミさんはいた!?」


「え、えーっと……、」


「うん…、あの時は全員いたと、思う…」


「それからムツミさんのことは見ていないんだね!?」


「う、うん、見てないけど、ムツミさんに何かあったの…?」



 姉さん達がずっと正門にいてムツミさんを見てないってことは、ムツミさんは正門から外に出ていない!

 となれば、下駄箱の右手正面にある裏門の方から出ていった…!?



「皆さん、裏門に向かいましょう!

 あ、そうだ!念のためメイコ姉さんはここに残っててくれませんか!?

 理由わけは後で話しますので!!」


「うぇっ!?あっ、ちょっ…!?」



 僕達はメイコ姉さんに正門に残ってもらって、裏門の方へと向かった。

 裏門へ向かう途中でミライ姉さんとモモコ姉さんにはムツミさんが行方不明になったことを簡単に説明した。



「ムツミさんが!?」


「それは、一大事…!」


「だから事件性がないかまずは街路カメラをハッキングして確認しようかと!」



 裏門を出た僕達は、道を挟んだ向かい側に立つ電柱へと向かった。

 電柱の上の方には街路カメラが設置されている。



「あった!あれだな!?」


「でも、どうやってあの高さの街路カメラにハッキングするの?」



 ミライ姉さんの疑問に答えるようにエリカさんが前に出る。



「アタイに任せときな!“オペレーションハンド”ッ!!」



 エリカさんが右腕にカセットを装填すると、右腕が変化し、指から複数のコードと、腕にコンソールが出現した。

 そして指から伸びるコードをさらに伸ばしていき、街路カメラに接続した。



「よし、接続完了!ミナ、あとは頼むぜ!」


「任せたまえ」



 そう言うとミナさんがエリカさんの腕に触れ、“ハイパーリンク”を発動させた。

 エリカさんの“オペレーションハンド”を通じて街路カメラにハッキングする作戦だ。



「なるほど、そういうやり方も出来るのね!」


「だけど…、この状況、誰かに見られたら、非常に怪しい…」


「その辺は私に任せといてー」



 そう言ってルリナさんが両手の指を顔の前で何か複雑に動かして印を刻んだ。



「ほい!隠蔽の術式をこの周囲にかけたから、私達の姿は周りの人からは見えなくなったよー」


「え、今ので!?」


「ほほう、今のが忍術…?とても興味深い…」



 姉さん達がそんなやり取りをしている間に、ミナさんの“ハイパーリンク”が完了したようだ。



「ハッキングは完了したよ」


「本当ですか!?」


「ああ、コンソール画面に街路カメラの録画映像を映すよ」



 僕はエリカさんの腕のコンソール画面に目を凝らす。


 すると、短いノイズの後に街路カメラの録画映像が映し出された。

 時間は今から20分程前で、ちょうどムツミさんがトイレに立ったあたりの時間だった。

 ずっと見ていると、裏門から二人の女生徒が出てくるのが見えた。

 一人は間違いなくムツミさんで、もう一人は僕の知らない人だった。



「あれ?この子って確か隣のクラスの…」


「ミホさんのお知り合いですか?」


「ううん、知り合いって程じゃないけど…」


「でも、なんで彼女とムツミ姐さんが一緒にいるんだ…?」



 裏門から出た二人は、ちょうどこの街路カメラのある電柱の真下あたりまでやって来て立ち止まり、しばらくすると左手側からやって来た車に二人して乗り込み、そのまま正門側、大通りのある方へと向かって走り去っていってしまった。



