私と宇多田は不器用で意地っ張りで面倒くさい。
「へぇ~、そんな凄い別荘に泊まれるんだ。でもいいの?私、その明日香さん?ていう人と浜崎さんのお義兄さんとの面識ないけど?」
「大丈夫だよ!友達を沢山呼んでくれて構わないって明日香ちゃんも言ってたし、問題ないよ!」
「……じゃあ行こうかな?楽しそうだし!」
「やったぁ!」
新たに倉木さんがパーティーに加わった。
「お金はいくらくらいかかるの?」
「移動は車で行くし、宿泊費もタダだから、友達を誘うなら食費の2000円だけ頂けたらいいってお義兄ちゃんが言ってた」
「OK!お母さんに聞いてみるね」
「ありがとう!倉木さん」
「いえいえ、こちらこそ誘ってくれてありがとね」
本当に倉木さんはいい人だなぁ。どうして宇多田なんかとよく一緒にいるんだろ?倉木さんの人当たりのよさを、宇多田も見習えばいいのに。
「そう言えば、他に誰が来るの?西城さんは来るだろうけど……後は松本君とか?」
「あぁ~……綾香は来るけど、公平は誘ってないんだ?」
「えっ、そうなの?」
倉木さんは私が公平を誘っていない事が意外だったのか、少し驚いたり素振りを見せる。まぁ、部活の時以外はよく私と綾香とでよく一緒にいるからね。
班で分かれる活動をするなら絶対に一緒になるし。私の家で倉木さんが遊びに来た時とかも、公平が用事でやったまたま来たりする事もあったから、幼馴染みで家族ぐるみの付き合いだと言うことも倉木さんは知っている。
「松本君と喧嘩でもしたの?」
倉木さんの質問に私は「違う!違う!」と言って、手を全力で振りながら否定した。そして、公平を別荘に誘っていない理由の説明を始める。
「公平ってバスケ部で地区大会を勝ち進んだの。そして夏休みの間に都大会、関東大会、全国大会があって、関東大会がお盆前にあるの。関東大会を勝ち進んだらお盆後の全国大会に出れるから、あえて誘っていないの。全国大会に勝ち進んだら、お盆に別荘なんていけないじゃない?」
「あぁ~成る程。そういう事ね」
「それに、もし誘って……『それって俺達が全国大会に行けないと思ってるて事か?』みたいな事を言われて拗ねられても困るし」
公平のモノマネを交えた私の説明に、倉木さんは苦笑をしながら「松本君そんな事をいうかなぁ?」と言い、冗談だと思って真に受けていない様だ。
しかし、隣で話を聞いていたもう一人の幼馴染みである綾香は私の話を「うんうん」と頷きながら聞いてくれており、「倉木さん。公平はそんな奴よ」と私の説明を支持してくれた。
「マジかぁ。松本君って、ねちねちしてないっていうか、クールなイメージなんだけどなぁ」
「公平がクールだとか何とか結構言われてるけど、公平は全然クールな奴じゃないの。本当は結構負けず嫌いだし、嫌味とかも結構言ってくるし、でも私や綾香が困っていたら必死になって助けようとしてくれる凄く熱い奴なの。そんな皆が思っている程飄々《ひょうひょう》とした奴じゃないわ」
「クールというか、最近カッコつけてるだけで、中身はそんな感じだよね」
私の公平に対する説明に、綾香が追加補足をしてくれた。私達二人の公平評を聞いて、倉木さんはニコニコと笑っている。
「つまりは、松本はいい奴なんだね」
「うん!凄くいい奴!」
私もニコっと笑い、胸を張って言いきった。喧嘩も沢山するが、公平は私達にとってかけがえのない存在だ。稲葉君みたいに爽やかなイケメンでは無いけど、稲葉君にも負けないくらいに良い所が沢山あると思っている。
公平の浮いた話はあまり聞いた事が無い。女子バスケ部の持田さんが公平の事を好きらしいし、他にも公平の事をいいと思っている人がいるらしいが、公平自身、好きな女性がいるかどうかが全然分からない。そんな話を一切しないから。
