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シスターズアルカディアSideB-Brand new Sisters-  作者: 藤本零二
第1章~Brand New Story~
10/58

第8話「新人類教」

*


 姉さん達が部活を決めたりしている頃、僕はムツミさんを含めた五人のクラスメイトの女子に半ば拉致同然で校外に連れ出され、そのままコクラ駅を中心とした都心部、そこにあるカラオケ店に連れて来られた。


 一階にあるカウンターで受付をした後、階段を上って二階の比較的大きな部屋へと入り、僕達が順に席につく中、ポニーテールのクラスメイトが皆に飲み物を尋ねると、壁に備え付けられた電話をとって手際よくドリンクのオーダーを済ませた。


 その後、ポニーテールのクラスメイトが席につくと、場を仕切るように声を発した。



「さて、それじゃあドリンクが来るまでの間に、ムツキにアタイ達のことを知ってもらうために自己紹介といくか!」


「「「いえーい!!」」」



 僕とムツミさん以外の三人が手を叩きながら盛り上げる。



「じゃ、まずはアタイからだな!

 アタイの名はエリカ・ハント、スリーサイズは上から95-60-90だ!

 見ての通り、この中じゃアタイのおっぱいが一番大きい!

 ムツキがアタイのお嫁さんになってくれるなら、このおっぱいをいつでも好きなように出来るぜ?

 というわけで、これからよろしくな!」


「よ、よろしくお願いします…!」



 ポニーテールの彼女、エリカさんの胸は確かに大きく、少し動くだけでその存在を強く主張していた。

 僕だって一応は男の子だ、その存在に視線を釘付けにされていると、隣に座っていたムツミさんに顔を掴まれ、ムツミさんの胸に顔を押し付けられた。



「もう、ムツキ君ったら、エリカちゃんのおっぱいに夢中になっちゃって!

 ムツキ君には私のおっぱいがあるでしょ!?」


「む…、むぎゅぅっ!?」


「もー、そうやってムツミちゃんがムツキ君を独り占めにするのは無しだよー」



 そう言って、反対隣に座っていたショートヘアで細目のクラスメイトが、ムツミさんから僕を引き剥がした。



「ムツキ君はー、これから私達のハーレムの主になってもらうんだからねー♪」


「ちょっ、私はまだハーレムを認めたわけじゃ…っ、」


「でも、ムツキ君は男の子なんだしー、ハーレムには憧れるよねー?」


「え、えっと…、僕は…、」


「おっと、自己紹介がまだだったねー

 私はルリナ・ホルン、スリーサイズはー、上から87-55-86だよ、よろしくねー♪」



 そう言ってルリナさんがにこりと微笑む。

 その表情に、僕の胸がドキリとした。



「はいはーい!次は私ね!

 ムツキ君ハーレムの四人目、ミホ・モトサカでーす!

 私はムツミちゃん達ほど大きくはないけど、上から85-55-86で、それなりには大きくて、

 形や柔らかさにも自信があるから、きっと巨乳好きのムツキ君でも気に入ってくれると思うよ♪」



 そう言って両腕で左右から自信の胸を挟み、胸を強調して見せてきたミホさんは、肩の上で綺麗に揃えたショートヘアで、頭にはリボンの付いたカチューシャをしていて、左目の下のほくろがとてもチャーミングな女性だ。



「やれやれ、おっぱいが大きければよいというものでもあるまい。

 何事も普通が一番さね。

 というわけで、普通代表ミナ・ヴィルムだ、スリーサイズは78-52-76。

 よろしく頼むよ、我が弟」



 そう自己紹介したのはツインテールに眼鏡の知的な感じの女性だ。

 胸は普通と言いつつも、ムツミさんを含めた四人よりは小さいというだけで、充分に大きい方だと思う。



「ちょっとミナちゃん!何を勝手にムツキ君をあなたの弟にしてるのよ!?」


「む?何か問題でも?

 というかムツミ君もこちら側(ブラコン)の人間だと思っていたのだが?」


「うぐっ…、いや、それは否定出来ないけど…、

 でもムツキ君のことは本気で一人の男の子として愛してるんだもん!!」


「それはわたしとて同じだ。

 所謂一目惚れというやつだな、それはここに集まったエリカ君達も同じだと思うが、

 わたしの場合は愛した男性がなおかつ弟であったというシチュエーションに萌えるたちでね」


「相変わらずミナは拗らせてるな~

 ムツキ、気持ち悪いなら気持ち悪いってハッキリ言っていいんだぜ?」


「い、いえ、そうは思わないです!

