エピローグ~嫁と晩酌~
桜が誰かに手作りクッキーを渡しに行っている間に、俺はキッチンの片付けをして今日の晩飯は何にするかを思案していた。
クッキー作りに結構時間がかかってしまい、今から買い物にいくのもなんだか面倒くさい。かといって、冷蔵庫の中の物だけで適当に何か作るのもなぁ…。
俺一人だけならそんな感じでもいいんだけど、桜にはそんな適当なモノを食べさせたくない。
そんな事を考えていたその時である。
プルルルル、プルルルル
ズボンのポケットに入れていたスマートフォンが音を出して震えはじめた。電話の着信のようである。ポケットからスマートフォンを取り出し、画面を確認すると、電話をかけてきたのは桜であった。俺は画面の通話をボタンを押す。
「もしもし」
『もしもし、お義兄ちゃん!』
「どうした桜?」
『今、綾香の家にいるんだけどね?綾香のお母さんが晩御飯食べていきなさいって。そのまま今日は綾香の家に泊まってもいい?』
「わかった。迷惑かけるなよ?綾香ちゃんのご両親によろしく伝えておいてくれ」
『は~い』
「じゃあな」
通話を終了して、スマートフォンをポケットに入れ直す。桜がいないなら、晩飯は冷蔵庫にある物で適当に作るか。
そう決めた俺は冷蔵庫に向かい、冷蔵庫の中身を確認した。冷蔵庫の中身を見てみると、そこそこの食材と大量のビールが入っていた。先週、健太と新藤が持ってきたビールの残りである。
ビールが多すぎて、冷蔵庫の中がかなり狭くなっている。早くビールを処分したいけど、一人で飲むのはあんまり好きじゃないし、今から健太達を呼ぶのもなぁ……
「そうだ!」
俺はある事を閃き、取り敢えず酒のツマミを作る事にした。とはいっても、冷蔵庫の中に入っていた豚肉と野菜を適当に使って肉野菜炒めを作るだけである。
15分かからない程度で肉野菜炒めは出来上がる。それだけでは少し物足りないので、冷凍食品の焼き飯も食卓に並べる事にした。
「うん。こんなもんでいいだろう」
食卓に焼き飯と肉野菜炒めを並べ終えた俺は、ビールを注ぐコップを2つ用意する。一つは俺が座る場所の対面にコップを置いた。
そして、仏壇に飾ってあった嫁の写真を取りに行き、そのコップの近くに嫁の写真を配置する。
「なぁ、たまには一緒に飲まないか?」
俺はそう嫁の写真に向かって呟き、嫁の写真の近くに配置しているコップにビールを注いだ。一人で飲むのは寂しいので、今日は嫁と一緒に晩酌をするのだ。
俺の席に置いてあるコップにもビールを注ぐ。そして、嫁の写真に供えてあるコップに「乾杯」と言って、コップとコップをカチンと合わせる。嫁と乾杯した俺はビールをグビグビ一気に飲み干し、「ぷはぁ~!!」と息を吐き出した。
一人で飲む酒はあまり好きでは無いが、今日は二人、夫婦水入らずの晩酌だ。ビールが凄く美味しく感じる。
「なぁ、今日は君に話したい事があるんだ」
そう言って嫁の写真に俺は話しかける。話しかけられた写真の嫁は満面の笑みをしている。俺には勿体ないくらい綺麗な奥さんで、いつも写真のように笑っていた。本当にこんな人と結婚出来た俺は幸せ者だ。
「話したい事と言うのは桜の事なんだ。聞いてくれるかい?」
そう写真に尋ねるが、写真の嫁が何かを答える事は無い。しかし、嫁が俺の話を聞く事を断るはずが無いのは分かっている。それが桜の話なら尚更だ。
桜の話とは、当然体育祭の話である。桜は嫁の大切な妹だ。俺はその大切な妹を託されたのだ。何かあれば報告するのは義務である。
その話の内容は、桜が人間として成長したという結末の内容の話なので、嫁だって喜んで聞いてくれるはずだ。
他にも嫁には話したい事が沢山ある。しかし、体育祭の話を終えたら、嫁にまず言わないといけない事がある。
それは、桜という優しくて素敵な女の子を、俺に残してくれた事への感謝だ。桜が居てくれたおかげで、君が死んでしまった後でも毎日楽しく過ごす事が出来ているよ。
本当に桜をあんな素敵な女の子に育て、死ぬまで大事に守ってくれていてありがとう。死んだ後でも、俺にそんなかけ替えのないモノを与えてくれた君は本当に最高の奥さんだよ。
桜は俺が命に替えても守っていくよ。だから、これからも向日葵と一緒に俺達を見守っていてくれるかい?
