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義妹と手料理

 春という季節も終わりにさしかかろうとしている今日この頃、窓の外を見てみると綺麗な夕焼け模様が見えていた。終業の音楽が室内に鳴り響き、時間が今午後6時である事を把握する。今している仕事も丁度キリがいい所であった為、バックアップ作業をテキパキと済ませ、パソコンをシャットダウンした。俺は大きな背伸びと深呼吸で、1日パソコンと格闘して出来た体のコリを開放してから、タイムカードを押しにいく。


桜井さくらい先輩!!今日飲みにいきませんか!?」


 タイムカードを押した瞬間に俺の名前を呼び、食事を誘ってくる声がする。声の方向に目を向けると、そこには今年入社したばかりの後輩である新藤しんどう 昭仁あきひとと、同期入社で小学校、中学校の同級生であった田原(たはら) 健太(けんた)が居た。


「悪いな。義妹が最近料理を始めて、それを食べてやらんといかんので今日は飲みにいけない」


「え~!!前もそんな事言って断ったじゃないですか!!」


 俺は今義理の妹と二人暮らしをしている。その義理の妹とは嫁の妹である。嫁と嫁の妹は、両親を学生時代に亡くしており、近しき親戚のいない為にずっと二人で暮らしていた。その嫁と俺は結婚をし、三人で暮らしていたが、嫁は去年の夏に交通事故で帰らぬ人となった。


「っていうか義理の妹と二人暮らしなんて羨ましすぎる!!しかも手料理まで食べられるなんて……僕にも食わてください!」



  ゴツン!!!!



「痛ったーー!」


 はしゃぐ新藤に、健太のゲンコツが炸裂する。俺と新藤はこの会社で出会ったが、新藤と健太は高校・大学時代の先輩後輩である。脳天に突き刺さる完璧なゲンコツを見る限り、はしゃぐ新藤を健太がゲンコツで制止するという光景は、学生時代から繰り広げられていたのだろう。


「すまんな咲太さくた。煩くて」


「いやいや、一緒にいると飽きなくて楽しいよ?」


 小中学時代の同級生である田原 健太は、俺を下の名前で呼ぶ。


 桜井 咲太と田原 健太。俺達二人は中学時代同じバスケ部で活動をしていた。俺のポジションはポイントガードで、身長の高い健太はセンターであった。二人は地元のバスケ少年達の間では少し有名人であり、「咲健さくけんコンビ」と呼ばれていた。


 俺の身長は平均的であり、怪我も重なった為、部活バスケは中学生で辞めた。(趣味のバスケはたまにする)健太は高校、大学とバスケを続け、強豪チームでレギュラーを勝ち取り、素晴らしい成績を残したのだが、実業団やプロには進まず引退した。


 健太曰く、「これより上のレベルに行くのに壁を感じた。精一杯やったし、未練は無いよ」との事だ。ちなみに新藤も同じバスケ部だったらしい。今は俺達三人で、3on3バスケのチームを作っている。中学でバスケを辞めた俺は、二人と比べて見劣りするレベルであるが、二人はそんな事を気にする素振りを見せずに一緒に楽しくプレーをしてくれる。


「まぁ、時期が来たら義妹の手料理食べさせてあげるよ。」


「え~!それいつっすか~?」


「……あぁ…時期がきたらだよ…」


「絶対それ一生そうやってはぐらかすやつじゃないですか~!?」


 ゴツン!!!


「痛ったー!!!」


 はしゃぐ新藤に健太のゲンコツが再び炸裂する光景に苦笑しつつ、俺はその場を後にした。

 

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