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幼馴染みの手作りクッキー。

公平こうへいお兄ちゃん!!そろそろゲーム変わってよ!!朝からずっとやってるじゃん!」


「嫌だ。普段はお前に譲っているんだから、今日くらいは思う存分やらせろ」


 俺は今、一軒家の2階にある俺と弟のかけるとの共通部屋で、テレビを占領してゲームをしている。普段、日曜日のこの時間は部活で家にいないが、昨日の体育祭のリレーで足を吊ってしまい、大事をとって今日は休むように顧問から指示が出た。

 急の休みの日曜日に俺は暇をもて余していた。なので、普段は弟が寝静まった後にチョロっとやっていたゲームをやり込んでいるのである。


「さすがにやりぎだよ!公平兄ちゃん!少しは変わってよ!」


「あぁ!ウッセぇ~なぁ~!」


 俺はイライラしていた。それはゲームの交代をねだる弟の翔のせいでもあるが、一番の原因はさくらである。

 昨日、足を怪我した際に、保健室に桜と持田もちだが付き添ってくれたのだが、なんだか桜が不自然に変な気を使って俺と持田を二人っきりにしたのだ。

 確かに持田とは男子バスケ部と女子バスケ部のキャプテン同士という事で接点があり、女子の中では仲のいい友達の部類には入るが……。

 まさか、持田と俺をくっ付けようとしてるのか?くそっ!誰の為に俺は全力で怪我をしてまで走ったんだと思ってるんだ!

 俺は考えれば考える程イライラしていき、それが翔に伝わったのか、翔は少しおとなしくなっていた。

 そして、その時である。


 ピンポーン


 家のチャイムが鳴り、そして母さんが「はい~は~い」と、俺らの部屋に聞こえるくらいの大きな声で返事をしていた。


「こうへ~い!!桜ちゃんが来てるわよ~!」


「ん?桜が?」


 母さんの大きな声により、家のチャイムを押した尋ね人が桜である事を知る。その話ぶりからしてどうやら俺に用があるみたいだが、一体何の用なんだ?


「ねぇ公平お兄ちゃん!桜ちゃんが来たんだったら俺ゲームしてもいい?」


 こいつ、どんだけゲームをしたいんだよ?俺も勉強が出来る方では無いけど、こいつ勉強大丈夫なのか?


「あぁ、わかったよ。セーブだけするからちょっと待ってくれ」


「やったぁ!!」


 丁度ゲームがセーブを出来る場面だったので、俺はすぐにセーブをした。そして、部屋から出て階段を降りる。階段を降りる途中で、紙袋を持って玄関でたたずんでいる桜の姿が見えた。

 桜も俺の方に気づき、俺を見るなり「公平っ、」と俺の名前を呼びながら、小さく右手を振って挨拶をしてきた。俺もそれに「よう」と言いながら右手をあげて応える。

 さっきまで桜にイライラしてたのに、桜が俺に尋ねにきたというだけで、俺はイライラが治まっていた。いや、寧ろ嬉しいまである。本当にチョロいな俺。


「どうしたんだ?取り敢えずそんなところにいないで上がれよ?」


 俺は尋ねにきてくれた嬉しさを悟られないよう、冷静な口調を意識して桜を家に上がるよう促した。しかし……


「ううん!この後、他のところも寄らないといけないからここでいい!」


 元気いっぱいに即座に拒否されてしまった。それには内心気落ちをしてしまったが、それを悟られないよう、引き続き冷静な態度をするよう心掛けた。……いや、冷静な感じを保てるかな?俺?


「今日はね、公平に渡したいものがあって来たの!」


 そう言うと桜は持っていた紙袋の中をガサゴソしだし、可愛いい模様で包装されている袋を取り出した。そして、それを俺に差し出してくる。俺はなんだろう?と思いながらそれを受け取った。


「はい!それクッキーなんだ!今日作ったの!」


「ゲッ!お前が作ったの(・・・・・・・)!?」


「ゲッ!……って何よ、その反応?」


 そりゃあそんな反応にもなる。こいつの料理の被害者がどれ程いる事か……。当然、俺もその被害者の一人である。

 好きな女の子手作りクッキーだなんて、本来なら喜んで然るべき代物だとは思うが、桜が作ったとなれば話は別だ。

 しかし、桜は俺の当然の反応にご立腹のようだ。ほっぺを膨らませてプンプンしている。


「何よ!!いらないなら返してよ!」


「ごめんごめん。頂きます」


 俺は即座に軽く謝罪をした。まぁ、咲太(さくた)兄ちゃんと一緒に作っただろうし、それならそんなにヒドイ出来にはなっていないとは思うが……

 恐る恐る中身を確認すると、意外にもちゃんとした見た目のクッキーが入っていた。しかも黒色と普通のクッキーの色の二色が混ざった市松模様のクッキーである。


「普通だ……普通にクッキーだ……」


「あんた、さっきから失礼よ」


 いや、見た目は大丈夫でも、肝心なのは味だ。桜の料理は見た目では判断できないところがある。俺は少し恐怖で手が震えながらクッキーを口の中に入れる。そして、その味は意外にも……


