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魔獣と、筋肉


 目を開ける。


 どこだ…ここ…


 体を起こして周りを確認する。白く、さっぱりとした部屋に綺麗なベッド、サイドテーブルには水差し。


「病院…?え?あ?」


 声が低い。


 ってかこの体って…えっ?ライオットは?


「夢…?」


 辺りをよく見ればファンタジーのかけらもない機械やテレビまである。


 とりあえず水を飲もう。


 ガラスの水差しから紙コップに水を入れたところでドアが開いた。


 ガチャ


「君は、誰だい?」


 いやこっちのセリフだわ。10歳くらいの男の子が立っていた。


「き…」



 君こそ誰だと聞く前にプツンと視界が途切れた。 




—————————————————————




「はっ」


 汗がすごい。身体を見るとライオットだし、男の子もいないしテレビも無い。


「寝てたのか…てか今の元の世界の夢か…?」


 思ってるより未練たらたらなのだろうか。よくわからない内容だったが夢なんてそんなもんだろう。


「っと」


 頭が少し重いが、体は動く。


 状況を確認すべくフラつきながらも立ち上がり、辺りを見渡す。もうすぐ日の入りって感じの暗さだ。…こりゃ説教マシマシこってりって感じだな。


 ええっと、熊を殺して…貧血…?思っている以上に緊張してたのか?


 熊は変わらず横たわっており、固まった血で地面がひどい事になっている。処理…できないな流石に。ごめんなさい。片付けるときは手伝います。手を合わせておこう。

 どうにもならない状況というのがわかったので開き直ることにしよう。子どもが熊に襲われて、奇跡の生還。うんいいじゃないか。端っこに転がってたリュックを拾い、帰り支度をする。といってもダンベルは熊の頭に刺さったままだけどな。さらばダンベル1号、君はよくやった。2号はもっと重くしよう。

 リュックから水と干し肉プロテインを取り出し、腹に入れた。


 さて、帰りますか。


 軽くストレッチをしてから暗くなった道を行きと同じように走る。体が軽い気がする。


 森の出口、すなわち街の入り口が見えてきた。あれ、なんかざわざわしてないか?何人も門のところにいるように見える。これは…もしかしなくても俺のせいなのでは。もしかしなくてもめちゃくちゃ怒られるやつなのでは。

 俺の事ではない可能性に賭けつつ茂みからこっそり近づき、しれっと集団に混じってみる。装備をした人が…20人くらいか?


「それではこれよりフリード家の次男、ライオット・フリードの捜索を開始する!痕跡を見つけた者は白い狼煙を上げるように!目撃例のあった魔獣だが、ブラッドベアの可能性が高い!痕跡、もしくはそれ自体を見つけた場合は速やかにその場を離れ、安全を確保してから黄色の狼煙を上げよ!」


 完全に俺だった。こりゃダメだ。腹を括るしかない。


「あのー」

「なんだ!時間は有限だ!簡潔、に……」

「すみません。ライオット・フリード、ただいま戻りました」


『…………』


 隊長らしき人が固まり、お互い見つめ合う。周りの視線も俺に集まっている。照れるぜ。あっシリアだ。すごい形相でこっちに来る。熊より怖いかもしれない。


「ライオット様!!ご無事ですか!?なぜ森に入ったのですか!!」

「ご無事だよ。ちょっと野暮用で」

「でも血が!どこを怪我したんですか!?」

「俺の血じゃ無いから、大丈夫だから」


 シリアに身体を揉みくちゃにされながら受け応える。


「あー、シリア殿、落ち着いてくれ。ライオットくん、ほんとに怪我は無いんだね?」

「うん。この血は熊の血だから。俺に怪我は無いよ。」


 ざわっ


 熊の血という言葉にみなが反応する。


「く、熊…というのはどんな熊だい?」

「赤い毛皮のでっっかい熊。死体そのままにしちゃったから処理をして欲しいなって」

「死体って…その熊は死んでいたのかい?」

「ううん。俺が倒したよ。ダンベルが犠牲になったけど」


『なっ…』


 周りが一層ざわざわしてきた。


『倒した…?あんな子どもが…?』

『フリード家の次男って加護無しの子だよな…?』

『加護が無くてどうやって魔獣を?』

『死体を見つけただけだろう』


「静かにしてくれ!ライオットくん、倒したというのはどういう意味だい??倒れていた熊にトドメを刺したということかい?」

「いやそのままの意味だよ。森を2時間くらい進んだ所でトレーニングしてたら襲われたんだ。引きずり倒して頭にダンベル刺したら動かなくなったよ。申し訳なかったけど処理の仕方が分からなくてそのままにしてあるんだ」