「これって、誘拐…!?」


「で、でもムツミちゃん達は自らの意思で乗り込んだように見えたけど…?」


「さすがにこれだけじゃ事件だって主張するには弱いな…」



 確かに、エリカさんの言う通り、この映像だけじゃムツミさんが事件に巻き込まれたと訴えるには弱すぎる。

 せめて何故ムツミさんともう一人の女生徒が一緒に同じ車に乗り込んだのか、その理由が分からないと…


 と、そこへ裏門の方から聞き知った声が複数してきた。



「あれ?誰もいないよ?」


「おーい、ムツキくーん!!」


「皆の気配は確かに感じるのですが…」


「ふむ、ひょっとすると、ルリナちゃんの能力で隠れているのかな?」



 裏門に来たのはメイコ姉さんとマイカ姉さん、ナナカ姉さんにアスカさんの四人だった。

 どうやら正門にいたメイコ姉さんが生徒会活動の終わったマイカ姉さん達と合流して、裏門の方へ来てくれたようだった。



「あ、みんなー!ここだよー!」



 ミホさんが声をかけて四人を電柱の所まで連れてきてくれた。



「うわっ、本当にいた!?」


「へー、これが忍術なのねー…」


「それで、ムツミ君に何かがあったということらしいが、

 詳しく話してもらってもいいかな?」


「はい、実は…」



 そこで僕はアスカさんに事情を説明した。



「…なるほど、確かにこの状況では警察を動かすのは難しいな」


「じゃあ、どうすれば、」


「まぁまぁ落ち着くんだ、エリカちゃん。

 ここは私が、第3小隊の隊長として君達に命ずる。

 まずはエリカちゃんとミナちゃん、君達はそのまま街路カメラのネットワークにハッキングし、ムツミ君達を乗せた車の行方を追ってくれ」


「了解した」


「おう!」


「ルリナちゃんは引き続き忍術で我々の姿を隠しておいて欲しい。

 それからミホちゃんとナナカ君、メイコちゃんは万が一の時のためにこの場に待機だ。

 いつでも戦えるように準備だけはしておいてくれ」


「了解です!」


「はーい!」


「オッケーでーす!」


「心得ました」


「そしてムツキ君とミライちゃんとモモコちゃんはムツミ君達を乗せた車を追って、二人の救出だ。

 場合によっては戦闘行為も起こりうるため十分注意してくれ。

 そのあたりの指示は随時私が無線で指示を出す」


「はい!」


「了解です!」


「了解…!」


「よし、では各自行動開始!」



 アスカさんの号令で、僕達はムツミさんを助け出すための行動を開始した。




*


『そのまま3号線を真っ直ぐ進んでくれ』



 “ハイパーリンク”で町中の街路カメラのネットワークにハッキングしたミナさんは、それらのカメラの情報からムツミさんともう一人の少女を乗せた車の行方を追い続けていた。

 その情報をアスカさんが無線で、上空を飛んで追いかける僕とミライ姉さんとモモコ姉さんに伝えてくれる。

 ただし、街路カメラからの情報はリアルタイムではなく、学校に近い街路カメラから一つ一つ順に録画映像を調べて車の向かう先を追っているという感じだ。



 ムツミさんが消えてからすでに30分近く経過している。

 車の移動速度を考えればすでにかなりの距離を移動している計算になる。

 さすがにそれだけ広範囲に渡る捜索となると、ミライ姉さんの“視覚強化”を使ったとしても探すのに時間がかかる。

 だから街路カメラからの情報である程度のルートを見極める必要がある。



『ふむ…、どうやら途中の十字路から曲がって199号線に出たようだな』



 帰宅時間にあたるこの時間は、バス停の多い3号線はどうしても混むという事情がある。

 だから比較的走らせやすい199号線に抜けたということなのだろうか?



『199に出てからかなり飛ばしているな…

 そのままモジの方へ出たようだ』



 アスカさんからの無線を受けながら僕達はモジ市へと入っていく。



「ミライ姉さん、車は見えた?」


「…ううん、少なくとも199号線上には見えないから、

 途中で何処かに曲がったか、目的地で停まったか…」


『ミライちゃんの言う通りのようだ。

 イーストダイリ地区の踏切を渡って再び3号線に入り、その後オオカワ橋にあるマンションの駐車場に入っていったようだ。

 …どうやら、今からほんの2、3分前に到着したみたいだな』



 オオカワ橋にあるマンションと言うと、下の二階部分にかつて商業施設が入っていた(今はテナント募集中となっている)かなり年期の入ったマンションのことだろう。


 早速ミライ姉さんが“視覚強化”でそのマンションを“視る”。



「…今は使われてない商業テナント部分の2階に複数の人影があるわね。

 で、でもこれは…!?」


「どうしたの、ミライ…?」


「えっと…、部屋の中央に男が一人、部屋の壁際に女性が複数並んで立っているんだけど…、

 女性は皆服を着てないのよ…」


「…なっ!?」


「み、ミライ姉さんっ!!その中にムツミさんは!?

