第150話 上位霊達の世間話
150話に到達しました。ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。
ですが、今回すっげ短いです。
そこは、時間と距離の概念がとても希薄な異空間であった。
人間の持つ感覚の物差しでは、決して図る事のできない。上位の存在のみが、そこに在る事を許される空間。
この世界を管理する者が、直々に招き入れた上位霊のみが、この空間に在る事を許されている。そんな場所だ。
そこで、とある世界では”精霊神”として奉られるべき存在の三柱が、今はそこに在った。
『して、彼奴が直接動くか』
『その様で。その先には、およそ1万通りの展開があるが、どれにも我らが望む”未来”への道には決して繋がらぬ』
『仕方無し。彼奴は毒だ。魂の毒であるが以上、人には対処なんぞできぬよ』
『…この世界の人は、彼奴の毒には対処ができぬ。生命力が弱すぎるが故に』
『だからこそ、お主等は、原住民にその血を分けてやったのだろう?』
『然り。だが、それでもまだ弱かった。そして、今やその血も薄まり過ぎた。直接対峙させるには、もう一度、我の血を混ぜねばならぬやも知れぬ』
『だが、この世代にはもう間に合わぬ。遡って干渉するには、少しばかり遅すぎたな』
『ふむ。この時代をやり過ごせねば、そこで終わる話だの』
『何の抵抗もできず、魂の内に毒を植え付けられる…か。多大な犠牲を払い、彼奴を討ち果たす事ができようとも、生き残った者達は魂の内から毒に喰われ、何れ彼奴へと成り果てる。これでは堂々巡りと成ろうさ』
『正に。この様な頭の悪い”属性設定”を加える馬鹿がおるとは思わなんだ。これは正に”神災”だ』
『その様な凶悪な毒が紛れ込んでいると気付かず世界の方々にバラ撒いた馬鹿もおる。この世界の管理官だが』
『この世界の魂の大半が彼奴に喰われる。現時点では、どの道を巡ったとて、そこへの帰結しかない。まぁ、自業自得よな』
『我の”観測”した”未来”では、その限りではないがの。とはいえ、そこに至るは我だけでなく、他の上位存在の協力が必要になるのだが…』
『…主様の育てた、竜の娘かや?』
『そうだ。あの娘の魂ならば、彼奴と相対した所で、その毒にやられる事は決して無い。だからこそ、我は”孫”を預けたのだ』
『ふむ。確かにあの竜の娘と会ってから、急に観測できる様になった”筋道”が増えたのは確かだ。まだその先に在る”未来”は、不確定要素が多すぎて何も観測できぬが…』
『そういう事だ。その筋道の為に、主等も竜の娘と契約したのであろ?』
『我はしておらぬ。この世界で我を直接使役するは我の子達のみ。そう世界と契約したのでな…軽率だったやも知れぬ』
『だが、お主の眷属は、竜の娘の傍らに在ろう? それが直系でなくとも』
『然り。だが、アレを我の眷属と呼んで良いものか…それほどに血が薄まり過ぎておるが』
『”祝福”を与えてしまえば良かろう。少しの時間、彼奴の毒に対抗できればそれで良い』
『…主様の呪で、彼奴と直接対峙せずとも魔を討滅できる術があった筈だ。そこまで過敏になる必要もなかろう?』
『ふむ。主様の育てた竜の娘ならば、その術使いこなせるか。今回そちらを採るのも手よな』
『今や彼奴は数が多すぎる。一気に滅せねばならぬ程に』
『…よくよくやらかしてくれたものよな。あの元管理官は…』
『この世界がとうに破棄されていてもおかしくはなかった。それ程の事態だ。だからこそ、我らの様な存在が喚ばれたのであろうが…』
『確かに。斯様な異世界にて、我らが揃うとは思うておらなんだ。そもそもこの世界に、我らは縁もゆかりも無いでな』
『どうやら、後付けの”麒麟”も来ておるらしい。まぁ、所詮”後付けの概念”でしかない奴では、我らと並ぶ事なぞ無いのだが…』
『そう言うてやるな。”本人”は修行中の身。神と成るには、まだまだかかろう。今ここに在るは、その未来の予想図でしかないのだからな』
『そういう事だ。彼の者が神と成れば、我ら”四聖獣”は”五聖獣”と呼ばれる。その”事実”が定着するのは、そう遠くない。我らは所詮概念でしかないのだ』
『さて。その概念が、この世界を救えるのか…の?』
『竜の娘が、我らを使いこなせばそれも充分叶うやも知れぬぞ?』
『たった一人の娘に頼る様では無理であろ。”世界”は広すぎる』
『…我らですら視通せぬ”未来”がある内は、少しくらい夢を見ても良かろうさ』
『夢…そうだな。本来であれば我らが口にするのは憚られようが、それもまた一興か』
『確かにそれは面白い。白虎よ。お主、この世界で受肉して変わったの』
『そうか? …いや、そうかも知れぬ。この世界の我には、万象が、命が可愛くて仕方が無いのだ。先が視える不便が、今は本当に煩わしい』
『ふむ。我にはついぞ無い感性よ。だが、お主の言いたい事は解るつもりだ』
『然り。でなければ、我も腹を痛めてまで子を成さなんだ。だからこそ、今は苦しいのだが…』
『朱雀、お前も変わったの。ふむ。我も眷属をこさえてみるのも良かろうか…』
『戯れ言を。世界への不干渉を貫くが腹づもりで、引き篭もったお主がそれを言うかや? 玄武よ』
『言うてみただけだ。だが、それも良いかなと、お主等を見て思うてしまった』
『この世界に要らぬ情が湧く。お勧めはせぬぞ?』
『然り。この喜び、この苦しみ。別つことはできぬ』
『だからこそよ。そうすれば、我も本腰を入れてこの世界を救おうと思うのでは…とな』
『『…お主は本当に悪趣味だ』』
そんな三柱の精霊神を、他の上位霊達はただ見つめるのみであった。
誤字脱字があったらごめんなさい。




