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ミラの不死


 トウヤは馬車の中で魔鬼獣との戦いの中で発動した力、それについてミラに詳しく聞いた。


 以前はまったく教えてくれなかったが、経験したからということだろう、ミラは躊躇なくその力、つまり『特性』について語りだした。


「身体能力の向上。まあ簡単に言ってしまえば、『強化』といったところだろう」

 

 とても単純な能力だとトウヤは思った。


 そんな能力が世界を救えるほどの効果をはたして持っているだろうか。


「魔鬼獣を倒すことはできた。だけど、一体倒しただけで疲労感でいっぱいになって動けなくなってしまった。そんな弱点がある特性でこれからやっていけるのかな」

「お前は早とちりしている」

「えっ?」


「特性というのは、成長していくものなのだ。自らの精神力を鍛えたり、また何度もその特性を発動することによって、まるで身体そのものに染み付かせるように慣れていくものなのだ。お前の『強化』の特性は、まだ生まれたての赤子のようなものだ」

「……なるほど。これから努力すれば、力に目覚めていくということか」

「……そんなところだ」


 ミラの特性もはじめは弱かったのだろうか。『不死』の特性だと言っていたが、それはどう変化していったのだろうか。聞いておきたいことは全部聞いておきたい。


「ミラの『不死』の特性は、つまり、老いることも死ぬこともない特性ということなの?」


 ミラは目を瞑った。そしてしばらく黙った。


 あまり語りたくないのかもしれない。特性は秘密だともいっていた。悩んでいる様子だった。

 だが彼女はやがて口を開いた。


「私の特性、『不死』。この力は、死ぬ度に私の力を強くするというおまけ付きでな。私はかれこれ数百年は生きているが……」

「数百年!?」

「まあ、その数百年のほとんどが戦いの日々だった。こんな幼い姿で召喚されたがために、何年たっても私の特性を知らぬものは、私をチビだとか、幼女だとか言うが、まあ一言でいうと人生の大先輩というわけだ。敬え」

「大おばあちゃんだったんだな……」

「誰がおばあちゃんだ!」

「死ぬたびに強くなるって、魔導の力が強力になるってこと?」

「そうだ。昔はすぐにガス欠を起こしていたが、今は魔導を無限のように放つことができるようになった。……死ぬのは、多少、痛いのだがな」


 ミラは、ギリっ、と歯を強く噛み締めるような音を鳴らした。何か思い出したくないことを思い出したようだった。トウヤはあまり詳しく聞くことはやめた。何百年も戦争を続けていれば死ぬのは一回や二回ではないだろう。


 何百年も生きるというのは、どんな気持ちなのか。


「私が死ぬたびに強くなっていくのと同様にとはいかないが、お前の特性も強くなる可能性を秘めている……さらに……まあいい、いいか、何度も言わせてもらうが、お前は光闇の魔導師……特別な力を持つ宿命を背負いし、最強の魔導師だ。自分の可能性を信じて、旅をしながら成長していくがいい。若者には、その権利がある」

「うん、わかったよ」


 僕は光闇の魔導師じゃなくて、化物なんじゃないか。と言いたくなったが、飲み込んだ。


 違う、化物じゃない。あの炎に燃やされた無数の命だって、化物なんかじゃなかったのだから。


 そう、間違いなく、人間なんだ。





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