 ムツミさんはいるんですか!?」


「えっと……、あっ!今2階にムツミちゃんともう一人の女の子が上がってきたわ。

 それから、男の前に真っ直ぐ進んでいって…、自分から服を、」



 そこまで聞いた瞬間、僕の理性は吹っ飛んでいた。

 気付けば、“加速装置”を起動していて、くだんのマンション2階部分にそのまま壁を突き破って突っ込み、あっという間に男を殴り飛ばしていた。



「がはっ…!?」


「僕のムツミさんに汚い手で触れるなっ!!」



 男は血を吐きながら背後の壁まで吹き飛んでいった。

 僕は“加速装置”を切り、後ろにいるムツミさんに声をかけた。



「ムツミさんっ!!大丈夫ですか!?何もされてませんか!?」



 ムツミさんと、隣にいた女生徒はすでに上着とスカートを脱いでいて、下着姿になっていた。

 二人とも目の焦点があっておらず、何かに操られているかのようだった。



「ムツミさん!!しっかりして下さい!ムツミさんっ!!」


「『無駄だよ、今、こいつの意識は俺の支配下にある』」


「…えっ!?」



 突然、ムツミさんの口から、ムツミさんの声と重なるように男の声がしたと思ったら、ムツミさんが両手で僕の首を絞めてきた。



「がっ…!?むっ…、ムツミさ…っ、」


「『やはり、また俺の邪魔をするか、糞餓鬼が…

  念願の“新人類”となり、ようやく俺の理想のハーレムが出来つつあるというのに…

  こんなところで邪魔をされてたまるか…!!』」


「ぐっ…、お、お前は誰…、なんだ…っ!?

 ムツミさんに…、何をした…っ!?」



 すると、背後から先程吹き飛ばした男が立ち上がり、他の裸の女性達と共にこちらへ向かってくる気配がした。



「俺のことを忘れたのか?」


「『まぁ、あの時と肉体が変わっているから分からなくても無理はないか』」



 男の声が、男自身と複数の女性達から聞こえてくる。



「『俺は、カラオケ店でキサマらに計画を邪魔された者だよ』」


「『そして、新たな肉体に転生して、“新人類”へと進化した、』」


「選ばれし者さ」



「何が選ばれし者、よ」


「あんたは、ただの変態…」



 そこへ、いくつもの雷の矢が男へと降り注いだ。



「あががががガガががっ!?」



 雷の矢を浴びた男はその場に崩れ落ちた。

 男は拍子抜けするくらいにあっさりと気を失ってしまった。



「ミライ姉さん…、モモコ姉さん…!」



 精霊術による雷の矢を放ったミライ姉さんと魔術による雷の矢を放ったモモコ姉さんが、僕が突き破った壁の穴から建物の中に入ってきた。



「大丈夫、ムツキ君!?」


「僕、より…、ムツミ、さんを…!」


「ムツミさん…!その手を、離して…っ!」



 男が気絶しても、ムツミさんが僕の首を締め付ける行為は終わらなかった。

 ミライ姉さんとモモコ姉さんがムツミさんの腕を引っ張って、僕の首からその両手を引き剥がそうとするが、ムツミさんの締め付ける力は弱まらない。



「ムツミさん、目を覚まして!!」


「『無駄なことだ、こいつの身体はすでに俺のもの』」



 再びムツミさんの口から男の声がする。



「男は…、まだ気絶してる…?

