第10話「No.11」
*
新たな生活が始まって一週間が過ぎた週末、カレンダーでは5月18日の土曜日を示す今日、ボクとモモコちゃんは二人でコクラの町に繰り出していた。
他の姉弟達はそれぞれにやりたい事があるとのことで別行動。
「つまり、今日はボクとモモコちゃん二人っきりのデートってわけだね♪」
「ん…」
ボクはノリノリでモモコちゃんの手を掴んで恋人繋ぎをしてみるのだが、当のモモコちゃんの反応は薄い…、いや、よくよく見れば口角が少し上がっているので、モモコちゃんも心の中では楽しんでいるんだろう。
ボクのモモコちゃんへの想いは他の姉妹や兄さまに対するものとは少しだけ違う。
勿論、愛しているという意味では、兄さまや他の姉妹に対するものと全く同じだが、それに加えてモモコちゃんとは双子の姉妹(色々と経緯は複雑だが)だからだろうか、恋愛感情以上のものを感じている。
なかなか言葉で説明するのが難しいのだが、双子の姉妹であり、恋人でもあり、大切な家族でもあるというか、とにかくそんな感じでボクはモモコちゃんのことが大好きなのだ。
そして、モモコちゃんもボクのことを同じように想ってくれている、ハズだ。
だから、今日こうして二人きりでデートが出来るのをボクは凄く楽しみにしていた。
何気に、モモコちゃんと二人きりでデートというのは初めてのことだ。
ひょっとすると、他の姉弟の皆は、そんなボクらに気を使ってくれたのかもしれないな、ということを考えながらやって来たのはコクラ駅南口側(モノレールが出ている方だ)にある14階建ての商業ビルの中の7階フロアに入っている書店だ。
その書店はフロア全体を占めていて、キュウシュウ国以外の海外からの輸入本なども扱っているホクヨウ県内では屈指の品揃えの書店だった。
本好きのモモコちゃんが、文芸部の活動中に読んだ本などを買って家に置いておきたいというので、ホクヨウ県内屈指の品揃えであるここへやって来たのだった。
「おー…、聞いていた通り、スゴい…!」
「だね~。
全部細かく見て回るには一日じゃ足りないんじゃ?」
「大丈夫…、きっと、何度も足を運ぶことになると思う…」
「そ、そっか」
モモコちゃんの目が今まで見たことがないくらいにキラキラしてる…!
思わず本に嫉妬してしまいそうになるボクだったが、ボク自身も実は少しワクワクしていた。
前世ではあまり本を読まなかったボクだけど(どころか趣味らしい趣味もなかった)、イツキちゃんやカズヒちゃんのおかげで、ボクもアニメやマンガといったサブカルチャーにハマりつつあった。
なので、しばしモモコちゃんと別れてボクはマンガ・ラノベコーナーへと向かった。
マンガやラノベを買うならコクラ駅北口側にある“コクラアニメ文化シティ”でもいいが、少し古い作品やマニアックな作品など一部扱っていない作品があったりするので、案外こういう書店はバカに出来ない。
たっぷり20分程かけて目ぼしいマンガとラノベを数冊買ったボクは、モモコちゃんと合流すべく、モモコちゃんのスマホ(連絡用にとアスカさんが家族全員に用意してくれたものだ)に連絡しようとしたのだが、その必要はなかった。
店員さんが用意してくれたのか、台車に大量の本を乗せたモモコちゃんがレジに向かってくるのが見えたからだ。
パッと見ただけでも5、60冊はありそうだが、それだけの量をこの20分程でかき集めたというのもスゴい…
「も、モモコちゃん、まさかそれ全部買うの?
というか、どうやって持って帰るの、それ?」
「本当は、まだまだ買い足りないけど…、今日の予算では、これが限界…
店員さんに聞いたら…、宅配サービスもあるみたい、だから…、それを使う…」
というわけで、会計を終えたモモコちゃんは、とても満足した表情をしていた。
「さて、それじゃ次は何処行こうか?」
「ん…、ボクは何処でも構わない…
ミライが行きたい所で、いいよ…」
「じゃあ、とりあえずこのビルを出て、銀天街の方行ってみようか?
