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プロローグ

初投稿になりますのでルールとかよくわかりませんが、自分が読みたいものを書きました。

 四肢は動かず、肋間筋も震える事を止めようとしている。眼を開ける気力もない。

肺から空気を絞り出すように呼吸をし、辛うじて命を繋ぎとめている。情けない状況だ。いくら酸素があっても取り込めなければ意味がないのだ。


ここまでか…

 

 幾度となく試練を乗り越えてきた相棒も呼びかけに応えることはない。


今までありがとう… 

 

 呼びかけに応えはないが決して裏切らないこいつらをそばで感じ、俺は最期の一息をもってして広背筋に力を込める。


 ドクンと全身が波打った。


「…ダブル…バイ…」


 そこで俺の意識は途切れた。



――――――――――――――――――――――――

 


 目が覚めると俺は白い場所にいた。白い場所としか表現できない、上も下も無ければ先程までの寒さも無い。自分の腹筋を見ようとしたところで肉体すら無いことに気付いた。


ここは…?


 意識が途切れる寸前の記憶が蘇る。確か、相棒である広背筋(オーガ)へ感謝を伝えるべくバックダブルバイセプスをしようとしていた。

そして、返事が聞こえたと思った矢先にたどり着いたのがここ。

 

ということは…


なるほど。


 一度は死を覚悟した俺だがどうやら死の間際で覚醒したらしい。ここはあれだ。

アスリートが極限状態で入るという『ゾーン』…!

名付けよう。

この空間を筋肉が内包する世界(ゾーンオブマッスル)と……!!


『違います』


 声が聞こえた。とうとう広背筋(オーガ)から応えが返ってきたかと一瞬心が弾んだが、それは女性の声だった。

 意識を向けると白い世界から浮かび上がるように、金色に輝く長い髪が見えた。細い首、細い腕、細い腰、細い足。

 栄養不足なのだろう。よくみれば病院の検査着のような服を着ていることが伺える。一瞬でも広背筋(オーガ)の化身かと思った俺を殴りたい。


『考えている事はこちらに伝わってきます。別に栄養不足ではありませんよ。そしてオーガの化身でもありません。神の一柱である私を目の前にしてなおその思考…報告通り本当に脳みそまで筋肉でできているんですね』

 

 人間には物理的に鍛えられない場所がある。眼球や内臓、もちろんそこには脳も含まれる。脳みそまで筋肉がある、と言う事はつまりそれは賛辞! 


『褒めていませんよ。説明をしたいのでいったん筋肉から離れましょうか』


 それはできない相談だ。俺の筋肉は片時も離れる事は無く、決して裏切らない。


『…では離れなくていいです。話を進めますね。全く自覚していないようなのではっきりと言いますが、あなたは死亡しました』

 

 死んだ??俺が?じゃあここは筋肉が内包する世界(ゾーンオブマッスル)ではないのか??


『違います。そしてそのルビ、うるさいので控えて下さいね』


 酷い女だ。神と言っていたが邪神の類かもしれない。


『……本来ならば死した魂は死神の手で輪廻に導かれ同じ世界の生物に転生します。システム、プログラムといってもいいでしょう。』


 死神?あんたがそうなのか?


『私は違います。私は統括者であり、名はありません。あなたが異例だったのでこうして対話する事になりました』


 異例だと?


『ええ。死んだ魂は様々な要素を基に分岐し、転生先が決まります。まず死因。あなたの場合は自殺と』


 自殺?それはおかしいだろう。俺は死ぬ気なんて全く無かった。ただ新しいトレーニング方を実践していただけだぞ?


『マスクしながら業務用冷凍庫で筋トレなんて自殺も同然です!あげく荷崩れで身動き取れなくなって凍死なんて…』


 理論は完璧だった。低酸素かつ氷点下ならば筋肉への負荷は上がり、より効率的なトレーニングになる。冷凍庫の荷物でウェイトを稼ごうとしたのがいけなかったか…


『荷崩れが無くても、どっちみち死んでいたらしいですけどね。トレーニングに夢中になったあなたはガス欠を起こし、身動きが取れなくなり死亡していたそうです』

 低血糖によるハンガーノックか…!確かに長時間トレーニングを行なう予定では無かったからな…


『異例なのはそこではありません。先ほども言いましたが、根本が違うのです。そもそも、本来のあなたはあのトレーニングを実行しませんでした』


 本来の俺?どう言う事だ?


