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水鱗の国の祭り騒ぎ





 水鱗の国は、エレグの苦手な、お祭り騒ぎであった。


「すごい人だかり……」


 どこを見回しても水色の両眼ばかりが歩いている。水の国にやってきたのだ。ゆえにミラはカラーコンタクトをはめて水色の瞳になっていた。


 光闇の魔導師が現れたということで騒ぎになっても危ないので、トウヤも街中ではカラーコンタクトをはめることになった。トウヤの存在は希望であるから、その姿を大勢の人に見せなければならない。だが、この場はあまりに人が多すぎた。


「じゃあ、この国で何をするのか、教えてくれよ、ミラ」


「旅の目的を語るには、この場はあまりにも騒がしすぎる。筋肉男、例の場所へ道案内を頼む」


「ついてこい」


 エレグの背中を追って、街中を歩く。


 水鱗の国には水路が何本も通っていた。その上を小舟に乗って移動している人がたくさんいて、お祭り騒ぎのせいか、小舟の上で踊り狂っている人の姿もあった。


 噴水の数もやけに多くて、人々はその噴水を中心にして酒を飲み、語り合い、笑い合っていた。実に水の国らしい光景であった。


 路上には露店が数多く並び、おいしい匂いを振りまいていた。馬車の中では何も食べられなかったから何か食いたいなあとトウヤは思ったが、エレグが人ごみを避けるかのようにどんどん進んでいくので、立ち止まって買い食いをしている暇はない。


 サーカス団が広場を盛り上げていた。


「はぐれるなよ。こんな場所では見失ったら二度と見つからんぞ。迷子の子供のように泣き叫べば別かもしれんがな」


 たしかに右も左もわからないこの街ではぐれたら大変なことになる気がする。


 ミラは小さいからはぐれたら絶対に終わりだ。


 エレグもすいすい進んでいくので、おいていかれてしまいそう。


 なかなか心が休まることのない、危うい道のりであった。


 その内、街の外れらしき所に到着した。


 お祭りの中心からは外れたらしく、人の数も明らかに減った。


 その代わりに増えたのは兵士の数であった。水の国の兵士がいたるところを警備しており、どうにも一般人が近寄っていい雰囲気の場所ではなかった。エレグは通り過ぎる兵士のほとんどから挨拶をされており、エレグも「ああ」とか言って返事をしていた。


 やはりエレグは有名な兵士なのだろう。なぜ有名なのか。

「エレグは有名人なの?」 

 思い切ってトウヤは尋ねてみる。エレグは歩きながら、

「軍に身を置いて長いからな。兵士に知り合いは多い」


 どうにもそれだけではないような気がしたが、エレグはあまり語りたそうにはしていなかったので、それ以上追及するのはやめておいた。


 そしてさらに十分ほど歩き続けると、木々のいっぱい生えている一本道に入った、そこからは坂のようになっていてそこを登った。その坂の途中にも兵士はいて、厳重に警備されていることがトウヤにもわかった。


 坂が終わってから後ろを振り向くと、水鱗の国が一望できる高い場所にいると気がついた。


 街があって、王城があり、水路がいたるところを縦横無尽に通っている。


 綺麗な街だった。そこに戦争を繰り返す血生臭さはなかった。


 そこから五分ほど進む。


 金網に囲まれた神殿らしき巨大な建物が、姿を現した。


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