有名な豚まんのお店があるみたいだから、一度行ってみたかったんだよね!」
「ん…、じゃあ、それで決まり…!」
そう言うと、今度はモモコちゃんの方からボクの手を握って恋人繋ぎをしてきた!
思わず叫びだしたくなる感情を抑えながら書店をあとにした。
*
コクラ駅南口側は市街地に直結しているのだが、まず真っ先に目に入るのがモノレールだ。
駅ビルの中心からモノレールが出てくる光景はちょっとしたSFのような迫力がある(とは言え、この世界そのものがボクからするとSFの世界そのものなんだけど)。
そんなモノレールの路線の下に遊歩道が広がっており、土曜日ということもあって、そこは大勢の人で賑わっている。
この世界の特徴として、他の世界では北口側の遊歩道にしかない歩く歩道が南口側にもあるだけでなく、遊歩道下の道路と繋げるためのエスカレーターやエレベーターが各所に設置されており、機械文明の発達した世界であることを実感させられる。
そんな中に建つ、コクラ祇園太鼓とそれを叩く人の銅像はミスマッチのようにも思えるが、近未来化した世界でも伝統は大事にされているのだなと感じられて、世界は違えど人間の心というのは根本的な部分では変わらないものなんだなと改めて思った。
「それで、ミライ…、件の豚まんのお店があるのは、どっち…?」
「えっとね、反対側のエスカレーターを降りた先、だったかな?」
ボク達が先程までいたビルはコクラ駅を背にして左側。
銀天街のある方はコクラ駅の正面から伸びる道路を挟んで右側になるから、ここから少し歩いて向かい側にあるエスカレーターを降りた先ということになる。
ボクとモモコちゃんは恋人繋ぎで多くの人が行き交う遊歩道を歩く。
と、その時、何か嫌な予感がした。
第六感、とでも言うのか、ボクはその瞬間にサイボーグとしての能力である“視覚強化”と“聴覚強化”を使った。
“視覚強化”で遊歩道を歩く周囲の人々を注意深く観察すると、前方の方にいた一人の男、その腰回りにあってはならないもの、ダイナマイトを巻き付けている男を発見した!
ボクは、周囲の人々を避難させるべく声をあげようとしたが、その時にはすでにその男はライターを使ってダイナマイトに着火してしまっていた。
「“新人類教”万歳ッ!!」
「モモコちゃんっ!!」
ボクは咄嗟にモモコちゃんを庇うように前に出て、モモコちゃんを正面から抱き締めた。
「みっ、ミラっ…!?」
直後、その男を中心に物凄い爆発が起こり、数メートル離れた位置にいたボク達も爆風で吹き飛ばされてしまった。
「くぅっ…!?」
ボクは飛ばされながらも、抱き締めたモモコちゃんに怪我をさせないよう、空中で体勢を入れ換えて、ボクが下になるようにして遊歩道に倒れこんだ。
その際、背中が地面に引きずられてかなり痛かったが、特殊繊維で編まれた服は傷ひとつ付かなかった。
「モモコちゃん、怪我はない?」
「ボクは平気…、だけどミライが…っ!」
「なら良かった。
ボクも背中がこすれて少し痛いけどほぼ無傷だよ」
「それは、そうかもしれないけど…!
…ううん、ボクがミライの立場なら、同じ事をしてた…
だから、ありがとう、ミライ…!」
そう言って「チュッ」とボクの頬にキスをしてくれたモモコちゃん。
ああ、やっぱモモコちゃんは最高にカワイイなぁっ!!
「…なんて感動してる場合じゃないね」
「うん…、とりあえず消防と警察と…、それから“新人類教”って言ってたから、アスカさんにも連絡を…!」
「お願い!ボクは負傷者の救助を…、っ!?」
その時、“聴覚強化”していたボクの耳に、ライターの着火音が聞こえてきた。
その方向に“視覚強化”した目を向けると、コクラ駅ビルと遊歩道を繋ぐ大階段の最上段、逃げ惑う人々の中にあって一人悠然と佇む男の姿があった。
「マズいっ…!!もう一人いたっ!!」
「なっ…!?」
くっ、この距離じゃ間に合わない…!
