新たな仲間
それじゃ、これでお別れだね。いろいろとありがとう、ナーシャ。土の王ナルバーシャさんにもよろしくいっておいて」
「……はい」
機械土の国のハンマーで金属を叩く音ともこれでお別れだ。あまり長い期間滞在したわけではなかったが、なかなか遺跡にしても、いい経験だったように思う。
これで得た資格は二つ。水と、土だ。
まだまだ先は長い。
エレグが先に馬車に乗り込む。
トウヤも馬車に乗り込もうとしたが、それをナーシャに呼び止められた。
「あの、トウヤ様。私、ずっと悩んでいたんです」
「?」
「このままでいいのか、って。この国で遺跡を探検する生活も、悪くはありません。でも大陸中の戦争が続く限り、大陸中の遺跡を訪れることもできないし、いろんな不幸に遭遇することにもなります。だから、戦争を止められるような力は私にはありませんが、せめて、お手伝いをさせて欲しいんです」
「ナーシャ……それは」
「私を、旅に連れて行ってくれませんか。一緒に、いつか仲間になるために、あなたたちと苦楽を共にさせて、くれませんか」
何か、彼女がそういうことを言うような予感はしていた。
各国を回る旅は危険だ。命を落とすかもしれない。
そんな旅に彼女を同行させていいのだろうか。
……。
「僕にだって戦争を止める力はないかもしれない。光闇の魔導師の伝説なんて、おとぎ話のようなものなのだから、世界を救うだなんて眉唾ものだ。それでも、いいの?」
ナーシャは、大きく息を吸った。
「はい! 私、トウヤ様に賭けてみたいんです!」
また責任重大なことになったような気がする。
トウヤはそんなことを思いながら、先に馬車に乗り込んでいるエレグを窺った。
彼は腕を組み、目をつぶっていた。
「エレグ。旅をする人は多い方が、賑やかでいいような気もするんだけど……だめかな?」
「守る者が一人増えた所で、俺は困らん。まあ、ナーシャも武練術に関して素人という訳ではなさそうだから、戦力にもなるだろう。……旅をする以上、人手には困ることになるからな」
「ありがとう、エレグ」
「ミラがどういう文句をつけるかは、知らんぞ」
「そうだね。ははは……」
そういうわけで、新たにナーシャと共に旅をすることとなった。
機械土の国を離れて、次の国へと向かう。
三人は、、馬車に揺られた。
「私、頑張ります! 精一杯、努力します!」
とても明るい少女の姿は、どこか眩しかった。




