2 「Residence ~居候~ 」
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1
禁断隷書を起こすと、彼女に問う。
「君の両親は? 何処から来た?」
と、優しく。禁断隷書はハンバーグを飲み込んだあとに答えた。
「私はイギリスから来たんだ! ……家族はいない。イギリス十字団〈フィアラ〉という宗教的教徒の一員なんです!」
と。禁断隷書はご飯を食べることができて嬉しいのか幸せそうな顔である。
有崎は聞き慣れない単語について問う。
「宗教的教徒って何?」
と、簡潔に。冷たいように聞こえるが、やっぱり、優しさが声の調子に含まれている。
「イギリスの首都"ロンドン"には教会〈フィアラ〉という場所があるんだ。宗教的教徒とは神を敬う一族が信仰してる行動原理を信じる団体のことだよ!」
「……その宗教的教徒は幾つ存在する?」
「う〜ん。海外に六団体存在してて、日本には二団体存在してるってメンバーの一人が言ってたよ」
「そう。……あと、なんで日本に?」
「えっと〜ですね。あはは、イギリスは現在難病に侵されてしまっていて住めるような環境じゃないんです」
禁断隷書は乾いた笑みを浮かべそう言った。しっかり笑えている自信があるのだろう。
些細な笑みの違いに気づく人なんてそういない。だが、有崎はわかってしまった。明らかに今まで浮かべていた笑みと違うということに。有崎は静かに言った。
「嘘だよね。それ」
と。その言葉を聞いた禁断隷書は、なんでわかっちゃうの?と言った顔をして表情を歪める。
「……逢って数分なのになんでアナタにはわかるの?」
「………………今までと違う笑顔だったから」
その言葉で禁断隷書はわかってしまった。この人はとんだお人好しなんだ。と。
「アナタの心は透明なんだね」
「?」
禁断隷書は生まれつき人の気持ちー欲望ーが目を見るとわかる。今だって有崎の目を見ている。だが、彼女の気持ちー欲望ーはわからなかった。
2
「それで本当は?」
と。有崎は問う。禁断隷書は深呼吸をすると、話し始めた。
「日本に来た本当の理由は醜い気持ちー欲望ーを抱いた〈権威〉がたくさん存在してしまったからなんです」
「……私。生まれつき人の気持ちー欲望ーが目を見るとわかるんです」
「……その人達から逃げていたら、いつの間にか日本にいて。どうしたらいいのかわからなかったんです。住む場所も頼れる人もいなくて」
有崎はただ、静かに聞く。
「そんな時、アナタが現れて私に手を差し伸べてくれました。神様は本当に偉大だと思います!」
禁断隷書は満面の偽りのない笑顔でそう言った。
「………………」
有崎は穏やかにその顔を眺めていた。
3
有崎は飲食店を出ると、スマートフォンを取り出し原島に電話した。
《原島さん》
《はい。どうしました。有崎さん》
《えっと。……今から逢えませんか?》
《えっ? ……構いませんが、本当にどうしました?》
《説明が長くなるので、合流したら話します》
《あっ、はい。では》
有崎は原島に場所を教えてその場所に向かった。
「誰に電話してたのですか?」
と、禁断隷書に聞かれる。
「同級生 兼 先輩に当たる人だよ」
「えっ?先輩で同級生?」
「まぁー今度、教える」
そんな話をしていると、公園に到着した。合流場所は公園だったのである。
公園のベンチに座ると、有崎は空を見上げた。そして、禁断隷書に視線を向ける。
こんな儚い少女がたった一人で見知らぬ土地に放り出されていたなんて誰も信じちゃくれないんだろうな。と、有崎は思う。数分して有崎を呼ぶ声が聞こえてきた。原島である。
「有崎さん。待たせてしまいましたか?」
「いや、大丈夫。私達も今、来たところ」
「そうですか。……そちらの方は?」
「……この子は禁断隷書。イギリスから来たシスター。この子について話さないといけないことがある」
「そうですか」
原島はそう言うと、聞く態勢になった。有崎は簡潔に説明した。
「そうですか。大変でしたね。禁断隷書さん。……これから禁断隷書さんはどうするんですか?」