一秒が無限にも引き伸ばされたかの様な時間感覚の中で、さらなる悲劇が巻き起こるのを覚悟したその時、
「オレに任せろ、あの男だな?」
「…え?」
ボクの背後に突然音もなく現れた少女(口調は男の子っぽいけど、チラッと見えた胸の大きさからして間違いなく女の子だった)が、一言そう言うと、再び姿を消した、と同時に、今まさにダイナマイトに着火しようとしていた男の背後に突然現れ、男の首筋を殴り気絶させ、気付いた時には男の首根っこを掴んでボクの隣にその少女が立っていた。
「え…、あ…?」
「な…、何、が…?」
一瞬の出来事に、言葉を失うボク達に向かって、その少女が捕まえた男を地面に無造作に放り投げながら言った。
「他に怪しい奴は?」
「あ、えっと…!」
言われたボクは再び“視覚強化”で周囲を観察するが、少なくともコクラ駅周囲にはもう怪しい人物はいなかった。
「…うん、もう大丈夫みたい」
「そうか、ならコイツの処理を頼む」
「あ、うん、分かった、えっとあなたは…?」
そこで改めて落ち着いて少女の顔を見て、ボクとモモコちゃんは同時に驚きの声をあげた。
「えっ!?」
「ボク達と…、同じ顔…!?」
そう、その少女の顔はボク達と全く同じ顔だったのだ!
違うのは髪型(その少女は首筋までのショートボブで首の左右の所だけが正面側に向かって少し跳ねていた)と、右目に十字の傷が入っているくらい。
って言うか、右目の傷が痛々しい!
それに、体型もおっぱいがボク達より少し大きい以外はボク達とほとんど変わらないのでは?
ということは、まさか…!?
「ま、まさかあなたは…?」
「…君達の想像通りだよ」
その少女はボク達に背を向けて、こう言った。
「オレは君達と同じクローン、クローンNo.11、レイブン。
…いずれ、また何処かで会うだろう」
次の瞬間、レイブンと名乗った少女は音も無くその場から姿を消した。
「レイブン、クローンNo.11…
本当に、いたんだ…」
「うん…、それに、おっぱい大きかった…、オレっ娘なのに…」
モモコちゃんはそっちの方が気になってたのか…
確かにボク達より大きかったけれど…
「い、いや、今はそれより負傷者の救助とかしなきゃ!」
「うん…、そうだね…!」
レイブンちゃんのことは気になったけど、今はそれよりもこの事態の収拾をつけなくちゃ!
その後すぐに、周囲にいた人が呼んだと思しき消防と警察が駆けつけてきて、事件の後処理が行われた。
レイブンちゃんが捕まえてくれた男はその場で警察に引き渡し、前回のカラオケ店の時のようにパトカーの中で自殺などされないよう、念入りの処置を施してから連行された。
少し遅れてアスカさんも現場に到着し、ボク達はレイブンちゃんのこと以外の事件の詳細を伝えた。
*
最初の男の自爆テロによって、犯人を含めて六人の死者と、十数名の怪我人が出た。
また、同時刻にホクヨウ県の別の場所でもいくつかの自爆テロが起きていたらしく、それらの事件も含めると死者は総勢41名、負傷者は百数人にも及ぶという。
実に数十年振りとなる“新人類教”による一般人を狙った大規模な事件は、センセーショナルな話題として瞬く間にキュウシュウ国全土へと広がっていった。
ただ、数十年前に起きた“新人類教”によるテロ事件と違って、“新人類教”からの明確な犯行予告がなく、目的も不明という点でキュウシュウ国の人々は恐怖に怯える日々を送ることとなった。
ボク達は連中の目的が“転生することによる超能力の覚醒”、ということをアスカさんから聞いて知っているが、しかしある日突然不特定多数の場所で自爆テロを起こされては対処の仕様がない。
あるとすれば、“新人類教”の総本山を潰すことだが、アスカさん曰く「現在別ルートで調査中」とのこと。
「そんなわけだから、とりあえず君達は“新人類教”のことは気にしなくていい。
力を借りたい時には第3小隊として声をかけるから、それまでは普通に学園生活を送っていて欲しい」
アスカさんにそう言われては、こちらとしては従うしかない。
「分かりました、その時が来れば、全力で対応します!」
「ああ、頼むよ」
「それと…、別件で、アスカさんに、伝えておくべきことが…」
「ん?何かな、モモコちゃん?」
「ここでは、話し辛い…」
「…そうか、分かった。
とりあえず現場ではこれ以上することはなさそうだし、何処か別の場所に移動しようか」
