ニルスオーラヴの仕組み 『象徴』 『属性』 『魔導師』
昔々、大陸ニルスオーラヴには六つの属性というものがありました。その属性はいつからあるのかもわからないほど昔からある、当たり前の性質でした。火、水、土、風、光、闇。それでも彼らは時に協力し合ったこともありました。しかし大半の時は、争いあってきました。どの国も滅ぶことなく、しかし大陸を統一することもなく、気の遠くなるほどの長い年月、争いあってきました。
彼らには秘密兵器がありました。『象徴』から百年に一度産み落とされる、魔導宝具です。魔導宝具には魔毒と呼ばれる病を引き起こす毒がありましたから、たとえば戦争で武器として扱うようなことはできません。魔導宝具を武器として手に持てば、必ず魔毒に侵されてしまうからです。
しかしせっかく一つの『象徴』から百年に一度、一つ、産み落とされる魔導宝具を使わないのは宝の持ち腐れです。『象徴』は各国に一つずつありましたから、百年に一度六つの魔導宝具が生まれる計算になります。そんな魔導宝具が何に使われるかというと、それは魔導師の召喚です。魔導宝具は召喚の触媒となるのです。
魔導師は異世界から呼び出されます。その異世界がどんなところなのかはあまりよくわかっていませんが、重要なのはそんなことではありません。重要なのは、魔導師がどう戦争に役立つかです。簡単にいってしまうと、魔導師は魔導を扱うことができます。魔法のようなものです。
火の国の魔導宝具が使われれば、真っ赤な両眼を持った魔導師が召喚されます。
水の国の魔導宝具が使われれば、真っ青な両眼を持った魔導師が召喚されます。
魔導師はそれぞれの属性に応じて、その属性の魔導を使って戦います。
召喚されし魔導師は、皆一様に白髪になると言われています。それは召喚によるショックを与えられているからとか、言われてはいますが、よくわかっていません。召喚に関しては、わかっていないことが結構あります。それでも各国は魔導を求めて召喚を続けてきました。
魔導師は魔導が使えて戦力になる。それはそうなのですが、魔導師のすごい、重要な点はもう一つあります。それが、『特性』です。
特性というのは、簡単に言ってしまえば魔導師それぞれに与えられるたった一つの特殊能力と言ったところです。百年に一度使われる魔導宝具はそれぞれ違う代物ですから、それが原因でそれぞれ別の特性を持つのだと言われています。どんな特性を持つかは触媒に使われた魔導宝具だけがその答えを知っているのです。
つまり、召喚されたばかりの魔導師は自らの特性を知りません。それをどうやって見つけ出すかは各人いろいろ試して、見つけていくしかないのです。
大変ですが、しかし特性というものは大概が戦局を変える可能性のある強力なものです。ゆえに召喚された魔導師が最初にしなければならないことは、自分だけの特性を見つけ出すことなのかもしれません。
さて、では光闇の魔導師とは何なのかというと、これは実はとても特別な、異例なことなのですが、光闇の魔導師というものは六属性を兼ね揃えていると言われています。光は火と水を内包し、闇は土と風を内包する。ゆえに光闇の両眼を備えしものは、全属性を持ち合わせているのだとされているのです。
なぜ六つの属性を持って召喚されるのかというと、それは六属性の魔導宝具が召喚の触媒として使用されたからです。つまり、一つの体に六百年分の魔毒が与えられるということでもあるのですが、召喚される異世界からの訪問者には、巨大な器があります。
器とは一言でいうと許容量と言ったところです。魔導宝具には毒があります。その六つの魔導宝具を与えられたことによって生じる魔毒を受けても病にかからない。器が大きな者にはそのような許容量があるのです。
それは生まれ持っての素質です。召喚されるものの誰もが巨大な器を持つわけではありません。しかし召喚によって選ばれる異世界の者は、魔導宝具によって選ばれるのです。魔導宝具によって選ばれるものとは器を持ちし者。
ゆえに六つの魔導宝具の魔毒に耐えられる者が、魔導宝具によって選ばれ、召喚されるのです。
このようにして全ての属性を持って召喚された魔導師こそが、光闇の魔導師と呼ばれるのです。
それは伝説の存在だとされてきました。
六百年に一度、しかもずべての属性の魔導宝具が使われて召喚されるなど、ニルスオーラヴの歴史の中には一度たりともその存在を確認されていません。
つまり前代未聞。唯一無二。
戦乱の世でありながら各国が手を取り合って魔導宝具を持ち寄る。
そんなことはありえないことなのです。
ですが今回、それは為されました。
その理由は、簡単に言ってしまうと、魔鬼獣のためです。
魔鬼獣に関しては、光闇の魔導師とはまた別の話なので、またの機会にします。
あとは重要なこととしては、『特性』についてのことがありますが、これもまた追々話します。
光闇の魔導師の特性というものは、とても特別です。
あとは、旅をしながら。