 というか、僕の家族きょうだいがまさにそんな感じなので…」


「きょうだい、ってミライちゃん達のこと?」


「ええっと、はい…

 あ、でも姉さん達が男性として好きなのは僕ではなくて兄さんなんですけど、

 兄さんにはミライ姉さん達以外にもたくさんの姉妹がいて…、」



 僕がどう説明していいものか戸惑っていると、ムツミさんがフォローしてくれた。



「ミホちゃん、ムツキ君の家庭には色々と複雑な事情があってね。

 詳しくは話しちゃいけないことになってるのよ」


「それって、軍事機密的な?」


「まぁ、そんな感じ」


「ふむ、この時期に理由わけありの六人姉弟(きょうだい)が転入してきたという時点で、

 まぁ色々あるのだろうとは思っていたから、今更そのことに驚きはしないが、大事なのはそこではない」


「ああ、今の話を聞く限り、ムツキの兄さんはハーレムの主、ってことだよな?」


「え?あ、はい、そうなりますね」


「だったら!ムツキはハーレムに対して抵抗がない、むしろ、ハーレム賛成派ってことだよな!?」


「ええっ!?」


「ムツキ君、実際どうなの?ムツキ君はハーレム作りたい感じなの?」


「ムツミさん…」



 ムツミさんが少し悲しげな表情で僕を見つめる。



「私としては、ムツキ君を独り占め出来なくなるのは悲しいけど、

 ムツキ君がハーレムの主になりたいって言うのなら止めないし、むしろ応援したい。

 男の子ならそれくらいの甲斐性がなきゃいけないしね!」


「僕は…、」



 確かに、僕だって男で、兄さんの弟だ。

 兄さんは自分を好きだと言ってくれる姉妹の皆を平等に愛し、必ず幸せにしてみせると言っていた。

 そんな兄さんを僕はカッコいいと思っている。

 だから、僕は…


 そのタイミングでドリンクが運ばれてきたので、一旦会話は中断された。

 皆の前にそれぞれ頼んだドリンクが置かれたところで、僕は改めて考えていたことを口にした。



「えっと、まず、皆さんはどうして今日会ったばかりの僕のことを…、その、好きだと?」


「ん?それはあれだ、ミナの言った通り一目惚れ、ってヤツだな。

 なんかこう、ビビーッ!と来たんだよ」


「私もそんな感じだねー。

 我ながら陳腐な表現だとは思うけど、ムツキ君に運命を感じたんだよねー」


「だってムツキ君カワイイし!

 私の好みのタイプまんまって感じで、もう絶対ムツキ君の彼女になりたーい!って思ったの♪」


「わたしは先程も述べた通りだよ。

 弟君の弟オーラに一目惚れ、というわけさ」


「…分かりました、ありがとうございます。

 ですが、正直、僕はまだ皆さんのことをよく知らないので、今のところはまだ皆さんのことを好きだとは言えません。

 ああ!でも、嫌いというわけではなくてですね!

 その、皆さんそれぞれにとても魅力的な方なので、僕みたいな人間には勿体ないという感じで…」


「そんなことないよ、ムツキ君。

 ムツキ君はとても魅力的で素敵な男の子だよ♪」


「ありがとう、ムツミさん。

 でも、僕個人としてはまだまだだって思ってます。

 だから、今はまだ皆さんが幸せになれるようなハーレムを作れるとは思ってません。

 …今はまだ、その覚悟も自信も足りないけど、それでも、こんな僕を皆さんが変わらずずっと好きでいてくれるなら、僕はその想いに応えたいと思います」


「…分かった。

 要するに、これからムツキにアタイらのことを好きになってもらえばいいってことだよな?」


「ふむ、それならば、より長く弟君と一緒にいるために、今日から一つ屋根の下で共同生活と行こうじゃないか」


「いいねー!さんせーい!!」


「ちょっ、いきなり何をっ、」


「それならー、ムツミちゃんの家がいいんじゃない?

 今は一軒家に一人暮らしなんでしょー?」


「いいね!決まりだ!」


「ちょっ、ルリナちゃんもエリカちゃんも勝手に決めないで!」


「ムツキはどうなんだ?

 お前が嫌だってんなら無理にとは言わないが…」


「えっと、僕はムツミさんさえ良ければ構いませんけど…」


「…ムツキ君がそう言うなら。

 ま、部屋は余ってたし、理由はどうあれムツキ君と同棲出来るなら、私としても嬉しいかな」


「決定だね!」


「んじゃ、とりあえずのムツキハーレム(仮)結成記念っつーわけで、

 今日はガンガン歌うぜー!!」


「「「「おー!!」」」」


「お、おー!」



 てな感じで、僕のハーレム(仮)の結成となった。

 兄さん、僕も兄さんのような立派なハーレムの主となってみせます!