そこでボク達はアスカさんに連れられ、銀天街の中にあるアスカさんの行きつけだという小ぢんまりとした食堂にやって来た。
店の中に入ると、お客は誰もおらず、左手側にあるカウンターの中に新聞を読んでいる店員と思しき初老の男性が一人いるだけだった。
「大将、来たよ」
「らっしゃい!…と、アスカちゃんかい、それからそっちの二人は…?」
「ああ、私の新しい部下さ。
それで、上の部屋借りてもいいかい?」
「ああ、構わないさ。
注文頼むときは電話でな」
「了解。さ、二人とも二階へ行こう」
アスカさんに言われ、ボク達はお店の奥にかかった暖簾をくぐった。
暖簾をくぐると、右手側に木製の階段があって、その手前で靴を脱いで階段を上り、二階の部屋へと入った。
部屋は、メニューの置かれた長辺が2メートル前後、短辺が1メートル前後のテーブルが一つと、四人分の座布団が置かれた畳部屋だった。
奥側の長辺にアスカさんが座り、ボクとモモコちゃんはその向かい側に並んで座った。
「ここは一般客の入って来ない特別な部屋でね、密談するにはピッタリさ。
ま、そもそもこのお店自体がお客が少ないんだけど…、と、こんなこと言ったら大将に怒られちゃうな。
さて、それより君達も昼ご飯はまだだよね?
ここは私の奢りだ、好きなものを頼んでくれ、話は食事をしながら聞こう」
「あ、ありがとうございます!」
「ん…、ごちそうになります…」
ちょうどお腹も空いていたのでアスカさんの言葉に甘えることにした。
メニューを見ると、定食からラーメンにうどんなど、意外と色んな種類が並んでいた。
「女の子三人のランチと言うにはオシャレ感は無いかもしれないが、そこは勘弁してくれ」
「いえ、ボクは別にそういうのは気にしませんから。
…じゃあ、ボクはこの焼きうどんとかしわおにぎりで」
「奇遇…、ボクも、ミライと同じのを注文しようと思ってた…」
「へー、さすがに二人は気が合うね。
それに、大将の焼きうどんは格別においしいんだ!
そうだな、久し振りに私も大将の焼きうどんが食べたくなった、私も同じのにしよう」
そう言うとアスカさんは壁際に置かれていた電話の受話器をとると、焼きうどんとかしわおにぎりを三人分注文した。
「わざわざ下に行って注文を伝えなくてもいいんですね」
「ああ、この部屋を使う時は基本的に密談なんかをする時だけだからね。
その間は大将含めて誰もこの部屋には入って来れないようになってる」
「それだと、料理はどうやってこの部屋に…?」
「それはほら、あそこのエレベーターで運ばれてくるのさ」
アスカさんが指したのは奥の壁にある金庫のような箱だった。
箱の上にランプも付いており、料理が出来上がると、このエレベーターで自動で部屋に運ばれてきて、それをランプが点滅することで知らせてくれるようになっているらしい。
「さて、それじゃあ早速ではあるけど、君達の話を聞こうか」
アスカさんに促され、ボクとモモコちゃんはレイブンちゃんのことを話した。
と言っても、ほとんど会話らしい会話はしていないので、その存在と突然現れたり消えたりした能力のことしか話せることはなかったのだけれど。
「ふむ、マイカさんの言ってた通り、クローンクルセイド計画のNo.11以降が存在していたわけか。
それにしても突然現れたり消えたりというのは、“加速装置”を使っていた、ということかな?」
「いえ、はっきりとは断言出来ないですけど、
ボクの“聴覚強化”でも、“加速装置”のわずかな起動音を聞くことが出来なかったので、
“加速装置”ではない別の能力じゃないかと」
「別の能力、となるとそれは…、」
「超能力による『テレポート』…」
「ふむ、ではクローンNo.11は超能力者だと?」
「…分からない、だけど、その可能性は、ある…」
「ボクもモモコちゃんの考えに賛成です。
あくまでも勘ですが、そんな気がします」
「ふむ、そうか。
…まぁ、分からないことをこれ以上議論しても仕方がないか。
それよりも問題なのは、クローンNo.11が我々の、もっと言えば君達の敵なのか味方なのか、という問題だが。
君達はどう感じた?直感で構わない、素直に感じたことを答えて欲しい」
ボクとモモコちゃんは顔を見合わせて一度頷くと、同時にはっきりと答えた。
「「味方だと思います」思う…」
「ほう…?