「……私が匿います。拠点の部屋からは出て元々、暮していたアパートに戻ります。迷惑はかけられない」
「迷惑だなんて」
「それに常日頃、傍にいないと危険から守れない」
「……そうですね。でも、偶には寄ってくださいね」
「はい」
有崎はそう返事をすると、禁断隷書と隣り合って帰って行くのだった。そんな後ろ姿を原島が悲しそうに見つめていることに気づかずに。
4
有崎は久々に帰って来た我が家を見て感慨深くなっていると、禁断隷書がそんな彼女に話しかける。
「ここがアナタの家?」
「そうだよ。ありきたり?」
「いや、素敵だよ。日本の技術を見ることはとても好きなんです」
「そう」
そう言うと、有崎は我が家の鍵で扉を開け中に入った。
禁断隷書は初めて見るものに興味津々といった感じで部屋を見て回っている。
有崎はソファーに倒れる。疲れが押し寄せてきたのだ。有崎は目を閉じ眠りについた。
禁断隷書は部屋を一通り見て回ったあと、眠っている有崎に気づくと、掛け布団を持ってきて彼女にかけた。そして、柔らかな表情でそっと有崎の髪を禁断隷書は一定のリズムで撫でていた。
5
有崎は目を覚ます。そして、周りを見渡すと、禁断隷書はソファーにうつ伏せで顔を隠し眠っていた。
彼女を起こさないように、ソファーから立ち上がり彼女をお姫様抱っこしてソファーに寝かせてから冷蔵庫の前に向かった。
すると、スマートフォンから無機質な音声が聞こえてくる。その音声を発したのはAIだ。
『起きたんですね。……今日の夕食は手料理ですか?』
「……ナポリタン。作るからレシピ開いてくれない?」
『はい。お任せください』
有崎は禁断隷書のために手料理を作ってあげたい。と、思い作り始めた。
テキパキ作っていき、数時間で完成させた。美味しそうな匂いを感じお姫様ー禁断隷書ーが起きたようだ。
足音が近づいてくる。有崎は自分の腰に抱きつく感触を感じ、そちらに視線を向ける。すると、満面の笑みを浮かべた禁断隷書の表情がそこにはあった。この笑顔を守りたい。と。有崎は思うのだった。
「手を洗って席に」
「うん!!」
有崎は盛りつけると、彼女の座る正面に置いた。
「わぁ〜美味しそう! 手料理は初めて食べる。……………………頂きます!!」
「………………」
有崎は笑みを浮かべながら頷いた。
禁断隷書は数分で食べ終わった。そして、順番に入浴を済ませた。明日は学校があるので、早めに就寝した。
6
『朝ですよ。起きてください』
いつもの無機質な音声が有崎に語りかける。
有崎は隣で眠る禁断隷書を起こさないようにベットから立ち上がると、制服に着替え始めた。
数分で着替え終わり、朝食を食べていると、禁断隷書が起きて来た。
「おはようございます」
「……おはよう」
『禁断隷書さん。おはようございます』
おのおのが挨拶し合う。そのタイミングで出発の時間になる。有崎は鞄を持つと、席を立った。
そして、玄関に向かう。すると、禁断隷書が有崎と同じように玄関に向かって来た。
「……留守番よろしく。何かあったら電話してくること。わかった?」
「うん。御留守番しっかりするよ」
「……じゃー行ってきます」
有崎はそう言うと、靴を履き、学校に向かった。
7
有崎は通学路を歩いていた。すると、甘ったるい声が聞こえてくる。デジャヴだな。と。有崎は思うのだった。
おわかりだろうが、声をかけてきたのは美香である。髪をポニーテールに纏めている。
「花蓮〜〜あの家に戻ったんだね〜」
「………………」
立ち止まって振り返り、有崎は頷く。
「花蓮と逢うの懐かしい〜〜!」
楽しそうに美香はそう言った。
「楽しそうだね」
「わかる〜久々だもん〜花蓮と話すの!」
「そうだね」
有崎と美香は会話を弾ませながら、いつもの道を登校するのであった。
8
「あの娘が有崎 花蓮か。そして、隣にいるのは友人ってところかな。……あの娘の狂った姿見てみたいからあの仔ー友人ーを使っちゃおう〜!」
"この世界の闇が動き始めている"ことに有崎は、気づいていなかった。ここで気づいてさえいれば運命は変わっていたのかもしれない。