 一体どんな能力で、ムツミさんを操ってる…?」



 モモコ姉さんの言う通り、先程の雷の矢を受けた男はまだ床に倒れたまま起き上がってきていない。



「『俺の力は、『魂の分割』と『魂の譲渡』』」


「『魂の分割』と、」


「『魂の譲渡』…?」


「『そう。だから、今この女の中には俺自身の分割した魂が入っていて、俺自身がこの女の身体を動かしている。

  本体の意識があろうがなかろうが、この女の中に入っている分割した俺の魂には何の影響もない』」


「『そして、当然この場にいる全ての女の中に、』」


「『分割した俺の魂が入っているのを忘れてくれるなよ?』」



 すると、室内にいた他の裸の女性達が二人ずつペアになってミライ姉さんとモモコ姉さんを左右から掴み、ムツミさんから引き剥がした。



「あっ…!?」


「くっ…!?」


「『さて、この状況で君達はどう動く?

  その女達を止めるには、その女達を傷付けないといけない。

  お前達にそれが出来るかな?』」



 ムツミさんと一緒に拐われてきた下着姿の女生徒の口から、男の勝ち誇ったような声が聞こえてくる。



「ひ、卑怯者…っ!!」


「『卑怯で結構、これが俺の力だ!

  …おっと、そう言えばもう一つ説明を忘れていたな』」


「『俺の能力、『魂の分割』と『譲渡』は、何も本体からしか出来ないというわけではなく、』」


「『譲渡した肉体からも出来るんだよ』」


「『つまり、今君達を捕まえているこの女達から、』」


「『君達の中に俺の分割した魂を譲渡して、』」


「『君達の体もまた、俺のものにすることが出来るのさっ!!』」


「なっ…!?」


「や、止めてっ!!」



 男の魔の手がミライ姉さん達にも迫ろうとしたその時、



「おっと、そうはさせないぜ」



 突然現れた隻眼の女性がミライ姉さんとモモコ姉さんの肩に手を触れた瞬間、その場から三人の姿が一瞬で消え、直後に少し離れた場所に再び出現したかと思うと、再び隻眼の女性だけが消え、今度は僕の肩に手を触れると、次の瞬間には首を絞められていた感覚が消え、いつの間にかミライ姉さん達の傍にその女性と共に移動していた。



「今だ!!ユエ、ヒナッ!!」



 その女性が叫ぶと、僕が突き破った壁から二人の新たな女性が入ってきて、ムツミさんを含めた操られた女性達に電撃を放った!



「申し訳ございませんっ!!」


「許してねーっ!!」



『『『『『ギャアアアアアアアアアアッ!?!?!?』』』』』



 いくつにも重なった男の叫び声が響き渡り、次々と操られた女性達がその場に倒れていく。



「女の人達には申し訳ないが、肉体の意識そのものを失わせてしまえば、その肉体を動かすことも出来なくなるよな」



 隻眼の女性の言う通り、意識を失った女性達はその場から動かなくなった。



「ふぅ、これで終わりでしょうか?」


「姉ちゃの言う通りちゃんと加減はしたよー!」


「ああ、よくやったな、ユエ、ヒナ」



 その時になって、僕はようやく新しく現れた三人の女性をよく見ることが出来た。

 隻眼の女性と、モモコ姉さんと同じ魔人の角と尻尾と翼を生やした“ユエ”と呼ばれた女性、そして頭から鬼のような角と右手には雷で出来た剣を持った“ヒナ”と呼ばれた女性。

 彼女達は僕らと同じ作りの戦闘服とマフラーを着けていて、その顔立ちはミライ姉さん達と瓜二つで………



「あ、あなたは…!!」


「クローンNo.11、レイブン…!!」


「ああ、また会ったな、ミライ、それにモモコ。

 それから、ムツキとは初めまして、だな?」



 彼女が、以前ミライ姉さん達が会ったという、番外個体姉妹エキストラナンバークローン、レイブン姉さん…!




*


 気絶した男を念入りに縛り上げた後、裸の女性達を念のため病院に搬送するための手配をしていると(その辺りは“新人類教”絡みということもあって、無線を通してアスカさんがやってくれているらしい。そのついでに、無断で“加速装置”を使い、戦闘行為に入ってしまった僕は叱責された)、ムツミさんが目を覚ました。



「ん…っ、んん…?ここは……?」


「あっ!ムツミさん!!

 目が覚めたんですね!?意識は大丈夫ですか!?」


「…え、あ、ムツキ君?

