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第7話 わたしがママ(自称)よ♪




 「ほ~ら、イノリちゃ~ん。あたしが、あなたのママでちゅよ~」

 「あぁ~うぅ~☆」


 指を掴んだまま嬉しそうに上下に振る(いのり)を見て、マグナリアの目尻が下がり、相貌がこれ以上無いくらいに蕩けまくる。


 ドサクサにママ宣言するマグナリアに、武蔵は軽くツッコミ(物理)を入れた。



 「まさか霊体に直接干渉できるとは。こりゃ、とんでもなくヤバい能力持って来たなぁ」



 祈の能力の一端を見た俊明が頭を抱えた。


 「俊明殿、そんなに不味いので?」

 「武蔵さん、不味いなんてもんじゃないよ。もし俺らが居なかったら、この子は確実に悪霊に狙われる。直接霊体に干渉できるって事は、その分この子の肉体が、より霊界に近いって事なんだ。まだ個を確立していない未熟な状態だから、簡単に憑依支配ができる」


 「その程度ならば、俊明殿の結界術で解決でござろう?」

 「現状(いま)はな。さっきも言ったけど、魂が肉体に定着しきる半年までの間は、人も魂も同じに見える子は多い。それを過ぎても変わらない子は希に存在するし、長い子だとだいたい五歳くらいまで、それが続く場合もある」


 そういった子は、よく言われる”イマジナリフレンド”という存在を持つケースである。


 周囲の大人には判らない、気が付かない存在。


 でも、その子にとってはそれは知覚ができ、確かに存在しているのだ。



 「で、問題はここからだ。知覚でき、触れられると言う事は、魂魄にとって現世に対して影響力を行使でき得るまたと無いチャンスなんだ。つまり、もし祈が成長してもこのままだった場合、生きている間は、常に魂魄から狙われ続けるっていう面倒な事になる」


 自身も生まれてからずっと、常人には見えない世界を俊明は視ていた。


 意識せずとも人ならざるモノを視る事ができ、ちょっとした悪霊なら労せず退治ができた。


 きっと自分は世界に選ばれた”正義の味方”なんだと、子供心に盛大な勘違いをしていた苦い記憶が蘇る。



 『ほら、あそこ。ハンガーにかかったあの服の所に居るんだよ』

 『あの服私のなのにっ! 天地(てんち)くん、なんでそんないじわる言うのっ!?』



 小学生の修学旅行の時にその能力を披露したが為、密かに想いをよせていたクラスメイトの女の子を盛大に泣かせてしまった事があった。


 その後、俊明はクラスの女子から総スカンを食らい、見事無事に不登校ヒキコモり生活へのカウントダウンが始まったのだ……俊明『生前黒歴史』の一つである。



 「俺の場合は、親戚のツテにその手の技術を持った一族があって、強制的に拉致、修行させられて何とかなったんだけどな……」



 物心ついてすぐ行われた地獄の陰陽行の修行を思い出し、俊明は、死んだ魚の目の様な光を失った遠い目をする。


 元々才能があったのか、全ての行を修めた俊明は、無事ヒキコモリニートになった後も、この技術のお陰で思い出したかの様に依頼を受けては、ヒキコモりを続けていけるだけのそこそこの収入を得る事ができた。



 そうして強制召喚された異世界では、世界のルールそのものが違う為に、このヒキコモり生活を支えた技術の大半が全くの無意味だった事に打ちのめされた。


 (十二神将も、四海竜王も、五聖獣も、善鬼・護鬼も……まさか強力な式の大半が喚び出せんとか、ハードモード過ぎるわコンチキショー…)


 結局、最初の生では結界術以外まともに使い物にならなかったが為に、レベルを上げて物理で魔王を倒した俊明なのであった。



 「そんな事はどーでもいい。このまま肉体の成長に引っ張られてくれれば、この力は埋没していくから問題は無いんだが……」



 「最悪、あなたがイノリに修行をつければ良い話じゃない? 私は勇者の力に目覚めるまで、貴方たちを知覚する事ができなかったけど、この子の能力がそれなのかも知れないんだし…」



「会話ができるのであれば、良い案だと拙者も思う。いっそのこと、拙者の剣術全てを伝えるのも面白いやも知れぬな」



 どうせ、物理脳筋の拙者の出番など、今後も無い訳でござるし?



 武蔵はちょっと前に二人に弄られたのを根に持っている様である。



 「おいおい……いくらなんでも、流石にそれはやり過ぎじゃね? お前らこの世界に修羅を顕現させる気かよ」



 世界を救った三勇者の持つ技術全てを修めるとか……世界を滅ぼす事すら可能では?


 もし実現した場合、祈の将来が不安になる。



 「あの性悪女……布勢といったか。ああいう手合いから自衛できる様にする程度であれば、些かの問題も無かろうて?」

 「あたしの可愛いイノリちゃんを虐める全ての存在に、地獄の苦しみと不幸を与えて差し上げますわ……」

 「おおう。お前ら、それ流石にオーバーキル過ぎね?」



 間違い無くこの不安は的中する。



 嫌でもそんな思いが脳裏によぎる俊明なのであった。




出てるだけ主人公…


誤字脱字があったらごめんなさい。

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