 大切な女性ひと達を等しく愛し、等しく守り、等しく幸せに出来る、そんな兄さんのような男になってみせます!




*


 それからしばらく、僕達はカラオケで盛り上がった。

 正直、クローンとして生まれてきた僕には一般知識はダウンロードされていても、こうした大衆向けの曲に関する知識は全く無く、ムツミさんから教えてもらったアニメの主題歌くらいしか分からなかったけど、皆の楽しそうな様子を見ているだけで僕はとても幸せな気持ちになれた。


 こんなに素敵で魅力的な女性達が、一目惚れとはいえ僕に好意を持ってくれたことがとても嬉しい。

 そんな彼女達をガッカリさせないよう、僕も頑張らなければ!



 そんなことを考えていたら、突然扉をノックする音が聞こえた。



「あれ?誰か何か注文品したー?」


「いや、アタイは知らねぇぞ」


「私もしてなーい!」


「わたしも心当たりがないな」


「何だろう?部屋を間違えたとか?」


「とりあえず僕が出てみますね?」



 僕は立ち上がり、ドアを開いた。

 ドアの前には先程ドリンクを運んできた従業員の男性が手を後ろに回して立っていた。



「えっと、どうかしましたか?

 僕達は何も注文していないと思うんですけど…」


「いえ、少し皆さんにサプライズな演出に付き合って頂きたくて」



 そう言って従業員が後ろ手に隠し持っていたナイフを突き出し、僕に突き付けてきた。



「…えっ!?」



 咄嗟のことに僕は反応出来ず、その一瞬の隙をつかれて僕は背後を掴まれ、喉元にナイフを突き付けられた状態で、その男と共に部屋の中に押し戻された。

 男が足でドアを閉めると、僕の喉元にナイフを突き付けながら、部屋の中で臨戦態勢に入ろうとしていたムツミさん達にこう言った。



「無駄な抵抗はするな!

 今、このカラオケ店は我々“新人類教”が占拠した!

 余計な動きをすればこのガキを殺す!!

 そして、俺()の腹に巻き付けたこの、」



 そこで男は持ってナイフで自らの服を切り裂いた。

 すると、彼の胴体に巻かれていた物があらわになった。

 それは…、



「このダイナマイトを爆発させる!!

 そうすれば、お前達だけでなく、この店の他の客も巻き添えになって死ぬだろう!

 そうなりたくなければ、お前達には大人しくしていてもらう!!」



 楽しかった時間はあっという間に終わり、僕達は危機に陥っていた…




*


「よし、ではまずお前達には服を脱いで裸になってもらおう。

 何か武器を隠し持ってたりすると厄介だからな、下着も全て脱ぐんだぞ」


「なっ…!?そんなことっ、」


「おっとガキは黙ってな、このナイフで喉掻ききるぞ?」


「痛っ…!」



 男が持っていたナイフで僕の喉を軽く裂いたことで、僕の首筋から僅かに血が流れた。



「やっ、やめて!!

 大人しくするからムツキ君は傷付けないで!!」


「だったら早く服を脱げ!!

 今すぐこのガキ殺してもいいんだぜ?」


「ちぃっ…、分かってるよ、脱げばいいんだろ、脱げば!」


 

 男の命令で、ムツミさん達が制服と下着を脱いでいく。

 くそっ…、皆を守れるように強くなるって誓ったばかりなのに、早速皆の足を引っ張るなんて…!

 最低最悪だ…っ!



「さぁ、脱いでやったぜ?これで気がすんだか?」


「ははは、これはなかなかに壮観だな、AVでもこれだけの美人が出てくる作品はなかなかないぜ?

 おっと、手は後ろに回しておけよ、大事な所を隠すなよ?」



 男の言う通り、五人の美少女達の一糸纏わぬ姿はとても美しかった。

 こんな状況でも、僕は皆の裸姿に見とれてしまっていた。



「やれやれ、こんな形でムツキに裸を見られるとはな」


「もっとロマンティックなシチュエーションで見てほしかったなー」


「…それでー?君らの目的はなんなのさー?

 “新人類教”って言うと、超能力者集団の集まりでしょー?

 こんなカラオケ店を占拠して、女子高生を裸に剥いて何を企んでるのー?」


「勘違いするなよ?お前達は人質だ。

 今、全ての部屋の客達も同様に、俺の()()()が抑えている。

 お前達を裸にしたのは、あくまでお前達が人質だからだ、人質には何をしようが俺の勝手だろ?」


「ゲスいヤツ…」


「ふん、そんなこと言っていいのか?

