3 「Brave ~勇敢な人 其ノ壱~ 」
更新出来ました!
次回もよろしくお願いします。
では、また来週!
1
「花蓮はさ〜将来のこと〜〜考えてる?」
通学中、いきなり美香が有崎にそう質問した。
有崎は少し考える素振りをした後に言った。
「……平和に過ごせていたらそれで良いと思ってる」
「そう。……花蓮は花蓮だね〜〜!」
「……美香は?」
「私? う〜ん。強いて言えば、私は花蓮と一緒にいられたらそれで良いかな!」
「そう。それは、嬉しいな。と思った」
「あはは! 花蓮が素直だ〜〜。珍しい〜!」
美香は終始楽しそうに話す。有崎もまた、この時間を大切に思っていた。
2
ありきたりな高校に到着し、美香と別れた有崎は教室に向かう。
いつもは誰にも話しかけられないが、今日はそういう訳にはいかないようだ。
そして、これから先も、朝に話しかけられない状態はなくなり続けるだろう。と。有崎は思った。何故なら彼らと知り合いになってしまったからだ。
「おはようございます。有崎さん」
「えっ? ……おはよう。原島さん」
原島が最初に話しかけてきた。
同じクラスなので、話しかけられること自体は問題でもなんでもない。だが、誰とも距離を置いていた奴が急にクラスメイトと話していれば嫌でも注目を集める訳で。
しかし、そんなことお構いなしな原島は堂々と有崎に話しかける。
「有崎さんの席はここだったんですね。……案外近いところにいたのに気づかないものですね」
「……そうだね」
「うん?どうしました?」
「いや、どうもしない」
有崎は周りのことをいちいち気にするような性格ではないが、周りはそれを許してはくれない。
クラスメイトの頂点が有崎に話しかけてきた。
「有崎さんって、ミステリアスで話しかけづらいと思ってたけど、そんな風に接するんだね! 一番わからなかった有崎さんのことが知れて嬉しいよ!」
そんなことを言われると思っていなかった有崎はポカン。と、してしまう。が、直ぐに言葉を返す。
「……そうですか。良かったです」
「うん。これからもよろしくね! 私の名前は、高橋 恭」
「……よろしく」
有崎の言葉を聞いた高橋は満足げに仲良しグループの元に戻って行った。
有崎がボーッと突っ立っていると、原島に声をかけられる。
「初めてだったんですか?」
「えっ? ……学校では余り目立とうとしてないんだ。話しかけられる前に直ぐ寝てるから」
「……そうなんですね」
原島のその言葉を最後にその話は終わった。
3
今日は調理実習があり、有崎は原島と一緒に家庭科 調理室に移動していた。移動中、以外な人物にぶつかる。その正体は龍園寺だった。
原島がこの学校にいたので、彼もいるだろう。と、ピンときていたがいざ逢ってみると異常だ。
そして、有崎が彼と初めて逢った時に彼が制服を着ていなかったのには理由があった。
理由とは、緊急で〈魔神〉に対処していたからだそうだ。生田もそういう事情で制服を着ていなかった。
龍園寺はいつもの調子で言った。
「…………有崎か」
「ちゃんと来てたんですね。時雨」
「あぁ。……彼奴と長時間いると疲れるから暇潰しだ」
彼奴? と、有崎が思っていると、原島がその疑問の答えを教えてくれる。
「時雨が言う彼奴っていうのは藍狗のことです」
神籐といると疲れるのか。と、有崎は思う。
そして、周りを見ながら有崎は問いかけた。
「彼は、学校に来てない?」
「えーっとですね」
「彼奴。問題児だから謹慎処分食らってる」
「……藍狗はそれを良いように使って高校生活を放棄しようとしてるんです」
「……そう」
神籐の闇を知ってしまった罪悪感で押し潰されると、感じた有崎は話を逸す。
「君は、今から何処に?」
「あー俺か? 俺は屋上に行ってサボるけど」
不真面目な奴がもう一人いた。と、有崎は思う。
原島はやれやれと言った表情だった。
4
調理実習は成功で終わった。5,6時限目だったので、教室に戻る。その道中、見知った背中が見えた。彼に原島が話しかける。
「敬。どうしたんですか?」
「あっ、さゆりさん。そして、花蓮さん。えーっとですね。これをいただいてしまって」
そう言って生田は一枚の手紙を見せてきた。
「ラブレター?」
「そのようですね。行かれるんですか?」
「うん。折角僕なんかにくれたからね」
「僕なんかって。……敬は自分の評価が低過ぎますよ。これで何枚目ですか?」
「えーっと、千枚目です」
有崎はその尋常じゃない枚数を聞いて鳥肌が立つ。
生田はそんなにモテるのか。と、有崎は思った。が、直ぐに顔が整っているから当たり前か。と、考え直す有崎がその場に存在するのであった。
5
学校が終了し有崎はいつもの道を美香と下校していた。ただ、普通に下校しようとしていたのに事件が起きた。
有崎が住むアパートが火災で埋め尽くされていたのである。
有崎は美香と別れると、全速力で走った。階段を上がると、炎の熱が痛いほど肌に伝わる。
どうすれば。と、思考していると、有崎の前に人影が通った。
「なんで燃えてんのかは知らんが迷惑だ」
見知った声、龍園寺である。心底、面倒臭そうにそう言うと、彼は火に怖気づくことなく、走り去って行った。有崎は彼を追う。
彼が誰かを見つけ、立ち止まる。有崎も止まる。誰かはゆっくりと有崎達に顔を向ける。そして、こう言った。
「なんだ? 君達は?」
「……いや、それはこっちの台詞だ」
「ほぉー私に口答えできる者がいるか」
ただ、立っているだけで存在感がある男だった。有崎は〈権威〉か。と、ピンとくる。
禁断隷書が狙いであると、気づいた有崎は、それを龍園寺に伝えるべきか考える。数分、思考したあと、有崎は結論を出した。伝えるべきではない。と。
何故、そう判断したのかは簡単である。さっきの言葉で龍園寺は迷惑をかけられることを嫌っていると推測できる。
ならば、迷惑をかけない手筈で動く。元より有崎は誰にも頼ろうとしないつもりだった。偶々、龍園寺がその場に駆けつけることができているだけである。
6
男が動き始める。火を獣のような形にして攻撃してくる。それを避けていると、いつの間にか歩道橋に来ていた。禁断隷書から距離を取れたことは良いことである。
だが、体力的に言うとこちらは不利である。強力な実力を持っている〈権威〉に、策もなく立ち向かうのは分が悪過ぎる。
何より事情を知らない龍園寺を巻き込むことは許されない。そう判断した有崎は龍園寺を突き飛ばし、歩道橋から落とした。トラックが来ることをしっかり計算し、確認して彼を落としたので、道路に解き放たれるという心配はない。
龍園寺が悲痛な顔で何かを言っていたが、有崎は敢えてそれを無視した。
「ほー裏切りか? いや、助けたのか。……愉快、愉快。そんな君に教えてやろう。私は未志島。名前は無い。君の名はなんという?」
「有崎 花蓮」
「良い名だね」
「……………………」
「さて、君は事情を知っている口だろう? 彼は知らないようだった。……あーだから助けてあげたのか」
「……まぁー軽口はこの辺にして。君。禁断隷書を何処にやった?」
ここから闘いは白熱することだろう。