『………』


「…シリア殿、とりあえず2人で領主館に行って報告をしてくれないか。フリード家の方にはこちらから使いを出す。ライオットくん、おじさん達は君の言った事を確認しなくちゃいけないんだ。見つけたのはどの方角かい?」

「あっち。真っ直ぐだよ」

「わかった、ありがとう。ノーマン、フリード家に行ってくれ、急いでな」


 ノーマンと言われたおじさんがチャカチャカと装備を鳴らしながら走って行った。


「みな、聞いてくれ!これからブラッドベアと思わしき魔獣を確認しに行く!警戒を緩めず、離れないように!」


 そう言うとおじさん達はシリアと俺を残して森に入っていった。


「ライオット様。疲れてると思いますが、これからバーグ様の所へ向かいます。さぁ、背中に」


 シリアがしゃがみながら言う。


「大丈夫だよ、自分で歩けるって」

「ダメです!さぁ早く乗って下さい!」


 しぶしぶシリアに乗っておんぶされながら街へ向かう。血が乾いてて良かった。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「ライオット様、起きて下さい。着きましたよ」


 シリアに言われて目を覚ます。背中で寝てたみたいだ。今日はよく寝るな。

 ここは…応接室だろうか。バーグさんがソファに座っている。俺もシリアの背中から降りてソファに座る。


「こんばんはライオットくん。疲れてるとは思うが、事が事だからな。簡単にで構わないから成り行きを教えてくれないか?」


 寝起きで少し重い頭が徐々に覚醒していく。


「はい。まずは、止められてたのに森に行ってごめんなさい。どうしても新しいトレーニングがしたくて行ってしまいました。新しいトレーニングというのは高濃度の魔素がある環境で超回復が」

「魔素トレーニングの話、それは今は、いい。大丈夫だ。あとでジルとたくさん話しなさい。魔獣と会った所から話してくれないか」


 俺は木が倒れている所で魔獣に会った事、攻撃は俺がかわせるくらい動きが悪かったのでそのまま倒した事を伝えた。


「そうか…にわかには信じ難いが、嘘をついているとも思えん…君を襲った赤い熊だが、やつはブラッドベアと言ってな、大人でも簡単にやられてしまう強い魔獣なんだ。一人で倒そうとしたら、それこそ神の加護でも無ければ難しいだろう。赤い毛皮は剣を弾き、魔法を吸収する。素早い動きと鋭い爪で一方的にやられてしまうんだ」


 あれ?じゃあそのブラッドベアじゃないんじゃないか?石で出来たダンベルが刺さったし、動きもトロかったぞ?


「バーグさん、俺が戦った熊は違うかもしれない。そんなに強くなかったもん」

「うーむ…だが赤い毛皮の熊となると…すまんが私には知識が無いようだ。調査隊が持ち帰った情報での判断になりそうだ」


 流石にあんな動きじゃブラッドベアなんて偉そうな名前は名乗れないだろうな。熊の突然変異とかそんなとこだろう。


「ライオット君、今日はもう遅いからうちに泊まっていきなさい。ジルはもう寝ているが、朝になって君がいればきっと喜ぶだろうしな」

「ありがとうございます。シリアは?」

「私は屋敷に戻ります。旦那様と奥様にご説明をしますので。」

「わかった。ありがとう、シリア。…ごめんなさい」

「…無事ならいいのです。今度から無茶をする時は一声かけて下さいね。では、バーグ様、また明日ライオット様をお迎えに上がります。ご厚意、感謝いたします」


 綺麗なお辞儀をするシリア。セールスマンにでもなれそうだ。


「よしてくれシリア殿。もっと気軽に頼ってくれていいんだ。では、また明日にな。よーし、ライオット君、一緒に風呂に入ってご飯食べて、寝ようじゃないか」


 え?俺バーグさんと風呂入るの?いやちょうどいいな、剣神の加護とやらはどんな筋肉の付け方してるか確認しておこう。見せてもらおうか神が作った筋肉バランスとやらを!



 …バーグさんに筋肉はほとんど付いて無かった。弛んでいるわけでもヒョロイ訳でも無いが、所謂『鍛えてない人』って感じだ。ステータスは体の表面にはでないらしい。残念。

遅くなりました。書いててもむさいのでお風呂シーンはカットです。


更新は不定期ですが、見かけた時に読んでいただけると幸いです。(ブクマが便利だと思いますよ…!)

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