 今すぐこのガキ殺してもいいんだぞ?」


「や、やめて!!」


「やめて欲しければ、もっと誠意を見せな?

 例えば、お前達の処女をこの俺に捧げる、とかな」


「てっめぇ……!」


「ふん、なんのことはない、

 テロリストを気取りながら、その正体は、人質をとらなければ童貞も捨てられない可哀想な男か」


「なんとでもいえ。

 それで、どうするんだ?俺に処女を捧げるか、このガキを見捨てるか?」


「…させない、」


「あ?なんか言ったか、ガキ?」



 これ以上、ムツミさん達を辱しめるわけにはいかない。

 僕は、ハーレムの主になるんだ…!

 大切な目の前の女性(ひと)達を、守るんだ…っ!!



「皆さんの処女をお前なんかに渡すもんかああああああっ!!」



 僕は、男の持つナイフに自ら喉元を突き付けた。



「なっ…、き、きさま何を…!?」


「む、ムツキ君っ!?」



 僕の喉から大量の血液が吹き出し、その血を浴びた男は突然の事態にナイフから手を離し、後退あとずさる。


 狙い通りだ、僕がわざとナイフに突き刺さりにいけば、男は咄嗟のことに一瞬パニックになるだろうと思っていた。

 この隙に僕がコイツを抑えて、その間に皆を安全な場所に逃がす…!



「ゴッ…、ゴボボッ…!」



 僕は今の内にムツミさん達に逃げるよう言おうとしたが、喉をナイフで貫かれているせいで、上手く発声出来なかった。

 

 あ、マズい…、痛みのせいで意識が飛びかけてる…。

 でも、ここで気絶するわけにはいかない…!

 皆を守らないと…!



 そんなことを考えていると、ルリナさんが僕の方、正確には僕の背後に後退あとずさった男目掛けて飛び出し、裸の身体の何処に隠し持っていたのか、いくつもの手裏剣を両手に出現させ、それらを男目掛けて投げつけた。



「ぎゃあああああああっ!?」



 手裏剣は男の両手両足と、胴に巻き付けていたダイナマイトの導火線に命中し、男は床に倒れた。

 倒れた男に馬乗りになったルリナさんが、とどめとばかりに男を一発殴り気絶させると、今度はエリカさんとミナさんに指示を出した。



「エリカちゃん!ムツキ君の手当てを!

 それからミナちゃんは防犯カメラにハッキングして、この店内の様子を確認出来る!?」


「あ、ああ!任せろ!」


「任せたまえ、わたしの“ハイパーリンク”を使えば潜り込めない電子機器などない」



 ルリナさんの指示で、ミナさんは部屋の奥に備え付けられている防犯カメラに手を伸ばし、何やら操作をし始めた。

 一方、エリカさんは自分のカバンを取り出し、中から掌より一回り程小さなカセットを取り出した。

 次に、右腕の内側に左手を触れると、右腕の内側の一部が浮き上がり、そこに先程のカセットを入れて、再び押し込んだ。



「“オペレーションハンド”セット完了!

 ムツキ、今すぐ手当てしてやるからな!!」



 エリカさんの右腕に小さなコンソールが出現し、同時に複数のコードが伸びてきて、僕の喉元に接続された。

 後から聞いた話では、エリカさんの右腕はカセットを取り替えることで様々な用途に換装出来るようで、今使っている“オペレーションハンド”は傷付いたサイボーグの身体にコードを繋いで、腕のコンソールを操作して応急手当てをするためのハンドらしい。



「って、おいおい、ムツキの身体、ただのサイボーグじゃなかったのか!?

 なんつー複雑な作りしてやがんだよ!?」


「エリカちゃん、私も手伝うわ!

 ムツキ君の身体に関しては、私が少し詳しいから!」



 そう言ってムツミさんが僕の手当てに加わる。

 ムツミさん以外の人には、僕がサイボーグであることは話しているが、それが稀代の天才である兄さん(ヨウ博士)と同等の知識を持った人物に作られたクローンサイボーグであるということは話していない。

 だから、僕に使われている技術が今の科学技術水準よりかなり高いレベルであることに、エリカさんは戸惑っているようだ。

 ムツミさんの指示のもと、エリカさんが“オペレーションハンド”のコンソールを操作することで、徐々に痛みも引いていき、微かにだが話せるようになってきた。



「す…、すいません…、僕が、皆さんを、守らなきゃいけっ…、ゴホッ!?」


「まだ喋るな!

