象徴の夢
「これが、機械土の国の、象徴か……・・」
男に戻ったトウヤは扉の奥へと一人で進み、水晶と向き合った。
「そうか……また、夢を見るんだな……」
なんとなく察せることだった。
あの夢はなんなのか、わからないが、嫌いではなかった。
とても優しい夢だったからだ。
「う……」
トウヤは、急激な眠気のようなものに襲われ、その場に倒れた。
そして意識は混濁し、どこかを流れるように旅し、時の感覚さえも消滅していった。
たどり着いたその先は、見たことのない、少年と彼女の、一日であった。いや、見たことはあるのだ。以前の夢でも、僕は彼女たちを見ていたのだ。
「ねえ、○○○。今日は、ピクニックにいくわよ」
「ピクニック?」
少年は不思議そうに首をかしげた。なぜ急にそんなことを思いついたのだろうか。
「いいじゃない。あなたの大好物の魚をたくさん詰め込んだおにぎりを持っていくのよ。少し高い山に登ることになるけど、それもいい運動になるし、頂上で食べるお弁当って、きっと最高よ」
そんな彼女の文句に負けて、少年はピクニックに出かけた。
ピクニックというより、登山であった。
「ねえ、いつまで続くの? この坂道……」
「まだまだ続くわよ。登山を舐めちゃだめよ、○○○」
「辛いよぉ……」
「泣き言言わないの。男の子でしょ」
その山にはあまり人気がなかった。街の人々から忘れられたかのような山であった。道もほとんど獣道のようなもので、非常に歩きづらかった。
それでも彼らは、二時間ほどは歩き続けた。
そして彼らは頂上にたどり着く。
「わあ……」
「これが、私たちの見慣れている街だとは思えないでしょう?」
頂上からの景色は、なかなかに綺麗だった。
彼らが普段住んでいる街というものが、一望できる景色であった。
「ねえ、○○○。……私がいなくなっても、生きていけると思う?」
「いきなり何をいうのさ。姉さんがいなくなることなんて、ありえないだろう?」
「……そうだね。そうだよね」
「変なことを言うんだから。それより、お弁当食べようよ!」
少年と彼女は、おいしい空気を吸いながら、おいしい料理を仲良く食べた。
いつまでも、そんな時が続くんだよな、と少年は思っていた。
だから、少年は今日も『約束』を守る。
「うん、姉さん。料理は、仲良く食べる!」
「そうだよ。それが一番の、調味料なんだよ。死んだ母さんが、よくいってた」
二人は、笑いあった。
いつまでも、いつまでも、こんな絆が続くと、信じていたのだ。
まだこの時、少年は知らなかった。
世界のことなんて、どうでもよかったから。
トウヤは再び意識が混濁していくのに気がついた。まるで時が止まったかのような感覚に襲われてから、彼が夢を見ることは終わりを告げ、象徴のある部屋で再び目覚める。
トウヤの頬を、涙が伝っていた。
なんで、泣いているのだろう。
トウヤは立ち上がり、象徴から資格を得るために祈り、願い、語りかけてみてから、その部屋を後にした。