それは何故?理由を聞かせてもらってもいいかな?」
「…これは、ボク達姉妹としての感覚なんですが、
彼女と目があった瞬間に感じたんです、カワイイな、って」
「カワイイ?」
「はい、こんなカワイイ姉妹がまだいたんだ、って。
こんなにカワイイ姉妹なら、絶対に好きになれる、って」
「ボクは…、カッコいいな、って思った…
それに、オレっ娘なのに、おっぱい大きかった…
そんな娘を、嫌いになれるわけない、って…」
ボク達姉妹の遺伝子に組み込まれたブラコン因子とシスコン因子は強力だ、それこそ魂が惹かれる程に。
そんなボク達が唯一家族で憎んだ存在が、ボク達を鑑賞物扱いしたゼロだけだった。
もし仮に、レイブンちゃんの中にゼロの魂、もしくはゼロの意思を継ぐ者の存在が入っていたならば、魂で拒絶したハズだ。
そうした“嫌な感じ”を感じられなかった以上、レイブンちゃんはボク達の味方、少なくともボク達を家族として見てくれている、と断言していいと思う。
「ふふ、なるほど、なるほど。
分かったよ、その辺りの君達の感覚は、君達家族にしか分からないものだからな、
君達のことを信じよう」
と、アスカさんはボク達の言うことをあっさり信じてくれた。
そして、ボク達に聞こえるか聞こえないかくらいの声音で、こう呟いた。
「…どうか、彼女らのことを最後まで信じてやってくれ」
アスカさんのその言葉の真意について深く問いただすべきか悩んだが、そのタイミングでエレベーターのランプが点滅した。
「と、どうやら料理が出来上がったようだ」
そう言いながら、アスカさんがエレベーターの側に行き、中から焼きうどんとかしわおにぎりと水の入ったコップの乗せられた三つのお盆を取り出し、テーブルの上に乗せていった。
「さぁ、頂こうか」
「あ、はい!」
「いただきます…」
焼きうどんには半熟の目玉焼きが乗っており、鰹節が湯気の中で踊る様子は否が応でも食欲を駆り立てられた。
肝心の焼きうどんの味は甘辛いソースが最高で、そこに半熟の黄身を絡めることでまた何とも言えない甘さが口の中に広がり、とても美味だった。
かしわおにぎりは、甘口の醤油とかしわ(鶏肉)がお米とベストマッチした味で、前世の頃からボクが大好きだった味そのものだった。
世界が変わっても地元の味が変わっていないのは嬉しい限りだ。
隣を見るとモモコちゃんも同じ感想のようで、ボク達はあっという間に焼きうどんとかしわおにぎりを平らげてしまった。
「どうだ、大将の焼きうどんは最高だっただろう?」
「はい!」
「それに、かしわおにぎりも…!」
「うむ、それは良かった。
さて、もう少しゆっくりしてもいいが、私はこの後今後の“新人類教”の対策について少しやらねばならないことがあるからな、
君達の方で他に何も無ければ解散と行きたいのだが」
「そうですね、今のところは…、」
「特に、ない…」
「了解した、ではまた何か思い出したことや気になることがあれば遠慮無く連絡してくれたまえ」
そうしてアスカさんと別れたボク達。
本来ならもう少しコクラの町をデートする予定だったが、あんな事件があった後でのんびりとデートする気にはなれず、またレイブンちゃんのことを家族にも話しておこうと思い、ボク達はそのままクルセイド研究所へと帰ることにした。