 それに謝るな!お前は何も悪くねぇ!」


「そうだよー、むしろ謝るのは私の方。

 実は、私の力でいつでもコイツを無力化出来たし、君を助けることも出来たんだ…

 だけど、他の部屋の人達のことも気になったし、敵が本当に複数いるかの確認もしたかったから、

 しばらく様子を伺ってたのが、裏目に出ちゃった…、ごめんね…」



 ルリナさんが今にも泣き出しそうな表情で僕に謝ってくれた。

 …なんだ、じゃあやっぱり謝らなきゃいけないのは僕の方じゃないか。

 僕が何かをしなくても、なんとかなったんじゃないか…

 むしろ、僕のせいで余計に面倒なことになって…、



「防犯カメラからのハッキング完了、

 店内の客達及び他の従業員達は皆、何らかの方法で眠らされているようだ、

 我々以外にこのカラオケ店内で活動している者はいない。

 店の入口には臨時休業の張り紙がしてあり、外部からは新たに客が来ないようにもしているようだな」


「それって、つまりどういうこと?」


「つまり、この男の仲間達云々という発言はブラフだったと言うことだな」


「そうなんだ、良かったー…」


「ってことは何か?コイツはマジでアタイらの裸を拝んで、

 あまつさえアタイらの処女まで奪って童貞卒業しようとするために

 こんなおかしなテロ紛いの事件を犯した糞野郎ってことなのか!?」


「おまけにムツキ君まで傷付けた最低最悪の糞野郎よ…!」


「え、えっと、僕が傷付いたのは自業自得なので…」


「ムツキ君、もう怪我は大丈夫なの!?」


「ええ、エリカさんとムツミさんのおかげで、なんとか」



 エリカさんとムツミさんの応急処置と、元々僕の身体に備わっている自己修復機能もあって、喉の傷はすっかりふさがり、元通り喋れるようになっていた。


 それにしても、ミナさんのサイボーグとしての能力“ハイパーリンク”は凄い。

 電子機器であれば触れるだけでそこから内部にアクセスし、それがネットワークに繋がっていれば、そこからありとあらゆる情報を引き出すことが出来るという能力らしい。


 ちなみに、ルリナさんはサイボーグではなく、忍者の血を引く者らしく、何も無い場所から手裏剣を出して見せたのは忍術とのこと。

 もし本当に“新人類教”を名乗る犯人が複数いた場合、影分身の術を使って犯人達を一網打尽にする予定だったらしい。



「ということは、やっぱり僕は何もしない方が良かったんですね…

 ただ無駄に怪我をして皆さんを心配させてしまっただけで、本当に情けない…」


「そんなことないよー

 ムツキ君カッコ良かったよー」


「そうだよ!私達の処女を渡すもんかー!!って怒ってくれたのも、凄く嬉しかったよ♪」


「ああ、アタイらを助けるために自分からナイフに刺されにいくなんて、なかなか出来ることじゃない!

 男らしくて惚れ直したぜ!」


「さすがは我が弟君だよ」



 そう言ってルリナさん達が裸のまま僕を抱き締めて慰めてくれる。



「でも、自分を犠牲にするようなやり方はもうしないでね?

 私、ムツキ君にもしものことがあったら…」


「うん、ごめんなさい、ムツミさん。

 片腕を失くしながらも、姉さんを助け出した兄さんみたいに、カッコよく決めたかったんだけど、僕はまだまだみたいです…」


「お前の兄さんもなかなかに根性あるのな。

 いつか会ってみたいぜ」


「ムツキ君、お兄さんはお兄さんだよ!

 私は今のままのムツキ君が大好きだよ!」


「ああ、アタイもだ!」


「私もー」


「勿論、わたしもだ」


「私だってムツキ君のこと大大大好きなんだから!」


「むっ、むぎゅっぅ!?」



 ムツミさんも含めた五人の裸の女性に抱き締められる僕。

 駄目だ、僕だって男だ。

 こんな状況ではあるけど、これだけ魅力的な人達に裸で抱きつかれたりなんかしたら…、



「ふふ、ムツキ君もやっぱり男の子だね♪」


「うっ…、し、仕方ないじゃないですか…

 皆さんがとても魅力的なのが悪いんです!

 好きになるなって方が無茶ですし、か、身体の方だって反応してしまいます…」


「はは、そいつは嬉しいね。

 だけど、アタイらの処女を貰うのはまだ後にしてくれ」


「そうだねー、残念ではあるけど、これから警察やらに通報して事件の後始末をしなきゃだからねー」


「わ、分かってますよ!」


「ふむ、ではちゃっちゃと面倒事は終わらせよう」


「だね!」



 そんな感じで、“新人類教”を名乗る男によるテロ未遂事件は終わった。



 …と思っていたのだが、これはほんの始まりに過ぎなかった……

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