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義妹と同僚達。②

 俺は新藤のケツに軽く膝ゲリを入れ、取り敢えずテーブルの椅子に座らせた。

 俺と健太は缶ビール、新藤はハイボール、桜はジンジャエールをコップに注ぎ、各々右手にコップを持って構える。


「それでは、カンパーイ!」


「カンパーイ!」×3


 俺が音頭を取って乾杯した。


 グビッ、グビッ、グビッ、「プファー!」


 俺はコップ一杯のビールを一気に飲み干す。ビールを飲むのは実に半年ぶりだ。酒を飲むのは好きなのだが、一人で飲むより誰かと飲むのが好きなタイプだ。嫁が生きていたときは、二人で酒をよく飲んでいた。しかし、嫁が死んでからは家で一緒に酒を飲む人も居らず、我慢をしていた訳ではないのだが、全然家では酒を飲んでいなかった。


「かぁ~!五臓六腑に染み渡る~!」


 コップに再びビールを注ぎ、またグビグビと俺はビールを飲み始める。そんな俺の姿を、桜は微笑ましい顔をして見てくる。


「別に普段から飲めばいいのに。私は気にしないよ?」


「いや、別に桜に遠慮して飲んでなかった訳じゃないけど…」


「なんなら私が付き合おうか?」


「アホ」


 俺は軽く桜の頭を小突き、桜はおどけた顔で舌を出し「エヘッ」と笑った。桜はいつもおどけた態度で俺に接してくるが、その中に桜の気遣いが見え隠れする。今回のやり取りも、本当に普段から俺の好きなお酒を遠慮せずに飲んでほしいと思ってのやり取りであろう。

 そんな桜の優しい気遣いに、俺はふと笑みをこぼしながらビールを再び飲み始めようとする……が、向かい側の席から何やら凄く痛い視線が俺に突き刺さる。


「先輩は卑劣です…」


 その視線の主は新藤であった。新藤は下唇を噛みしめ、目の周りに神経を浮かび上がらせながら俺を見ていた。


「何が卑劣なんだよ?」


「分からないんですか?先輩?先輩はこんな可愛い子を合法的に義妹にし、一つ屋根の下で一緒に暮らしているだけでもギルティ《有罪》なのに、イチャコラチョメチョメをわざわざ俺に見せつけるなんて……羨ましい……先輩の行動は卑劣以外の何事でもない!!」


「合法なのかギルティ(有罪)なのかどっちなんだよ……」


「まぁ、可愛いだなんて(照)」


 桜は照れる振りをして、ほっぺに両手をやっておどけてみせた。そのおどけ方は少しウザイ。


「被告人!何か申し開きはありますか!?」


 新藤の俺に対する呼び名が被告人に変わった。どうやらこのリビングは法廷になったらしい。俺は半ば呆れながら、そのノリに付き合って反論をする事にした。


「何が羨ましいかは分からんが、桜は妹だぞ?10も年の離れた」


「義理の妹でしょ!!義・理・の!!」


 どうやら「妹」という事は重要では無く、「義理の妹」である事が重要であるらしい。

 義理であろうがなんだろうが、そこに血が繋がっていなくても桜は大事な家族である。俺には血の繋がった妹も実家にいるが、実の妹と義妹の桜と接するにあたって、特別家族として変わった感情を抱く事は無い。実の妹だろうが義理の妹だろうが、妹は妹である。それ以上でもそれ以下でも無い。義理である事に何か付加価値がつくなど理解が出来ない。


「新藤さんのいう通りだと思うの。もっとお義兄ちゃんは私という義妹がいる事の幸運を噛みしめるべきだと思うの」


 義妹は義妹の付加価値を理解していた。


「あのなぁ…。桜は母親のお腹の中にいる時からしっているんだぞ…。なんならキン○マ袋の中にいるときか、グフ!!」


 桜は下ネタをいいかけている俺の腹に見事なボディブローを入れた。俺は悶絶しながらも反論を進めようとする。


「ゲフっ、ゲフっ……と、とにかく!桜は小さい時から知ってるんだ!!お前が考えているような関係じゃないよ!」


「つまり……幼馴染みでもあると………死刑」



 反論むなしく理不尽な刑が宣告された。どうやら新藤にとっては「幼馴染み」も罪の対象であるらしい。

 この裁判ごっこの判決結果がツボにはまったのか、桜と健太は腹を抱えて大爆笑していた。こんな理不尽な冤罪判決で大爆笑できるとは…こいつらの倫理観は腐っている。


「あ~面白い!健太お兄ちゃん(・・・・・・・)!いつも二人は会社でこんな感じなの?」


「まぁ、勤務時間内は流石に真面目に仕事してるけどね」


「健太……お兄ちゃん…だと?」


 桜の健太に対する呼び方に、新藤が禍々しい雰囲気を醸しながら反応する。

 健太と俺は小学校時代からの幼馴染みであり、嫁も俺と幼馴染みである。つまり、健太も俺の嫁と幼馴染みであり、嫁の妹である桜の事も赤ちゃんの頃から知っている。よって、健太も桜も幼馴染みなのである。

 桜は俺と義兄妹になる前から俺の事を「咲太お兄ちゃん」と呼んでいたし、それは健太も同様に「健太お兄ちゃん」と呼ばれていた。

 その事を新藤に説明をすると、新藤はプルプル震えだし、身体中の神経を浮かび上がらせながら、顔をマグマのように紅潮させていた。


「て、てめえらの血は何色だぁ!!」


「赤色だよ」


 ゴツン!


 新藤は何かの漫画で聞いた事があるような台詞を吐きながら健太に襲いかかるが、健太のいつもの上から振り下ろすゲンコツで迎撃されていた。

 桜は先程までのやり取りを、いつもこんな感じかと聞いていたが、このゲンコツまでがいつものやり取りのワンセットである。

 こんなしょうもないやり取りをしつつ、飲み会の時間は楽しく過ぎていく。楽しい時間の時は、早く経つように感じる。気づけば時計の針は午後10時30分を指していた。



読んで頂きありがとうございます。

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