ミラとエレグの自己紹介
「私の名はミラだ。普段は火竜の国で軍師をしている。今回は重要な任務を与えられ、こうしてお前の導き手としてわざわざ光烈の国にきてやった。光栄に思え」
見た目は小さいその女は冷静沈着そのものであった。だが冷静さだけではなく厳しさのようなものも含まれているその声音は、とても少女が発するそれだとは思えなかった。
「失礼かもしれないけど……君、何歳?」
トウヤは思わず聞いてしまった。
その質問が以外だったのだろう。二人がそれぞれ驚いたような態度を取った。大男は「ほう……」と低く唸り、ミラと名乗ったその少女は大きく目を見開いた。
「まさか、もう特性が目覚めているのか!?」
「え? 特性……?」
「……ふん。どうやら自覚はないようだな。となると暴発したのか、それともお前自身が元々持っている洞察力とかなのか……それはわからないが、なるほど、お前に対する最初の評価は改めよう」
「……はあ」
よくわからないが褒められたのだろうか。だとしたら到底素直とは言えない性格をしているとトウヤは思った。
ややどういうことかわからない沈黙の時間が流れた。その後、大男が自己紹介をはじめた。
「エレグだ。趣味は料理作り。既婚者で、子供もいるおっさんだ。普段は兵士として水鱗の国を助けているが、今回はお前の護衛をすることとなった。よろしく頼む」
簡潔な自己紹介ではあったが、思ったよりも親しみやすそうな人物なのかもしれないな、とトウヤは思った。一言でいうとダンディだな、とトウヤは薄く笑う。
改めてトウヤは二人を見る。
ミラは真紅のローブに身を包み、赤の両眼、そしてぼさぼさの白髪をしていた。手には金槌とでも表現できる武器を持っている。幼い少女の見た目をしているが、実際は違うような気がする。
エレグは鉄製の胸当てを装着しており、青の両眼、そして彼の脇には大きな剣が置かれていた。おそらくそれを使って戦うのだということはわかった。短めの黒髪で、やや顎鬚をたくわえている。屈強な大男で、力自慢なら誰にも負けないといった雰囲気もある。
「さて。では何から話そうか」
自己紹介はひとまず終了ということになりそうだったので、トウヤは慌てて口を挟んだ。
「僕の自己紹介は、いいのかな」
ミラは頭を横に振った。
「大体わかってる。必要ない」
「ええ!?」
「冗談だ。語りたいことがあるなら語ればいい。なにせお前がリーダーだからな」
「ええっ!?」
「そんなに驚くことかい。私はリーダーという柄ではないし、その護衛の男に関してもそういったタイプではないだろう。そんな中、優柔不断そうで実にお前はリーダー向きだ。そもそも今回私たちは旅をするわけだが、その旅の目的もお前のためにあるといって過言ではない。ならばお前が迷い、悩み、旅の指針を決めていくことは何もおかしなことではない」
「でも、僕はこの世界に関して何も知らない。そもそも旅をするということさえもよくわかっていなかった。僕は召喚されたのだということはわかってきたが、そもそも、さっき僕をここまで案内してくれた有名な人が言っていた光闇の魔導師とはなんのことなんだ? 僕は魔法でも使えるのか?」
「一辺に喚くな! だがまあ、どうにせよ語れることは語っておくつもりだ。この大陸で起こっていること、そしてお前がすべきこと、お前が召喚された理由。そうだな、まずは光闇の魔導師というものが何なのかということを、教えてやろう。この大陸の一般的な歴史も踏まえてな」