『運命神の定義するあなたという個体です。人にはレールがあります。神が定めた運命というレール。あなたはまだ死ぬ予定では無かったのです』


 でも俺は別に誰かに言われてやったわけじゃないぞ?より良い筋肉を想って、自分でやった。


『他世界からの思考誘導がありました』


 思考…誘導?他世界…難しい話になってきたな…


『ちゃんと説明しますよ。まず前提として、あなたがいた世界の他にも世界があります』


 他の世界…?


『パラレルワールド、可能性の並列世界。といってもあなたが水を飲んだ世界、飲まなかった世界というように細かく広がる事はありません。創造神によって世界は間引きされ、6つを超えないようにできています。あなたのいた世界は第5世界。ここまではついてこれてますか?』


 6個の世界…6…シックスパック…


『…続けます。先ほど言った思考誘導をかけたのは第4世界の神です。あなたに、というよりあっちこっちの世界に干渉して回っているのです』


 なんでそんな事してんだ?


『はっきりした目的はわかりません。人の姿を取っているので発見も難しいのです。干渉する世界に入り込み、受肉し、狡猾に惑わします。あなたもどこかで接触して思考を誘導されたのでしょう。その結果、レールから外れてしまった』


 それで?こうやって話してるってことは何かあるんだろ。俺に何して欲しいんだ?


『このまま干渉を許していれば各世界がめちゃくちゃになってしまいます。あなたにはこれからその第4世界に転生して欲しいのです。そこで神を見つけて欲しい。見つけてしまえば座標が確定されますので後は私が回収できます』


 どんな奴か目印はあるのか?


『残念ながらありません。ただし、その神は元々、第5世界の人でした。前世の記憶が蘇った彼は強力な加護で神の座を奪い、自分の思うがままに世界を改変しました』


 とんでもないやつだな。そして前の神もなにやってんだ。負けるなよ人間に。


『過去を改ざんし、あなたの世界で言うところのゲームのような世界を創ってしまいました』


 どんな世界だ?俺が行くのは。


『加護と呼ばれる超常が常識の世界です。魔法、モンスター、レベルやスキルが存在し、人々はそれ前提での発展を遂げました。そのため産業革命は起きず、内燃機関や機械の発展が著しく遅れています。パソコン、自動車はもちろん水道もありません』


 まぁいい。新しい世界でも筋肉と共に生きるさ。


『あなたなら大丈夫でしょう。記憶は…転生直後は残るかわかりませんが、5歳になれば信託という形で私と会えますのでその時に戻るはずです。そうそう、第4世界では辛いトレーニングをしなくても力がつきますよ。レベルを上げてステータスを上げれば筋力、体力が上がりますので』


 はぁ!?なんだそれは!!太い筋肉は辛いトレーニングを超え、自身の成長と共に育っていくものだ!!なんだそれは!!!


『なんだと言われましても受け入れて頂くしか…こうして私経由で転生する訳ですし、強力な加護を授かると思います。少しのレベルアップでとても強くなれるはずです。ですから』


 そんな強さに意味は無い!トレーニングをせずに強くなるとかそんなものはドーピングと一緒だろう!己が鍛えた筋肉にこそ力が宿るんだ!そもそも加護ってなんだ!俺に余計なものを付けるな!


『ですが現地の人々は身体を鍛えるという概念がありません!レベルやスキル練度を上げるというのが常識です、あなたも受け入れて下さい!さぁ転生を始めますよ!!』


 だめだだめだ!俺は認めない!いやだ!強制ドーピングはいやだ!!そんな世界は行きたくない!!


『諦めて下さい!転生は始まってます!落ち着いて受け入れて下さい!』


 いーやーだーー!行きたくなーーーい!はっ!なら俺は!加護を拒否する!加護いらない!!返す!!!


『何を言って…ああもうなんでもいいから早く行って!!』


 神の言葉が遠ざかり、視界が暗転した。

稚拙な文章、お読みいただきありがとうございます。仕事の関係で不定期更新ですが、完結まで頑張ります。

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