表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/46

トウヤ



「ん……」

 はじめに、なんだろう、ここは、と彼は思った。

 そして戸惑ったまま周囲を見渡してみると、大勢の人間が彼を取り囲んでいるのだと気がついた。


 そして思う。なにも思い出せない、と。


 一人の男が近づいてきた。両眼が光のように輝いている男だ。なにか獅子のような絵が描かれた甲冑を身にまとった人間だ。


 まさしく彼は光の王コラージュであったが、彼にはそんなことはわからない。


 光の王コラージュは訪ねた。

「君の名は」

「トウヤ」

 自分でも驚く程すっと出てきた言葉だった。まるで自分の口が紡いだのだと思えなかった。だが間違いなくそれは彼の、自分の名前であった。


 だが思い出せるのはそれだけだった。どこから来たのか、なぜここにいるのか。なにもわからない。トウヤは頭を抱えて、その場にうずくまり、そして倒れた。


「大丈夫か! ……、急いで、彼を地上に運ぼう。風の王よ、ご老体を鞭打つようで申し訳ないのだが、力自慢のあなたに手伝ってもらいたい」

「大の男なら俺だってそうだが?」

「わかったようなことを聞くのはやめろ、闇の王よ。お前の力を借りたいとは思わない」

「ははは。……わかってるよ、光の王」


 光の王コラージュはたしかに見た。

 トウヤと名乗ったその青年が、光闇の両眼を持つことを。

 右眼に光の眼を、左眼に闇の眼を。


 それすなわち、すべての属性を備えし証拠。


「おそらく、召喚は成功した。人類は、この大陸を統一するための救世主を、呼び寄せることに成功したのだ。六属性を備えし魔導師。六つの魔導宝具の力を与えられし幸運たる器。その大きな器に全てを賭けるとしよう。さあ、みんな、地上に戻ろう。ここはいささか、空気が悪いからな」


 六人の王たちがその場を後にする。


 設置されていた六つの魔導宝具はもはやその場には無い。


 闇の王レイドウは最後にその場に振り返り、そして目を瞑って、やがて開いた。


「六つの属性……。六つの特性……。そして光闇の両眼か……。さて、あいつが聞いたらどう思うかね……」


 彼はそんなことを口にしてから、そして、小さく笑った。


「光闇の魔導士。一体どんなやつかな。酒でも飲ませれば、それもわかるかな……」


 まだ誰にもわからないこと。


 それはトウヤと名乗ったその人物が、一体どんな人間であるのかということ。


 たしかにそれは、誰にもわからないことだった。




 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