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私と体育祭。③

 翌朝、私は目を覚まし、顔を洗おうと洗面台に向かおうとすると、テーブルの上に手紙と昼食用と思われるお弁当が置いてあった。私は手短に顔を洗い、手紙を読んだ。


(今日も少し遅くなるかもしれませんが、昨日よりかは早く帰れると思います。朝ごはんは食パンを焼いてください。晩飯は冷蔵庫にオカズと焼き飯をラップして置いてあるので、レンジで温めて食べてください。)


「お義兄ちゃん……。ありがとうございます」


 私は手紙を両手で持って額にやり、感謝の言葉を述べた。今は朝の6時30分だ。いつもならこの時間はまだ家にいるのだけど、まだ仕事が忙しいのかいつもより早く出勤したようだ。

 それなのに、いつものようにお弁当を作ってくれて、昨日私が晩御飯を食べなかったから晩御飯まで用意してくれたみたいだ。一体今日は何時に起きたのだろう…。

 私はお義兄ちゃんに申し訳ない気持ちと感謝の気持ちを持ちながら、食パンを焼いて食べた。

 食パンを食べ終えた私は、パジャマから制服に着替えて、友達の綾香あやかといつも一緒に登校する時の待ち合わせ場所へと向かう為、家を出た。


「いってきま~す」


 家にいるであろう、お姉ちゃんと向日葵ちゃんにいってきますの挨拶をして、マンションを出て近くの待ち合わせ場所へと向かう。そして、待ち合わせ場所が近づくにつれて人影が見えてきた。どうやら綾香がもう待ち合わせ場所についているみたいだけど、綾香以外にもう一人誰かがいるみたいだ。


「桜!おはよう!」


「おはよう。浜崎はまさき


「おはよう綾香!…と稲葉いなば君?」


 綾香と一緒にいる人は、同じクラスの稲葉いなば 良太りょうた君だった。稲葉君は男子陸上部のエースでうちの学校の有名人。短距離で全国クラスの実力で、将来オリンピックに出れるんじゃないかと皆から期待されている我が学校の期待の星。身長も高くてイケメンだから、女子からも凄くモテている。

 しかし、なんで稲葉君が私達の待ち合わせ場所にいるのだろう?この待ち合わせ場所は別に稲葉君の家から学校に向かうには遠回りなはずだし…、特に一緒に朝待ち合わせをして学校を向かう程、普段仲が良い訳でもない…。

 私は不思議に思い、稲葉君の顔をじっと見つめた。


「何?浜崎?」


「あっ!」


 私はある事に気付き、大声を出した。その大声に綾香と稲葉君はビクッ!となっていた。

 別に私と稲葉君は、朝登校する為に待ち合わせをする程の仲ではないけど、綾香と稲葉君はいつの間にかそういう仲になっているのかもしれない。綾香は運動神経はダメダメだけど、勉強は学年でもトップクラス。容姿も凄く可愛いし性格も良い。男子に凄くモテる。学校の星の稲葉君とそういった関係になっていても全然不思議ではない。寧ろお似合いのカップルである……つまり…


「あぁ~、私はお邪魔虫だよねぇ~。これ?」


「えっ!なんで!?」


 私が少し苦笑いで言うと、綾香が目を見開き、大声で問い返してきた。


「いや、お二人はお付き合いを始めたのかなぁ~と?」


「いやいや!違うよ!」


「ハッハッハッ!」


 綾香は私の推測を顔を赤らめて全力で否定した。その否定っぷりもなかなか可愛い。まぁ、よく考えたら綾香には別に好きな人(・・・・・・)がいた。

一方の稲葉君は余裕な感じで笑っていた。モテる男はやっぱり違うなぁ~。


「私が稲葉君とお付き合いなんて恐れ多いよ!それに、稲葉君は私に用があるんじゃなしに、桜に用があるんだから!」


「私に?」


 稲葉君が私に用?はてさてなんだろう?稲葉君とは同じクラスだから、普通に話したりはするけど特に他の男子より話すという事も無い。こんな朝早く校外で私と話す程の用があるとは思えないのだけど?……一体なんなんだろう?私は怪訝けげんな顔をしながら稲葉君の顔をじっと見た。


「ん?待ち合わせ場所にいたのは迷惑だったかな?」


「いや、迷惑じゃないけど私に用て何なのかなと思いまして」


 稲葉君は笑顔を崩さず、私の質問に答えてくれた。


「いや、リレーの件についてなんだけど、本当は浜崎はリレーのアンカーになりたく無いんじゃないのかな?と思ってさ」


「!?」


 ビックリした私は綾香の顔を見つめた。稲葉君に私がリレーのアンカーになりたく無い事を言ったの?と目で問い掛けると、綾香は首を全力で横に振った。

 この事は綾香にしか相談していない。何故稲葉君はその事を知っているのだろうか?綾香は嘘をつける子じゃないし……


「どうして?誰かがそう言ってたの?」


「いや、本当に何となくなんだけどね。リレーのアンカーに決まった時、浜崎の顔を見てたら何故かそんな風に感じたんだよね。明るくは振るまってはいたけど。」


 私は驚きを通り越して「ひぇ~」と訳のわからない言葉が口から出てきた。凄い観察眼だなぁ~。なるべくクラスの雰囲気を壊さないよう、自然に明るく振る舞っていたのになぁ~。私は観念をして、リレーのアンカーが内心嫌である事を白状した。


「いや~凄いね。稲葉君てエスパー?」


「ハハハ。本当は昨日の放課後、浜崎に話し掛けようとしたんだけど、あの後すぐ浜崎帰っちゃったし。だから連絡先を知ってた西城(さいじょう)(綾香の名字)に聞いて、ここで待っていたんだ。学校内でこの事聞かれるの嫌だろ?」


「まぁ、そうね」


「ごめんね。いきなり待ち合わせ場所にまで現れて。でも、リレーのアンカーどうする?嫌なんでしょ?嫌なら裏で委員会とクラスの陸上部の子にお願いして変わってもらおうか?他のクラスの皆には黙っておくからさ」


 やっぱりモテる男の子は気遣いが違うね。いや、素直に感心だわ。しかし、この申し出はありがたいけど、一度決まった事なのに、それを覆させるのに手を煩わせるのは申し訳ない。それに、結局それは誰かに押し付ける事になってしまう。私は稲葉君の申し出に感謝をしつつ断る事にした。


「ありがとう稲葉君。でも、一度決まったからには最後までキチンとやりたいんだ。誰かに押し付けるのも嫌だし」


「そう。浜崎がいいならそれでいいんだ。」


「本当にごめんね。こんなワザワザ学校に行くのに遠回りな場所まで来てくれたのに」


「いや、こっちが勝手にやった事だし。それに今日は朝練が休みだから、いつもよりゆっくりな時間に登校しているから気にしないでよ!」


 稲葉君は変わらぬ笑顔でそう言ってくれた。本当に稲葉君はいい人だなぁ。うんうん。これはモテるわ。私のタイプでは無いけど。

 私には綾香とは別に、もう一人幼稚園からの幼馴染みがいる。その幼馴染みは男子で、その男子も同じクラスなのだが稲葉君とは違って、女子にモテているという話は聞かない。顔は悪くないとは思うし、そいつもバスケ部のエースなのだけど…稲葉君と違ってデリカシーが無い。今度、稲葉君の爪の垢を煎じて飲ましてあげよう。



読んで頂きありがとうございます。

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