嫁への話しは尽きる事は無く、コップにビールがどんどんと注がれていった。最愛の人との久しぶりの晩酌に、俺は最高に幸せな気持ちになっていた。
これからも桜は何かに悩み、人生の壁にぶち当たっていくだろう。そんな桜を俺はちゃんと導いていけるか不安になる時もある。
しかし、俺にとっては最高の嫁、桜にとっては最高の姉が俺達を見守ってくれているのだ。俺達二人はどんな困難も乗り越えていける。
日は落ち、夜はどんどん更けていく。嫁との晩酌は、俺がいつのまにか自然に眠りにつくまで、話が尽きる事なく行われていくのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇「あとがき」◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「死んだ嫁の妹と暮らしてます。」をご愛読頂けき、誠にありがとうございます。ここで「死んだ嫁の妹と暮らしてます。」の「第一章」は完結となります。
次のお話からは「第二章」になります。本当に取り敢えず第一章をちゃんと書き終われて良かったです。(笑)
これも本当にこの小説を読んで頂いた皆様のおかげです。日々少しずつ増えていった読者数とブックマーク数は、本当に僕の励みになりました。
こんな僕の小説でも読んでくれている人がいるんだと思えると、本当に幸せな気分になりました。
僕にとってはこんな真剣に小説を書くというのは、初めての出来事です。それを支えて下さった読者の皆様には本当に感謝しかないんですよ!!(宮迫さん風)
活動報告でも書いたのですが、本当は体育祭編はもっと早く終わる予定でした。(笑)
第一章は文庫本一冊分くらいの文字数である、10万文字前後にしようとしていて、体育祭編は5万文字くらいに抑えて、もう一つの大きいエピソードを入れて第一章を完結させる予定だったのですよ……。でも、思ったより文字数ていっちゃうもんなんですね(笑)
途中で体育祭編の話を簡潔にして終わらせようかとも考えましたが、桜と公平の体育祭での行動原理は、今後のストーリーに置いても重要になる描写のつもりです。
なので、それを無理矢理簡潔にして書くくらいなら、しっかりと体育祭編を丁寧に書いていこうと思いました。そのせいで、主人公である咲太の影が薄くなってしまいましたが……(笑)
本当にプロの人は凄いですね。多分、しっかりと文字数を計算に入れているのでしょうね?僕もしっかりしないと!!
という訳で、第二章のお話は、本当は第一章の締めになるエピソードが展開される予定です。つまりは、物語のある種根幹になるエピソードになる予定です。
当然、咲太と桜の関係にもっとフューチャーしていくつもりです。是非、お楽しみください!
ここまで読んで頂いた皆様にお願いがあります。
この作品が面白いと思っていただけたなら、是非「ブックマーク」と「☆の評価」をして頂きたいです。今後執筆活動をする上で大きな励みになります。
こんな事を作品上でお願いするのはどうかとは思いますが、是非お願い致します。
「死んだ嫁の妹と暮らしてます。」の第一章を最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
今後とも作者共々、「死んだ嫁の妹と暮らしてます。」をよろしくお願い致します。
周瑜 こうき