出来れば、公平の格好をつけている上っ面部分ではなくて、公平のいい所を本当に分かってくれる人と縁を持ってくれたらなと切に思う。公平と綾香には本当に幸せになってほしい。
「じゃあ、松本は別荘に来れないね」
「来れるようになったらその時は全国大会に出場できないって事だからね」
「じゃあさ、他にまだ誰か誘ってもいい?人数に余裕があるなら」
「……他に?」
倉木さんの提案で、本日二回目の嫌な予感が私の頭によぎった。
「うん。ユキも呼んであげたいなぁ……と思って」
「ユキって……宇多田さんだよね?」
「うん」
本日2回目嫌な予感が的中した。的中率100%である。私てスピリチュアルの才能とかあるのかな?いや、嫌な予感の全事例が宇多田だと考えれば、宇多田がスピリチュアルな存在なのかもしれない。
宇多田はそういった予感をさせるオーラを纏っているのかも……。今後からメスライオン宇多田を改め、スピリチュアル宇多田と心の中で呼ぶようにしよう。
私の反応を見て、倉木さんは何処か気まずそうにしながら、「やっぱり駄目かなぁ?」と尋ねてきた。
「いや……駄目じゃないけど……宇多田さんが嫌なんじゃない?」
倉木さんと宇多田は友達だ。それで倉木さんが楽しくなるならば、私が断る理由は無い。でも、いつも私に突っかかってきている宇多田が私と遊びたいとはどうしても思えない。
『なんで私が浜崎さんと遠出をして遊ばないといけないの!?浜崎さんは敵よ!』とか言いながら、突っぱねそうなものなんだけど。
しかし、スピリチュアル宇多田をよく知る倉木さんはそう思っていないらしくて……
「ユキは誘われたら絶対に来るよ。……本当はユキだって、浜崎さんと仲良くしたいんだと思うんだ。ユキも意地っ張りだから、引っ込みがつかなくなってると言うか……」
「はぁ……」
なんて面倒くさい奴なんだ。よく倉木さんは一緒にいられるよなぁ。でも、私が皆の知らない公平の内面をいい所を知っているように、倉木さんも宇多田のいい所を知っているのだろう。宇多田も不器用そうだしなぁ……
そんな事を考えていると、いきなり綾香が「宇多田さんって、桜と何処か似ているね!」とトンでもない事をいきなり言い出した。
私はビックリして、「えっ!?何処が!?」と返す刀で
反発をした。
「桜だって意地っ張りな所があるじゃない?身に覚えがあるんじゃない?」
「うっ……」
最近面倒くさい事件を起こして周りに迷惑をかけてしまった身なので反論が出来ない。意地を張らずに、素直に自分の気持ちを伝えていれば、あそこまで大事になっていなかったはずだ。周りからは、宇多田のように面倒な奴だと思われているのかもしれない。
内容が内容だっただけに、お義兄ちゃんに直接話しをする事は出来ていなくても、意地を張って抱え込まずに、公平や綾香にもっと早く相談する事出来ていれば……。
「……倉木さん。もし宇多田さんが来たいって言うなら全然私は大丈夫だよ?宇多田さんを誘ってみてよ」
「ありがとう!浜崎さん!」
私の返答に、倉木さんは凄く喜んでくれているようだ。なんでこんなに突っかかられているのかは未だに分からないけど、綾香の言うとおり私と宇多田が似た者同士だというのなら、それは同族嫌悪なのかもしれない。
でも、似ている所があるのならば逆もまたしかりで、価値観を共有する事で、仲良くなる事も出来るはずだと思う。
別に宇多田と仲良くなりたいと思った事は無いけど、もし宇多田がそうしたいと望むのであるのならば……。
なんなかんだ言いつつ、宇多田と仲良くなれるかもしれないという事にワクワクしている自分がいた。まぁ、仲良くなれたら突っかかられる事が無くなるかもしれないしね!




