表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/134

幼馴染みからのデートの誘い?

公平こうへい!!今週の金曜日は暇!?」


 学校のとある休み時間に、俺は机に突っ伏して惰眠を貪っていると、幼馴染みのさくらがいきなり大声で予定を聞いてきた。

 俺は部活が忙しく、家に帰ったら弟が部屋のテレビを独占している為、基本夜更かしをしないと大好きなテレビゲームが出来ない。だから、基本寝不足である。

 学校の休み時間は貴重な睡眠時間であり、(たまに授業中も)それを邪魔されるのは基本的には激怒案件である。しかし、その睡眠を邪魔してくるのが、片思いをしている幼馴染みの女の子であるなら怒るに怒れない。

 俺は仕方が無しに幼馴染みの質問に答えてあげる事にした。


「今週の金曜日?」


「うん!」


「今週の金曜日は午前中だけ部活があるな。次の日が試合だから、疲れを残さないように午後は休みになっている」


「創立記念日なのに部活あるんだ!?」


「そうだな。次の日の土日で、県大会出場が決まる地区大会決勝があるからな。ハードには練習をしない予定だけど、休む訳にはいかないな」


 去年はもうすぐ関東大会まで出場できるという所まで、うちのバスケ部は勝ち進んでいた。今年こそは関東大会、そして全国大会に出場するという目標で、うちのバスケ部は今熱心に練習を取り組んでいる。

 しかし、桜はそんなバスケ部の話を聞いて「ふ~ん」と興味が無さそうに返事をした。なんだか悲しい。お前から聞いて来たよな?


「じゃあ、午後から暇なのね?暇なら遊びに行こうよ!観たい映画があるんだ!!」


 予定を聞いてきたのは遊びを誘う為だったようだ。まぁ、俺だけでは無く綾香あやかも誘っているんだろうな。

 そんじょそこらの思春期男子なら、これはデートの誘いだと勘違いするだろう。普通、いきなり好きな女子に映画に誘われたら、舞い上がってデートだと良いように解釈してしまう。

 しかし、俺はプロの幼馴染みだ。幼稚園の時から俺と桜と綾香はずっと三人で遊んでいた。さすがに中学生になってから、男女それぞれの友達と遊ぶ事が多くなったが、それでもよく一緒に遊んでいる方だと思う。当然、今回の映画も綾香と三人で行くに決まっている。

 しかし、分かりきっている事ではあるが、念の為に確認だけしておくか。なんの念の為かは自分で言っていて分からないけど……


「綾香と三人(・・)でか?」


「違うよ?二人(・・)でだよ!」


「二人!?」


 ふ、二人!?つ、つまりデートみたいなもの(・・・・・・・・・)?えっ、二人ですか?

 予想外の返答に、俺は困惑してしまう。二人で遊んだ事が無い訳では無い。しかし、それは主に小学生の時までの話であり、中学生になってから家でゲームとかして遊んだ事はあるが、外で二人っきりで遊びに行った記憶は無い。

 思春期の男女が二人で遊びに行くのは中々ハードルが高い。しかも、デートの定番である映画だなんて。……まるでカップルのようじゃないか!?

 桜だって、男女二人で映画を観に行く事がどういう事かの認識はあるはず。

 まさか……まったく脈が無いと思っていたが、多少は男として俺の事を意識してくれているんじゃ?

 桜の誘いに舞い上がってしまう、そんじょそこらの思春期男子の俺であった。まさしく意識はヘブン状態。

 しかし、次に発せられる桜の言葉に、俺は現実へと意識を戻させられる。


「綾香も誘ったんだけど、綾香は家の用事で金曜日は無理なんだって」


「……ですよね~」


「ん?どうしたの?」


「いや、こっちの話だから気にするな」


 はいはい、そりゃあそうですよね。俺より先に綾香に声をかけてますよね。でも、勘違いしても仕方がないよね?あの言い方なら。だから俺は恥ずかしい奴じゃないよね?

 俺は恨めしそうな目で、二つ後ろの席にいるであろう綾香の方に目を向ける。すると、綾香は俺達のやり取りを見ていたのか、微笑ましい表情をしてこちらを見ている。アイツ、まさかわざと桜の誘いを断ったんじゃないだろうな?

 桜は話の続きがあるようで、綾香の方を向いている俺の肩をチョンチョンと指で二回指す。俺はそれに反応し、桜の方へと顔を向けた。


「それでさ、映画を観た後はどこか別の場所で遊んで、その後晩御飯はうちで食べなよ?健太けんたお兄ちゃんと新藤しんどうさんがうちでご飯を食べにくるみたいで、お義兄ちゃんが良かったら公平もどう?だって。」


「ふ~ん。健太兄ちゃん達がねぇ」


 健太兄ちゃんの事はよく知っているが、新藤とかいう人はあまり面識が無い。この前の体育祭で顔を会わせた程度だ。

 まぁ、綾香を誘っていたという事は、桜にデートという認識は無いという事だ。それは残念ではあるが、片思いの女の子に誘われて断る理由も無い。


「わかったよ。金曜日は空けておく」


「リョーカイ!それじゃあ、また連絡するね!」


 そう言って、桜は少し駆け足で教室の扉の方へと向かって行った。どうしたのかな?トイレでも我慢していたのかな?

 俺は桜が教室から出ていくのを確認して、おせっかいを焼いたと思われる綾香の元へと向かった。


「おい綾香。本当に金曜日予定があったのか?俺に気を使って断ったんじゃないだろうな?」


「ん?余計なお世話だったかな?」


 綾香は首を少し傾け、ニコッと天使の微笑みを浮かべながらそう言った。それに対して俺は「とんでもございません、本当にありがとうございます。」と頭を下げて、丁寧に感謝の言葉を述べた。

 持つべきものは気を使える幼馴染みだな。もう一人の幼馴染みが全く気を使えないので本当に助かる。本当に綾香はいい奴だ。


桑田くわたとの事で協力出来る事があったら何でも言ってくれよな?」


 俺は綾香の耳元でそう呟くと、綾香は「ハハハ」と笑いながら「その時はお願いね」と言った。

 綾香は俺の友達の桑田の事が好きらしい。桑田は頭が良くて、この学校の生徒会長をしている。引っ込み思案の綾香が、皆の前に出る事が多い生徒会副会長をしているのは、桑田が生徒会長をしているからだ。

 綾香はいつも俺と桜の事を心配してくれている。なんならうちの母さんよりも心配してくれている。

 そんな優しい綾香の恋が実ればいいなと本当に思う。綾香みたいな子が幸せになれないなら、そんな糞な世界は滅びたらいいのに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