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義妹と体育祭。

 今日の晩飯は豚の角煮だ。なんとか定時に仕事を終われたが、今日も帰りが遅くなる可能性があったので、昨日桜が寝た後に豚の角煮を作っておいて冷蔵庫に置いていた。1日寝かしていた為、味が凄く染み込んでいる。自分で作っておいてなんだが、中々の絶品だ。

 豚の角煮は桜の大好物である。桜は何か落ち込んでいる様子であったので、お弁当を含めて今日は桜の大好物だけでご飯を用意した。

 しかし、大好物の豚の角煮を食べているのに今日の桜は何処か物憂げな様子だ。……、まさか!今日の豚の角煮はお気に召さなかったのか?


 パクッ、モグモグ。


 いや、改めて食べてみたが、今日の豚の角煮の出来は最高だ。文句のつけようがない。いつもの桜なら、こんな美味しい豚の角煮を食べたら幸せそうな笑顔を俺に見せてくれるはずだ。昨日の様子といい、やっぱり何かあったのかな?


「どうした?何かあったの?」


「え!?」


 桜はふと我に返ったかのように、ビクッと体を震わせながら反応した。


「え?何もないよ?なんで?」


「いや、なんかぼ~っとしてたから」


「エヘヘ、ちょっと考え事してて。それより今日は私の大好物ばかりだね!凄く美味しいよ!」


「そう。それは何より」


 よかったぁ~。今日の「サクランガイド」は星3つを頂けたようだ。星が一つ減るだけでレストランの売り上げががた落ちするらしいからな。本家の方では星を減らされたレストランが裁判を起こしたとかなんとか…。シェフとしては日々この評価が下がらないよう最善の努力を尽くす所存だ。

 う~ん。料理に問題がなければやっぱり何かあったんだと思うんだけどなぁ。桜は普段甘えてはきてくれるが、悩み事やそういった類いの話しは中々話してくれない。取り敢えず、探ってみるか。


「そう言えば今週の土曜日は体育祭なんだってな?」


「!?」


 桜は豚の角煮を丸々口の中に入れていた最中であり、箸を咥えたまま驚くような顔をして此方を見てきた。ん?今桜が元気無いのは体育祭が原因なの?探る所かビンゴかな?


「もうひへひってふの?(どうして知ってるの?)」


「コラコラ。口の中の食べ物を飲み込んでから喋りなさいよ。行儀悪い」


 俺は桜が口の中一杯に頬張っていた豚の角煮を飲み込むのを待ってから、どうして知っているのかを説明した。


「今日帰る途中で公平とばったり会ったんだ。その時に公平が教えてくれた」


「……そう」


 ん?公平と喧嘩でもしたのかな?公平も何処か元気無さげだったし。でもしょっちゅうコイツら喧嘩してるしなぁ~。普段そんなに引きずる事もないしなぁ~。やっぱり体育祭の事で何かあったのかな?去年まで開催日を教えてくれたのに、今回はまだ教えてくれていなかったし。


「今年は体育祭見にいかない方がいい?」


「え!?なんで?」


「いや、何となく」


「そんな事ないよ!お義兄ちゃんいつも観にきて父兄参加競技のリレーに出てるじゃない。今年も出るんでしょ?」


「あぁ!今年こそリベンジを果たさんとな!」


 俺は箸を咥えたまま、腕捲りをして拳を握りしめた。


「お義兄ちゃん。行儀悪いよ」


 桜の中学は俺と嫁の母校という事もあり、毎年嫁と一緒に体育祭を見に行っていた。桜の中学の体育祭は保護者観覧数も多く、父兄参加の競技もある。当然、生徒の得点に関係無い参加自由のお祭り競技ではあるが、その父兄参加の競技には少し因縁がある。

 父兄参加の競技にリレーがあるのだが、俺は去年と一昨年にアンカーを務めた。しかし、去年も一昨年もトップでバトンをもらったのだが、去年も一昨年も同じ人物に抜かされてしまい2位であったのである。最愛の嫁と義妹の前で恥をかかされたのである。

 その人物は桜の同級生の父親らしいので、今年も参加するはずだ。今年こそリベンジをして天国の嫁と娘、そして義妹に良い所を見せてやる!


「こ・の・う・ら・み・は・ら・さ・で・お・く・ べ・き・か……」


「頑張ってお義兄ちゃん!」


 桜は両手に握り拳を作って俺を応援してくれた。良かった~。俺、体育祭に行っても良いみたいだ。

 しかし、結局桜は一体何を悩み落ち込んでいるのだろうか?無理に聞いても桜は話してくれないだろうしなぁ……義兄として悩みは何でも相談してほしいのだが…。お義兄ちゃん少し寂しい。

 まぁ、それは追々聞いていくとして、このモヤモヤを含めた全ての鬱憤をリレーのリベンジにぶつけるとしよう。しかし、リベンジを果たしたい人物は、中年ながら元実業団の陸上の選手であった人であるらしい。普通に戦っても勝ち目は薄い。何か策を考え無いと……。

 取り敢えず、藁人形と五寸釘でも買っておくか。


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