「旨い……」


「でしょ!!」


 桜は俺の反応を見て一気に上機嫌になる。いや、これはお世辞抜きに旨い。いやぁ、咲太兄ちゃんいい仕事するなぁ。

 俺は俺の胃袋を守ってくれた咲太兄ちゃんに感謝しつつ、クッキーを一つ二つと口の中に入れていく。

 そんな光景を笑顔で見ていた桜だが、急にふと真剣な表情になった。

 そして、いきなり「ごめんなさい」と謝罪の言葉を口にして俺に深く頭を下げてきた。


「ちょ!いきなりなんなんだよ!や、やめろよ!」


 戸惑いながら桜の謝罪を制止しようとするが、桜は頭をを一向に上げようとはせず、話は始めた。


「公平…本当にごめんなさい…。私と公平が喧嘩してた事だけど、公平も私がリレーの事で悩んでいた事を知っていて、それを公平に話さなかったから怒ってたんだよね?稲葉君の件も……私の事を心配して怒ってくれていたのに、あの喧嘩で公平に頭を下げさせてしまったわ。本当に謝らないといけないのは私なのに……」


 それは違う。どんな理由であれ、あの喧嘩で最初に不機嫌な態度をとったのは俺だ。桜を心配していたのは事実だが、別に桜が俺に全ての悩みを言わないといけない義務は無い。悲しい事実だけど。

 俺はそう思ったから桜に謝ったんだ。だから、謝らないでくれよ……

 しかし、桜は頭をまだ上げようとはせず、謝罪の弁を述べようとしてくる。


「桜…もう辞めろ……」


「私は本当に馬鹿だ。そのせいで公平が怪我までしてしまって……バスケの大会も近い大切な時期なのに……本当に…私は……」


「もう辞めろって!!」


 俺はそう言いながら、桜の両肩をガシッと強く掴んだ。それにビックリした桜はようやく下げた頭を上げ、大きな目を更に大きくして俺の方を見てくる。


「辞めろ!いいか!?俺は別に体育祭の怪我やこの前の喧嘩の事なんて気にしてない!寧ろそんな謝られ方をされた方が胸が痛い!!お前は俺の幼馴染みであり、家族みたい存在であり、そして一番の喧嘩友達だ!だからそんな謝り方はするな!今後喧嘩しずらくなるだろ!たから謝るなら謝った事に対して謝れ!」


 俺の勢いに桜は一瞬ポカーンとした。そして……


「…ハハハ、言ってる事がメチャクチャ」


 確かに、自分でも呆れるくらいメチャクチャな事を言ってると思う。しかし、そのメチャクチャのおかげで桜に笑顔が戻ったようだ。本当に良かった……


「ありがとうね、公平。…それじゃあ私、そろそろいくね?」


「ん?そう言えば寄るところがあるて言ってたけど、何処に行くんだ?」


綾香あやかの家!綾香にも心配かけたからクッキーをあげるの!稲葉君とかその他の心配をかけた人達は、明日は振替休日だから明後日学校で渡すかな?」


 あぁ~…そうだよなぁ。俺以外にも桜の為に動いていたやついっぱいいるもんなぁ。そりゃあ、俺だけに特別(・・)クッキーを作ってくれるなんてないよなぁ~。

 俺は少しガッカリしたが、まぁそれでも貰えた事は嬉しい事なので、なるべく普通の態度を装おった。


「そうか。まぁ、気を付けろよ。綾香にもヨロシク伝えて置いてくれ」


「うん!ありがとう!行ってくるね!」


 綾香は振り返り、玄関から家を出ようとする。しかし、「あっ」と何かを思い出したかのような動作をして一度制止する。そして上体だけ振り返り、俺の方を見てきた。


「何?」


「あのね、公平のクッキーだけ特別(・・)に量を結構多くしといたから、学校でクッキーを渡している時にその事は言わないで?皆には内緒だよ?」


 そう言って桜は人差し指を立てて口に付け、ウインクをしながらポーズをとった。


「じゃあね!!」


 桜はドアノブに手をとって扉を開け、家から出ていった。バタン!っと扉が閉まるのを確認すると、俺は嬉しさのあまりに普通に立つことがなく、しゃがんでうずくまった。

 くそっ!俺だけに特別(・・・・・・)と言っても、たかだかクッキーの量を他人より多くしただけなのに…。ちくしょ~俺ってチョロいにも程があるだろ。こんな幸せな事が俺にあっていいのか?

 久々の幸福感に浸る俺であった。しかし、俺が嬉しさの余りに玄関付近で悶絶していると、それをニヤニヤと笑って見ている人物がいた。


「青春だねぇ~(笑)」


「か、母さん!!」


 母さんが何処から見ていたか分からないが、母さんはからかうようなニヤケ方で俺の事を見ていた。ちくしょ~、寄りにも寄って、ゴシップ大好き妖怪野次馬ババアに見られてしまうとは……


「さぁ、今夜はすき焼きよ~♪」


 そう言いながら母さんは鼻唄を唄いながら台所へと戻っていった……。あぁ、この事は今日の晩飯のおかずにされるのだろう…。父さんや翔にも笑われてからかわれるのだ。

 良いことは本当に続かないなぁ。まぁ、この後の晩飯の事を考えると憂鬱になるが、それでもこのクッキーの嬉しさと比べたら、お釣がくるぐらいだろう。

 俺はそう自分に言い聞かせて心を落ち着かせる事にした。











◇◇◇◇◇◇


 ここまでご愛読頂きます誠にありがとうございます!次回のお話で「死んだ嫁の妹と暮らしてます。」の<第一章>が完結となります!

 この小説を執筆を始めた頃は、ブックマークなんか全然つかない事を覚悟していたので、皆様に読んで頂けて本当に嬉しいです!

 「死んだ嫁の妹と暮らしてます。」は、第二章、第三章とドンドン続けていきます。引き続きのご愛読の方をよろしくお願いします。

 また、ブックマークと作品の評価をされていない方がいらっしゃいましたら、是非ともして頂きたいです!創作作業の励みになります。よろしくお願いします!


◇◇◇◇◇◇

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