 えっと…、うん、なんだか身体が痺れてるけど、意識はハッキリして……って、なんで私下着姿なの!?」


「あ、えっと、これには理由があってですね…!」



 ムツミさんに床に落ちていた制服を渡しながら、僕は事の顛末を話した。



 その間、他の女性達の介抱をするミライ姉さんとモモコ姉さんを、レイブン姉さん達が手伝っていた。

 介抱をしながら、ミライ姉さん達はレイブン姉さん達に話を聞いていた。



「えっと、あなた達三人のこと、なんだけど…」


「ん?ああ、気になるよな。

 とりあえず、軽く自己紹介だけはしとくか。

 改めてオレはクローンNo.11のレイブン、今は“レイ”って名乗ってるが、

 ゼロによって作られた予備個体、番外個体姉妹エキストラナンバークローンの一人だ。

 本来は魂無き個体だったが、色々理由わけあって転生した魂が宿った。

 他の二人も似たような状況だ」



 そう言ってレイブン姉さん、改めレイ姉さんが視線を送ったのは魔人の角と尻尾を生やした(羽の方は今は背中に収納している)“ユエ”と呼ばれていた女性。

 その視線に答えるようにユエ姉さんが口を開いた。



「我の名はクローンサイボーグNo.12、トゥエニです。

 今は姉上様より頂いた名前、“ユエ”を名乗らせてもらっています。

 前世では【吸血騎】だったヨウ様と共に“竜の涙(ドラゴンズクライ)”を探す旅をしておりました。

 肉体年齢は姉上様や、そちらのヒナ、そしてミライ姉上様達と同じ16歳です、以後お見知りおきを」


「うん、よろしくね。

 【吸血騎】だったヨウ様、というのは、やっぱり兄さま(ヨウイチ)のことだよね?」


「ん…、確か兄やの話でも、前世で“吸血鬼ヴァンパイア”だったことがある、って…」


「ええ、恐らくは同一人物でしょう。

 我らはクローン姉妹であると同時に、ヨウ様に前世でフラレたという共通項があるようですので」


「オ、オレはフラレてなんかないからな!?

 というか、オレは別にアイツのことなんか好きでもなんでもなかったし!?」



 レイ姉さんはどうやら分かりやすいツンデレみたいです。



「はいはーい!じゃあ、次はオイラの自己紹介の番だね!?」



 そう言って元気よく手を挙げながら会話に入ってきたのは、鬼のような角を生やした“ヒナ”と呼ばれていた女性。



「オイラはクローンサイボーグNo.15、フィフティーナ!

 でも、今は姉ちゃにつけてもらった“ヒナ”って名前が気に入ってるから、そっちで呼んでね!

 それから、オイラとユエ姉ちゃは前世では三姉妹だったんだ!」


「三姉妹?」


「でも…、あなたは見たところ亜人、“鬼人デーモン”みたいだけど…」


「それはね、結構複雑な事情があってねー!」


「厳密には我とヒナに血の繋がりはありませんでした。

 しかし、我らのもう一人の姉妹と、我が母親違い、ヒナが父親違いの姉妹だったため、間接的に姉妹関係となったのです」


「つまり、オイラは“鬼人デーモン”のパパとママ、ユエ姉ちゃは魔人のパパとママ、

 そしてもう一人の姉ちゃが“鬼人デーモン”のママと魔人のパパのハーフだったってことー!」


「ん、んん…!?」


「物凄く、複雑な関係…」


「えっと、ちなみにそのもう一人の姉妹も転生してるのかな?

 それに、No.11(レイブン)No.12(トゥエニ)ときてNo.15(フィフティーナ)って、その間のNo.13(サティス)No.14(フォティス)は、」



「その疑問にはアタイが答えてやろう」



 と、そこへ新たな女性の声が聞こえてきた。

 声のした方は、部屋の奥、そちらへ視線を向けると、床に何やら魔法陣のようなものが浮かんでいて、そこから一人の女性が姿を現した。

 その女性は、僕も見覚えのある人物だった………



「あ、あなたは…!?」


「クローンサイボーグNo.4、フォルス…!?」


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